執事が大好きなお嬢様は、どうにかして執事に構ってもらいたい。   作:龍宮院奏

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『茨姫』の登場会です!
朱那:「祝え!我らが崇高なる絵を描き出す、天才イラストレーターの登場を!」
……:「何してるの?」
朱那:「盛り上がるかなと…」
……:「盛り上がるかは…別ね…。それにしても、何で時の王者の従者なの?」
朱那:「え、えっと…」
……:「もしかしてノリでやったのかしら?」
朱那:「はい…」
……:「ありがとう、朱那。私、何だか行ける気がする!」
朱那:「…!ありがとう、我が主」
……:「それじゃ行くわよ」
朱那*……:「「本編スタートです!」」


第21話作家は茨の道へと向かうようです。

「お〜氷川姉。遅くなったな」

日菜の先導の元で氷川姉の学校・花咲川女子学園の校門前にやって来た。

「呼び出しておいて、一体どれだけ……」

すでに氷川姉は門の前で立って待っていたのだが、こちらを確認してから様子がおかしかった。

 

「何で……、何で、湊さんと今井さんまで居るんですか!? それにみなさんも……」

だからか、今俺の挨拶を返すものの、視線が日菜の後ろの方に集中していたのか。

 

「湊達と知り合いか?」

日菜の後ろに居る日菜の保護者メンバーを指す。

「知り合いも何も……」

氷川姉が答える前に、

 

「知り合いも何も、紗夜は私のバンドメンバーよ」

湊が答える。……? は? 今なんて?

 

「漆月さん、本当ですよ。紗夜はRoseliaでギターを担当しているんですよ」

湊の補足説明を今井がしてくれたが……。

 

「世間って狭いもんだな」

急展開過ぎて、頭が追いつくことをやめた。

 

「何故、湊さんや今井さんまで?それに……」

怪訝そうな顔をして再び尋ねながら、今井達の後ろに居る大和と瀬田を見つめていた。大和は苦笑いを浮かべて、瀬田は微笑んでいた。

「いや……実はね……」

氷川姉の疑問に答えるべく、今井と大和が一緒に説明をし始める。

 

「というわけで……」

「自分たちは日菜さんの監督ということでして……」

説明が終わる頃には説明をする方も、説明を聞く方も疲れが顔に出始めていた。

「では、日菜の無茶ぶりが功を奏し、今に至ると……」

頭を抱え、溜め息を深々とする氷川姉。深呼吸をして心を落ち着かせたと思ったら、

 

「日菜、それに執事……、あなた達は一体何をしてるんですか」

俺にとっては本日二回目の鬼の形相(一回目は新井さん)を目の当たりにする羽目になった。

 

「あははは……、俺は日菜に頼まれて……」

脅されてとは言えないので、嘘でない範囲の言葉に置き換えて答える。

 

「ほう……、では日菜の方ですか……」

氷川姉の目が、目が、鬼だ!あれ眼力だけで人を殺せるレベルだよ、だって日菜がさっきから冷や汗かきまくって、今にも泣き出しそうなっている。

 

「ち、違うの、お姉ちゃん。今日提出のプリントが有って、それを届けに来て貰うために……」

 

「だからって、執事をわざわざ学校にまで呼ぶ必要性は無いでしょう?」

 

「ぅう……、で、でも、私が朱那の事を話してる時にりさちーが会ってみたいって言うから」

 

「えっ!私の所為なの!」

日菜がここに来て、突然の今井にバトンを渡した!

 

「ち、違うよ!確かに見てみたいとは思ったけど……、本当に思っただけだから、ちゃんと私は断ったから!」

鬼の形相を保ちながら今井にすり寄るも、今井が嘘偽りなく吐いたために……。

 

「そうですよね……。今井さんがそんな非常識な行動をするはずが無いですものね」

全力で首を縦に振る今井。

 

「それじゃ……、日菜……」

鬼の形相をしていた氷川姉の顔が更に怖くなっていき、体から不穏なオーラまで醸し出し始めて……。

 

『逃げろ! これは俺には無理だって!』『レベル1の武器がヒノキの棒の勇者が最強の魔王に挑むみたいなもんだ』

本能が、本能が全力でこの場から逃げることを告げる。これほどまでに本能が訴え掛けてきたのは、新井さんとの酒を飲んで以来だ。

 修羅場と化しそうなこの場から逃げようと、そっと自転車を跨いでペダルに足を掛けた瞬間……。

 

「何処に行く御つもりですか?執事?」

俺の願いがもし叶うならば、せめて推しの声優さんとツーショットの写真を撮りたかった。

 結局、俺と日菜は仲良く氷川姉の鬼の形相での説教を喰らった。その所為で、少しばかり予定が遅くなってしまったのは黙っておこう。

 

