霊「……わ、た、し」
翔「嬉しがってますね」
霊「この中だったらまだ新入りだからエピソードもらえるの嬉しい」
零「俺等にもあるんですかね?」
卯「あるかな?作者のやる気次第でしょ」
神「想定上だと私まで考えてるらしいが、それが日の目を見るまで作者が持つか...」
霊「何だろうと主役は私です。皆見ててね」
プロローグ ~霊子香る者~
「侵入者は現在エリアZ-3、繰り返す侵入者は現在エリアZ-3」
配線が切れかかっている程の光しかない無機質な灰色のモノトーンの廊下を装備を整えた数人が縦一列に並び銃を構えながら駆け抜けていく。
放送によると侵入者は四人、恐らく連絡棟に続く廊下にある外に続くダストボックス内を通って侵入したと推測される。真っ先に対応に向かった者からの連絡は途絶えたままであった。
ここを警備している全員が柔道や空手の有段者など格闘技において並の人間よりも勝っている。その集団をたった四人で連絡を取るのが不可能なまでに至らせるのは到底人間の仕業とは思えない。
そこで武術に優れた者達にも銃を持たせたのである。それは己が腕に自信があるもの程、侮辱と感じてもおかしくはない命令だった。しかしその配慮が出来ない程、上層部は焦っていたのだった。
「目標を確認、構え!」
その隊の先頭が廊下の先に立つ目を凝らさないとそのシルエットがわからない程に漆黒のマントを頭から羽織っている者を発見し、後方の者に指示した。その命令を受け縦一列に並んでいた小隊は廊下を塞ぐように横へ並び銃を目標に向けて構える。
「撃て!」
先程の者の合図で皆が一斉に引き金を引く。確かに彼らは武術において優れているが日常的に銃の訓練も受けている為、狙いも正確であった。しかし、
「バカな、何故当たらない⁉」
漆黒のマント人間は後退などはせずこちらに向かって巧みに弾丸を躱しながら駆けてきた。壁や天井を蹴り、マントを翻して狙いをつけさせずすぐに小隊に近づいたと思うと、武術をかける間もなく拳や蹴りを入れられその場の全員が一斉に倒れた。
「あり得ない、たった一人だけで...」
そう話す者の銃を取り上げそのマント人間は引き金を引いた。低いうめき声をあげ、撃たれた者は何も喋らなくなった。
「弾は持っておこうかな、殺すならコッチの方が早いか」
そう言ってどこからか取り出したのか背丈程の大きさの鎌を出現させた。それを構え倒れた者達に一閃するとそれについたトリガーを引く。するとすぐさま無機質な灰色のモノトーンの廊下は赤黒く染まった。
電気にも血が飛び散りただでさえ暗い光源は更にその光度を落とす。そこに立ち尽くし返り血を浴びたそのマント人間はまるで死神のようだった。
「リーダー流石に殺り過ぎでは?」
その後ろから同じマントを羽織った女性と思わしき者が先程の者に話し掛ける。
「お前のように心を壊すよりはてっとり早いだろ」
そう答えながら女性の後方を見ると首輪をはめられ、服は剥かれ、四肢のどれかをそぎおとされて虚ろな目をした数人が彼女に対しひれ伏していた。
「相変わらず趣味が悪いな。名前とは正反対だなエンジェル」
「趣味って、死ぬしかない人に生きるチャンスをあげているんですから十分名前負けしてないと思うんですけど、ねぇ?」
返答を要求するように後ろに立っていた二人に話し掛ける。先の二人とは明らかに距離をおいて立っていた二人は苦笑いを浮かべながら女性に返答した。
「えぇ、ごもっともです。しかし、依頼した我らのサブの目に狂いはなかったようですね。たった二人で宇宙の墓場と恐れられる冥王星の監獄を制圧なさるとは」
「まだ制圧ではありませんよ?恐らく上層部は別の所ですし、それにまだ何かしら切り札のようなものが残っていてもおかしくはありませんしね」
その凄惨な光景とは裏腹にもはや人と言うよりは家畜と言うべき連中を引き連れ女性はずんずん進んでいく男性について行った。
ここから先エリアZ-4厳重警戒と描かれた壁を過ぎ、刑務所を思い浮かべる鉄格子が暗闇に浮かび上がって来た。六畳程の狭い空間にそれぞれ部屋が設けられており、廊下に通じるのは鉄格子の隙間のみ。よく見れば出口のようなドアも見つからない。出所させる気などとうにないことが伺えた。
