執事が大好きなお嬢様は、どうにかして執事に構ってもらいたい。 作:龍宮院奏
「それで、俺は何をされるんだ……」
俺から勝負をふってしまった以上は、約束を守らなくてはいけない。覚悟を決めて望みを聞くことにした。
「え〜、何しようかな〜?色々と有るんだよ〜、例えば〜」
側に日菜が持ってきたであろうカバンをゴソゴソと漁りはじめ、
「このスタンガンで朱那を眠らせて、あんな事や、こんな事をしても良いし〜」
これは……、死にはしなくても、世間一般的に死ぬ奴なのでは……。
「それか〜、朱那から自発的にしてもらえるように、’’コレ’’盛っても良いんだよ〜」
「あーっと……」
スタンガンもビックリしたけど……、謎の液体の入った瓶……。これには俺も驚くよ。
「って、怖すぎだろ!おま、それ何?何の薬品?人体にアウトなヤツ?」
「うん?ちょっと待ってね……」
スマホを取り出し、何やら調べ始めた。
「え〜とね、まずこれは飲んでも大丈夫だって。あ、でも、これ飲む時の量を間違えなきゃだって」
「待て待て、全然安心できないんだけど。飲む量間違えたら、逆にどうなるのさ」
「う〜ん……」
沈黙が場を支配し、
「わかんない!でも、きっとるんってくると思うよ!」
「そうか……」
自然と体から魂が抜け落ちるような、脱力感が体を襲ってきた。
「でも今日は、さっき十分に堪能できたから使わないでおくね」
さっき耳と首筋を食べていましたからね。
「そうですか……、その手に持ったスタンガンと怪しい瓶に入った薬品を使わないでくれて感謝します」
「何でそんな棒読みなの……」
ぷくっと頬を膨らませる日菜。こういう所は、普通に女の子で可愛いんだけどな。
「もしかして、使ってほしいのかな〜」
瓶の方を俺の頬に押し当てて、スタンガンを首筋に突きつけてきた。
「めっそうもございません、お嬢様のお心遣いに感謝申し上げます」
本当に自分のプライドが弱すぎて、泣けてくる。
「それじゃあ、キッチリ遊んでよね。朱那!」
本当にこのお嬢様の笑顔は太陽みたいで、輝きが眩しかった。
地下の本棚の部屋の出方と入り方を教えてもらいながら、部屋を後にして時間を見ると夕飯時には丁度良い時間だった。
「夕飯は……、パスタにでもするか……」
時間があまり無かったのと、ふとパスタが食べたかったのでパスタに決めた。
「何パスタにするの?私、ミートソースが良い」
「じゃあ、それにするか」
「わ〜い、私の好きな物〜」
「作るのは……」
判りきっていた答えだが、
「私も一緒に作る!」
「だよな……」
こうして、日菜と一緒に時短ながらにパスタを作り、作っている途中に帰ってきた氷川姉に味見をしてもらいながら作った。
「ごちそうさまでした」
氷川姉に、これからこの屋敷に住むという事実を伝えると、
『お母さん達が、許可を出しているようでしたら……。分かりました……』
やはり『この不審人物』と言わんばかりに睨まれながら、了承された。了承を聞いた日菜ははしゃいでいたが、氷川姉はそれを見て溜め息をついて部屋に戻ってしまった。
食器を片付けを新しい自室に戻ると、休む暇も無く、
「さぁ、約束を果たしてもらおう!」
扉が音を立てて開き、日菜がお菓子を抱えてやって来た。夕飯もたらふく食べていたのに、まだ食べるのかよ。
「ちゃんとノックはしてくれ、それで何するんだ?」
「え〜とね〜」
持ってきたお菓子を一先ず部屋に置いてある、小さなテーブルに置いて部屋にある物見渡していた。
「そうだ、コレにする。さっき朱那がやってくれなかったから、今やる」
家から持ってきたゲーム機を指さしていた。
「分かった、今準備するから。箱の中にソフトがあるから、好きなの選んで良いぞ」
ゲーム機をテレビに繋げて、周辺機器も用意していると、やりたいものが決まったようで、
「じゃあ、これからやる」
持ってきたゲームを機会に入れて立ち上がるの待つ。待っている間に、お菓子の袋を明けて食べ始めていた。
「ゲームやる前から食べるのか」
「だって、待ち時間が長いんだもん」
チョコのお菓子を食べながら、渡したコントローラー弄る日菜。自分の隣を叩いているから、そこに座れということらしい。
「しばらく開いて無かったからな」
日菜の隣に座り、持ってきたお菓子を摘む。うん、意外と美味しい。
「あ、やっとついた〜」
画面を見ると、普段一人でやっているロボットのゲームだった。
「これからやるのか……、これかなり面倒くさいぞ」
「そうなの?何かパッケージの所に、朱那が好きそうな女の子の絵があったから」
「いや、これは普通に内容が良いから買ったの。そういうのじゃなくて」
全く、人が買うものが全部女の子を見るためでは無いのだ。確かに……、好きな子だけど。
「ふ〜ん、本当かな〜」
信用してもらえず、口をニマニマさせてすり寄ってきた。
「本当だよ、ほらやるんだろ」