 

「これで全部買ったから、行くか」

「何でこんなに買う必要があるんですか……」

「重い〜、重いよ〜」

説教を喰らった後に、商店街で少しばかり買い物をしていた。

「少しの間だから、持っててくれ」

文句がひっきりなしに溢れ出る日菜をなだめながら、荷物の乗った自転車を転がす。

「それにしても、一体何でこんなに買ったんですか?」

大和が荷物の一部を持ちながら尋ねてきた。

「あぁ、まずアイツの食事を作るためと、おど…… 頼まれてな」

「今、ちょっと脅されてるって」

「気のせいだ、気のせい」

間違っても仕事の契約を破棄されないように、アイツの機嫌を取るためとかじゃないから。

「それにしても、随分と大変ですね。色んな『お嬢様』の相手をして」

「瀬田、それは俺に対する嫌味か?」

「そんなことは無いですよ、ただふと思っただけですよ」

「そうか……、お前の方がモテて大変そうだけどな」

「あれは子猫ちゃん達が、不思議とやって来てしまうので。私にはどうすることも……」

「お前……、それこそ本当に嫌味だぞ」

澄ました顔しやがって、良いよなモテて……。俺なんか一回も、一回も……。

「あれ?薫くん、一人称変わった?というか、元に戻った?」

瀬田との会話に日菜が割って入る。

「気づいていたのか、実は今度の劇で王子の役をやることになってね」

 

「「うわぁ〜、似合いそう(だな)……」」

今井と反応が被る。

 

「それで役作りとして、試しに演ってみたんだけれど、どうかな?」

反応を聞きたくて瀬田の表情が、先程よりもイキイキしている。

 

「う〜ん?違和感は無いし、面白かったから良いと思うよ」

考える様子もなく、すぐに感想を述べる日菜。その答えを聞いて瀬田の表情は明るくなっていく。

 

「そうか、それなら子猫ちゃん達に素敵な舞台を見せられるだろう」

瀬田の笑顔が夕日に照らし出されて、輝きを増すのが何故か……心に苦しかった。

 そんなこんなで、女子高生五人とやたら大きな買い物袋をぶら下げて歩くこと数分。

「「「「「お、大きい……」」」」」

女子高生組が目的地に到着し、早々に感嘆の声を上げる。その間に《相棒》を停めておき、合流し、

「ほら、行くぞ」

中へと入っていった。

「朱那、ここのマンションやたら大きくない?」

「あぁ、そうだな。他のマンションに比べたら大きいはな、屋上にプールとかあるし」

「「「「「プール!?」」」」」

「あるぞ?俺は行ったこと無いけど、って何だよ」

一斉に視線が集まるのが怖いんだけど。視線から逃げるようにエレベーターに乗り込み、目的の階へと昇り進めていく。

 目的の階に到着し、廊下を歩く。塵一つ落ちていない綺麗な床、眩しすぎない綺麗な電球が照らす天井。その全てに驚いているようだった。

「ほら、着いたぞ」

とある部屋の扉の前にたどり着き、一同に声を掛ける。

「先に二つ言っておくな。一つ、部屋の物には勝手に触らないように。一つ、無いとは思うが……、喧嘩しないでくれ……」

 

「わかった!」

「分かりました」

「えぇ、わかったわ」

「了解です」

「心得た」

「了解しました」

全員に先に言うべきことは済んだので……、俺も覚悟を決めるか。

 

「はぁ〜……」

深々と溜め息を付きながら、ドアベルを鳴らす。

 

「お、俺だ、漆月だ。じ、時間、時間通りにやって参りました」

覚悟を決めたけれど……、声が震えて止まらない。

 

「朱那……?」

 

「あ、あの〜……。いらっしゃるなら、返事を……」

 

『遅いわよ……』

返事が来たけれど、滅茶苦茶不機嫌な声だ。

 

「ちょっと、買い物してたら混んでて……」

苦しい言い訳をすると、

 

『……、取り敢えず入りなさい』

沈黙で恐怖を生み出しておいて、入室を許可された。

 

「俺……、殺される……。も、もう無理だ……」

震える手でゆくっりと扉を開けると、

 

「一体全体、私を何処まで苛つかせるのかしら。『ルナ』」

仁王立ちをして、胸の前で腕を組んで出迎えられた。

「えっと……、遅くなりました……。みさ様」

何か言葉を言おうとしたけれど……、蛇に睨まれた蛙のごとし何も出来ませんでした。

 

「朱那……、大丈夫……」

心配そうに日菜が上着の裾を後ろから引っ張りながら尋ねてきた、がそれを今やると、

「日菜、今」

 

「誰よ、その小娘は」

止める前に始まってしまいました。

 