それぞれの鉄格子の先に目を凝らすとうっすらと中に人がいるのがわかる。が、どの者も出して欲しいなどとは懇願せずまるで歓迎するかのように気味悪い笑い顔を浮かべていた。
「ここじゃない、確か一番奥だ」
先は闇で全く見通しが利かない廊下を進んで行くとやがて目の前に巨大な鉄格子が浮かんできた。明らかに他の部屋とは違う。ここにいるのはほとんどがもう世に戻せない程の罪を働いた者達だ。しかしここにいる男だけは違う。
「出ろ、わざわざ迎えに来てやったんだ」
この男だけは生きている間にもう一度世に出さなければならない。つまりそれまでに劣悪な環境に起き、寿命を縮めさせる訳にはいかない。
「……せっかくVIPみたいな扱いを受けてたのになぁ」
「底辺の中のVIPって満足なんですか?」
「……知ってるか?底辺に堕ちなきゃ見えない太陽ってものがあるんだぜ、お嬢ちゃん」
気味の悪い雰囲気に圧倒された女性は男性の後ろに回ってその影に隠れ、小声で話し掛ける。
「私、この人苦手です」
それとは対称的に今まで黙ったままついてきた二人は男の前に瞬時に出てきて膝まづいた。
「「おかえりなさいませ、我らが魔王」」
「ほう、お前らは俺の部下、ってことで良いんだな」
「「はっ、僭越ながら」」
それを見ていた男性と女性は上司と部下と言うよりはまるでカルト的な宗教の教祖と信仰者のように見えた。
まぁそれも不自然ではない。この男はまるで神代の時にも起こらない事をやってのけたのだから。この男が起こした事件はこの宇宙にいる全ての人間が知っていると言っても過言ではない。
遡ること十年前ASMの通信衛星をジャックし、この男は世間の前に現れた。そこで言ったのは地球を意図も容易く破壊する兵器を所持している、と言うものだった。
勿論、最初人々はそんな事は妄言だと信じて疑わず、そんな空想の産物よりもASMの通信衛星をジャックしたことに驚いていた。それにこの男は何も要求する訳でもなかったのだ。世間はただのイタズラにしては凝ってるといった印象でしかなかった。
しかし、その印象はすぐに変わることとなる。この男がその時に最後に言ったのはお試しだ、という言葉。そして画面端から取り出したボタンのような物を押す。
「空を見上げて見ろ」
しかし、人々の目には何も映らなかった。こけおどしか、と誰もが思うなか映像が途切れASMが緊急発表を告げる。惑星ケレースが消滅した、と。
偶然だ、と人々が言う中ASMは消滅直前までの惑星ケレースにあった管理局との通信を公開した。そこから何の異常もなく突如として通信が途切れたことがわかった。当時ケレースは廃棄物等の管理用惑星として開拓されていて、事件当時も惑星には数十万もの人が働いていた。
未曾有の大虐殺を引き起こしたこの男はすぐに逮捕されたが、地球を破壊する兵器に関しての情報は全く喋らず、厳重管理人物とされ、この冥王星の監獄に閉じ込められたというわけだ。
「さあ、さっさと地球に帰ろうぜ」
迎えにこられた分際にも関わらずこの男は横柄な態度のままその場の全員を出口へと誘った。
そして無言で歩き、監獄のような部屋を抜け出すとようやく口を開き尋ねるように言った。
「何だ、コイツ等は」
指を指す先には『天使』が連れていた奴隷のごとき人間達。それらはこの男を見た瞬間、恐怖の表情を浮かべ信じられないと言うように青ざめた。
「あぁ、それらは私のオモチャです。さっきから...」
『天使』が完全に説明するよりも前に部下が持っていた銃を奪い取り、こめかみを撃ち抜く。
「不愉快だ。わざわざ檻の外に出たのに見世物がこんなにも醜いとはな。こんなのの何が楽しいんだ?見た目よりも餓鬼の頭してるんだな」
「別に人の勝手でしょう?」
怖じ気づきながらも『天使』は男に反論した。しかしその答えは更に男の機嫌を悪くさせたようで、銃口を真っ直ぐに向けられる。
「お前の趣味は勝手だがそれを客に対して見せびらかすのは違うだろ。それとも何か、お前がコイツ等と同じ格好で俺を楽しませてくれるのか」
そこまで言われると流石に引き下がることしかできず『天使』はうつむき謝罪を告げた。
「それでいい、また一つ大人になったなお嬢ちゃん」
