俺達と神達と空想神話物語 番外編?   作:赤色の魔法陳

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神「五周年になっちまうぞ!!っていうか私全然出てないんだけど!?」

卯「そんなこと言ったら主人公組以外全くと言っていいほど出てないわ。本編の後書きの為になる情報も無いし」

零「本編がまだ進んでないから番外編の方が時空が先に進んでるって事態が起こってるし」

翔「ウ○娘一周年ももうすぐなんですけど作者3月12日に間に合うんですか?ってか忘れてません?」

麗「この執筆速度で残り約三週間で12000文字...無理なんじゃ...」

神「全ては作者次第...書いて!こんな茶番書いてないで続き考えて!?本文読ませとくから!」


All things are decided by guiding star

(緊急ニュースです。神奈川県江流渡市に隕石と見られる物体が落下したという情報が入りました。落下地点は市街地から少し離れた山中であり、現在警察が人が巻き込まれていないか捜索を開始しております。また落下の余波による建物のガラスなどへの被害も報告されており、江流渡市では消防が救助作業に当たっているそうです)

 

 平日の大学内にてメインストリートに設置されたテレビからその報道が流れているのを多くの学生が見つめていた。勿論私、妖美卯一もその一人だった。

 

 大勢の人がSNSで情報を漁るのと同じように私はGod-tellを取り出すが目的は他の者達とは違う。開いたのは麗華ちゃんとの個人メッセージのやり取りが書かれた画面だ。そこには昨日送られて来た

 

(明日気になる事を確認しに翔と一緒に江流渡に向かいます。何か問題があったら連絡します)

 

というメッセージが書かれている。報道が出てから試しに何回か彼女に掛けてみたが繋がらない。電源が切れているのかと思い翔君の方にも掛けてみるが繋がらなかった。

 

……この隕石と何か関係がある?それとも混線して通じてないだけ?でもメッセージすら送られてこないということは何かあったって事...よね

 

 考えうる最悪の事態を想定していると誰かが私の肩を叩いた。まぁ誰かと言っても私に対してこうやって気軽に話し掛けて来るのは巳羅姉かクリアかあとは...

 

「よっ、卯一。隕石のニュース見た?何か色んな研究室が未知の物質探しに駆り出すらしいよ」

 

 そう彼女、景子だ。その情報をくれた彼女は続けざまに手に持った紙袋を手渡してくる。中身は...ちょっと高そうなお菓子と調味料だった。駅で売っているのを見たことがある。

 

「事情を知らなかったとはいえ勝手に家に上がっちゃってその...零矢くんだっけ?申し訳なかったからさ。お詫びにこれ。二人で食べてよ」

 

 こういう律儀な所が彼女の良いところである。私はありがとうと言いながらその紙袋を受け取るが内心は落ち着きを取り戻せないでいた。

 

……もし二人に何かあった場合、動けるのは私と後輩クンだけ...江流渡に行くか、どうする?

 

「卯一、大丈夫か。何かあった?」

 

 心の焦りが表に出てしまったのか景子が心配の声を掛けてくれる。私は景子には関係なくこっちの問題だから気にしないで、と言うが

 

「なら良いけど...ちゃんと零矢くんとか巳羅さんに相談して抱え込んじゃダメだよ?」

 

 と気を掛けられてしまった。心配を掛けて申し訳ないなと思いつつ私は貰った紙袋を景子に返すと

 

「景子、ゴメン。私江流渡に行かなきゃ。これ巳羅姉に預けておいてくれる?」

 

 そう言って私は大学のエントランスへと走っていく。景子は私を止める事はせず少し驚いた様子で頷いていた。しっかりとした説明もせず一方的に走り出してしまい、これでは前の後輩クンとの喧嘩の時と同じではないかと反省する。

 

……でも景子...長い付き合いだけどあんまり私に怒らないのよね...もしかして見限られてるのかな

 

 そんな不安を抱えながら学内から出ると人目の少ない場所で『赤車』を呼び出す。そして車に乗り込むと零矢に電話を掛けた。

 

「もしもし、後輩クン?今大丈夫?」

 

(えっ...大丈夫ですけど、いきなり電話って何かあったんですか?)

 

「江流渡の件、知ってる?麗華ちゃん達が巻き込まれたかもしれないから今から私達も向かうよ。あと十分したら学校の前まで来れる?」

 

(十分!?文化祭の準備が...いや、なんとかします!)

 

 通話を終えると今度は別の場所から電話が掛かってきた。受信先は大鎌と表示されている。

 

(お久し振りだね、卯一。あんたが頼んでたあの黄色いヘリ...名前何だっけ。え~っとイエローなんとかだったわよね。ソウ、知らない...あ、マキナね。そうイエローマキナ。いつ取りに来ても大丈夫だから)

 

 前に頼んでいた誓石製のアイテム、赤車、青二輪に続くマキナシリーズの三作目、当て字は黄回翼だろうか。今までの物の中で最も巨大なアイテムであり赤車や青二輪では行けない場所でも空から向かうことが出来る。

 

 最早小さな会社が持つには過剰である気がするのは置いておき、私は了解の意を伝えシートベルトを着ける。風を入れる為にウィンドウを少し開けてアクセルを踏むと駆動音が鳴り夕陽を浴びたようなスーパーカーが走り出した。

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 

……早く、早く逃げないと。もっと、もっと街まで行かなきゃ!!

