執事が大好きなお嬢様は、どうにかして執事に構ってもらいたい。 作:龍宮院奏
皆さん、ありがとうございます。
今度、100人記念作品を出したいと思います。
それと、一度『魔王に召喚されて、新しく生活を始めました。』の方に間違えて投稿してしまって、ごめんなさい。
氷川姉妹を見送ってから、掃除で家中を駆け巡った。その所為で普段使わない筋肉を、大いに使い体中が悲鳴を上げていた。
洗濯は洗う物の種類に合わせて洗剤を変えたほうが良いと聞いたことがあったので、スマホでどの生地はどう洗うのかを調べて洗濯をしておいた。
「晴〜れ〜ろ〜」
雲の切れ間から差し込む太陽の光に文句を言いながら、天候が良くなることを願っていた。天気予報を確認しようとスマホを取り出すと、約束の時間が迫って来ていた。
「もう時間なのかよ!」
慌てて洗濯物を干して、部屋に戻り仕事道具を鞄に詰め込む。
「それじゃあ、行ってきます」
誰も居ない空の屋敷の鍵をしめ、急いで編集部に向かった。
道端で見かけた地図では、案外近い場所に編集部の有るビルが建っていたので、このまま走っていけば時間には多少遅れても大丈夫であろう言える距離であった。知らない道を全速力で駆け抜けて行くと、途中でやたらと大きな日本屋敷?みたいな時代劇とかでありそうな家や、THE・金持ちの家みたいな庭に噴水の有る家も見かけた。氷川家も負けず劣らず凄いのだけれど……、あんまり人の家を比べるのは失礼な気がしてきたので深く考えないようにした。
それから途中信号で立ち往生したり、道に迷ったりしたけれど、二分遅れで編集部のビルに着いた。ビルに入ると暖房が効いていて、走って来たばかりの身には熱くて仕方が無かった。
丁度上りのエレベーターが来たので、それに飛び乗って新井さんが待っている会議室のある階へと乗っていった。
「遅くなりました……」
意外と時間に厳しい新井さんのことだから、きっと入った瞬間に怒られるんだろうな……。内心では震えが止まらない中で、そっと扉に手を掛け中に入る。
「やっと来ましたか……」
パソコンに向けていた視線をあげ、鬼の形相でガンを飛ばしてきた。待って〜、何か少し前のヤンキーが居るんですけど!帰りたい……、怖いよ……、もう嫌だ……と、謎の三段活用が出てきた。
僕の豆腐以下の脆さのメンタルは、一瞬にして崩壊しました。
「あ……、おは、おはようございます……」
「おはようございます……、それはそうと……」
目がさ、もう眼力だけで人の頭を吹っ飛ばせそうな位になってるんだけど、ねぇ誰か助けて……。
「何で、連絡の一つも無いんですか!」
「……へぇ?」
あまりに予想していた事と違い、拍子抜けして間抜けな声が出てしまった。
「サイン会が終わって打ち上げに行こうとしたら、変な薬品嗅がされてるし!でも朝起きたら、やたらと良いお酒が部屋中に置いてあって!一体どういうことですか!?」
「え、ちょっと待って下さいね……」
色々納得できそうな所を探したいから時間を下さい。
「先生は居ないし……、いっくら携帯に電話掛けても繋がらないから……」
「新井さん……、僕のことを心配し」
やっぱり僕の専属担当編集はあらいさんじゃないと駄目なんだと、一瞬だけ思った。一瞬だけ……。
「他の出版社に移ったのかと思いました!」
「会社の利益の心配かよ!待ってよ、僕は!僕、あなたと今まで様々な困難に立ち向かってきたでしょ!それなのに、生存の心配より会社の方の心配ですか!」
はぁ……、何だよ……。日菜にあれだけ心配して聞いて損した、もうこの際本当に他の会社に移ろっかな。
「うるはら先生、今『他の会社に移ってやろう』って考えましたよね……」
指をポキポキと鳴らし始めた新井さん、そんな手の準備運動を初めないで。
「そんな事ないですよ、新井さん程の良い編集さんはいませんよ。だから、他の会社に行きませんから」
「そうですよね、うるはら先生のサポートを出来る編集は私以外には居ませんよね〜」
鬼の形相が、一瞬にしてお花畑でお花を摘む少女の様な優しいものに変わった。
これでホッと出来……、
「もし会社を移るってなったら、真っ先『茨姫』に連絡しなければなりませんでしたよ〜」
「……、それは冗談ですよね」
「いえ、割と本気ですよ?前に先生と『もし、うるはら先生がうちの会社から移ったらどうしましょう?』って相談していたら、
『そうね……、そうなった時は私に連絡しなさい。大丈夫、私がちゃんとお・は・な・しを着けるから』って言ってましたよ」
再生しかけてたお豆腐以下の弱々メンタルが、また崩れ去ったんだけど。それから、無性にお腹が痛むのはなぜだろう?