明らかに挑発を含んだ発言に『天使』は手のひらに爪が食い込む程、拳を握りしめるしかなかった。先程と同じ要領で死ぬ手前まで痛め付けて回復させる事はできる。しかしそれをして自分の組織に不利があってはいけない。
「気にするな」
その心情を察するように『死神』が他の者には聞こえない程小声で告げた。それを聞いて少し楽になった『天使』は握りしめた手を緩める。そして施設の出口へと急ぐのであった。
※ ※ ※ ※ ※
「トロいな、ワープとか付いてないのかこの船は」
「そんな漫画みたいなもの今の世にあるわけないだろ」
行きに乗ってきた宇宙船に戻り、地球へと向かっていた。不思議と管理局の連中は追ってこなかった。自分達では手に負えないと思ったのだろうか。
「おかしくないですか?もうまる二日追っ手どころか宇宙警察さえ現れないなんて。もう地球着きますよ」
「恐らく管理局が情報操作しているんだ。冥王星の囚人、しかも厳重管理人物の脱獄はこの宇宙をパニックに陥れる可能性があるからな」
「……嬉しいね、そんなに有名人か」
男が不敵な笑みを浮かべる。大体この男が兵器の場所と起動方法さえ話せば今にでも殺せるのにと『天使』は思う。
何故今回この男の脱獄にGDが関わる事になったのか。この男は捕まる前に自らが頭となる組織を結成していた。と言ってもほとんど過激な宗教団体のようなものだが。
その組織がGDにコンタクトを取ってきたのだ。勿論最初は反故にするつもりだった。しかし、
「我等が魔王からの伝言だ。あの約束は忘れてないだろうなと」
「えぇ、面倒くさ。あいつもう出てくるのかよ」
と言うやりとりがあった後、仕方なくボスは協力する事にしたのだ。何かがボスとこの男の間にあったのだろう。それにこの男は...
突如サイレンが鳴り響く。どうやら外から攻撃を受けたらしい。中央モニターにはすぐそこに母星である蒼い星とその前に小蝿のように浮かぶ何百もの戦艦が見えた。
「まぁ、流石に無断着陸はできないよな」
すると向こうの母艦からの通信映像が流れて来る。すぐさま男以外の四人は顔にフードを被り顔が認識されるのを防ぐ。
「こちらも無意味な攻撃はしたくない。そちらからの身柄の引き渡しを望む」
そう喋るのは男以外の四人がTVなどでも見たことがある宇宙警察の長であった。ここに来るのをわかっててこの数の戦艦を待機させていたのだろう。
「今攻撃したのはどいつだ?」
「私の指示で最前列の者に軽い牽制用の光線を撃たせた。恐らくそちらの船に影響は...」
向こうが話し終える前に男は最前列の機体に向かって搭載されている砲台から光線を放つ。一定量の光線を浴びた機体は爆発した。
「何の真似だ?」
「馬鹿か、何のためにこんな数用意したんだ。宇宙の塵にするためか?どうせ脅すだけで攻撃なんてしないんだろ?今みたいになっちまうからなぁ。管理局からの命令がなければ俺を殺せないんだろ、この組織の犬め」
さんざん罵った後、男は自分の部下に命令した。
「強行突破だ、とばせ」
それに従うように部下はエンジンの出力を上げた。爆発的な推進力を得た宇宙船は戦艦の軍団に突っ込んでいく。
「勿論避けるよな?兵器の場所を知りたいならなぁ!」
そう言って男は一方的に通信を切る。まさかこの男の命一つでここまで押しきれるとは。やはりコイツは宇宙にとって危険な存在であると『死神』は感じた。
宇宙船は曲がることなく母艦へと向かって行く。やがて母艦の真横スレスレを通り挑発をするように何度も光線を当て続けた。
「ハッハッハ、ざまぁないな」
「お前そんなにエネルギー使ったら動力部の機械がイカれるだろ」
すると、急に船内が消灯し始める。余分なエネルギーを節約させるためだろう。
「言わんこっちゃない、というか宇宙を震撼させる奴が宇宙船の操作方法を何故知らないんだ」
するとモニターの映像さえ切れ、船内は暗闇に包まれた。さらにエンジンが故障し、宇宙船はその場に止まってしまう。
……馬鹿はどっちですか
そう言いたい気持ちをこらえ、『天使』は懐から取り出した懐中電灯を取り出す。それから緊急脱出用の小型カプセルの入り口まで行き、設備に異常が無いかを確認する。
……取りあえずこれは無事ですがこれ五人も入りますかね?