「み、みさ、こ、この子が……」

見つかってしまったので、説明をしようとしたのだけれど、

 

「まぁ良いわ、取り敢えず上がりなさい。廊下に立たれても迷惑だから」

背中を向けて部屋の奥へと行ってしまった。

 

「と、取り敢えず上がろうか……」

頑張って笑顔を作ろうと試みたけれど、余程顔が引き攣っていたようで、

「漆月さん、顔色悪いですよ」

今井と大和から心配されて、湊と瀬田そして氷川姉にも不安そうな表情を浮かべていた。けど、この時誰よりも、

「朱那……」

日菜が一番不安そうな顔を浮かべ、裾を掴み続けていた。

 

「それじゃあ、部屋の掃除頼むわね」

部屋に上がり、みさが開口一番に開いた言葉がこれだった。

 

「何で…、何で…、何でこうなるんだよ〜!」

リビングとされる部屋(今は部屋と呼べるか危うい)が、ゴミや脱ぎ散らかした服などで散乱して足の踏み場が無い状態と化していた。

 

「俺が掃除したてのって、三日前だろ」

「ルナは今私に文句を言える立場じゃないでしょ」

「だとしてもだ……、はぁ……」

この惨状は酷すぎる、お前はあれか○原後輩か?全くこれじゃあ……、っつ!

「なぁ、みさ」

「何?」

「服だけは先に纏めてくれ……、その問題が起こりそうだから……」

「問題?問題って何っ」

先に小さく指を指すと顔を真っ赤にして、

「こ、この変態!」

パッン!と気持ちいい音を立てる平手を右の頬に喰らい、慌てて服を纏め始め、

「全部洗濯機で良いのよね……」

「色物と見られたくないのを別けてくれれば……」

「解ってるわよ、この変態、スケベ、バカ!」

怒涛のごとく叱責を並べるだけ並べて、部屋を後にしていった。

 

「痛い……」

叩かれた右の頬がなおをも痛むので、あとで冷やそう……。

「じゃあ、日菜達は外で待ってて。三十分……、いや十五分で終わらせるから」

部屋の外に追い出す形になってしまったが、一度出てもらった。

 

 

 朱那が掃除を始めるために部屋から一時的に出されてしまったけど……。

「今のは痛そうでしたね……」

誰よりも先に、ま〜やちゃんがみんなが思っているであろうことを言ってくれた。

「凄い音してたもんね……」

りさちーが暗い表情で呟く。

「それにしても何故彼はあそこまで、彼女に対して下手なんだろう?」

薫くんがその言葉を言った瞬間、

 

「ルナは私の契約者だからよ。私が《主人》で、ルナが《契約者》だから」

先程、朱那に手を挙げた『みさ』と呼ばれる女が現れた。

 

「そう睨まないで欲しいわね、私の契約者であるルナを執事にした小娘が」

 私より少しばかり小さい背丈に、真っ黒な黒髪を少し高めに結った髪型、透き通るような宝石のような蒼の瞳、服は部屋着なのか『玉出』と書かれた紺色のジャージを着ていた。

 

「朱那は自分から、私の契約を飲んでくれました。それに私は貴女みたいに酷いことはしません」

自然と顔に力が入る。この女が朱那を……。

 

「誘拐しておいて何を言うんだか……。立ち話も何だし、来なさい」

先程の、朱那が現在格闘中(掃除中)の部屋とは違う部屋に案内された。

 案内された部屋は綺麗に整理整頓されていて、大きな机に三つの画面があるパソコン、ぱんぱんに本が敷き詰められた本棚、色んな女の子のフィギュアが飾られているショーケース、ベッドが有った。

 

「さてと……」

机の付近に有った大きな椅子に腰掛け、足を組む。

「私は漆月朱那、『うるはら アカ月』の専属絵師兼契約者の玉出みさ(たまでみさ)よ」

床に座れと手を動かすので、取り敢えず言うことを聞いて座ってみる。

「小娘、名前は?」

再び私を睨みつけながら名前を聞いてきた。

「氷川日菜です……」

「氷川か……、そっちのお前は姉妹か?」

名前を名乗ると、お姉ちゃんに視線を移す。

「氷川紗夜です、日菜の双子の姉です」

淡々と自己紹介をするお姉ちゃん。

「双子か……、どおりで似ているわけだ」

何が可笑しいのか笑う、『みさ』さん。

 

「はぁ……、それじゃあ最初に言うけど……、

 

アイツは私の契約者だ。それをお前みたいな小娘にはやらん」

 

 開口一番に……、宣戦布告がやって来た。

 

「お前みたいな小娘が、どうやってアイツに契約を飲ませたのか、どうやってアイツを誘拐したのかは知らないけど……」

 