 

 儚げな少女、空星は草木を掻き分け、枝を踏み締めるように山道を走る。後ろを振り向くこともなくただひたすらに街を目指して走る。博士に言われた事をしっかりと守っていたのだ。

 

……見えた!

 

 ようやく視界のほとんどを占める木が消え、ビルが建ち並ぶ街が先に見えた。あともう少しで街に出る。そうすれば...

 

……街に出てどうすれば良いの?

 

 その不安が空星の足を止めた。街に出ても何をすれば良いのかは言われていない。物を買うにも金銭を持ち合わせていない。やっぱり戻って博士を助けるべきなのか。街を前にして空星は振り返り山道に戻ろうとした時、空から何かが降ってくるのが見えた。

 

 それが地上に落ち、少し遅れて耳が張り裂けそうな程の轟音と台風のような衝撃波が空星のいる場所まで及び、その小さな身体が衝撃に耐えられるはずもなく、まるで木から落ちる葉のように空星は宙を舞った。

 

 皮肉にも空星は街の方へと飛ばされ、薄れ行く景色の中でビルの壁が段々近付いて来るのが見えた。死を覚悟した空星は目を瞑るが

 

「危ないッッ!!!!」

 

 という声がした後、空星の身体は誰かに抱き抱えられ壁へ激突する事はなかった。薄れゆく意識の中、空星は自分を助けてくれた人物の顔を見る。お世辞にも清潔という雰囲気は感じられない無精髭にぼさぼさに伸びてはねた髪の毛。しかしその風貌はどこか彼女の良く知る人物に似ていた。

 

「博士...」

 

 少女は薄れゆく意識の中かすれた声でその人物の名前を呟く。博士と呼ばれた男――天野流星はその呼びかけに少し驚いたが少女が意識を失ってしまったため救急車を呼ぼうとするが運悪く携帯は充電切れであった。

 

……どうする?名前もわからないし近くに親らしき人物も見当たらない...誰かいないのか!?

 

 流星は少女の息がまだあることを確認し、あたりを見渡す。丁度この道を通って非難しようと曲がってきた人を見つけ、その人に119番通報を頼んだ。現在江流渡市各地でガラスによる怪我人が119番通報をしているため到着に少し時間がかかったが駆け付けた救急隊員に少女は担架で車内に運ばれた。

 

 その際に左腕を怪我していると指摘されそこで流星は初めて自分も怪我をしていることに気づいた。空星を庇った際に壁に左手を打ち付け出血していた。軽症であったが少女の付き添いとして同行を促されたため、少女のことが気がかりだった流星も救急車に乗り込んだ。

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 神聖学園高校の付近に止まった人の目を引く赤いスポーツカー、その車内にサングラスを掛けた赤茶色のショートボブの美人が誰かを待つようにあたりを見渡していた。やがてこちらに小走りで近づいてくる制服を着た少年を見つけるとさっきまで張りつめていた表情が少し緩んでしまう。

 

「お待たせしました」

 

 少年が助手席のドアを開けると運転席の少女は頬を両手でマッサージしていた。

 

「悪いね後輩クン、急に大丈夫だった?」

 

 指を動かしながら少年――零矢にそう尋ねると荷物を後部座席に置きながら零矢は微妙そうに答えた。おそらくまだ仕事が残っていたのを切り上げて来てしまったのだろうという少女――卯一の推測は当たっていた。

 

「まぁ、江流渡に行くなら一人より二人のほうがいいでしょうし仕事は後に回せますからね」

 

 シートベルトを締めた零矢がそう答えると卯一は車を走らせた。夕日を浴びながらドライブデート、はたから見ればそう見えるかもしれないが今はそんな悠長なことを言ってられない。

 

 運転中も零矢は何度も翔や麗華に電話を掛けるが一向に繋がらない。焦りや苛立ちが混ざり零矢が携帯の液晶を強くタップしているとそれを見兼ねた卯一が

 

「横にガム置いてあるから食べて良いよ」

 

 と横目で指示した。零矢はコンソールに置いてある容器を右手に取ると蓋を開いてガムを取り出し錠剤を飲むように口に放り込む。味は口の中が涼しくなるようなミントで零矢の焦燥感は少し和らいだ。ティッシュを取るついでにガムを戻そうとすると

 

「ちょいちょい」

 

 卯一が目線は前方のまま少しだけ零矢の方を向き口を開けた。私にも、という意味は理解したがその仕草に零矢は少しドキッとしてしまう。閉じた容器の蓋を再び開けガムを取り出すと親指と人差し指で摘まみそっと卯一の口に近付ける。

 

「ん、ありがとね」

 

 唇の上に乗ったガムを卯一は口の中に落とすと再び顔を戻し運転を続けた。一方零矢は

 

「暑いんで窓開けて良いですか?」

 

