執事が大好きなお嬢様は、どうにかして執事に構ってもらいたい。   作:龍宮院奏

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これから、原作キャラが増えていきます!


第1章非日常は嵐のように
第13話作家は非日常を始め、お嬢様は登校します。


 朝起きると自分の部屋で無いことに驚いたが、直ぐに引っ越して来たことを思い出して納得した。

「まぁ……、嫌でも納得するよね」

自分の部屋であれば、

「す〜、す〜」

と寝息を立てて眠っている女の子が、俺を抱きまくらにして寝てるということは無いんだから。

「はぁ……、頭が痛い……」

 これから漆月朱那は、『作家』と『執事』の二重生活をしていかなければ成らないのだった。

 

「おふぁ〜……、おはよう……」

朝食を作っていると、パジャマから着替えた日菜がやって来た。

「おはよう、日菜。寝癖立ってるぞ」

「え〜?じゃあ、後で直しておく〜」

まだ完全に起きていないようで、目が夢うつつだった。

「そうしておけ、その方が可愛いぞ」

まだ寝ぼけているんだから、これくらいは言っても問題は無いだろ。

「可愛い……」

あ、駄目だったか……、逆にまずかっ!

「可愛いの?ねぇ、私のこと可愛いって思ってるの?」

朝から急に抱きつかれる羽目になってしまった。

「可愛い……よ、日菜は可愛いよ……。だから、一旦離して……」

「何で〜、せっかく褒めてくれたんだよ。朝から朱那のおかげで、るんるん何だから!」

やっぱり俺が仕えるお嬢様は、良くも悪くも不思議な子だ。

 そうこうしていると、氷川姉がやって来た。氷川姉の方は、しっかりと身なりを整えた様だった。

「おはよう、氷川姉よ。お前はちゃんと身だしなみが整ってて、偉いな」

「おはようごさいます。何ですか、朝から急に?」

朝からやっぱり不機嫌なんだな、顔が怖いぞ。綺麗な顔してるんだから、笑ったほうが良いぞ。

「いや、日菜は寝癖だらけなのに、氷川姉はちゃんと整えてから来るんだな〜って」

「そういう事ですか、日菜の場合は少々面倒くさがりですから。仕方ないですよ」

褒められたことが少し嬉しかったのか、氷川姉の顔が明るくなった。

「私だって、ちゃんと整えられるもん!」

と言い残し、キッチンから出ていってしまった。

「はぁ〜、後で何とかするか……。そうだ、氷川姉よ」

「何ですか?」

出ていった日菜を放っておいて、朝食の準備を始める。だって、連れ戻すのに時間掛かりそうだから。

「飲み物とか飲むのに、自分のコップとか出しておいてくれるか?俺だと、判らないからさ」

「それくらいなら」

棚から自分たちのコップを出し、これから使う食器まで出してくれた。

「あ、ありがとな。食器まで出してくれて」

出してもらった食器に、目玉焼きとソーセージ。パンとサラダを盛り付けて。

「それじゃあ、朝食にするか」

「そうですね、日菜はまた後で来るでしょうし」

盛り付けた朝食を見ながら、サラッと言ってきた。

「お前は本当に日菜に冷たいんだから……。日菜〜、朝ごはん出来たぞ〜」

大抵こうして呼ぶと……、凄まじい音が向かってきた、ほら思った通り。

「早くご飯食べよ!」

いとも簡単に呼べるのだ、名付けて……、やっぱりやめておこう。自分が馬鹿に思えてきた。

 リビングに向かう日菜を見ると、

「今度はちゃんと、寝癖整えて来たんだな」

先程はねていた箇所が、綺麗に整えられていた。

「へへ〜ん、ちゃ〜んと整えましたとも」

Vサインを決めて、勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。

「お〜、偉いぞ。それに、可愛いぞ」

「えへへ……、ありがとう」

日菜も揃ったことで、ようやく朝食を全員でとった。

 

「そう言えば、日菜と氷川姉は学校違うのか?」

先程から気にはなっていたのだけれど、制服が二人共違うものだった。

「そうだよ、私が羽丘女子学園で」

「私は花咲川女子学園に通ってます」

それぞれが違う学校か〜。

「でも、女子校ね〜。何か氷川姉はモテそうだな、それで日菜は可愛がられてそう」

パンを食ながらそう言うと、

「な、そんな不純な事はないですから」

氷川姉は顔を真っ赤にして、反論してきた。

「いや、でもお前端正な顔してるし、性格も割とはっきりしてるからさ。どうなのかな〜って」

「本当にそんな事は無いですから!」

氷川姉に散々怒られてしまった。

「じゃあ、日菜は?何かそう言うの無いのか?友達とかで」

「うん〜とね、甘やかされてるのかは分からないけど?よく遊んだり、何だかんで楽しいよ」

日菜の方は、少し悩んでから答えたが、どうやら案外楽しいらしい。

「何か、二人の学校の様子はある意味見てみたいもんだな……」

ふと、口から出てしまった。

 

