ポケットモンスター モノクローム   作:ラフィオル

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第1章 プロローグ
第1話 強さを追い求める 黒の主人公


 シンオウ地方に彗星の如く現れた1人のトレーナー、名前はコウキ。

 ギンガ団の野望を阻止し、当時最高峰だったシンオウ地方のポケモンリーグを、肩を鳴らすように勝ち抜いた。その後にあるチャンピオンリーグでさえも、圧巻の強さで優勝し、そのまま彼は『チャンピオン』という名の席に、座りついた。

 彼が、その席に座ると、シンオウ地方にやってくるトレーナーの数が増えだし、すべては『最強の彼』に挑むためと、トレーナーたちは、ポケモンと共に、地方で腕を磨く。彼もまた、チャンピオン防衛戦と、各地方のチャンピオンとの成績は全勝無敗と、残した影響力と功績は『この100年の間』で越した人物はいない。

 

 誰もが認める最強のチャンピオンであり、そのとてつもなく高い壁にそれ以降のチャンピオンは下から眺めるばかりだった。

 

 ──その彼に匹敵するトレーナーなんて、もう現れない。

 誰しもがそう思っていた。

 

 

『シンオウ地方』

地方の中央にある巨大な山が大陸を二分していて、とても自然が豊かで肌寒い場所で、他の地方の人々からは、北の大地と呼ばれている。

 

『ヨスガシティ』

地方の東部にある大都市で、人にもポケモンにも優しい町を目指した町作りを行っていて、きれいに整備された街並みの美しさには、時折目を奪われるくらいだ。町の北側は、ポケモンバトルやポケモンコンテストが行われる大きな競技場がある。

 

 

『あの伝説』から100年たった今、この物語は『ここから』始まる。

 

 

 ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 ───ポケモンセンターの近くにあるバトルフィールド。

 

 ヨスガシティにやってくるポケモントレーナーたちは、まず最初にこの場所にたどり着く。多くのトレーナが集まり、腕を振るう場所であり、毎日のように気の入ったポケモンたちの声と、トレーナーの弾んだ声が、聞こえていた。

 

「ゴウカザル!"かみなりパンチ"」

 

 1つのバトルフィールドを見てみよう。体をよろめかせたダイケンキと構えた拳に力を入れたゴウカザル、見守るように佇んでいる多くの人々。そして、2匹のポケモンの後ろ側に立つ、2人のトレーナー。

 

 バチバチと音を鳴らした拳は、今にも倒れそうだったダイケンキに当たる。

 

 

『ダイケンキ、戦闘不能!』

 

 

 ──気付けば圧勝だった。

 ポケモンバトルは、時間が進んでいることをついつい忘れてしまう。ポケモンたちの気迫、トレーナーたちの熱意を伝えるような指示、その空間に身を委ねてしまったら最後、歓声が聞こえて目が覚める。

 

 

 ──勝利したトレーナーを見てみよう。

 

 

 黒髪に赤い無地の帽子を被り、半袖半ズボンに身を包んだ少年が、嬉しそうな表情をしている。シンオウ地方の御三家、『ほのおタイプ』のヒコザルの最終進化系、『かえんポケモン』のゴウカザル、そしてトレーナーの名前は、ラク。

 彼は、ダイケンキのトレーナーに勝って5連勝目を達成していた。

 

「勝負してくれて、ありがとう!」

 

 ラクは、少し上の空のような声で言う。

 

   * * *

 

 口では言えないけども、この相手も他のトレーナーと同じでジムリーダーと戦うような緊張感はない。

 

 

 強い相手はいないのか?

