ポケットモンスター モノクローム   作:ラフィオル

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第18話 たてのカセキ

「博士に一度に会ってみたらどうだ?」

 

 そんなフウトが投げかける言葉にアトリエは頷く。

 

「会ってみるよ!」

 

 そう言葉を返した。

 

 ◆ ◇ ◆ ◇

 

 その日の夜、アトリエは荷物を整えていた。思ったら行動、それが彼女のポリシーだった。次の日になり、朝日が昇る頃、アトリエはポケモンセンターを出る。日が真上にやってきた時にハクタイシティへ到着する。

 

「──確かこの家だったかな」

 

 とある一軒家の前にアトリエは立つ。2人が言うには、この家にヒノキア博士がいるらしい。アトリエが一言の声を放ち扉を開けると、大勢の研究者らしき人物がわたわたとしている。

 

「───今は忙しいんだ、また後日にしてくれ!」

 

 白い衣服を身にまとい、頭に赤いバンダナを巻いた高身長の若い男性が言葉を返していた。彼がヒノキア博士である。

 

「そこを何とか!」

 

 忙しい様子だったのは分かっていたが、アトリエは、どうしても博士と話し合いたいと思っていた。それを見た博士は苦い顔をした。

 

「そこを何とか、周りの様子を見てから言ってくれ! こっちは1分の暇もないんだよ! 小説の事で話し合いたいなら、今の俺の為になる小説を持ってこい!」

 

 博士は大声を放ちアトリエを追い出した。一軒家の扉の前でアトリエは佇む。

 

 ──確かに、博士からしたら今小説のことで話し合うことは、全く意味のない事、博士の為にならない。私にとっての小説は、自分の為だけに書いていたんだ。努力が足りない。

 

 ───今から書く小説、いくら時間が掛かってもいい、全て本気で書いてみよう。

 

 

 ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

「───それからクロガネシティに戻ってきた私は、小説を書けずにいたんだけど、どうしてか貴方のブイゼルを見て何か掴んだような気がするんだ!」

 

 時間は元に戻り、つい先程日が沈んだ夜のポケモンセンター、その中にアトリエ、クオン、トロナツの3人がいる。化石博物館から戻ってきたクオンとトロナツは、アトリエの今までの話を静かに聞いていた。

 

「別に深い理由があるわけでもない、2人の旅についていきたいんだ!」

 

 クオンとトロナツは言葉を呑む。

 

「いいよ!」

 

 トロナツはそう答える。断る理由もなく、クオンも頷く。

 

「──明日、博物館の館長さんに誘われて、化石堀りに向かうけど、アトリエさんも一緒に来ますか?」

「さん付けしなくていいよ、アトリエでいいから!」

 

 ───新たな仲間、小説家のアトリエ。仲間が増えるということは、色がどんどんカラフルに染まっていく。つまり、仲間が色が増えれば、この物語は更に加速する。

 

 ◆ ◇ ◆ ◇

 

 窓の近くの木から鳥ポケモンの羽ばたく音が聞こえて、目が覚める。

 

「──もう朝か」

 

 ポケモンセンターの小さな部屋で、アトリエは机に鉛筆を置き、座っていた椅子から立ち上がる。アトリエは今日、クオンたちと207番道路へ向かい、化石掘りをする予定であった。ウキウキと支度を整えて、部屋を出る。

 

 1階へやってくると、2人が待っていた。

 

「ごめん! 遅くなった?」

 

 そう声をかけるアトリエに2人は何も返さない。アトリエは、何故だろうと考えていると、誰かから服の裾を引っ張られる感覚があり、後ろを振り返る。そこにはドーブルがいて、両手でベレー帽を持っていた。

 

 アトリエは自分の頭を触ってみると、いつものふっくらとした感触がなかった。

 

「──まだまだだな、私は」

 

 静かにそう呟きアトリエは、ドーブルからベレー帽を受け取る。ベレー帽をかぶり、いつものふっくらとした感触を手で確かめた。

 

「おまたせ!」

 

 クオンたち3人はポケモンセンターを出る。博物館へ近づくと、入口付近にでノネトとロコン、コジョフーがいて、その流れで207番道路へと向かった。

 

 ◆ ◇ ◆ ◇

 

 ──博物館の裏側にあった小川を上った場所であろう河原、その隣り合わせにあった自然豊かな風景際立つ砂利道をクオンたちは歩いていた。ロコンは河原を見かけると、そこへ走り出し、水へ飛び込む。コジョフーは呆れた様子でそれを見ていた。

 

「まあ、仕方ないか!」

 

 苦笑いをしノネトは話す。河原を泳ぐロコンを見ながらクオンたちは歩いた。

 

 風景が一変し、河原の向こう側にとても大きな地層の壁がある。

 

「ここにしよう!」

 

 浅い河原を渡って、向こう側にたどり着く。ノネトは大きな荷物の中から人数分のハンマーとタガネを出していた。

 

 この2種類の道具を使い分けて、化石掘りが行われる。そして、こういう地層に化石が眠っているとノネトは言った。

 

「私はいらない、ロコンたちを見ているよ!」

 

 アトリエは河原で遊ぶ2匹を見ていていると答えていた。楽しそうに河原で遊ぶ2匹を見て、クオンとトロナツは、ガバイトとブイゼルをボールから出した。

 

 ──しばらくした頃、クオンが道具を使い地層を削っているところを、ガバイトがじっと見つめていた。そこへノネトが現れて、2種類の道具をガバイトへ渡す。2つの道具の違いが分からないのか、ガバイトは2つの道具を両手で持ち、同時に何度も地層を削るというよりは叩いているようだった。少し離れた場所で化石掘りをしていたトロナツはクスリと笑った。

 

 トロナツが反対方向を向くと、コジョフーが2つの道具を器用に使って、黙々と化石掘りをしていた。

 

「コジョフー上手いですね!」

 

 トロナツは近くで化石掘りをしていたノネトにそう話した。

 

「2匹は前の館長さんとよく化石掘りをしていたからね!」

「前の館長さんって、どんな人だったんですか?」

「──本当に尊敬できる人だったよ」

 

 間を置いてノネトは答えていた。

 

 前の館長は、化石の復元装置の研究に携わっていた1人であり、あらゆる地方に行っては化石を掘り続けていた。化石は生きている、という口癖を常に言っていたとノネトは話す。

 

「──あの2匹には、まだ話していないんだけど、前の館長さんは数か月前、亡くなったんだ」

 

 ───とある早朝、博物館から前の館長が207番道路に向かっていたところがノネトが見た最後の姿だった。雪崩に巻き込まれて亡くなったらしい。

 

「ロコンとコジョフーは、そのことに薄々気が付いている思う、どうか優しくしてくれないか」

 

 トロナツはゆっくりと頷いた。

 

「───これ、ポケモンの化石かな?」

「これは! "たてのカセキ"」

 

 クオンが地層から何かを見つけていて、ノネトが急ぎ足で駆け寄り、そう言う。ノネトは荷物の中からカメラと手帳を取り出して、色々な角度からその化石を数枚撮り、手帳に何か書き記す。どうやらこの場所でポケモンの化石が見つかることは相当珍しい事だったようだ。

 


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