 と卯一ではなく夕日を浴びて赤く染まる街並みを見ながら言った。それもそのはず、女性経験のない零矢に取って今のようないわゆる食べさせるという行為はレベルが高かったのだ。

 

……唇柔らかかったな

 

 卯一の返事が戻ってくるまで零矢は卯一の唇の感触を思い出すように指を擦る。

 

「私も暑いと思ってたから良いよ」

 

 その許可を聞いて零矢はウィンドウを開けた。吹き抜ける風がミントのガムと同様に身体から熱を流して行くのを感じた。それは卯一も同様で

 

……ちょっと大胆過ぎたかな...恥ずい

 

 夕日とはまた違う紅く染まった耳が元に戻って欲しいと思いつつ横髪をかき上げた。江流渡に着くまで二人はティッシュを渡す時でさえも無言のままだった。

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 照り付ける太陽の光がアスファルトに反射し二人の体温を上げる。その暑さが気にならないほど二人の脳はショートしたかのように動かず電光掲示板を見ながら呆然と立ち尽くしていた。

 

 テレビでアナウンサーが知らせる日付も、スーパーに掛かっている垂れ幕も、電光掲示板に流れる文字も、誰かに捨てられた新聞の表紙も、どこを見ても全て今日という日が2315年5月18日だという事を実感させて止まない。

 

 これが夢やドッキリでないとすれば説明が着かない。タイムスリップなどフィクションの中での体験であり、そしてそう考えている人がほとんどの中で実際にタイムスリップをしたらどうなるか。

 

 答えは簡単、二人のようにフリーズしてしまう。自身のタイムスリップの事実に理解が追い付かず脳はその理屈を求めようと躍起になるが求まるはずはない。

 

 バタフライエフェクトという事象を知っているならばなおさら迂闊に動くことは出来ない。自分達の一挙一動がこの先の未来に甚大な影響を与えてしまう恐れがあるからだ。

 

 しかしいつまでも立ち尽くすわけにはいかない、それはそれで騒ぎになってしまう。取り敢えず広間から離れようと二人が脚を浮かせた瞬間、

 

「お兄ーちゃん!早く!」

 

 他愛もない呼び声、しかし翔に取ってその声は聞き覚えがあり思わず振り向いてしまう。

 

 その声を発したのは小学生にも満たない女児、顔が隠れてしまうほどの大きな麦わら帽子に白いワンピース、そしてその子を追いかけるように小学生ぐらいの兄が走っていた。

 

「あ...あぁっ...嘘、そんな...かなッ」

 

 思わず名前を呼びそうになってしまう翔の口を麗華が手で止めた。そして小さな声でダメ、と言う。そこで落ち着きを取り戻した翔はその名前をなんとか飲み込んだ。

 

 二人はまだ夢を見ているような感覚だった。願った死者が甦り、幸せな時間のまま止まっている。せめて夢のままであって欲しい、どうか覚めないで欲しい、そう翔は懇願した。

 

 しかし過去に囚われそうになっている翔に麗華が声を掛ける。

 

「落ち着いて...これは過去。もう戻って来ない...囚われちゃだめ。私達は帰らなきゃいけないの」

 

 それを頭の中で理解しつつも翔は煮え切らない様子で拳を握り締めた。帰る方法など検討も着かない、そもそも帰れるのかすらわからない。

 

 無力感を感じながら二人は人気のない路地裏へと移動した。建物の陰に隠れ日の当たらない路地裏はまだ日中だと言うのに陰湿な空気が漂っていた。

 

 翔の落ち着くまで待ってから二人は今の状況を確認するように順序だてて復唱する。何度口にしたところで何故こうなっているのかはわからないが二人なりに解釈し、次の行動を定める。

 

「取り敢えず元の2322年に戻る方法を考えないと。問題はどうやって戻るかだけど」

 

「タイムマシンとかだったら来た時と同じようにすれば帰れますが、今回は何でタイムスリップしたのかわからないのでどうにも...」

 

「もしかしたら私達が倒れてた場所に次元の狭間みたいな物があって、それから弾き出されたとか...」

 

 段々とSFチックな単語が出揃ってきた所で二人は言葉を止めてしまう。

 

……わからん!!

 

 その手の話題が得意そうな某ショートカットの秀才はこの場にいないため二人がどう憶測を立てた所でそれが合っているのかすら判断できない。

 

「取り敢えず...戻りましょう」

 

 考えるのを諦めた二人は手掛かりが残っていそうな最初に目覚めた場所まで戻ることにしたのだった。

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 

……ここ...どこ?