 

 

 ゴウカザルを回復せずに5人のトレーナーに勝ち、尊敬の眼差しで見られている大衆の前で、そんなことは言えない。

 

「僕のゴウカザルはまだまだ戦えるから、また誰か勝負してくれないかな?」

 

 

 これが精一杯だ。

 

 

 彼は、強さに飢えているわけでない。自分の中の"ある弱さ"と向き合う強さに飢えていた。

 

 

「──自分で良ければ、相手になるよ」

 自信がないような声を発し、彼と同じくらいの少年、黒髪に黒いリュックに暗い服装で、地味なエリートトレーナーのような風姿であった。

 

 そのトレーナーの名前は、クオン。

 

 

 あの人、3戦目あたりから僕の試合をずっと見ていたトレーナーだ。

 誰も名乗り出ないからか、それとも少し疲れているゴウカザルを見てなのか。どっちだとしても中途半端な気持ちで名乗り出てくるトレーナーには、負ける気がしない。

 

 ラクはそう思っていた。

 

   * * *

 

 『彼』とバトルをして、もし勝ってしまったら、連勝を止めてしまったトレーナーになってしまう。ゴウカザルを見ていて、少し熱が入り過ぎたか。

 

 

 いつの間にか、言葉を返していた。

 

 

 ゴウカザルと戦いたい、彼に勝って目立ちたい、そうではないと、言えるのに。

 ──言い訳は、やめよう。

 

 

 クオンの行動は突発的であった。

 

 

『目と目が合ったらポケモンバトル!』

この世界では、そんな言葉がある。

相手の視線を避けていれば、ポケモンバトルはしなくていい。しかし、それだけだと、トレーナーが経験値を得ることは出来なくなる。

とても深い言葉だと思う。

 

 

 ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

「いけ、ガバイト!」

 

 クオンが投げたボールからは、『ほらあなポケモン』のガバイトが現れる。

 

 2匹は見つめあい、その後ろで2人のトレーナーが硬い表情で見守る。

 その時を息を呑み待つ人々。

 彼らの試合は、まもなく始まろうとしていた。

 

 

 ──ゴウカザルが動いた。

 ラクが"インファイト"を指示した頃には、ゴウカザルはガバイトの目の前にいた。連戦による疲労を感じさせない強者の風格を見せていた。

 

「ガバイト、"きりさく"!」

 

 ガバイトは腕を構える、迎え撃つ気だ。冷静だと言えるガバイトの行動に、ゴウカザルの口から火の粉が飛ぶ。そのまま吹き飛ばしてやると、叫ぶようだ。

 

 ゴウカザルは、目を閉じて、両腕のみに意識を集中させて、とにかく1発でも多く、拳を振るう。──しかし、あることに気付く、手ごたえがない。

 目の前で身構えていたはずのガバイト、当たらないわけがない。

 

 ──ゴウカザルが目を開けるとガバイトがいない。

 

『どこに消えた?』

 

 ◆ ◇ ◆ ◇

 

 ゴウカザルが"インファイト"を放ち、ここまでの出来事を横からもう一度見てみる。

 

 ガバイトは、向かってくるゴウカザルに対して、気付かせることなく後ずさりをして、わずかな距離を作っていた。右拳を下がりながら避けて、左拳を低い体勢で避けた後、ゴウカザルの横に回り込んでいた。

 

 隙だらけのゴウカザルに、ガバイトが"きりさく"を叩き込む。

 

 "インファイト"を使った代償で防御力が下がり、"きりさく"の追加効果が発動して、威力が倍に膨れ上がっていたダメージ量がゴウカザルに加わった。

 

 まさに絶望的な状況、息も絶え絶えになって、右手を顔に当てるゴウカザル。

 

 ラクは、ゴウカザルに"かえんほうしゃ"を指示して、ガバイトを退けようとする。

それを知った上で、ガバイトは間合いに入ろうとしていた。

 

 ゴウカザルの特性、『もうか』で威力を増した攻撃が、ガバイトの足元近くに当たり、その衝撃で大量の煙が舞う。

 

   * * *

 

 ガバイトは、この煙に紛れて攻めてくるだろう。

 僕がガバイトのトレーナーだとしたら、その選択肢しか選ばない。

 こんなに追い詰められた状況から勝ってきた試合なんて、いくつもある、僕とゴウカザルの強さを舐めないでほしい。

 

「ゴウカザル、"インファイト"を構えて!」

 

 逃げも隠れもしない、力でねじ伏せる。

 

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