「まぁ、実際に携帯に連絡が着かなくて困っていたのは事実ですし、心配もしていました。私が見たときには、既に怪しい人達に囲まれていたので」
散々、見当外れな事を言って置きながら案外心配だったらしい。
「その……、心配をおかけしました」
深々とお辞儀をし、誠心誠意の謝罪をする。
「本当はすぐにでも新井さんに連絡を取ろうとしてたんですけど、ちょっと問題が起こりまして……」
下手な言い訳をして新井さんに心配を掛けるよりは、事情をしっかりと話したほうが良いだろうと考えて全てを話すことにした。
「実は……」
それから、新井さんが気絶してからの出来事を全て、洗いざらい話した。
「ほうほう……、つまりは誘拐ファンがうるはら先生を誘拐、執事として専属作家として雇いたいと申し込まれる、うるはら先生が承諾、朝食を食べて、家に招いてエロ本がバレてシバカれて、かくれんぼして食べられて、夜は二人で添い寝をしていたと……」
「そうですね……はい……」
話す時にうっかり余計な事も言ってしまったけど、後悔は時既に遅し……。会議室の床に正座をさせられて、目の前では再びの鬼の形相で指を鳴らし始めていました。
「その雇い主は、『女子高生』ですよね……」
「はい……」
「先生は、今何歳ですか?」
「23歳です……」
「それではポリスメンに連絡を……」
スマホを取り出し、素早く警察に電話を掛けようした。
「え、ちょ!僕、誘拐されてる方ですよ!」
「だとしても、知り合ったばっかの女子高生に言い寄られて、ホイホイ仕事受けて、添い寝している変態が何を言うんですか!」
まぁ正論です……、正論ですけど……、僕、変態じゃない……。
「僕、変態じゃないですよ……。純情ピュアボーイですよ……」
「前にロリ転(『ロリと暮らす 転生活』シリーズ)の取材だって言って、一日中休日の公園を渡り歩いて、無邪気に遊ぶ少女を眺めて『これが……、本物の幼女なのか……』って言って、鼻血垂らしていたのは誰ですか?」
「そ、それは……。僕でした……」
だって、あの頃はもうネタに詰まってたんだもん……。それに見ていたアニメのヒロインの妹が幼女キャラで可愛かったら……、ビビット!来たんだもん……。
「全く……、厄介な仕事を請け負いましたね……」
深々溜め息をついて、椅子に座り机に項垂れる新井さん。
「だって、何ですかその子……。自分以外の連絡先消したり、誘拐して自分のものにしようとするとか、どこのラノベのヤンデレですか……」
「まぁ……、それは僕も思いますよ……。(スタンガンとか、薬品とかあるし)」
「先生、これ連絡先です」
話を聞いている時に紙に何かを書いていると思っていたが、どうやら消えた連絡先を元に戻すために書いてくれていたらしい。
「あ、ありがとうございます〜……」
「これが無いと、先生と打ち合わせできないじゃないですか。それと『茨姫』が、ご立腹ですよ」
新井さんの情けに感動したら、それを破壊する悩みが生まれてきてしまった。
「それって……、本当ですか……」
お腹の痛みが引きません……。
「先生が誘拐されて、楽しく過ごしている時に『新しいキャラのデザイン案について、話したいんだけど』って」
「そう言えば、今度の新刊で新キャラを表紙にしようと……」