「小娘如きが、しゃしゃり出る幕じゃねぇんだよ。解ったら消えなさい」

絶対的、朱那に対しての絶対的自信が何かあるのか、睨み殺す目で言ってくる。

 

 けど……、私は……。

「私は……、私は離れる気はありません」

朱那にあんな酷いことをするような人に、朱那を傷つける人に、渡さない。

 

「それに、何で貴女が朱那の事を決めるんですか?貴女はさっきから朱那の事を《契約者》って呼ぶけど、それも」

疑問に思っていた言葉を言い終わる前に、

 

「事実だからだよ」

答えは提示された。

 

「ルナは自分から契約を交わしたの」

提示されたけれど……、意味が解らない。

 

「朱那が自分からって言うのは、一体どういう事何ですか」

どうして、ドウシテ、こんな酷い人なんかの……。

 

「それは……」

 

「お、終わった……。ゴミは纏めて捨てたし、掃除機もかけたから綺麗になった……」

答えを聞き出させるかと思ったその時、運悪くやつれた朱那が部屋にやって来てしまったのだ。

 

「ご苦労さま」

 

「何時もの事だからな」

何時もって、あの荒廃した部屋を、とても女子の部屋とは思えない部屋を、毎回一人で掃除してるの。

 

「それにしても……、ルナ。貴方、なんだかとっても埃っぽいわね」

椅子から動き出し、扉の所から話しかけている朱那に近づく、

「まぁ、あの部屋を掃除してましたから……」

「ほら、埃がついてるわよ」

肩に留まっていた埃を払い落とすと、

 

「ルナ……、貴方の体から他の雌の匂いがするのは何で?」

朱那にだけ聞こえるように、耳打ちで話しかけ始めた。

 

「そ、そんなはず……」

みさの質問を否定して回避をしようと試みる。がしかし、今度は鼻を近づけて匂いを嗅ぎ始めた。

 

「あの小娘の匂いともう一人……ね、貴方に触れたのは……。他にも沢山の雌の匂いがするけど……」

匂いを嗅いでわずか数秒で嘘がばれ、じっと見つめてきた。

 

「貴方は私の契約者でしょ……、なのにどうして他の雌の匂いがするの……。ねぇってば!」

日菜達に聞こえないギリギリの大きさで迫ってくる。徐々に迫りくる恐怖に、声を出そうにも声が出ない。

 

「そう答えないのね……」

早々に見切りをつけて、近づけた体をすっと離れる。

 

「そんな埃っぽいままで部屋の中をうろつかれても困るから、お風呂にでも入ってきなさい」

何を思ったのか、光の無い蒼い瞳でそう言った。これには、聞いていた日菜達も慌てふためく。

 そして何よりも、言われた俺が一番驚く。

「着替えは?俺着替え持ってないけど……」

「着替えなら考えなくて良いわ、安心して。大丈夫よ、生まれたままの姿になんかさせないから」

冗談で言っているのだろうが、今の機嫌ならやりかねない。

 

「だから……、その体に染み付いた雌の匂いを落として来なさい……。良いわね?」

 

「はっ……い……」

今日、もしかしたら人生で一番怖いものを見たかもしれない。日菜の瞳に光が宿らなかった時以上に……。

 逃げるように部屋を後にして、結果風呂で体を綺麗に洗うことにした。

 

「さて……、貴女達に質問よ。二択だから、しっかりと答えてね」

朱那が部屋を後にした直後に、みささんは部屋のクローゼットから服を取り出し聞いてきた。

 

「格好良いものと、面白いもの、どっちが見たいかしら?」




大和:「後語りは自分たちみたいすっね」
瀬田:「そうだね…、まさかこんな所で出番があるとは」
   「あぁ…儚い…」
大和:「…、えっと今回は『みささん』の登場回でしたね」
瀬田:「彼女は少し彼に対して厳しすぎな気がするね」
大和:「あぁ…確かに…。良い音のビンタをしてましたもん」
   「一体、漆月さんは何を見たんですかね?」
瀬田:「さぁ…?でも彼女の言葉から、予想は出来ているんじゃないかい」
大和:「えぇ…、『変態』という言葉と、『服という』漆月さんの言葉から…」
瀬田:「レディなら、誰だって怒るさ…」
大和:「そうですね…」
   「さて、そんなこんなで次回はお風呂から上がった漆月さんの運命は以下に!」
瀬田:「一体どうなるのやら…あぁ、儚い…」
大和*瀬田:「「次回をお楽しみに」

こんな感じの前振りと、後語りってどうですか?
評判が良ければ、毎回色んなメンバーで語らせて貰います。
今回もご閲覧していただきありがとうございました。
感想などお待ちしております。
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