ポケットモンスター モノクローム   作:ラフィオル

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第7話 白黒のバトル

 カイズがトロナツがいたベンチに座っていて、クオンの向こうにトロナツがいた。トロナツは、自信に満ちた表情で立っていて、少しクオンは考える。

 

 彼のことを知っている中年男性は、『強そうなブイゼル』としか言っていない。果たしてその通りであるのか。それともトレーナーが強いのか。

 

「俺の仇を取ってくれ!」

 

 ベンチからは、カイズの声が聞こえる。無傷なガバイトにブイゼルが立ちはだかった。

 

 ガバイトという"ドラゴンタイプ"のポケモンは、高い能力を持っている。それに対して、ブイゼルというポケモンは、水辺でよく見かけるような普通のポケモン。

 

 ──能力差で、ガバイトが断然有利である。

 

 ◆ ◇ ◆ ◇

 

「ガバイト、"きりさく"!」

 

 左手の爪を光らせてガバイトは、ブイゼルへ距離を詰める。

 クオンは、ガバイトに地面をたたき割れと指示し、その声はフィールド中央にいたガバイトに届き、目の前の地面を光った爪で切り裂いた。

 

「ガバイト、"ドラゴンクロー"!」

 

 ガバイトは右手の爪で地面から飛び上がっていた多くの土の塊を、ブイゼルへ飛ばす。最初に指示から、ここまで数秒の出来事、クオンとガバイトの信頼から成せる戦い方である。クオンは確信する、ブイゼルは避けきれないと。

 

「ブイゼル、ガバイトの背後に回るよ、"みずでっぽう"で飛び上がって!」

 

 向かってくる土の塊に背を向けて、ブイゼルは真下の地面に"みずでっぽう"を当てる。するとブイゼルは水の勢いで、ゆっくりと宙に浮いていた。とある飛行器具をつけたように空高く舞っていて、襲い掛かる土の塊はブイゼルの下を通り過ぎていた。

 

「──ガバイト! "ドラゴンクロー"で反撃!」

 

 ガバイトに詰め掛かるブイゼルに気付き、クオンが遅れて指示をする。

 

「ブイゼル、"でんこうせっか"!」

 

 ほぼ同時にトロナツもブイゼルに指示。ブイゼルの素早い攻撃がガバイトへ当たった。ガバイトは体をふらつかせながらも、目でブイゼルを捉えていて、"ドラゴンクロー"を振るった。ガバイトの思わぬ反撃を予測していたようにブイゼルは、その素早さで、既にガバイトの間合いから離れている。

 

 反撃が不発になってか、悔しそうにガバイトは小さく地団駄を踏む。クオンも少し顔が強張る。

 

   * * *

 

 そんな方法で避けるとは思わなかった。技術力で負けたと感じさせられたトレーナーで初めてな気がするな、この試合負けたくはない。

 

 ──流れを変えよう、まずは"りゅうせいぐん"で様子を見るか。

 

 クオンは、ガバイトに指示を放つ。

 

「ガバイト、"りゅうせいぐん"!」

 

 それを見ていたトロナツは、ある指示を放った。

 

「ブイゼル、"さきどり"!」

 

 上空から無数の隕石が見える、それはガバイトのもの、ではない。

『さきどり』という技は、相手の攻撃技を先に使う技、成功すると相手の攻撃技が無効化され、先取った技の威力が増す。つまり、トリッキーでリスクある技であって、使い手を選ぶ。

 

 クオンやガバイトが、普段から見慣れている"りゅうせいぐん"だったが、隕石の大きさや、速度が増していることが見るからに分かっていた。

 

 ガバイトは落ちてくる隕石全てを避けきれなかった。

 

 ──フィールドの中央には、ガバイトがうつぶせで倒れていた。トロナツの勝ちである。

 

「──素晴らしいバトルだったよ!」

 

 3人が声のした方向へ顔を向けると、少女と少年の2人がこっちに拍手を送っていた。クオンはその余裕がある対応に、少しいらつく。

 