 

 目覚めると真っ先に見えたのは白い天井、そして液体の入ったパックだった。どうやら気を失っていたらしく目を擦りながら起き上がろうとすると自分の腕から細い管が伸びているのに気付く。

 

 その管は腕にテープで止められていて、そこから冷たい痛みのような物が腕の中に入って来るような感覚がしていた。咄嗟に外そうとすると管の中は段々と赤くなっていった。

 

「あぁ、ダメダメ。勝手に外そうとしちゃ。ちょっと逆流して驚いたのか?」

 

 気付くと部屋にリンゴを持った男が立っていた。彼は私を助けてくれた人だと思い出しながらも少し警戒しながら目を合わせた。やはり天野博士とどこか雰囲気が似ている。

 

「君名前言える?」

 

「空星...」

 

「名字は?」

 

「名字...?無いよ。私捨てられたから。親の顔も覚えてない」

 

 警戒心を解くように笑顔を向けていた彼の顔は私の一言で曇ってしまった。

 

「でも拾ってもらった。天野博士に。あなたは博士のこと知らない?」

 

 私の質問で更に彼の顔が険しくなった。その反応から彼は天野博士の事を知っているのではと疑ったが

 

「さぁ...どうかな。俺も天野性だがその博士の下の名前は?」

 

 とはぐらかされてしまった。しかし、天野性と聞いてまさかと思い博士の下の名前を教えると

 

「天野...星博士」

 

「俺の親父だ」

 

 私の答えに食い込むように彼は言った。そこには自分の親だとわかり感嘆や安堵を表す声色ではなく軽蔑のような雰囲気だった。

 

「責任追わされて失踪して生きてるか死んでるかもわからなかったが...実際生きてるってわかっても嬉しいとは思わないな」

 

 目の前に私がいるのに彼の目はどこか遠くを見ていて、独り言のように呟く様子は皮肉にも父親の天野博士に似ていた。

 

「あぁ、悪い。君には関係ないもんな」

 

 だが我に返ってきたのかすぐにその狂気にとらわれたような表情は元に戻りぶら下げたポリ袋からピーラーを取り出すと手に握ったままのリンゴの皮を剥き出した。

 

 手元を見ると曲線を描くリンゴの側面に少しだけ凹んでいる箇所があった。指が食い込んだ跡だろうか。包丁要らずで彼はリンゴを分けた後、種を取り除き凹んだ部分がない箇所を私に分けてくれた。

 

 お腹が空いていた為、一口で頬張ったが少し苦く感じた。

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 

「戻ってきたは良いけど...何もない」

 

 二人が目覚めた場所まで戻ってきたが辺りを注視しても特に不審な箇所は見当たらなかった。翔がなんとなく空中に手を添えて見せるが何も感じない。

 

 シュールな光景だなと思い苦笑いを浮かべる麗華だったがふとあることを思い出した。今日が七年前の隕石が落ちる日ということはこの場所に七年前の自分が来るのではないか、と。

 

「過去の天野博士を探せば何か手掛かりが...あ、ヤバい。誰か近付いてくる。一旦離れましょう?」

 

 もし出くわしてしまったら、過去の自分が今の自分を認識してしまったらどうなるのか。タイムパラドックスによりこの時間から弾き出されるというようなSFチックな結果となるのか、それとも...

 

「麗華さん...?」

 

 呼ばれているのに気付き麗華が顔を上げるがその目線はすぐに翔ではなく、近付いてくる人物の姿にスライドする。人気のないこの場所で顔まで覆い隠すような黒いマントを被るその姿はまさしくGDであった。

 

 直ぐ様翔の手を引き麗華は近くの茂みに隠れる。異変に気付いた翔と共に茂みの中から息を殺して様子を伺うと、奥から十人程のGDも着いてきているのがわかった。

 

「もしかして七年前...今日隕石を落とす為に来たGDですか?」

 

「多分そう...だね」

 

 翔の問いに適当に答えながら麗華は目を凝らしてマントの集団を見るがその中に自分と思われる人物は見当たらなかった。

 

……ここにはいない?

 

ポキッ

 

「「...え?」」

 

 だが、息を潜めながらも自分を探すのに夢中になってしまった麗華は思わず枝を折ってしまう。その拍子に茂み全体が揺れてしまい何人かがその異変気付きこちらへ近付いてきた。翔はともかく素顔が割れてる麗華はバレれば一大事である。

 

(どうするんですか麗華さん!?)

 

(...今から言うことに黙って従える?)

 

 小声でそうやり取りすると麗華はツインテールをほどき直ぐ様ポニーテールへと変え、翔の上に覆い被さる。

 

……未経験だから正しいかわからないけど...確か体位はこんな感じで...

 

 シャツを腰したまで引き延ばし、ホットパンツを隠すことであたかも履いていないように見せかけ、腰を翔の股下へギリギリまで落とす。

 

(腕持って動いて!)

 

(いや流石にこれは...)

 

(早く!!)

