ポケットモンスター モノクローム   作:ラフィオル

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第12話 決勝進出者

 3回戦が終わって会場内に、安堵した様子のカイズ。クオンは、電光掲示板で勝ち上がったトレーナーの名前を確認した。

 

「ココア、カイズ、フウト、こうなるか」

 

 続くは準決勝戦、クオンの相手は前回準優勝者の『グレイシア』使いのフウト。

 

 グレイシアはイーブイの進化系であり、ガバイトとは相性が悪い『こおりタイプ』を持つポケモン。おまけに防御力、攻撃力もあり、常識的に考えるとガバイトに勝ち目はない。

 

 だからと言って、負けてやるつもりはない。

 

 クオンは、勝利への道しるべを、今尚探していた。

 

「──ココアさん、カイズさん、こちらへ来てください」

 

 2人が試合場へと向かっていった。そこから広がっている観客席には、いつもより人が溢れかえっていることが分かった。激しい高揚感と重圧に呑まれそうになりつつも、誰もいない4つのバトルフィールドの中の1つで向かい合う。

 

『──試合開始!!』

 

 試合が始まると、両者のポケモンは全く動こうとはしない。カイズは、アブソルに攻撃を振らせて、出来るだけ自分から攻めないつもりだった。そうでもしないと勝つことが出来ないと考えたのだろう。

 

「アブソル、"つるぎのまい"」

 

 アブソルの周辺にいくつもの光る剣が現れて、剣と剣がぶつかり合う。この技は自身の攻撃力を上げる技。一筋の汗を垂らしながら、それでもカイズは指示を出さなかった。

 

 ───するとアブソルは、ゆっくりとレアコイルに歩み寄っていく。警戒し怯えている野生のポケモンに優しい表情で近づく、それと似たように。気付けば、アブソルはレアコイルの間合いに入っている。

 

「レアコイル! "ほうでん"!」

 

 この時、アブソルは下がらなかった。どんなに素早く反応していたとしても攻撃は受けると判断したのか、見ていたココアは、アブソルに"つじぎり"を指示する。眩い電撃を受けながら、アブソルはその角で鈍い音を鳴り響かせた。

 

『──レアコイル、戦闘不能!』

 

 微かに残る微量な電気を体に纏わせながら、アブソルは凛とした姿勢を崩さない。カイズは絶句するしかなかった。

 

 ◆ ◇ ◆ ◇

 

「飲み物を持ってきた!」

 

 観客席には、コノミとトロナツ、そこにカイズが飲み物を持ってやってきていた。──間もなく、フウトとクオンの試合が始まる。

 

「クオンとフウトさん、どっちが勝つだろう」

「正直に言っちゃうと、フウト一択かな」

「やってみないと分からないだろ」

「──いくらクオンが、グレイシアの対策をしていたとしても、フウトのグレイシアとは、分が悪過ぎる」

 

 どちらが勝っても、問題ないはずだったのだが、3人は重苦しい空気に包まれていた。

 

「──俺はクオン一択だな!」

 

 どこからか聞き覚えがある男性の声が3人には聞こえていた。

 

「あれ、ジュースあったのかよ、買わなければよかったな」

 

 3人の直ぐ近くの席で座っていた男性こそ、ジムリーダーのユウバだった。唐突な出来事に3人は言葉を飲み込む。

 

「大会、盛り上げてくれてお疲れ、暇してた所に見たことあるトレーナーだったから、声をかけただけだよ」

「じゃあ、なんで飲み物を3つ持ってんだよ!」

 

 カイズがユウバに食ってかかっていた。

 

「急に声を掛けたら、変に思われるだろう。お近づきの印みたいなものだよ、嫌だったら俺は別のところへ行くよ」

 

 ──めんどくさい奴だ、そう考えて3人は、ユウバを無視して試合を眺めることを選んでいた。バトルフィールドに、ガバイトとグレイシアが繰り出された。

 

『──試合開始!!』

 

 開始早々、ガバイトがグレイシアに攻め立てていた。

 

「グレイシア、"バリアー"!」

 

 グレイシアの目の前に、分厚く透明な壁が現れると、少しずつ消えていく。クオンはガバイトに"ドラゴンクロ"ーを指示、グレイシアの間合いに入って、右手を大きく振るった。