 声をかけた少女の名前はコノミ、少し小柄な体格を誤魔化すように青色なワンピース、大きな白いハットを被る。隣にいる背の高い少年の名前はフウト、青いシャツに伊達メガネをかけて、無駄に長いようなイヤホンを耳に付けていた。

 

「ああ! 前大会優勝者と準優勝者の2人だ!」

 

 ──カイズが急に叫んでいた。

 

 つまり、前回テンガン杯優勝者、ラグラージ使いのコノミ。前回準優勝者、グレイシア使いのフウト。列記とした実力者の2人だった。

 

「詳しい話は後で、とりあえずポケモンを回復させてから」

 

 コノミとフウトは、今大会にも参加していて、目立ったトレーナーをマークしていた。素晴らしいバトルというのは、2人がそれだけマークされるような、トレーナーだったと言えるだろう。

 

 

 ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 ポケモンセンターへ戻り、クオンとカイズはポケモンを回復させる。5人はテーブルを囲み座って、今大会の事で話し合う。ずっと1人旅をしていたクオンにとっては、あまり慣れていない状況であった為、他4人の会話を聞いている。

 

「はっきり言って今大会はレベルが低い、マークするようなトレーナーが少ないからな」

 

 フウトが腕を組み、顔をしかめて話す。

 

「数日この辺りで見回っていたんだけど、君たちと並ぶようなトレーナーはいなかったんだ」

 

 続くようにコノミが話していた。

 

 この大会に参加する実力者はほんの一握りなのであろう。クオンは、その会話を聞きながら、考え事をする。

 

 これなら、予選を容易に突破できるか、優勝を目指してみるのも、ありかもしれない。

 

「まあ、俺が優勝するけどな!」

 

 カイズが自信満々に言っていた。

 

「何を、優勝するのは俺だよ」

 

 業を煮やしたようにフウトが語気を強めて言っていた。流石にここで自分もそんなことを言う気はないが、言わないといけないのか。いや、深く考えすぎだ。

 

 ──そんな会話の中、ブイゼルがカバンの中から、鉛筆とメモ帳を取り出す。

 

「そのブイゼルって文字を書くの?」

 

 コノミが興味本位でトロナツに聞く、そして『ポケモン図鑑』を持ちブイゼルに近寄る。

 

「ちょっと記録させてもらうよ」

 

 

『ポケモン図鑑』

全てのポケモンの詳細が載っている便利な機械で、シンオウ地方なら、ヒノキア博士から認められたトレーナーが貰うことが出来る。新発見などを記録する特有のポケモン図鑑も存在する。

 

「──普通のブイゼルはこういったことはしないけど」

 

 トロナツは、後ろめたさを感じながら言葉を呟いた。

 

「知ってる、だから珍しいと思って、撮っていたんだ!」

 

 コノミが持つポケモン図鑑には、撮影機能が備わっていて、ブイゼルが鉛筆を走らせている瞬間をパシャパシャと撮っていた。こうやって、新種のポケモンや新発見が証明されていくのだろう。

 

 コノミとフウトの2人はヒノキア博士の助手である。数年前までは、博士からポケモン図鑑を託されたトレーナーであったが、お互い幼いころに憧れた夢を諦め、博士の助手としてシンオウ地方を渡り歩き、珍しいポケモンを記録している。

 

「確かヒノキア博士って、短気で怖いとか話に聞くけど、大丈夫なのか?」

 

 カイズが言う。シンオウ地方ではその名を知らぬ者などいないと言われる人物だが、稀に過激な発言をすることでも有名である。

 

「根はいい人だって知ってるから、苦になんないよ」

「───本当に実力あるトレーナーはいなかったんですか?」

 

 クオンは、言葉を発した。

 

「セトントは当日に来るとか言ってたからな、そう思っても仕方がないぜ!」

「ああ、いなかったよ」

 

 フウトが言葉を返す。

 

「──1人だけ、心当たりがある」

 

 コノミはそう呟いて、気味の悪いアブソルを連れたトレーナーと話した。

 

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