 

 麗華は翔の胸元辺りに両手を付き、肘を掴ませた。そしてぎこちない様子で二人は腰を浮かすように動き始める。

 

「おい、止めとけって。どうせ動物だろ」

 

「いやでも確認を」

 

 GDが二人麗華達のいる茂みへと近付くと何かが動いているのに気付いた。動物ではなく人でありポニーテールの女が何かに跨がって上下に揺れている。

 

「...ん...んあ...あん」

 

 微かに聞こえる声は機械的にも思えたがそれは間違いなく男女の情事の真っ最中の光景だった。気になった一人が男の顔を確認しようと前に踏み出そうとするがもう一人が通報されても困ると諌め元の場所へと戻っていく。

 

「行った?」

 

「流石にまだ...」

 

 翔がまだ、と答えたが背後に気配を感じなくなった麗華が振り向くとGDの集団は別の道へと歩いて行った後だった。安心感を覚えた麗華は立ち上がりながらポニテを崩すと元のツインテールへと結び直す。

 

「立たないの?」

 

「えっ!?いや、違...」

 

 何故か立ち上がらず脚を閉じて体育座りを続ける翔に麗華は問い掛けるが翔は目線を反らしながら小声で呟いた。その横顔をよく見ると耳の方まで熱を帯びた赤になっていた。

 

 そこで初めて麗華は今までの自分達の行為がどういうものだったかを瞬時に理解した。少し遅れて恥じらいの熱が電撃のように身体中の表面へ伝わっていく。

 

 何より麗華が恥ずかしかったのがあの緊急時に真っ先に思い付いたものがそういう疑似行為だということだ。それではまるで普段からそういう妄想をしていると誤解を与えかねない。

 

「だっ、誰とでもするわけじゃないし...経験ないから」

 

 誤解を解くために弁明しつつ今度は麗華が目線を反らした。よくよく考えれば自分が翔に聞いた質問が全てダブルミーニングであることに気付いたからだ。

 

……でも何でしゃがんだまま...あっ...

 

「こ、この後どうしましょうか!?」

 

 麗華の思考を遮るような大声で翔が叫ぶ。

 

「今みたいにこの場所にGD達がいるなら捜索がかなり困難になるでしょうし...それに」

 

 翔が目線を麗華と合わせると能力を発動させようとするも使用する際の合図である右目の発光が視認出来なかった。

 

 それは断じて日中だからというわけではない。“聖なる力”を持つ者が放つ右目の光は炎天下であろうが他者から視認出来る。つまり...

 

「予知が使えない...ってこと?」

 

「移動中に何度か試してみましたが...集中力不足かな...」

 

 まさか自分も、と思った麗華が能力を使用するが難なく使用する事が出来た。ならば能力が使えないのは翔だけ。この広い林の中で翔の能力無しで捜索は絶望的である。

 

 更に過去の天野博士を探すことはその途中でGDに出くわす可能性が高いことを意味する。下手に戦闘でも行ったらバタフライエフェクトどころではない。行動するなら二人で慎重を要するしかない。

 

「二人で...行動した方が安全なんでしょうけど二人ともGDに発見された時が厄介ですね...というか過去ですから天野博士はまだ信頼を失ってないはずですから小屋みたいな場所にいるかどうか」

 

 仮に過去の天野博士と会った所でタイムスリップの手掛かりとなるようなものが見付からなかったら、自分達はどうすれば良いのだろう。

 

 そんな翔の不安は晴れることはなかった。しかしこのままでは後数時間で隕石は落ちて来てしまう。過去の遺物となるぐらいなら、豆粒のような希望に賭けるしかない。

 

「翔...覚えている?あの雨の日に私に掛けた言葉。生きてくには未来に賭けるしかない日もある...まだ望みは残ってる。二人で未来に帰ろう」

 

 麗華は屈みながら右手の小指を差し出した。それに応えるように翔はぎこちない様子ながらも小指を差し出す。二人は互いに指を絡ませると手を揺らす。

 

 そして二手に別れて麗華が林、翔が街でそれぞれ天野博士を探す事にしたのだった。手掛かりがあったらもう一度この場所に戻ってくる。そう約束した二人は互いに背を向けて歩き出した。

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 

「さてと代わりに医療費を負担して退院出来たがどうするか」

 

 隕石落下やその二次災害による負傷者が次々と運ばれてくる為、気絶して大事に至るような外傷もなかった空星はすぐに退院することが出来た。医者からは経過観察と急に具合が悪くなったらすぐに救急車を呼べという事を話されたものの、当の本人は元気そうであった。

 

「親父を探すにもこの状況じゃあな。恵も多分忙しいだろうし...どっか開いてるファミレスにでも行くか」

 

「うん」

 

「あ、そうだ。一応他の人に一々説明するとややこしくなるから嫌かもしれないけど外ではパパって呼んでくれ」

 

「わかった、パパ。私お腹空いた。ファミレスの前にお菓子食べたい」

 

「可愛げがあるのかないのか...演技が上手いのは褒めてやるか...」

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 

「あ、いたいた」

 

 隕石落下によるニュース速報で出ずっぱりだった草野がようやく休憩をもらえ、マスクと伊達眼鏡で変装しつつもよく待ち合わせをするファミレスに向かうと天野が座っていた。

 

「結構服汚れてるけど大丈夫だった?」

 

「あぁ。ところで恵、話があるんだが」

 

「な!?何かしら?」

 

 とうとうプロポーズの言葉が来るか、と若干動揺してしまった草野が改まった様に両手を膝の上に置いて座り直す。するとその時

 

「パパ、メロンソーダ」

 

 ドリンクバーから帰って来た空星がコップをテーブルに乗せた。そして天野と反対の席に座ろうとするも別の誰かが座っていることに気づく。

 

「そこ、私の席。パパこの人誰?」

 

「あー、空星。取り敢えず隣においで」

 

 プロポーズだと期待していた状態から一転、面識のない子供が自分の彼氏のことをパパと呼んでいる状況下に置かれた恵は情報を処理することが出来ずしばらく固まってしまう。

 

「えっ?ん...えっと...え?連れ子だったって事?」

 

「いやそれは違って...」

 

「はい、こちらお子様セットとなります」

 

 質問したと同時に店員が料理を運んで来て空星の前に置いた。思わず二人は黙り店員に軽く会釈をする。

 

(違うってどういうこと?)