「「ごちそうさまでした」」

「ごちそうさま」

朝食を食べ終わり片付けをしていると、学校へ行く時間になっていたようで、

「私は学校で仕事があるので」

「おう、気をつけてな。そうだ、これは俺から」

玄関で靴を履いている氷川姉に、とある物を手渡す。

「これは?」

風呂敷に包まれた小さな箱を、受け取り見つめていた。

「お弁当、昼飯をどっかで買ってくならこっちの方が安上がりだし。何より、育ち盛りなんだからな」

「有り難く頂きます、確かに購買で買うよりは良いですし」

中身を知ると、少し安心したようで鞄にしまった。

「お前、俺が渡した時変な物だと思ったのか?」

「えぇ、いきなりでしたので。一体どんな危険物かと」

すました顔でとんでもない事を言ってくる。

「それでは、そろそろ行かないと」

携帯で時間を確認して、扉に手を掛ける。

「行ってらっしゃい」

「……、行ってきます」

俺が、この家の執事という事に抵抗はあるよな……。それが普通か。

 数分後、日菜の方も学校に行く支度が出来たようで、

「それじゃあ、私も学校行ってくるね」

「あいよ、気を付けてな。はい、お弁当」

日菜にもお弁当を渡す。

「え、良いの!わ〜い、朱那のお弁当だ!」

玄関の狭いスペースではしゃぐので、

「危ないから、はしゃぐな」

おでこにデコピンを一発おみまいする。

「っつ〜……、痛い〜……」

デコピンされた所を擦る日菜。

「もう、帰ったらお仕置きなんだから」

「分かった、分かった……」

帰ってくる頃には忘れていますように。

「そうだ、日菜。俺、今日現行の打ち合わせしてくるから」

「え〜、じゃあ帰ってきたら朱那居ないの〜」

拗ねて頬をプクッと膨らます。

「帰りに何かケーキでも買ってくるから、それで我慢してくれ」

「むぅ〜、でも変な事したら……。お仕置き追加だからね……」

一瞬、瞳の光が消えた様な気がしたが……、すぐに光が戻ったので気に留めなかった。

「それじゃ、行ってきま〜す」

「行ってらっしゃい」

日菜の方もようやく送り出した所で、この屋敷の各部屋を掃除して、洗濯物を干して、編集部に行くということを考えると、胃に穴が開くかと思った。

 

「あ、日菜。おはよう」

「りさち〜、おはよう」

教室に着くと先に同じクラスメイトの『今井リサ・通称りさち〜』が席に座っていた。りさち〜とは一年の頃からクラスが一緒で、話しているととっても楽しいのだ。

「ねぇねぇ、何か今日良いことあった?」

「え〜、分かる〜」

りさち〜は私のこういう細かい変化に気づく数救い一人である。話そうか、話すまいか、頭の中で会議が始まった。

「うんとね〜、実は〜」

やっぱり朱那の事を誰かに話すと、るんって!来る感じがし、りさち〜は気付いてくれたから話すのもいいと思った。

 話をしている最中、りさち〜の顔が色んな表情に変化していて、見ていて飽きることが無かった。

「じゃあ話をまとめると、その大好きな人を誘拐して、執事として雇うって言ったら了承されて、今現在日菜の家に同棲しているってこと……?」

「そうだよ、本当にるんって気持ちが止まらないよ!」

「へぇ……、日菜……。凄すぎて、頭が追いつかない……」

りさち〜は突然壊れた機械のように、パタリと机にうつ伏してしまった。

「おはよう、日菜。リサもおはよう、という場合では無いようだね」

「薫くん。おはよう〜」

少し遅れて、りさち〜の隣の『瀬田薫・通称薫くん』がやって来た。薫くんとは今年のクラス替えで一緒になったけど、薫くんは案外おっちょこちょいな所があって、見ていて面白いのだ。

「薫、おはよう……」

「どうしたんだい、そんな疲れた顔をして。折角の綺麗な顔が台無しじゃないか」

「だって、朝からこんなビックリすることないでしょ……。薫も聞けば分かるよ……」

薫くんに遺言を残すか如く、その言葉を伝える再び机にうつ伏してしまった。

「そ、そうなのかい?日菜、一体何を話していたんだい?」

「えっとね〜、実は〜」

りさち〜に話したことを薫くんにも、同じ様に話していると次第に薫くんの顔の雲行きが怪しくなっていた。

「つ、つまるところ……、い、今その人と同棲していると……」

「そうだよ、一緒に寝たし。良い匂いしたな〜」

あの朱那の匂いを嗅いでいると、るるんって来て安心出来るんだよな〜。

「ふ、ふっ……。君たちは大人の階段を登っているんだね……、あぁ……儚い……」

薫くんの口癖の『儚い』が出た所で、薫くんまでも何でか机にうつ伏してしまった。

「ちょっと何でよ〜、ねぇ、二人共」

肩を交互に揺さぶってみるが、起きないまま始業のチャイムが鳴ってしまった。これじゃ全然るんってしない……。




書いていて思ったのですが、薫さんが一番難しい気がしてきました……。
もし薫さんが出てくるオススメの小説があれば、紹介お願いします。
朝起きたら隣に美少女が居たら良いですよね……。
今回も閲覧いただきありがとうございました。
感想などお待ちしております。薫さんのオススメの小説を教えて下さい(切実)。

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