模型戦士 ガンプラビルダーズビギニングC   作:にくキャベツ

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Bパーツ フォーエバーガンダム

「どうしたシャア、こんなもんじゃないはずだぞ。もっと俺に当ててみせろ!」

 

 放たれる榴弾をかわし、的確にビームライフルを連射しザクを追い詰めるフォーエバーガンダム。

 

「……まあ、そんなガンプラならば当然か」

 

「なんだと?」

 

「ただパーツを素組みしただけの機体、パーツのはめ込みも、ゲートカットも甘い。モノアイのシールが歪んでいる! そんな機体じゃ満足に動かせる訳がない!」

 

「……ええい、言わせておけばボロクソ言ってくれるな……」

 

 が、フォーエバーガンダムとアムロの実力は確かだった。肩のシールドにかけておいたバズーカの予備マガジンを撃ち抜かれ、それが空に散乱する。体制を立て直し距離を取ろうとするも、すぐに背後に回り込まれ背後から撃ち抜かれる。すぐさま振り返りバズーカで応戦するも、シールドごと右腕を吹き飛ばされ、そしてそのまま地上へ落下する。

 

「シャア。これで分かっただろう。ガンプラバトルはお前の思っているほど甘い世界じゃない」

 

「そんなことは分かっているさ!」

 

 最後の武装であるヒートホークを抜きビームを避けながら相手に向かって振り抜く……が。それがフォーエバーを捉えることはなく、そこに残されたシールドのみを斬り裂く結果となった。そして下を取ったフォーエバーのビームサーベルによって頭部と左腕を切断され……勝負は決した。

 

「シャア。本物のガンプラビルダーになりたいならスキルを磨くことだな」

 


 

「……アムロ。奴のガンプラ、フォーエバーガンダムは本当に素晴らしい出来だった……シールをまったく使わず、全ての部分に塗装を施していた。それにあの汚れ……聞いたことがある、ヴェザリングという奴だな。リアル感を出すためにわざと汚す技法のことを指すのだったな……奴はあそこまで作り込んでも惜しくないほどにガンプラというものに熱中しているんだ……」

 


 

 翌日、シャアの自宅。前回完膚なきまでに叩きのめされたシャア専用ザクを凝視し、改善点を探す。が、そこでインターホンの音色が響く。それを聞いたシャアはすぐさま玄関に向かい、出る。

 

「クワトロ大尉、ガンプラ始めたんですって?」

 

「おお、カミーユ。あぁ、ガンプラバトルとやらを始めてみたんだが……アムロと戦ってみたら一瞬で負けてしまってな」

 

「アムロさんと? 無茶ですよ大尉。あの人は操縦技術と圧倒的なガンプラの作り込みで数々の大会で連日優勝しているんです」

 

 その時シャアの脳裏には初心者狩りだとかチャンピオンがそんなことしていいのかとかそういう思考が浮かんだがすぐに振り払った。

 

「あぁ、そうだ。僕も作りかけのガンプラを持ってきたので一緒に作りましょうよ」

 

「それは……ガンダムMk-Ⅱか」

 


 

「ゲート処理はしっかりしてますね」

 

「あぁ、アムロに道具を渡されたからな」

 

「それだったらつや消しスプレーでも吹いてみますか?」

 


 

「部分塗装に挑戦してみましょう、まあガンダムと違ってザクは部分塗装すべき部分は少ないんですけどね」

 

「ふむ……マーカーの塗料を皿に出して筆で塗るのか……」

 


 

「オリジンザクにはモールドが多いでしょう? 墨入れをしてみるのはどうですか?」

 

「ふむ、溝に沿って筆を滑らせて……よし、出来たぞ」

 


 

「接着剤を使ってバズーカの合わせ目を消してみましょう」

 

「確かにここに線があるのは不自然だな……」

 


 

「おぉ……たったこれだけの工程でここまで変わるモノなのか……」

 

「ガンプラは素組みだけでも充分見栄えがいいですけど、簡単フィニッシュなどの手法を使えば少ない労力で簡単に見栄えを良くすることが出来ます。ちなみにアムロさんはこれの100倍以上作りこんでますよ」

 

「……誇張表現があったとしても超えられそうにない壁だな……」

 

 以前よりも出来栄えの上がったシャア専用ザク。その隣に置かれるのはシール部分を全て塗装し、墨入れやトップコートなどの過程をこなしたガンダムMk-Ⅱ。

 

「カミーユ、この目にはシールが使われていないのだな」

 

「ガンダムタイプの目にはモールドがあります。それに合わせて塗装すれば比較的楽に塗装できるんですよ。……さて、バトルしに行きましょうか」

 

「バトル? 私の家からまたお台場まで行くのは厳しいぞ」

 

「大丈夫です大尉。最近は模型店やゲームセンターにも筐体が置いてあるので気軽に出来るんです。この近くに僕の行きつけの模型店プトレマイオスがあるのでそこに行ってみましょう」

 


 

 模型店・プトレマイオス。通称トレミー。

 

「どうですか、僕たちのガンプラ」

 

「……へえ。こっちがカミーユのガンプラ……おお、シール部分は塗装か。やるじゃないか。こっちのザクは……ほとんどのモールドに墨が入ってる……あんたが作ったのか?」

 

「あぁ。アムロを倒す為にな」

 

「……アムロって、チャンプの事かよ? そりゃまたデッカく出たな……ならもっと経験を積むべきだろ? おい、刹那」

 

 カウンターのロックオン・ストラトスがHGダブルオークアンタの箱を持った少年……刹那・F・セイエイに声をかける。

 