 

(この子はな...)

 

「こちらおもちゃとなっておりますのでお好きな物お一つお選び下さい」

 

「これ」

 

 空星は渡された籠の中からストラップが付いた小さいポーチのような物を取ると天野に見せ付けてくる。

 

「良かったわね~、お嬢ちゃん」

 

「空星ですけど」

 

「ご、ごゆっくりどうぞ...」

 

 これ以上威圧感を抱かせないために草野は笑いかけるも先程までの行動が嘘だったかの様に冷めた様子で空星は応えた。いたたまれなくなった店員がそそくさとおもちゃの籠を持って奥へ戻っていく。

 

……何なのこの子?天野君の前で猫かぶってるつもりなの?っていうか私だって天野君の隣に座りたいのに

 

 大人げなくも本来自分が収まりたいポジションに居座っている空星を草野が睨んでいると空星は備え付けのナプキンとその横にあるポールペンに手を伸ばした。

 

「落書きか?冷めないうちにご飯食べろよ?」

 

 手が届かない空星に代わり天野がボールペンとナプキンを取ってやると空星はそれを置いてお子様セットを食べ出した。

 

……じゃあなんで取ったのよ

 

 よくわからない行動に草野は困惑しつつもこれでようやく天野と話が出来ると思い、天野へと向き合った。

 

(隠し子だとでもいうの?)

 

(違う!この子は親父が拾った捨て子らしい。隕石落下の衝撃波に巻き込まれてた所を俺が助けたんだよ)

 

(でもこの子あなたの事をパパって呼んでたじゃない)

 

 小声で話しながら空星の方を見ると既に半分以上食べ終わっており黙々と食事を続けていた。

 

(それは人目があるから俺がこの子にそう呼んでって言っただけだ。血なんか繋がっちゃいない。第一俺が君以外と子を儲けるわけがない。君に捨てられることはあるかもしれないが俺から君を捨てたりなんてしない!)

 

 何気にプロポーズの様な台詞を天野から言われた草野は思わず赤面して黙ってしまう。

 

……私だって捨てたりしないし...どうせならもっとちゃんと...あれ?

 

「空星ちゃん...いないけど」

 

 目線を反らした草野が空星の方を見ると既にそこに彼女はいなかった。既に食べ終わったであろう皿と何かを書いたであろうナプキンが残っていた。

 

 そこにはお世辞にも綺麗とは言えないひらがなで

 

 はかせをさがす ごはんありがとう ぱぱ

 

 と書いてあった。すぐに店員に確認すると一人で出てったと聞き、草野に会計を肩代わりした天野が外へ飛び出す。

 

……探すって言ったってまさか落下現場に行くつもりか!?ここから結構離れてるし子供の脚じゃ一時間は掛かる。まだ近くにいれば良いが街がパニックになってる中子供一人は危ないだろ

 

 大通りに出て辺りを見渡すが空星らしき少女はどこにも見当たらない。そこで会計を終え追い付いて来た草野が合流する。

 

「いた?」

 

「いない。そんなにすばしっこいか、子供って」

 

「ご飯食べたら元気でしょ、私右、天野君左。行くわよ」

 

 そう言って草野はハイヒールにも関わらずそそくさと右の道へ消えていってしまう。残された天野も休んではいられないと駆け気味で左の道へ進む。

 

……こんなになるなら日頃から研究室籠りしてないで運動すれば良かったぜ、何で恵まであんなに元気なんだ...

 

 しばらく走っていると分かれ道があったが空星は落下地点を知らないと予想した天野は人気の多い道を選び曲がった。

 

 すると先の方で子供の声が聴こえたので天野が目を凝らすとカップルらしき男女に子供がぶつかって転んだのが見えた。その子供は肩から安っぽいポーチを下げていて、それはまさに先程空星がおもちゃの籠から選び見せ付けてきた物と同じだった。

 

 すぐに草野にメッセージを送ると天野は空星が難癖を付けられているのかと思い、名前を叫びながら走り出す。

 

「空星っっッ!!!!」

 

 その呼び掛けに気付き少女――空星は通りの奥から走ってくる見知った人物に気づく。

 

 息を切らしながら空星とそのカップルの間に割り込むと

 

「娘がぶつかってすみません、何か壊れたりしたのなら 弁償します。だから娘には手を出さないで下さい」

 

 と叫びながら天野は頭を下げる。騒ぎを聞き付けた周りの人が寄って来るが

 

「ちょっと待って下さい、俺は手を出してなんかいません。この子がぶつかって来て転びそうになったから助けただけで...あ、お腹空いてるって言ったんで買ってあったおにぎりはあげましたけど」

