執事が大好きなお嬢様は、どうにかして執事に構ってもらいたい。 作:龍宮院奏
今回少しだけ、紗夜と日菜が……になります。
暗がりの地下道を、携帯の小さな光を頼りに手探り状態で進んでいく。周りの石造りの壁の何処かを押したりすれば、何か扉が開いたりするのかと思ったが、
「そんな簡単に起きませんよね……」
案の定、そんな奇跡的な事は起こることは無かった。
でもこんな経験、滅多にないな。この状況に関心を覚えて、逆に好奇心が巻き上がってきた。
「この展開、今度小説に取り入れようっと」
本職の作家の本能で携帯のメモ機能に残していた。
それでも問題が残るなら携帯のバッテリーと、この状況を引き起こした、
「どっかに寝る場所無いのかな?」
のんきに睡眠の確保の事を考えていた。でも周りに休めそうな場所も無ければ、一寸先の道すら判らない道があるだけ。
「でも、進めば何とかなるでしょ」
昔みたアニメで、『成せば大抵、何とか成る』って言っていたことだし、取り敢えず前に進むことにした。
そして、今のこの状況で全く関係の無いのだが、
「夕飯、何作ろうかな?」
朝が遅くて昼と半ば一緒みたいだったからな。それに氷川姉も帰ってくることだし、日菜と同じかな味の好み。いやでも、双子だからって一緒じゃないか……。
それにしても、本当に今日の夕飯は何にしようかな?
地下道で迷子に成っているにも関わらず、氷川姉妹の夕飯について頭を悩ましていた。
姉の部屋を飛び出した日菜は一度自室に戻り、鼻歌交じりに準備を初めた。
「え〜っと、まず懐中電灯は携帯が有るから要らないでしょ。あ、そうだ。お菓子持ってこう」
今頃朱那、暗闇の中でお腹空いてるだろうし。日菜ちゃんは優しいな。
まるで遠足に向かうかのように楽しそうに準備をしているが、遠足には到底持って行かないような物を、鍵付きの引き出しからオモチャを選ぶように笑顔で選んでいた。
「後はスタンガンと…」
何種類もある物の中から選びぬかれた、一個を手に持って、正常に起動するかを確認する。
「あ、でもこれじゃ朱那に近づかないと行けないから、バレたら危ないかな〜」
バチバチと音を立てて光るスタンガンを見つめながら、何が良いのか考えていくと。
「あ、そうだ〜。これが合った!」
一見、銃口が大きいオモチャの銃にしか見えないのだが、実際は、
「えいっ」
銃口からワイヤーが勢いよく伸び、部屋の壁に張り付いた。
「うん、こっちの方がるんって来る」
そうこれは、スタンガンの感電する部分がワイヤーで伸びるタイプ。これなら、遠くからでも朱那に気づかれること無く確保できるから良いかな。
「これは、念の為に持っていこうっと」
引き出しの底の部分を取り外し、そこからある物を取り出し持っていく物をまとめた小さなウエストポーチにしまう。
「これで朱那を捕まえる、準備は万全。それじゃあ、待ってね……、いまからムカエニイクカラ……」
変わらず日菜の瞳には、ブラックホールが宿っていた。
歩き始めてどれくらい経ったのだろう、一向に出口にたどり着ける気配が無い。途中で、小石を拾って壁に印をつけて進めば迷わないと考えていたけれど、暗闇の中で印を付けたもんだから何処に書いたか分からなかった。
「あ〜…、疲れた…。こんな事なら、日菜と大人しくゲームしてれば良かった…」
数十分前の自分に愚痴を言いつつ、よろよろと地下道を歩き進める。
それにしても、お腹空いたな……、てか眠い。早く布団に入って寝たい……。帰れる保証が段々と薄れ始めてきたせいか、現実逃避に走っていく。
「俺の推しのフィギュア…、意外と高く売れたな…」
日菜によってネット転売された、俺の推しのフィギュア達は割と高価格で売買されて、買った時と同じ金額が帰ってくることは無かったが、半分以上は帰ってきた。
「あのお金で、今度何買おうかな……」
今欲しい物は特に無いし、それに欲しいと言える物が金で手に入る物でも無いので無理だった。何が欲しいかって、平穏な日常…、推しと暮らせていた日常が欲しい…。
ぼんやりと頭の中で考えながら歩いていると、何か躓き転んでしまった。
「ふんぎゃ…、痛てて…。何だ急に…」
久しぶり転んで怪我をした、膝から少しだけ出血していた。立ち上がって前を見ると、大きな金属製の扉が有った。
「これは…、魔王とか迷宮の何か強い魔物が居る部屋の扉…」
転んだ拍子に頭のネジが旅行に出掛けたらしく、発送が明後日を通り越して明々後日の方に向かっていた。
明らかに怪しい雰囲気は有ったのだが、どうせ他に行く道も無かったので扉に手を掛け引っ張る。ゆっくりとだが、ギシギシと音を立てて扉が開いていき中は、
「うわぁ…、これはまた…」
魔王やら強い魔物が出ると思ったら、大きな本棚と楽器の機材らしきものが並ぶ部屋だった。
「おいおい…、執事を雇う金持ちって何でもありかよ…」
