執事が大好きなお嬢様は、どうにかして執事に構ってもらいたい。 作:龍宮院奏
「ごちそうさま。美味しかった〜」
「ごちそうさまでした。そんなに美味しかったか、ならまた今度作ってやるよ」
二杯目をお代りした後、追加でもう2回食べたんだから。見てて気持ちの良い食べっぷりだった。
食べ終わった食器を片付けようとすると、
「あ、食器洗い手伝うよ」
せっかくあんなに美味しいご飯食べられたんだし、少しは手伝わないと。
「うん?あぁ、大丈夫だよ。日菜は部屋で何かしてて良いよ」
ここでまた『好きにして良い』って言えば、何をするか分からないし。それにこの仕事は俺の仕事何だから。
「でも、私もやりたい」
やっぱりそう来るよな。
「これは俺の仕事だから、ちゃんとやらせてくれ。ほら、ゆっくりしてきな」
「むぅ、分かった。じゃあ私部屋に居るから」
ちょっと膨れ面でキッチンを出ていった。
キッチンを出ていったのを確認して、頭の中で好きな特撮ヒーローの歌を流しながら食器を洗い始めていった。
朱那め、私が部屋に行ったと思ってるな。ふふ…、甘いよ。本当はこうして部屋に行ったふりをして、ここに居るんだからね。私、千聖ちゃんから色々教えてもらってるんだから。朱那を騙すことなんて造作もないのさ。
ポケットをゴソゴソと漁り、スマホを取り出す。音が出ないようにして、カメラを起動……、
「私の家で家事をしてる朱那……」
後ろ姿だけど写真を撮っていく。朱那、朱那、朱那……、さっきもそうだけど、朱那と居ると本当にるんって気持ちが止まらないよ。
何故かやたらと視線がして、背中に突き刺さる感じがする。
「はっ……」
振り返ってみたけれど、誰も居なかった。まぁ、何かの気のせいだろ。心の中では納得しきれないけど、分かりそうもない事だったから考えることを止めた。
食器をすべて洗い終わり、改めて今度は自分が何をするかを考える。仕事でもしようかな……。
「って、今俺の仕事道具は家にあるんだった……」
連行されて、それで今に至るんだったけ……。
でも家に取りに行かないことには、仕事を進める事も出来ないし……。仕方ないな……。
「日菜〜、お嬢様〜!少し良いか〜」
日菜の部屋が何処にあるか分からなかったので、叫んでみれば何処から飛んで来ると思った。
すると廊下の方から、凄まじい音と振動が響いてきた。そしてその音と振動が次第に近づいて来ていた。予想通りすぎる!
「音速を超えて、光速を超えて、只今参上!日菜だよ!」
やっぱり日菜だった。でも日菜って、こんな性格だったけ?あれ?俺の作ったご飯食べたせいでこうなったのか?
それを思うと、悲しくて、そっと日菜の肩に手をのせ、
「日菜、俺は前のお前の方が好きだぞ……」
何故だか、不意に涙が出そうになった。
朱那がいきなり謝って来たけど、私何か変な事したかな?
だって、朱那は特撮ヒーローが好きだって調べた分かったから、気に入ると思ったんだけどな……。
でも、この朱那の困った顔も良いな〜。ご主人様に怒られた犬みたいで、もうるんるんって来る!
まぁ、今回の件で朱那は今まで通りの私が良いって事が分かったから。
「そっか〜、朱那は今まで通りの私が好きなんだね〜」
さっきの言葉を聞いて、さては調子に乗ったな。そのせいか、口元をニマニマしながらすり寄ってくる。まるでおもちゃを貰った子犬のよう。
「あぁ〜…、それで頼みがあるんだけど?」
「何かな〜?」
まだすり寄ってくるよ、近いし……。
「俺の仕事道具を取りに、一度家に帰りたいんだが?」
「え、何で?朱那の仕事は私専属の作家兼執事でしょ?だから帰る必要ないんじゃない?」
「いや、いくら仕事でも住み込みで居るわけにはいか……」
最後の言葉を言い終わろうとした瞬間、
「だから、何言ってるのかな?朱那は私専属でしょ。つまり、ワタシのものなんだよ…」
どうしよう、日菜の目から輝く光が、何処かブラックホールの中に旅に出かけちゃったよ。
「それでも、俺が住み込みはヤバイって…。ご両親が知ったらどうなることか……」
「お父さんとお母さんなら、『オッケー』って言ってくれたよ」
ご両親の了解あるのかよ。良いの?二十歳超えた、ご両親と全く面識の無い男が家に居て良いの?
「ご両親が良いって言うなら…。あ、でも、部屋とかは?」
何とかして住み込みを回避しようとするが、
「部屋なら、朱那を最初に連行してきた時の部屋があるでしょ?あれ、元々朱那の為に用意した部屋だから」
見事なまでに、退路を絶ってきた。それに、あんな広い部屋が俺のになるのか……。どうしよう、ちょっと揺れるな……。
自分の今住んでいる部屋が余りにも狭いから、これは案外得なのでは?でも、住み込みは……。
「住み込みでいれば、一々電車で通わなくて済むよ?電車賃も浮くから、その分欲しい物買えると思うんだけどな〜?」
チラチラと視線を送ってくる。だが、この誘惑に負ける訳には……。
「それに〜、家賃も払わなくて住むんだよ〜」
『家賃を払わなくて住む』だと……。
「よし、日菜。これからよろしく頼む!」
結局、了承してしまいました……。俺のプライド?そんなものは、ブラックホールに捨ててきたわ。狭い部屋は嫌なんだもん……。
「わ〜い、朱那が私の家に来る〜」
俺が了承をした直後に、日菜の目に宿ったブラックホールは無限の彼方へさぁ行くぞ!と言わんばかりに消えていき、光が帰って来た。
「でもやっぱり、日菜。仕事道具や家具はやっぱり今までの物の方が良いんだが……。その方が安心して仕事が出来るからこっちに運びたいんだが、良いかな?」
「まぁ、朱那がその方が良いなら良いよ。大きいものとかは、黒服さんたちが運んでくれるから」
あっさりと承諾してくれた。
「そうか、ありがとうな」
これで駄目って言われたら、本当にどうしようかと思った。
「それじゃぁ!朱那の家に今から突撃しよう!おー!」
そう言うと日菜は玄関に向かって走っていった。
慌てて追いかける形で、遅れて玄関に走っていった。
「ちょ、待って!日菜、お嬢様〜!」
投票していただいて、本当に有難うございます!
これからも精一杯書かせて頂きます!
今回は、朱那が氷川家に住むか住まないかというね。
まぁ、確かに危ないような気もしますけど…(朱那が)。
日菜ちゃんのヤンデレぶり?ヤンデレは本当にどうしているんだろう?
まぁ、今回もご閲覧ありがとうございました。