執事が大好きなお嬢様は、どうにかして執事に構ってもらいたい。   作:龍宮院奏

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書きたくなって書きました!


第4話作家はお嬢様を慰めます。

 買い出しを終えて、帰ってきた頃には朝も中頃9時半を過ぎたところだった。氷川姉は荷物を運ぶのまでは手伝ってくれたが、荷物を運び終わると『私は予定があるので』と出ていってしまった。

「これで何とか足りるだろ、ポテトは十分過ぎるけど……」

買い出しで買ってきた食材を冷蔵庫に詰めながらふと呟く。中身を入れ替えていると『北の国王』、『新たな時代の幕開けポテト』と書かれていたフライドポテトも有った。よくわからん……。

 それとこの家の冷蔵庫には調味料はおろか、飲み物すらまともに無かったのだ。本当に驚きものだった。

 

「ねぇ朱那〜、これ何処に置けばいいの?」

買い物袋から、ゴソゴソと中身を漁りながら選別を始めた日菜。

 

「ん、それは冷蔵庫のチルドに入れて。あと、そっちのは今使うから置いておいて」

 

「は〜い。それにしても驚いたよ」

 

「何が?」

 

「朱那が料理できること。何かそういう事あんまりしないで、『作品に全てを』みたいな感じがしたから」

日菜の言っていることは、まぁ割と当たっていた。

 

「確かにそうだな、仕事にハマる時は本当にそれ以外考えれないから」

 

「そうなったら、私はご飯どうしたら良いの!」

慌てた表情で振り返る日菜。

 

「そこは大丈夫だ。今はちゃんと飯だけは、食うようにしてるから」

 

「でもカップ麺とか、ジャンクフードでしょ?」

こいつ自分がそうだったからって、俺もどうせそうだろうって思ってやがるな。

 

 だけどな、俺は日菜、お前とは違うんだよ。

「ちゃんとおにぎりと味噌汁を作って、3食は食べているようにしている」

どうだ、ちゃんとしてるだろ。

 

「じゃあ、時間は?遅くに食べたりしてないの?」

ドヤ顔を一瞬にして日菜に破壊された。おのれ日菜!この世界もお前によって破壊されるのか!

「食べたりしてないから!絶対無いもん!そんな夜中なの深夜アニメ見ながら、ご飯なんか食べて無いし……」

「朱那〜、反論に成ってないよ。そんな遅い時間で本当に良いの〜?」

ニヤニヤしながら、肘で脇腹をついてくる。

「てか俺の場合は一回入院してるんだよ……。それで3日間くらい仕事出来無いことがあったから」

「え!入院したの!」

肘で脇腹をつくのをやめて、まじまじと見つめてきた。

「もう2年も前だよ……。あの頃はまだ『そんな飯に気を使わなくても行けるっしょ!』って思ってた……」

今だったらあの頃の自分を、本気のパンチでノックアウトさせているところだ。

「甘かったんだよ、生活は毎日不規則。食事はカップ麺かコンビニ弁当、もしくは食べないの選択肢だった」

「そんな生活をしていたから、倒れて入院したんだね」

どこか面白げに笑っている日菜だが、

「割と本気で危なかったから。もしあの場で入院してなかったら、多分俺死んでたから」

「いや、嘘でしょ……」

俺の答えを聞いて、不安な表情を映し出す。

「医者にはそう言われたけど、何とか切り抜けたから。だから今は、お前の専属の作家をやっている訳だ。要するに俺が経験した事を、同じようになって欲しくないからこうして飯を作るわけだ」

 俺の自分勝手な、お節介な理由を聞いて日菜は、

「朱那は、優しいんだね。そうやって自分が体験した辛いを思いをさせようとしないところ」

すぐ側に寄って、笑顔をこぼしてくれていた。

「私はそうやって誰かに対して、何かしてあげるっていう事が苦手っていうか……出来ないから……」

 笑顔の中に宿る潤んだ瞳の光が、何処か悲しげに、微かに泣いている様にも見えた。

「だから、お姉ちゃんとも……」

ポツりと日菜の口から溢れた、『お姉ちゃん』という言葉。確かに氷川姉と日菜の間には、ギスギスした空気・今にも爆発しそうな風船が在るようだった。

 しばらくはお互いに暗い空気に支配されて、何を話して良いのか解らず黙って食材を冷蔵庫につめた。

「それじゃあ、こっちは終わったよ。後は何かする?」

任せていた分が終わった日菜は、次なる仕事を求めてきた。

「こっちは大丈夫だから、後は好きな時間にしてて良いぞ。さて何を作ろうかな……」

丁度こちらも終わったので、今度は何を作るか考える。

 