「……なんだ」

 

「こいつらがバトルしに来たってよ。お前が相手してやれ」

 

「了解した。ロックオンも付き合ってくれるか」

 

「はいよっと……」

 


 

「二対二のバトルか。初めてのルールだな」

 

「基本的には三対三と変わらないので大丈夫ですよ。人数が減っただけです」

 

 カタパルトに入る四人のガンプラ。

 

「シャア・アズナブル、ザク。出るぞ」

 

「カミーユ・ビダン、ガンダムMk-Ⅱ行きます!」

 

「刹那・F・セイエイ、ダブルオーライザー。目標を駆逐する」

 

「ロックオン・ストラトス、ガンダムデュナメス。目標を狙い撃つ!」

 

 それぞれの機体が発進し、シャアのザクとカミーユのMk-Ⅱがコロニーのシャッターを開け、内部へ侵入する。

 

「どこかに潜んでる……」

 

 コロニー内部を飛行する二人にビームが迫る。それを間一髪で躱す二人。

 

「ビーム!? スナイパーか!」

 

「狙い撃つ、狙い撃つぜ!」

 

「森の中か!?」

 

 森に紛れ一方的に射撃する敵のチーム。そこから放たれるビームがMk-Ⅱを掠める。

 

「ここに居たら一方的に撃たれる……」

 

「僕は地上に行きます、大尉は空中に!」

 

 ビームの発射地点に向かい、接近して撃破しようとするカミーユ。が、しかし。その後ろからビームが放たれ、バックパックに直撃する。

 

「後ろ? 狙撃ポイントを変えてるのか!?」

 

「狙撃ポイントを変えた? そりゃ間違いだな。俺はずっとここに居た」

 

「何?」

 

「カミーユ! カラクリがわかったぞ!」

 

 シャアがそう叫んだ直後にMk-Ⅱの背後からダブルオーが強襲する。GNソードⅢの斬撃をなんとかシールドで受けるも、その際にシールドが使い物にならなくなってしまう。

 

「そうか、撃ってたのはこいつか!」

 

「その通りだ。上手くハマってくれたな」

 

 ザクの左腕を撃ち抜き吹き飛ばすデュナメス。それに対しザクはバズーカを構え……

 

「隠れているならあぶり出すまでだ!」

 

 それを乱射し森のエリアを焼き払い、デュナメスをあぶり出す戦法に出た。それを受け飛び上がるデュナメス。二丁のハンドガンを構え連続射撃でザクを攻撃する。なんとか躱すシャアだが何発か直撃を受ける。

 

「ええい……っ!」

 

 バズーカを投げ捨てヒートホークを抜き、デュナメスに肉薄する。斬り上げでハンドガンを斬り、そのまま膝でボディを蹴りつける。

 

「もらった!」

 

 そしてヒートホークで首を刈り、胴体を斬りつけ真っ二つにして撃破する。

 

「くっ、悪りぃ刹那!」

 

「ロックオン!? ……やられたか……!」

 

 その頃カミーユと応戦する刹那はライフルモードで対岸のMk-Ⅱを攻撃し、急接近しサーベルを抜いたMk-Ⅱの攻撃をとっさにソードモードにし防ぎ弾き飛ばす。

 

「この距離は……俺の距離だ!」

 

「カミーユ!」

 

「ライザーソード!」

 

 何百倍にも増大したビームの刃がかわそうとしたMk-Ⅱの足を持っていく。倒れこむMk-Ⅱを尻目にザクにGNソードを構えるダブルオーライザー。一気に接近し斬りかかる。もちろん手に持っているヒートホークのみで対抗できるわけもないので斬撃をギリギリで躱すしかない。一瞬生まれた隙を逃さずお得意のキックを腹部に叩き込み距離を稼ぐが、すぐさまライフルモードに変形したGNソードから強力なビームが放たれる。

 

「距離を詰めても、取ってもダメか……」

 

『やっぱり刹那のダブルオーライザーには勝てねえな……』

 

『……そいつはどうかな』

 

『あんた、チャンプ、だよな? なんでここに……』

 

『ダブルオーライザー……それの弱点はあのツインドライヴにある』

 

 追い詰められるシャア、GNソードを構え突っ込むダブルオー。だが倒れていたカミーユのMk-Ⅱからビームが放たれ……片方のGNドライヴがオーライザーごと破壊された。

 

「何? オーライザーが……」

 

「もらった!」

 

「し、しまっ……」

 

 そしてその隙を逃さなかったシャア専用ザクのヒートホークが胴体を捉え、斬り裂く。

 

「GNドライヴの付け根を……付け根を狙ったのか……」

 

 爆散するダブルオーライザー。こうして勝敗は決したのだった……筐体から出てくる三人。

 

「……刹那が、負けた?」

 

「油断した。どうやらツインドライヴの接着が甘かったようだ」

 

「シャア、3回目のガンプラバトルはどうだった?」

 

「おお、アムロ。お前も来ていたのか……この刹那君のガンプラはとても強かったぞ」

 

「俺もさっきエキシビジョンマッチをして来たところだ。ジムコマンド二機とブルーディスティニー1号機だった」

 

「……まさか一人で三人と戦ったのか?」

 

「そうだが?」

 

「流石だな……そうでなければ張り合いがない」

 

「……シャア。お前が大会に出るのを楽しみにしてるぞ」

 

 そう言ったアムロはバトルルームを出て行った。果たしてシャアはアムロを超え、ガンプラバトルの頂点に立つことができるのだろうか……




次回、Cパーツ『キャスバル専用ガンダム』
君は、生き延びることが出来るか?

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