 

『カンッ!』

 

 そんな音が響く、ガバイトの"ドラゴンクロー"は、"バリアー"の効果で防御力が上がっていたグレイシアの体を弾いていた。

 

「グレイシア、"ふぶき"」

 

 ──グレイシアは涼しい顔をして、ガバイトへ夥しい数の雪粒を向かわせる。クオンがガバイトに"あなをほる"の指示し、間一髪ガバイトは攻撃をかわす。

 

「──その一手は読んでる」

 

 ガバイトは、そのまま地中からグレイシアに近づく、だがグレイシアも、先を読んでいた。残っていた雪粒を再度操り、自身周辺の地面を固く凍らせた。───ガバイトは、グレイシアから離れた地面から顔を出す。

 

 早くもクオンは、窮地に追い込まれていた。

 

 打つ手がない、勝てる気がしない、"バリアー"は自身の防御力を高める技だと知っていたけど、あそこまでダメージを軽減できるのか。"りゅうせいぐん"という有効打は残っているけど、連発すれば威力が下がり、持久戦になれば負けだ。

 

 しかし、"りゅうせいぐん"に縋るしかない。

 

「ガバイト、"りゅうせいぐん"」

「グレイシア、"ミラーコート"!」

 

 ──降りてきた1つの隕石をグレイシアは受けた。

 

『ミラーコート』という技は、相手の特殊技を受け、受けたダメージを2倍にして反撃する技。1つの隕石を受けきったダメージ量は2倍になって、グレイシアから放たれる。回避不能の攻撃がガバイトに襲い掛かった。

 

 ──"ミラーコート"を耐えるが、ガバイトは足をふらつかせる、あと一回大技を受けてしまったら倒されてしまうだろう。クオンは、グレイシアを見る。

 

「グレイシア、"みずのはどう"!」

 

 ───あらゆる葛藤からか、クオンは、自分の思考回路が鮮明に見えたような気がしていた。

 

   * * *

 

 グレイシアの技は、"ふぶき"、"ミラーコート"、"みずのはどう"、"バリアー"。ガバイトの技は、"きりさく"、"ドラゴンクロー"、"りゅうせいぐん"、"あなをほる"。互いにダメージを受けているが、ガバイトの方が多く、その他色々。

 

 ──クオンの頭の中で、勝ち筋が見えた。

 

「ガバイト、避けろ!」

 

 "みずのはどう"をガバイトは避ける。クオンは"あなをほる"を指示し、ガバイトは地中へ身を隠した。グレイシアは地中にいるガバイトには攻撃できない。

 

「ガバイト、グレイシア目掛けて、"りゅうせいぐん"!」

 

 穴の奥へと届かせたクオンの指示は、グレイシアは動いていないことが、ガバイトに伝わる。勿論その間、グレイシアが動くことはない。ガバイトは、いつもと違う"りゅうせいぐん"を放つ。

 

「──そこから打てるのか」

 

 空から、無数の隕石が降りてくる。先ほどの"りゅうせいぐん"とは違って、全ての隕石が規則正しい動きをしている。まさかとフウトは思った。

 

「全て同じ位置へ落ちてくるのか?」

 

 グレイシアは、落ちてきた隕石を避けるも、全ては避けきれない。何とか持ち堪えたグレイシアに周囲を囲むように"ふぶき"を指示する。フウトは、ガバイトの追撃を警戒する。

 

「ガバイト、あの"ふぶき"の中心付近を狙って、"りゅうせいぐん"!」

 

 ──声を聞き、フウトは悟った。クオンの目の前にガバイトがいたのだから。

 

「グレイシア、避けろ!」

 

 しかし、フウトの声は"ふぶき"を放っていたグレイシアには届かなかった。グレイシアは目の前に集中していて、空の様子を知ることは出来ない。"りゅうせいぐん"は、グレイシア目掛けて勢いを増して落ちてきていた。

 

 この勝負、フウトの負けである。

 

『グレイシア、戦闘不能!』

 

 テンガン杯の準決勝が終わり、勝ち上がるトレーナーの名前は、ココア、クオンだ。

 

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