 

 目付きの悪い男が外見に似合わず冷静に説明すると女の方がギャラリー達に勘違いです、と説明し天野へ向き直ると

 

「勘違いさせてしまい申し訳ありません。状況は彼が説明した通りで恐らくそれを遠目で見た時に絡んでいると誤解したかと」

 

 と説明した。空星の方を見ると外傷はおろか擦り傷すら見当たらない。呑気におにぎりを頬張っていた。

 

「私なら平気、ぶつかって転びそうになった時にお兄ちゃんが守ってくれたし...ん?お兄ちゃん?」

 

 空星は急に言葉に詰まると何かを思い出したように目を見開く。

 

「あの血だらけのお兄ちゃんとお姉ちゃん...今も戦ってるのかな」

 

「血だらけのお兄ちゃんとお姉ちゃんって?」

 

 女が空星に聞くと頑張って思い出しているように頭を抱えると

 

「ボスって呼ばれてた大男と博士と戦ってた。黄色のネックレスを付けえてたお兄ちゃんと緑色のネックレスを付けたお姉ちゃん...」

 

「それって...」

 

 女が携帯端末を取り出そうと手に持ったバッグの中を探しているとそこへ反対方向へと行っていた草野が合流した。ハイヒールのまま走り続けた草野はさすがに疲れたのか息を切らしながら天野の肩に手を置いた。

 

「あ...えっとおばさんも来たんだ」

 

「はぁ!?こっちはあなたを必死で探してたのにお、おばさんですって?まだ20代なんですけど‼っていうか天野君のことパパって呼ぶなら私のことはママって呼んでもいいんじゃないの?」

 

 携帯を取り出していた女がその会話を聞いて不審がる。空星が草野のほうにだけ懐いていないこと、身だしなみが整っていないこと、満足に食事を与えられていないから自分たちのおにぎりなどを欲したのではないかと。女は男に何か耳打ちすると、男は少し戸惑いながらも天野たちにこう尋ねた。

 

「失礼ですがあなた方は本当に親子なんですか?なんだか違和感を感じるんですけど、言動とかその子の恰好とかいろいろ...もしその子をかくまっているとかならこのまま見過ごすわけにはいかないんですが」

 

 臨戦態勢に入るように男が腰を入れる。それを見て思わず女が男につっこんだ。

 

「そんなバリバリに威嚇しちゃダメだって後輩クン」

 

「いやウィッチさんが探れって言ったんでしょう?」

 

「んー?やるかー?」

 

「また射撃ですか?」

 

 男と女が睨み合うが決して険悪な雰囲気ではなくどこかふざけあっているようだった。そのやり取りをどことなく自分と天野のやり取りと重ねた草野は羨ましく思いながらも今なら面倒事を避けられるのではと天野と空星の袖を引っ張る。

 

 その意図に気付いた天野が空星を誘導しつつこっそりその場を離れようとする。だが言い争ってると思った二人はどこからか取り出したおもちゃの様な銃を取り出して草野達へと向けた。

 

「結局こうなっちゃうの?」

 

「逃げ出そうとしたってことはそういうことっすよね?」

 

 気付けば周りのギャラリーなど居ず、辺りにいるのは自分達のみ。そこに銃口を向けられたとなれば最早抵抗は虚しい。天野と草野は両手を挙げ、それを見た空星も二人の真似をして両手を挙げた。

 

「これ傍目からみたら私達の方がヴィランね」

 

「後で交渉術教えて下さい」

 

「勿論」

 

 軽口を叩きあった男女は手品の如く手に持った銃を一瞬で消すと

 

「少し話しましょうか」

 

 と女が提案した。断れるはずもなく天野、草野、空星の三人はカフェへと連行された。

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 

「なるほど...銃向けてすみませんでした」

 

「威嚇してすみませんでした」

 

 天野達から事情を聞いた卯一と零矢は非を詫びながら頭を下げた。それをいえいえ、と天野が申し訳なく止める。

 

 午後八時現在、零矢、卯一、天野、空星の四人はカフェにいた。閉店間近のため客は自分達以外におらず、従業員も食器を洗う一人だけだった。草野は仕事の為に一旦テレビ局に戻っている。説明の為に草野が江流渡名物のアナウンサーであること、天野と恋仲であることを明らかにしたが零矢と卯一は黙っていることを約束した。

 

「あ、それで空星ちゃん。さっきのことなんだけどお兄ちゃんとお姉ちゃんってこの二人かな?」

 

 卯一がGod-tellの画面を見せる。そこには以前パーティーをした時に撮った翔と麗華の写真が表示されていた。空星はその画面をまじまじと見つめると、うんと頷いた。

 

 卯一は神妙な顔つきで、そっかと呟くと零矢に合図をして退席の準備をし始める。

 

「私達そのお兄ちゃんとお姉ちゃんを探しに来たんだ。だから助かった、ありがとね」

 

 そう言って卯一は空星の頭を撫でるとお金を机の上に置いて零矢と共に立ち上がった。そして席を外す前に改まった様子で天野に向き直ると

 

「それととても言いにくいですが今後空星ちゃんをそのまま育てるのは難しいと思います。法律を考えれば一度児童施設に預けてから養子縁組をするのが最適解です」

 

 そう告げた後、二人はお辞儀をして店を出ていった。残された天野は卯一の言葉がどこか頭の中で反響していることに気付き目を瞑る。

 

……俺はこの子のことを娘の様に思ってるのか?たかが知り合って数時間の子を。俺と同じで親父に捨てられたような境遇だから...