すると船内に大きな揺れが走る。モニターが消灯している為状況が把握できない。恐らくあの母艦に捕まったのだろうが。
「恐らく外部から接続されています。このままでは宇宙警察が入って来るのも時間の問題かと」
「緊急脱出用カプセルは無いのか?」
「こっちにありますが五人も入るかどうか、押し込めば入れるかもしれませんが」
そう言って『天使』は男を光の方へ誘導し、カプセル内を照らして入るように促す。続いて男の部下二人が入りカプセルを起動させると発光し、辺りの物が鮮明に見えるようになった。
カプセル内には不時着用のパラシュートが入っていたが数は三つ程、と言うよりこのカプセルは元々三人用に設計されたようでもう既にもう一人入るのが不可能に思われた。
……リーダーは別に良いですが他の男三人と密着するのはちょっと..
「どうしたお嬢ちゃん、嫌そうな顔して」
「別に」
「そんなに嫌がることないだろ、別に乗らないんだから」
そう言って男はカプセルの入り口を閉じた。
「は?何やってるんですか⁉」
「囮よろしく」
そう言うとカプセルは回転しだし急降下していった。そして大きな音と共にカプセルが切り離された事がわかった。続いて宇宙船の入り口が破壊される音が響く。どうやら警察が中に入って来たようだ。
残された二人は物陰に潜み、携帯端末を取り出す。声を出す事は出来ないのでメールでボスに連絡すると、流石に地上にいないと迎えにいけないとの事だった。
「こういう時にラビットちゃんが居れば相手の母艦を制圧できるんですけどね」
「いないものは仕方ないだろ、宇宙警察って誰か所属していたか?」
「いや、私も全員を把握してはいないので」
GDの関係者が警察内にいたら少しは打開策はあるのだろうが。もしそうでなければ今入って来た誰かを殺して服を奪い母艦に潜入するしかない。武器は『死神』用の鎌が一つしかない。これで母艦を制圧するのは流石に不可能だろう。
そんな事を考えていると銃を持った警官が近づいて来る。殺るか、そう二人が身構えていると、
「リーダー、いますか?俺です『
運が良いことに近づいて来たのはGDのしかも死神部隊のメンバーだった。暗闇でよく顔が見えないがまぁ見ても判別は出来ないだろう。
「マスクマン、いつ忍び込んだんですか⁉」
「二日前ッス」
この男、能力が『
「ちょっと顔変化させますね」
そう言って『仮面男』は二人の顔に手をかざしまるで催眠術でもかけるかのように額の上で円を描いた。その時、仲間の不自然な動きに気づいた他の隊員が近づいて来た。
「おい、新入りお前何して...って俺の顔⁉何d...」
話し終える前に『死神』が取り出した鎌でその首をはねた。物音がしないように寝かせ服を剥ぎ『死神』はその隊員に変装する。
「どうしました⁉」
しかし物音に気づき近づいて来た女性の隊員に『死神』は近づき適当な事を言って自分から注意を反らさせ、死角に入ったところで殺害し、今度は『天使』がその服を剥いで変装した。
そして三人揃ってもう一度入り口付近に戻り、サーモグラフィー付きのカメラともう少し大きな明かりになるものを持ってくると他の隊員に言って母艦の中に潜入した。
勿論目指す先は母艦に積んである非常用脱出カプセルである。既に地球のすぐそばまで来ているので後は射出されて勢いで地球の重力に引かれて地上まで戻ることが出来るだろう。
事前に母艦のマップを頭に叩き込んでおいた『仮面男』は迷うことなくカプセルの場所まで駆け抜け、残りの二人もそれを見失わないように走り、ようやくたどり着いた。
そしてカプセルに乗り込み起動させるころ、やっと事態に気づいた隊員達が放送をかけ、この部屋に向かっている事がわかった。
隊員達がこの部屋に流れ込んで来るころ、そこには既にGDの姿はどこにもなかった。
※ ※ ※ ※ ※
「あぁ着いた着いた、久しぶりの地球」
その頃地球に到着した男はたくさんの部下に囲まれて歓迎を受けていた。その中の代表と思わしき人物が一人前に歩みでて言う。
「よくぞ降臨なされました、魔王様。お久しゅうございます。娘様のデータは既にこちらに」
「おお、久しぶりだなサブ。それに...」
男は受け取った資料の表紙に貼ってある写真を見て懐かしむようにそれをなぞる。そこに写っていたのは男と同じ海のように底に闇を秘めた青い瞳、写真からも見てとれる人形のような顔立ちに綺麗な長い黒髪。その表情は笑いもせずきりりとどこかを見つめているようだった。
「レイカ」
順番が前後しますがこのエピソードは本編第5章最後の「強さとは」の後となり編第6章の最初の話の前の時系列となります。気をつけますがもしどちらかの話で「この単語、このときにはまだ出てくるのおかしくない?」というのがありましたらどうぞお教えください。