本棚には分厚背表紙に何語か解らない文字で書かれた本が敷き詰められていた。そんな本棚が数え切れいないほど。
部屋の中心には、スピーカーの様な物や、ケーブル?の様な物まで散乱して置いてあった。散乱した物の中に、一本の淡い水色のギターが置いてあった。
「このギター、日菜の瞳の色にそっくりだな…」
じっとそんなギターを見つめていると、何処かから気配を感じてきた。慌てて、部屋の二階の本棚へ続く梯子を登り、寝そべって身を潜めた。
目的地のあの場所に向かう途中で、あの日の事を思い出しながら歩いていた。
私とお姉ちゃんがまだ小さかった頃、雨の日に私が遊びたいって駄々を捏ねてお姉ちゃんを困らせていた。
それを見かねたお姉ちゃんは、
『それじゃあ、日菜。お家の中でかくれんぼしましょ』
『かくれんぼ!する!』
私を何とか楽しませるために提案してくれたのが『かくれんぼ』だった。
『どっちが鬼さん、やるの?』
『お姉ちゃんがやってあげるは、だから日菜今の内に隠れなさい』
『わ〜い、それじゃあ隠れる』
数を数え始めたお姉ちゃんから、隠れるために家の中を走っていった。
『どこが良いのかな〜』
どこに隠れてもきっとお姉ちゃんなら見つけてしまう、そう思って色んな部屋を見ていった。
『これじゃあ、お姉ちゃんに見つかっちゃうよ』
諦めかけて、廊下の壁に寄り掛かっていると、ミシミシ、
『あれ?何この音?』
不思議な音が聞こえてきた。
『この先、何か有るのかな』
不思議思った私は近くにあった椅子を持ってきて、音のする方へ近づけて覗いてみた。
すると、椅子の上で無理にバランスを取っていたせいか、
『あ、え、お姉ちゃん〜』
バランスを崩して、音のする壁の向こう側へと落ちてしまった。
壁の向こう側で、すべり台みたいなものに乗ってすごい勢いで滑っていった。
『お姉ちゃん〜…、あれ、あははは。うわぁ〜』
最初はすごく怖かったけど、途中から今までに乗ったすべり台よりも速く滑るのが楽しかった。
『うんぎゃ、あれ…?もうおしまい?』
あっという間に、すべり台は終わってしまい。なにも見えない、まっくらな所に来ていた。
『お姉ちゃん〜、お姉ちゃん〜』
周りはまっくらでなにも見えなくて、怖かった。
『お姉ちゃん……、どこ……?』
怖くなって、思わず泣き出してしまった。暗くて怖いし、寒いし……。
『お姉ちゃん〜…』
只々その場で泣き続けていた。が、何時しか泣くことをやめて、周りを手で確認しながらゆっくりと歩いていった。
『お姉ちゃんが、きっと見つけてくれる……』
いつも一緒に居て、かっこよくて、頼りになるお姉ちゃんだから、すぐに見つけてくれる。
心の中で、お姉ちゃんとの思い出を思い出していると自然と怖くなくっていた。
たくさん歩いた先には、大きな大きな扉があった。扉には取っ手がついていたけれど、手を伸ばしても、
『あと、ちょっと……』
飛び跳ねたり、走った勢いで飛べば掴めると思ったが届かず。繰り返しチャレンジしてみたけれど、後一歩の所で届かない。
『お姉ちゃんが…、待ってるもん…』
大好きなお姉ちゃんが、きっと扉の向こう側に行けば会える気がするもん。
暗がりの怖い道を少しだけ戻っていき、全速力で走っていき、
『おりゃ〜』
扉の取っ手を掴んだが、
『あ、あわわわ』
勢いがあり過ぎたせいか、扉が開いて壁に挟まれそうになった。間一髪で手を離し、着地をする。
『ひなちゃん、大成功!』
ようやく、扉の向こう側に行くことが出来た。
『日菜!』
『お姉ちゃん』
信じていたとおり、扉の向こうには大好きなお姉ちゃんが居た。
『お姉ちゃんは、どうやって……』
どうやってここまでやって来たのか聞こうとすると、
『日菜が……、どこにも居ないから……居なくなっちゃったかと思った……』
大粒の涙を流しながら、私を抱きしめながら泣いていた。
そんなお姉ちゃんをみて安心したのか私も、
『お姉ちゃん……、怖かったよ……』
ここまで来るのに抑え込んでいた、怖かった気持ちがどっと溢れ出して泣いてしまった。
その後、二人して大声で泣いて居る所を母さんに見つけられて、こっ酷く叱られたんだっけ。
「ふふ、まさかあの時の事が、今にまた起こるだなんて」
まるで神様が仕込んだイタズラか?それともただの偶然か?
「でも、神様のイタズラの方がるんって来るな」
過去の私を思い出しながら、もう一度暗がりのすべり台へと乗り込んだ。
今回は何時よりも長くて…、段々と勢いが出てしまって…。
でも、紗夜さんと日菜ちゃんのロリ時代という。初の試みを。
もし何かあった時は、ロリの時大のエピソードも良いかもですね。
やっぱり小さかった頃のさよひなも、それはそれで可愛かったんでしょうね。
もちろん、今のさよひなもとてつもなく尊いですけど。
今回もご閲覧ありがとうございました。
感想などお待ちしております。