楽しく過ごしていたとは聞き捨てならないです、楽しくは……楽し……、ちょっと楽しい時もありました。
「それで伝言を受け取っています」
留守電を再生してもらった。
『うるはらせ・ん・せ・い。何で連絡が無いのかしら?私と仕事をするのが嫌になったのかしら?そんな事ないわよね?だって、先生は私の絵が一番好きですもんね。だから、私との仕事の契約を破棄するなんて事したら……。
てめぇの恐怖心がクライマックスになって、見るもの全てが悪夢になるようにすんぞ……。
それじゃあ、先生。早く連絡が来ないと、未来は無いですよ。
あ、そうだ最後に、この伝言の翌日の午後四時に私の家に来なさい。
それじゃ、See you.My Contractor《私の契約者》』
「あら〜、これは相当『茨姫』は怒ってますね〜」
修羅場が見れて楽しいようで、ニヤニヤと笑っていた。
「あ、あははは……。もうやだ……、僕もう……」
酷い目に合わせられる未来しか見えなくなってきたんですけど……、未来に絶望終末なんですけど……。
「まぁ、『茨姫』も心配だったんですから。ちゃんと謝ってきて下さいね、じゃないと私も大変ですよ……」
「は、はい……」
何で僕の周りはこう危ない人だらけなんだろう……。
「それじゃあ、今回の説教はこれで終わりします。それで今日は、新刊の……」
ようやく新井さんの説教が終わり、仕事の話にはなったけど……。この後『茨姫』の所に行くって考えると、全然仕事に集中できない……。
すると暗い思いを粉砕してくれる、推しの曲が携帯から流れ始めた。
「すみません、ちょっと……」
新井さんに言って、会議室を出て電話に対応した。
「はい、漆月です」
『あ、もしもし朱那〜?』
この声は……、
「日菜か?どうしたんだ、学校だろ今」
先程話題になっていた雇い主・日菜だった。
『そうなんだけど。あのさ、一つ頼んでも良い?』
「あぁ、良いけど?」
声が何時もより低いから、何かあったのだろう。
『実は……、学校に今日提出しなきゃいけないプリントがあって』
「おん、それで?」
『それを持っていくの忘れちゃってさ、だから持って来てくれる?』
「いや、俺仕事でこれから出られ」
『へぇ〜……、じゃあ学校の友達に昨日見つけた朱那のエッチな本の話しでもし』
「分かりました、お嬢様。時間を御指定下さい、必ず時間通りに届けに参ります」
『うむ、素直で宜しい。え〜っと、今11時30分だから、12時に届けに来てね。机の上に置いてあるから、それを持ってきてね』
「承りました、それでは後ほ」
電話を切ろうと、すると一言だけ添えられ、
『一分でも遅れたら、バラしちゃうからね……。じゃあ、また後でね〜』
電話を切られてしまった。
「すぅ……、俺の日常を返してくれ……」
廊下で蹲って泣いている俺がそこに居た。
今回はあまり日菜の出番が少なかったですが、次回はしっかり出していきます。
それと新キャラの『茨姫』について少しお知らせをさせて下さい。
『茨姫』は、とあるキャラの姉という設定です。
ヒントは特徴的なヘッドホンの人で、実はマナーに厳しいあの人。
合ってますよね?作者が不安になってきました……。
今回も閲覧いただきありがとうございました。
感想などお待ちしております。
薫さんの教えて頂いたの、参考に勉強させてもらいます。
本当にありがとうございます。