fate/scholar of the first sin   作:かまらん

1 / 1
第1話 召喚

 

7騎と7騎の英霊達が争う聖杯大戦。それは過去の聖杯戦争とは明確的に異例の中の異例であった。

 

そして、選ばれる英霊もこの戦争に沿うかの様に異例だ。

 

神の時代を生きていた者達、英霊とは程遠い存在である殺人鬼。歴史に悪名を被せられた英霊。そして屈折した願いと、性格を持った者。

 

そして、人とはかけ離れた異形の姿を有する者。

 

故に聖杯大戦は純粋な力だけで勝敗が喫する訳ではなく、如何なる戦術、戦略により勝利を掴まなければならない。

そして、この大戦を様々な思惑を持ってして挑む英霊とそのマスター達。

 

混沌とするであろう、この大戦は誰もが先の結末を見据えることなど出来なかった。

 

 

赤の陣営であり、”実質”的にその統括している男シロウ・コトミネは自分と契約した赤のアサシンと共に、炎に包まれた”異形”の目の前へと立っていた。

 

英霊であるアサシンは兎も角、生身の魔術師であるシロウは目の前の異形に億劫する事なく、微笑みかける。

 

「つまり貴方…キャスターは別世界の英霊という事ですね」

 

「そうなるだろう…私を英雄と呼ぶにはいささか業を背負いすぎているが」

シロウの問いに応える、異形の声はその姿相応に不気味に教会中を響き渡る。だが、アサシンもシロウもその声に気も留めない。

 

異形はかつての不死人の英雄とは違い、喜怒哀楽、驚愕も恐怖もしない二人に若干の興醒めを覚えながら、自分を包み込んでいた業火を消し去る。

無味乾燥な印象である彼等ではあるが、敵ではないと判断したのだ。

 

「どうやら、私達への警戒を解いて頂けたようです。私としてもキャスター、貴方の力を貸して頂ければ聖杯大戦の勝利も夢ではない」

 

「夢ではないか…。願いを叶える願望器。それこそが夢の様なもの。我を呼びし者よ、お前は信じているのか?その存在とやらを」

 

異形の疑問に、アサシンが睨み返す。それはマスターを侮辱しているように聞こえ、そして一向に従僕の意を示さない異形に対しての苛立ち故であった。

 

「キャスター。お前自身の夢の様な姿の割には、聖杯の存在には懐疑的だな?大聖杯の力ならば、その姿からも解放されるやもしれんぞ?」

 

「フフッ。それならば幸運だ。しかし全てを失った我に果たして、聖杯とやらは願いに応えてくれるだろうか。いや、私にとってはその様なものが願いではないが」

 

アサシンの煽りに異形は姿に似合わない笑みを含みながら、話を続けた。その異形の目と思しき赤い光はシロウを捉える。ただ真っ直ぐに見据えていた。

 

「私を呼びし者よ。この苦難であろう戦争に勝ち、何を求める。お前はその先を目にしたいのか?」

 

「全人類の救済。そして、痛みのない世界を創り出す事」

 

異形の問いに、シロウ・コトミネは即答した。優男とかけ離れた、低くそして芯の通った声。それは狂気にも似た信念を含んだ、まさにシロウの渇望の答えであった。

 

「…それがお前の答えか。成る程、興味深い。苦難へと挑む貴公の戦い、私も参加するとしよう」

 

異形はシロウ・コトミネの姿に、かつての不死人の姿が重なる。火と闇、それとは違う第三の道へと歩みだし、因果へと抗うべく自分自身と同じ世界の理へと探求していった者。

 

故にシロウの戦争の結末を知りたくなった異形は、大戦争の参加を表明した。

 

「ありがとうございます。キャスター。では共に戦いましょう」

 

「…やっとか。正直、まだゴネを捏ねるならばキャスター、お前を殺すところであったぞ?」

 

「成る程、アサシンの名に恥じる事ない冷徹か。これがこの世界のやり取りというものなのだな」

 

アサシンの物騒な言葉に自覚のある煽りであるかは不明だが、異形は答える。

痺れを切らしていたアサシンにとって、その言葉は殺意を芽生えさせるには充分であり、鬼の形相で手をかざそうとした彼女をシロウは、苦笑いで静止する。

 

「まぁまぁ。落ち着いてくださいアサシン。…そういえば、キャスター。貴方の名前を聞いていなかった。嫌と言うならば聞きませんが、どうか教えてくださりませんか?」

 

 

真名。英霊の本来の名だ。聖杯戦争にとっては、真名は秘匿するべき情報であり、名で弱点が把握でき、攻略するにも重要な鍵となる。

それを教えるとなれば、心の中底から信頼できるマスターだけだ。

 

だが、キャスターは例外だ。違う世界の英霊ならば秘匿にする必要が全く無いからだ。

 

「私の名はアンディール。かつて因果に挑み、果たせず、ただ世界の行く末を見据える者」

 

赤の陣営である、赤のキャスター。それは、かつて王であった者の兄であり、人に課せられた呪いを卓越すべく、世界の理へと足を踏み入れた者。

哀れな原罪の探求者であった。

 