日菜のコントローラーを借り、日菜専用のセーブポイントを作る。きっとこれからやりに来るなら、日菜の分が無いと困るだろうし。
「それで、最初からやってみるか?」
「え〜、最初は朱那のお手本見た〜い」
「俺の見てもつまらないぞ」
「だって〜、今はワタシのための時間だから〜。ワタシの見たいものを見せて〜」
「はぁ……、約束だもんな」
そう言うと、ご満悦の表情を浮かべて、また一つお菓子を食べていた。
「っつ、絶対に殲滅してやる。俺の専用機に傷つけやがって!」
「朱那、右!右から来てるって!」
「あれか、オラ喰らえ!」
「これも日菜ちゃんのアシストのおかげ」
「「イェーイ!」」
とハイタッチをして、仲良くはしゃいでいた。日菜の指示が意外と的確で、何時もなら一回は復帰しないと行けない所も、ノーコンティニューで進められている。案外、日菜がやったら強いんじゃないか……。
「日菜、お風呂空いたから」
「は〜い」
氷川姉が、扉をノックしてやって来た。日菜が見当たらないから、ここに来たようだ。
「じゃあ、お風呂行ってくる〜。あ、覗いちゃ駄目だよ〜」
「覗かないから、ゲームも止めておくから。はよ、入ってこい」
手で払うな動きをして、日菜を風呂へと向かわせた。日菜が部屋を出ると、今度は氷川姉が入ってきた。
「どうかしたか、氷川姉よ?」
「いえ、別にただ一つ言っておきたくて」
「おう、何だ?」
「もしも、日菜に何か有った場合……、貴方を絶対に許しませんから……」
目と目を合わせ、冷淡に、けれど固い意思をもった様な声で言われた。
「俺は、アイツに対して何かをする気は無いよ。逆に、俺のほうがされそうで怖いくらいだよ」
「そうですか……、だとしても……」
余程、日菜のことが心配なんだろうな。あれだけ、仲が悪そうに見えて意外と妹思いらしい。
「あぁ、何もしないし、逆にさせもしないよ」
一瞬驚いたようだが、
「俺も仕事で請け負ってるんだ。だから、そこらに居る魑魅魍魎共に、何かをさせる気もないよ」
それを伝えると、
「分かりました、では、これから氷川家の執事として宜しくお願いします」
氷川姉がお辞儀をしてきた。これには、流石に同じ様にお辞儀を慌ててした。
「では、私の方はこれで……。あ、そうだ」
部屋を出ていく時に、扉に手を掛けて一言。
「あんまりお菓子ばかり食べていると、肥えますよ……」
「……」
持ってきたお菓子の3分の1程を摘んでいたので、袋が散乱していた。それを見て、氷川姉は言ってきたようだった。
「肥えないから安心しろ。これでも、体は鍛えてるんだ」
「そうですか……、まぁご自由に……」
日菜も氷川姉もそうなんだが、何でこう笑った顔が悪魔みたいな怪しげな微笑みなんだろうな。そう思っている間に、氷川姉は出ていってしまった。
その後、風呂から帰ってきた日菜に『お姉ちゃんが来たよね、お姉ちゃんここに来たよね!』と直ぐにバレて、有ること無いことを聞かれて疲れた。注意を逸らすためにゲームをやらせて、その場を何とか逃げおおせた。
風呂から帰ってくる頃には、「行っけ〜」と半ば雑魚キャラ相手に完全無双状態であった。その様子をベッドで横になりなって、面白おかしく観戦していたら、
「すぅ……」
いつの間にか、疲れて眠ってしまった。お風呂で長湯していたせいか、かくれんぼの時に中途半端に眠っていたせいなのか、でもこればっかりは仕方ない……。
「やった〜!日菜ちゃんの完全勝利!見てた、今の見て……」
「すぅ……」
本当に何でこう、私がここぞって言う時に寝てるのかな。全く、主である私を差し置いて。
「今日はこれで二回目だね……」
さっきもそうだったけど、朱那の寝顔……。安心しきったと言わんばかりの顔していて、それに一度寝始めると中々起きないのだ。
「掛け布団も掛けないで、風引いちゃうよ」
冬の中頃で冷えてきているのに、全くだらしないんだから。
掛け布団を引き抜いて掛けてあげると、やっぱり寒かったようで。
「あったかい……」と呟いていた。
最初から自分で掛ければいいのに。掛けてからしばらくはもう一度ゲームをして過ごしていたが、
「何か飽きてきた……、今日はもう寝よう……」
けど、よく考えてみたら、『今日の残りの時間』をワタシにくれたんだ。閃きが頭を駆け巡り、時計を見て、
「それじゃあ、おやすみなさい……朱那」
朱那のベッドに入り込み、添い寝で寝ることにした。時計の針はまだ今日の残りの時間を示していたので、例え明日朱那が何と言おうと私が正しいのだから。
日菜との甘々回です、こんなの偶に良いかなと。
紗夜さん、何だかんだで日菜を心配しているようです。
それと、次回からは学校での話や、お仕事とかの話です。
これから更に日菜のヤンデレが加速したり、紗夜さんに変化が起きたりです。
それでは、今回も閲覧いただきありがとうございました。
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