アイドル部短編集   作:F.ヴィンケル

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ついカッとなって書きました。



花京院ちえり観察日記

花京院ちえり。

 

彼女は学園の人気者である。

 

見たものを虜にする綺麗な瞳に、愛くるしい笑顔。

性格もすごく明るく、とろける様な声で誰にでも気さくに話しかけていく社交性。

更にスタイルはモデル顔負けで、運動神経も抜群。

しかも、あの『花京院』と言う名家の出身だ。

 

そんな『神』の化身のような彼女には唯一つの欠点がある。

それは、勉学が苦手なところだ。

苦手、と言うか恐らく勉強すれば出来るのだが、本人にそちらの興味が全く無いのだろう。

その唯一の欠点が彼女の人間味を醸し出し、彼女の人気を一層引き出していた。

 

まるで『神』が愛されるためだけに作った存在。

そんな彼女が他人から嫌われるわけが無い。

羨ましがられる事はあるのだが、『花京院ちえり』と接した人は、彼女を妬む事が無いのだ。

彼女と接した人は、皆彼女との楽しいひと時を過ごす。

 

それはまるで空想上の存在。

『人』に笑顔をと癒しを与える存在。

『人』に愛された憧れの存在。

 

しかし、私は知っている。

 

『神』が愛される為に作ったと言われる存在の彼女。

 

そして、皆は知らない。

 

『神』が作ったように魅せている事を。

 

恐らく彼女の事で皆が『神』から授けたと言われているものはその綺麗な瞳だけであろう。

 

私は知っている。

 

彼女が誰にも知られない様にいつも並ならぬ努力をしている事を。

人気者の彼女は、いつも放課後の予定はいっぱいだ。

だから毎日時間が取れるのは早朝だけ。

彼女は毎日朝早くから、自宅の敷地内で軽く一時間ほど運動をして、発生練習、それから身嗜みの確認、笑顔の練習を行なっている。

例え体調を崩していても、必ず日課を行う。

 

身体が動かなくても無理やり引きずり、声が出なくても口を開き、倒れそうな顔をしながら笑顔を作る。

 

少なくとも、私と出会ってからは一回もその日課が止まったことない。

 

ずっと『観察』してきたから間違いない。

そうして彼女は他人に神の産物を魅せてきた。

 

私だけが知っている。

 

いや、もしかしたら私以外の10人と一部の先生方は知ってるかも知れない。

 

しかし、他の方よりも私の方が『花京院ちえり』について詳しいと自負している。

 

何故かって?

 

それは私が1番彼女の事を『観察』しているからである。

 

しかし、ずっと『彼女』を『観察』してきたが、私にはずっと解らない事がある。

それは私が彼女の観察を初めた理由なのだが、未だに答えが出ない。

それは簡単な疑問で、簡単が故に難しい疑問だ。

 

彼女は何故、ここまで人に『魅』せようとするのか。

 

彼女に別に暗い過去があるわけでは無い。

家族仲も悪いわでもなく、友人関係のトラブルもあったわけでは無い。

 

そんな事は既に『洗い』済みだ。

 

では、何故か。

 

それが解らない。

 

私が『花京院ちえり』を『観察』し初めて随分経つが、私は未だに一ミリの理解が出来ずにいた。

 

他人に愛されたい?

他人に注目されたい?

他人より優位な立場にいたい?

 

否、否、否である。

どれもこれも当てはまらない。

どんなに考えても『人』の理解は出来ない。

それはそうだ。

今だに存在が確認されていない生物や、用途がわからない生物の機能等存在する。

それと同じ様に、『人』の心理状況等未知の領域だ。

それに私は心理学者では無く、研究者だ。

いや、この場合は探求者になるのだろうか。

存外本人に聞いたらあっさり答えてくれそうだが、それでは駄目だ。

 

探求者ならば、自分で答えを見つけなければ面白くない。

 

だから、これからもしっかりと『観察』続けて行こう。

 

私の可愛い『耳』と『目』を使って。

 

 

ーーーー

 

「……ふぅ」

 

ノートを閉じて、軽く目を閉じて背伸びする。

もうすぐ約束の時間だ。

ノートを鞄にしまうと、私は席を離れて教室を出る。

先に待ち合わせ場所である下駄箱に着くと、置いてある姿見で軽く身嗜みを整える。

 

「良し。今日も髪の毛はさらさらです!」

「ピノちゃーん!お待たせー!」

 

私を呼ぶ、コロコロとした可愛らしい声に振り向くと、軽く手を振りながらちえりお姉ちゃんが小走りにこちらに向かって来ました。

 

「ごめんね、待った?」

「わたくしも今来たところですわ、ちえりお姉ちゃん」

「わぁお、ピノちゃん女ったらしい〜」

「皆様がいる場所で失礼な事言わないでくれませんか!?」

 

少し怒った様に言うと、ちえりお姉ちゃんは悪ガキの様に「にしし」と笑って頭を撫でて来た。

 

「むぅ、子供扱いしてぇー」

「ごめんごめん、じゃあタピオカのお店行こうか、風紀委員長に見つかる前に」

 

そう言うと、ちえりお姉ちゃんは私の手を引っ張り校門へと向かう。

私も内心呆れた様な顔を作り、昂る気持ちを表情に出さず付いて行く。

この昂りは恐らくタピオカを飲めるからだろう。

ちえりお姉ちゃんの横顔を『観察』しながら、私達は夕焼けの後門を後にした。




最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
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