 

◇◇◇

 

 

「あんたが、こちらのキャスター…て事で良いんだな?」

 

「その通りだ。槍騎士よ」

「槍持ってるけどランサーじゃねぇ。ライダーと呼んでくれ」

「しかし魔術師は例外を除き、大抵が道徳心が欠けた者ばかりが相場だが、異形に成り果てた者とは珍しい」

 

白の壁で囲まれた庭園。庭園にしては彩がなく、その場はただ無尽蔵に芝生が埋め込まれているだけであった。

そして、庭園の中にいる者達は赤の英霊達。ライダーとアーチャー、キャスターであった。

ライダーとアーチャーの二人はその身におおよそ、人とはかけ離れた力を宿してはいるものの姿は等身大の人間と同じであり、それ故にキャスターは浮いていた。

 

そんな三人がしていた事は情報のやり取りだ。異世界の英霊。聖杯大戦という異例の戦い。

個人の力ではなく、各個の連携が想定されるこの戦争に、三人は誰もが情報の共有が必要だと感じたのだ。

 

「まぁまぁ姐さん、姿はどうであれ今は味方なんだ。宜しく頼むぜ」

「その呼び方はよせライダー」

 

二人の呼びかけあいに対して、キャスターは彼らがお互いに認識のある英霊達と認識するにはそう時間が掛からなかった。更には彼らの有する力に対して、キャスターは興味を抱く。

 

「成る程。人間というには程遠い強大で、化け物と呼ぶには余りにも神聖な力を持っている。ソウルと類似した力…そうか、お前達は神話の存在というべきか」

 

彼の言葉にアーチャーは目を見開く。世界が異なり、知識も全くといって無垢であるキャスターの考察に、彼女は驚愕した。

 

「…ほう、確かお前はこの世界の歴史も、そして聖杯戦争によって与えられた知識も皆無だそうだな」

「そうだ、今は知らぬ」

「…それにしてはやけに察しのある奴だ。その答えは半分合っている。だが、真名を明かしはしない。…まだ信頼に値する者かわからないからな」

 

中性的に喋るアーチャー。その獣にも似た鋭い瞳は、彼女があらゆる修羅場を乗り越えてきた者であるとキャスターは把握した。

その気丈な振る舞いの彼女に、キャスターは静かに笑いを響かせる。

 

「俺は別に名前を明かしていいが」

「…いや、まだ明かさなくて良い。いずれ知る機会がやってくるのだから。望もうが、望むまいが」

 

ライダーの申し出にキャスターは多少間を空きながらも断った。その含みのある言葉は、2人に疑問を抱かせるものであったが、彼らは聖杯戦争の上での同志。キャスターの抱く思惑を追求する事は無かった。

 

3人は会話も済んだところで、それぞれが与えられた部屋へと向かう。シロウが話した通りだとすれば、召喚する英霊はランサーのみである。

バーサーカーは過剰な狂気に囚われ、地下で拘束。セイバーは召喚者と共に、独自で行動しているとの事。現在の戦力では2騎の喪失は痛手であるが、シロウはランサーとして召喚する英霊は強大且つ雄大な者だという。

 

故に召喚する手間もかかる為に、各自の英霊達には時間が有り余るほどにある。キャスターの役割は拠点の防衛を構築する事が優先的である。

しかしシロウは英霊全員が召喚された後に行動を移してほしいという要望があるために、キャスターは現時点でやるべき事は無かった。

部屋へと戻ったキャスター。姿を小さくし、未だなお燃え続ける彼は1人、思いに耽っていた。

 

火継ぎの為”だけに”造られた国。その国の王子達は創国の経緯故に火継を目的として、王の資格を得るが為に力を付けていた。

だが、キャスターは知っていた。火継ぎの繰り返しと、世界に来るべき終末の事実を。

だからこそ彼は2人の王子に魔術の師として暗躍し、密かに火継の懐疑について話してきた。だがその途中でキャスターの意識は途絶え、気付くと別世界で英霊として召喚された。

 

道半ばだったが為に、あの国の辿った道を知りたかった。果たして、自身の行動に意味はあったのか。王子達も”あの不死人”と同じく火継を否定してくれたのか。

 

幾多に渡って様々な方法を試したが、結局は何も果たすことができなかったキャスター。彼の最後の賭けが本当に人々の為になれば良かったが、それを知る由もない。

 

その鬱々しい思考の中、思い出されるのは大昔、自身と同様の道へと辿った不死人。呪いを克服し、火と闇ではない第3の道へと望んだ彼。

しかしその後の行方は分からず、彼が何を果たしたかも見当がつかなかった。

 

「焚べる者よ。お前ならばどう選択した?」

 

1人問いかけたキャスターであったが返ってきたのは静かに燃える、自身の炎の音ばかりであった。

 

 




最近、2を始めましたの書きたくなりました。
ロスリック最初の賢者がアンディールというのは作者の独自解釈です。ソウルの奔流テキストで関係あるのかも…と考えた所存です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。