「「ねぇ、日菜・朱那」」

互いの声が重なり合う。

「良いよ先に、どうかしたか?」

「あ、うん……。せっかくだから、ここで朱那が料理を作るところ見てて良い?」

「良いけど、そんな面白くも何とも無いから」

「良いの良いの、私がここで見ていたいの」

強情にもこの場を離れようとしない日菜。そんな見つめてくるな、もうヤダ……。

「わかった、降参だ……。好きにしてくれ」

投げやりに、両手をあげて返答を返した。

「じゃあ、ここで見てるね」

満面に笑みを浮かべながら、頬杖を付きながらじっと見つめてきた。凄くやり難い……。

「んで、何かアレルギーとか有るのか、お前ら姉妹は?」

耐えきれず、先程日菜と被って言えなかった事を聞く。

「特に無いよ」

「じゃあ普通に卵とか、色んなもの有っても大丈夫だな」

自分のアレルギーは分かっているが、他人のアレルギーを知っている人は少ないだろう。知らないまま作って、何かあったらそれこそ困る。

 

「それじゃ、作るか」

服の袖をめくり、家事体勢モードに入った。

 

 

「それじゃ、作るか」

朱那は服の袖をめくり、冷蔵庫に入れずに居た食材を見て悩んでいた。

 何だか不思議だった、誰かが自分の為に料理を作ってくれるのが。確かに小さい頃はお母さんがこのキッチに立って、温かいご飯を作ってくれて、私とお姉ちゃんとお母さんとお父さんのみんなで食べていたんだっけ。

 でもお父さんの仕事は出張が増えて、今は出張先のアパートに住んでいるし。お母さんも仕事で遅くなって、帰ってくるのは私達が寝ている頃。朝起きた時にはもう居ない。

 

 だから、自然と温かいご飯・みんなで食べるご飯が無くなっていった。

 

 お姉ちゃんとは中学に入る共に、次第に中が悪くなっていった。多分、いや私が原因なんだろう。私がやることがきっと、お姉ちゃんの心を知らないうちに傷つけていたのだろう。そんな事を言っても、きっと言い訳にしか成らないんだろう。

 だって私には、他人の気持ちが分からない。何をやろうにも私は出来て、周りのみんなが出来ないのが分からないのだから。

 

 あぁ、きっとこの所為だ。これがきっと今の私とお姉ちゃんとの関係を作ったのだろう。

 

 何で、何で分からないんだろう……。どうして、どうしたらまたお姉ちゃんと仲良く出来るんだろう……。

 

「おい、日菜。日菜、出来たぞ。起きろ〜」

 

「んっ……、あれ私寝てた……」

ぼやけた目で声の方を見つめる。

 

「そりゃあもう、ぐっすり寝てたぞ。おかげでこっちはやりやすかったけどな」

てことは、朱那の料理してるところ見れなかった。

 

「はぁ……、見たかった」

気分が沈みまた、寝ていた時の体勢に戻る。

 

「あぁ、それとな……」

 

「ん?」

 

「俺はここに来たばっかりで、まだ何とも言えない人間だけど。お前は、お前らしくしていいと思うぞ……。他人の心なんてもものはそう簡単に分かるもんじゃないし、俺だって今までそれのせいで何度も喧嘩して来たしな」

 

何を言って……、すると頭に、

 

「だから、お前一人がそう悪いだなんて考えるなよ……。こうやって誰かの気持ちを考えようとしてるんだ、時間が掛かったとしても、分かりたいと思うならまた仲良く出来ると思うぞ……」

頭を優しく撫でてくれていた。大きくて、朱那の体温の温かさが手から伝わってくる。小さい頃に同じように、お父さんに撫でてもらった時で、不思議と落ち着く……。

 

「おい、ちょ、どうした!?嫌だったのか、俺に撫でられるの」

慌てた声で問いかけてきた。

 

「何で?全然嫌じゃないけど。逆に安心する……」

自然と言葉が溢れ出す。

 

「そ、そうか。泣き出すから、嫌なのかと思った。嫌じゃないなら良かった……」

 

 寝言でずっと、『ごめんさい……』『お姉ちゃん、ごめんさい……』『私がちゃんと、お姉ちゃんの気持ちを分かってなかった所為で……』と苦しそうに呟いていた。そんな姿があまりにも見ていて心苦しくて、気づけばそっと頭を撫でていた。

 

 

「泣いてなんか……あれ……何で」

 

 頬をに伝わる水滴、服の袖には零れ落ちた涙が作った染み。いつの間に私泣いて、慌てて涙を袖で拭う。拭って、拭っている筈なのに、溢れて止まらない。溜め込んでいたものが、一斉に溢れ出したように止まらなかった。

 

「うぅ……うわぁ……」

溢れる感情が、涙を零しながら朱那に抱きついていた。そんな私を黙った受け止めて、そっと頭を撫で続けてくれた。泣き止むまで、落ち着くまで優しく撫でてくれた。

 

 その時に微かに香る料理中についた匂いが、キッチンに立っていた母を思い出せた。




今回は書きたい衝動に負けてしまい、勢いで書いてしまいした。
日菜の心の叫び…、またこれからもきっとあると思います。
日菜の心をどれだけ書けるかは分かりません……。
それでも、精一杯やらせていきたいと思います。
だから、これからも宜しくお願いします。
今回もご閲覧ありがとうございます。
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