ポケットモンスター モノクローム   作:ラフィオル

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第22話 結末

 中央ホールにて、ならず者たちが1匹ずつボールに戻している姿が見かけられた。それにつられてるようにコールマと3人はポケモンを戻していた。

 

「本当に申し訳ない」

 

 コールマが3人に誤った。後々に分かったことだが、アーケオスはジムリーダーのノネトのポケモンだったらしい。まともな指示を出さずとも戦っていたことに、不思議と思っていたクオンは納得していた。

 

「それより操られているロコンとコジョフー、元に戻してよ!」

 

 トロナツはサメに2匹のことを話していた。しかし、サメの表情は強張る。

 

「本当に申し訳ねえ、それは出来ねえ!」

 

 サメは灰色のボールを手に取り、トロナツたちに見せていた。

 

『グレイボール』

下半分が白色、上半分は灰色で真ん中には『G』というイニシャルがついているボール。簡単に言えば絶対服従のボールで、投げたトレーナーの指示には逆らえず、そのポケモンの意思を抑え込む。長年の研究により"マスターボール"並みの捕獲率を持ち、トレーナーのポケモンをボールから奪うことも可能。欠点はポケモンをその場で逃がすことが出来ない。

 

「──そんな!」

 

 トロナツは気の滅入る声を出し、その場へ座り込んでいた。

 

 ──その頃ブイゼルは、転がっていたグレイボールを見つめる。中にはポケモンが入っている。ブイゼルはゆっくりと転がしつつグレイボールの外面を見ていた。

 

 全てのポケモンをボールへと戻し、静かであった中央ホールにイシツブテが現れていた。

 

「誰だよ、ポケモンを出したのは!」

「俺じゃねえぞ!」

「おい! 開いたままのボールが落ちてるぞ!」

「──開いたままのボール!?」

 

 クオンたちがそこへ向かうと、開いたままのボールとブイゼルが、また違ったボールに手を置いていた。急にボールからか、小さく変な音が鳴り、光りだす。光り終えると、同じく開いたままのボールとズバットがいた。

 

 ブイゼルは手提げカバンから、鉛筆とメモ帳を取り出し、何かを書き始めた。

 

『まかせて』

 

 その4文字を皆に見せていた。1匹1匹ボールから放たれるポケモンたちが外へ出ていく姿を皆は眺める。何故ブイゼルがという考えはあったが、任せてという言葉と、実際ボールから活き活きとしたポケモンを見てしまえば、何も言えなくなる。

 

「──確か、ボールの説明にポケモンの意思を抑え込むとかありましたよね? もしかしたらそれが原因ではないでしょうか?」

 

 コールマはそう呟いた。

 

 例えば、ポケモンの意思を抑え込むという部分が機能しなくなった場合、ポケモンは意思を持つことになり、絶対服従のボールとは矛盾する。つまり、そうなった場合の解決策がなくてはならない。──仮説に過ぎないが、中にいるポケモンが意思を持った場合、強制的にボールから弾かれるといった機能なら辻褄が合うが、ブイゼルが中のポケモンに意思を吹きかけたのか、それ以外の何かかは分からない。

 

 更に不思議なのは、クオンのガバイトにもボールを弄らせてみたが全く変化が起きなかった事。短時間で調べてみたところ、この芸当はブイゼルにしか出来ないようだった。

 

 ──ブイゼルは最後に2つのボールを残していた。ロコンとコジョフーが入るボールだ。ブイゼルは、2匹をボールから出した。うつろな表情で現れた2匹はふらふらとした足取りでコールマへ向かう。正確にはコールマの足元にいたタテトプスに。

 

「──やっと会えましたね」

 

 コールマからは大粒の涙が零れていたことにアトリエは、さり気なく気付いていた。

 

「───ここにいたのか」

 

 1階西側の廊下からヒューマが現れていた。片足に炎を纏ったルカリオが近くの植物に火をつける。

 

「すまない、"赤いひみつのコハク"を盗めなかった! 作戦の通りに博物館の半分だが火を付け終えた所だ、さあ逃げようか、サメ!」

「──好きな時に逃げればいいよヒューマ。丁度いい機会だ、またこの大人数で天狗になったお前を捻りつぶしてやるよ!」

 

 サメとヒューマが睨み合う。

 

「───作戦終了だ、ヒューマ、大人しく帰るぞ!」

 

 いつからそこにいたのか、出入り口でクウノトリが立っていた。

 

「それじゃあ、消火活動、頑張って」

 

 1つ捨て台詞を残し、2人は夜の街並みに同化していった。

 

 

 ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 時計の長い針はもうすぐ一番下に差し掛かっていた。

 

「消防には電話はしたのか?」

「──しましたけど、この火の勢いは」

 

 博物館の西側は焼け焦がすような火の海となっていた。ポケモンの技を使い火の巡りを遅らせようとしたが無理があることに気が付いた。コールマは覚悟をし指揮をとった。

 

「──西側にある展示物を1つでも多く外へ運んでください!」

 

 苦渋の選択だったが、命を別として、これより優先なことはない。この声に、クオンたち、ならず者たち、ポケモンたちは一致団結した。バケツリレーのように展示物を運び、この時、皆は火事場の馬鹿力だったのか、燃えていない西側の展示物をあっという間に運び終えていた。コールマの覚悟から、ここまでの時間はたった数分くらいである。

 

「皆! 無事か!」

 

 大きく一息ついている時、ノネトがやってきた。その背後には警察関係者であろう人々や消防隊が駆けつけていた。その時だった、これから起きる出来事は、アトリエは今でも忘れないという。どうしてと聞かれると、アトリエはいつもこう答える。

 

『運命だった』

 

 ───嫌な音が聞こえた、それは何故か誰もがそう思う不快な音、後ろを振り返り博物館の西側が崩れていることに気が付いた。それと同時に聞こえる声。

 

「タテトプス?」

 

 それはコールマの声だった。

 

 

 ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 朝になり、アトリエは博物館に歩いていく。焦げた色が所々に目立つ半壊した化石博物館、その前に立ち入り禁止と書かれたロープ。

 

 ならず者たちは、主犯格に脅されてなど些細な命令に従っていたなど、あまり法に触れることはしていないという判断をされて、罪はかなり軽くなると警察関係者から聞かされた。

 

 博物館から運び出した展示物は今は、ジムの倉庫に眠っている。コールマも今はジムの中で暮らしている。

 

「クオン、トロナツ? なんでそんなとこにいるの?」

 

 アトリエは、博物館近くの小川を歩いていると、クオンとトロナツ、ノネトがいた。

 

「──私も一緒にいたいから待って」

 

 アトリエは3人の元へ走り、流れて遠くにいくものに別れを告げた。

 


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