ポケットモンスター モノクローム   作:ラフィオル

14 / 30
第14話 次なる目的地へ

 表彰式も終わり、長い戦いはようやく終わりを迎えていた。辺りは暗くなり、いつもの5人は、ポケモンセンターの中のテーブルを囲み座っていた。まず最初に、優勝おめでとうと、皆からクオンに声がかけられた。あれほど息が詰まる、ハイレベルな試合は他にはない。

 

「これから、皆はどこへ行くの?」

 

 カイズがそんな質問を投げかける。まず最初にフウトが口を開く。

 

「俺たちは、博士に頼まれていた調査のために、テンガン山へ向かうつもりだ」

 

 ──明日の朝、コノミとフウトは、テンガン山の奥深くへ入り、ポケモンの調査をするようだ。

 

「俺たち2人は、元々ハクタイシティへ向かっている途中なんだ」

 

 クオンが言い、4人の行く先を知ったカイズは、しんみりとした表情になる。

 

「俺は、トバリシティにいって、ジム戦をするつもりだ」

 

 4人とはまた違う方角だ。大会が終われば、個々の旅の為、離れ離れになることは全員分かっていたのだが、微妙な空気がしばらく続いていた。

 

「───おいおい、俺抜きでそんなに楽しむなよ」

 

 テーブルの上に大皿がドンと置かれる。不敵な笑みを浮かべながらユウバが割り込んできていた。皿の上には"チョコナナ"が7つある。

 

「ユウバさん、俺たちを追いかけ回してるわけではないですよね!」

 

 フウトが苛立って少し声を荒げて言う。ユウバは決勝戦でもトロナツたちと、図々しく試合を観戦していて、何が理由で近づいてくるのか、全員は気になっていた。

 

「──悪い悪い、これは大会を盛り上げてくれたお礼のつもりだよ!」

「なんで、7つもあるだよ!」

 

 カイズがユウバに食ってかかる。

 

「──俺の分と、残り1つはスペシャルゲスト用だ」

 

 ユウバの後ろから、ココアが現れていた。

 

「楽しくいこうぜ!」

 

 弾んだ声で話すユウバを見て、全員は"チョコナナ"を手に取り始めていた。多分、嘘ではないなと、皆は思って。

 

 ◆ ◇ ◆ ◇

 

「ええ! ココア、バッジ1つも持っていないの!?」

 

 激情しながらコノミの声が裏返る。テーブルの上にアルコール類は置かれていない。それを見てトロナツとフウトはドン引きする。そういう性格だっけと。

 

「──でも、この大会でトレーナとしての実力も必要だって事が分かったから、これからジム巡りをするつもり」

 

 ココアがコノミに言葉を返していた。一方でクオンとカイズは、別の会話をしていた。

 

「───ハクタイシティに行く前に、クロガネシティの化石博物館に行ってみろよ!」

 

 ハクタイシティに向かうならとカイズが、クオンに話し始めた。

 

 クロガネシティの大きな観光名所であり、世界中の化石マニアたちが集まってる場所。化石から分かった太古の歴史や、あらゆる時代の化石が展示されていて、その中でも最も珍しいと言われた化石『赤いひみつのコハク』が、そこにはある。

 

 クオンたちは、ハクタイシティへ向かうために、一度クロガネシティのポケモンセンターに寄るつもりだった。少し化石博物館の中を見て回るのもいいなと、クオンは思っていた。

 

 ──賑やかな会話は、日付が変わって尚、続いた。

 

 ◆ ◇ ◆ ◇

 

 ───気が付くとクオンは、ベットから起きている。急いで窓を開け、遠くの会場を眺める。会場には、屋台がなかった。昨日のあれは夢じゃないなと。

 

「いつの間にか寝ていたのか」

 

 そうクオンが呟く。

 

「──起きたの? クオン」

 

 ベットの上で荷物を整えるトロナツの姿があった。

 

「他の4人はもうヨスガシティから出て行ったみたい、僕たちも行こう」

 

 少し状況についていけなくなるクオンであったが、直ぐに理解した。

 

「ああ!」

 

 旅は、まだ始まったばかり。この旅の行き先には、どんなことがあるのか。2人はまだ知らない。

 

 

 ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 ───シンオウ地方のどこか。薄暗い建物の中で、同じ灰色の服装をした多くの男女が、せかせかと歩き回る。その部屋の外側の通路で、とある男3人が何かを話している。

 

「──ずいぶんと、大胆な"依頼"ですね」

 

 3人のうちの灰色の服装の小さな少年が話す。

 

「この依頼を俺とヒューマがか」

 

 同じく灰色の服装の男性が話す。彼の名前は、クウノトリ。

 

「"赤いひみつのコハク"をここまで持ってくる、簡単な依頼のように見えるが」

 

 他2人と同じ服装の青少年が話す。彼の名前は、ヒューマ。

 

「いやヒューマ、これは簡単じゃないな、24時間監視がされている博物館にまず侵入することさえ、難しい。おそらくこれは、見つかる前提で動かなくてはいけないな」

 

 クウノトリが言葉を返していた。

 

「僕も手伝った方がいいですか?」

「ワバ、君の力は確かに欲しいが、"俺たちが何もできなくなる"、この依頼は2人でやりたい」

 

 クウノトリは言葉を返し、ワバがため息を吐いていた。

 

「正直羨ましいよ、それって、"クロ様"からの依頼なんでしょ」

「まあな」

 

 クウノトリが言葉を返した。

 

「それじゃあ、頑張って」

 

 ワバは、少し乾いた口調で言い、どこかへ去っていった。2人は作戦を決めるべく、1つの部屋に向かっていた。

 

 ───数十年前、シンオウ地方では有名だった研究施設があった。その施設の名前は『グレイ研究施設』、主にポケモンの道具の為の研究が日夜行われていたが、絶対に知られてはいけない、とある情報を外部に漏らしてしまい。今ではその全ての研究所は使われていないと言われている。

 

 ちなみに外部に漏らした情報というのは、『グレイボール』という開発途中であった1つのボールである。

 

 ───このボールに捕獲されたポケモンは、トレーナーの指示を聞くようになる。悪く言うと、どんな指示にも逆らえない。そんなボールの存在が明るみとなり、国際社会から批判を浴び、"国際警察"をも動かす大事件となった。──もう一度言うが、今ではその全ての研究所は使われていないと言われている。

 

 

「──決行は深夜、だが現地に着いてから、しばらく様子を伺いたい。あと正面衝突を踏まえて"戦力"が欲しいから、アレを大量に持っていくつもりだ。そこらへんは頼めるか? ヒューマ」

「野生のポケモンを大量に捕まることか? あと"いい人材"を見つけるつもりだが」

「──そこらへんは任せるよ」

 

 2人は、クロガネシティへと向かっていた。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。