 

 そんな天野の思惑も露知らず空星はオレンジジュースを飲んでいた。でもこの子のことを考えるなら施設に送った方が幸せなのか、そんなことを考えながら机に置かれたお金を集め、先に会計へと向かうのであった。

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 サイレン鳴り響く丘の麓、闇に紛れる真紅の車。人目に着かなそうな道の脇に止まった車の中には二人の男女。車を降りた二人は赤車をGod-tell内にしまうとゆっくりと人混みの方へ歩いていく。立ち入り禁止の黄色いテープの前でできた人だかりは老若男女様々であり、中には報道関係者とみられる人もいた。ギャラリーの目的は有名な大学の教授や専門家、リポーターと様々であった。

 

 飛び交う野次馬の声を聴き分けながら二人は携帯端末で江流渡のニュースを確認する。隕石の落下における重軽傷者の確認を行っていたが現場付近での死傷者は確認できなかった。二人が捜索している一組の男女の情報は未だない。

 

……隕石が落下してから結構立つけど未だに連絡なし。近くの病院にもいないみたいし、何か連絡の取れないわけでもあるの...?それとも発見されてないだけで...直撃したとしたらそれもあり得る...

 

 最悪の可能性を卯一が想定していると零矢が近づいてきて肩をたたいた。

 

「これから調査機関や管理局なんかも来るそうです。クリアさんの能力もなしに隕石の落下地点を調べるのは困難でしょうね」

 

「仕方ないわ。一度離れて赤車でこれからのことを決めるわよ」

 

「了解です」

 

 再び元の場所に戻り赤車を召還すると卯一は運転席に零矢は助手席へと乗り込む。明日はまだ平日の金曜日。二人ともそれぞれ学校がある。見つからなかった場合どこかで切り上げなければいけない。付近のビジネスホテルもこの緊急時ではこの時間からの宿泊は難しいだろう。

 

 じゃあラブホテルかと言ったらそれはそれで問題がある。それならば車中泊ぐらいしか選択肢は残ってない。零矢にそう伝えようとしたときカーナビの位置に‘神’が現れた。

 

「夜のドライブデート中悪いが急いでこれを見てくれ!」

 

 そういうのではないけど、と二人は口で否定しつつもカーナビの画面を眺めた。そこには外国語で書かれた記事が表示されており付属する写真を見れば宇宙関連のことが書かれていることは零矢にはわかったが書かれている内容はさっぱりだった。

 

 この内容を尋ねようと零矢が卯一の方を見ると画面を食い入るように見ていたがその横顔からはありえないものを見たという恐怖のような感情も読み取れる。

 

「ウィッチさん...?」

 

「ASMによると本日未明、唐突に地球の引力に引き寄せられるように衛星が移動していることが判明した。このままでは地球への衝突も危惧されており、そのまま行けば考えられる衝突時刻は十二時間後。場所は日本の神奈川県...江流渡市」

 

 明日の日付は5月18日、七年前のメテオデイと同じ日である。数奇な運命と言うべきか、それとも何か人為的なものが働いているのか。

 

「この記事もあと一時間もしない内に一般公開されるでしょうし、朝にはここら一帯はゴーストタウンになるでしょうね」

 

 だから逃げよう、そう卯一は零矢に提案するつもりだった。だが零矢の表情を見ればその一言がつい詰まってしまう。零矢の性格を考えれば翔や麗華達、更に自分と何ら関わりの無い人々を見捨てるような考えは最初からないだろう。

 

……止めましょう...きっとキミはそう言うんだろうね。段々わかってきたわ。キミがその覚悟を決めているなら歳上の私も...

 

「それって...止められますk...」

 

「止めるわよ...私達で。この街で七年前と同じ惨劇は繰り返さない。でしょ、後輩クン?」

 

「はい!!」

 

 卯一は無計画で零矢に発破を掛けてしまった事を若干後悔しつつもGod-tellを使ってどこかへと連絡を取るのだった。

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 

「成功したのか失敗したのかわからないが...多分死んでないだろ。隕石ぐらいで死なれちゃ困るからな。さてと...」

 

 ボスは一休みを終えてその重い腰を上げると目の前の空間を歪める。割れた空間内に片足を入れながらも不穏な空気を察知したボスは一度動きを止めた。

 

……()()()()()かよ、今出くわすのはヤバいからさっさと帰るか

 

 身体が全て割れた空間内に入るとガラスが砕ける映像を逆再生するかの様にひび割れた空間が元通りに戻る。そこにはすでに人の気配はなく草が踏みつけられた形跡以外は人がいたであろう証拠はなかった。




十分ほど遅れてしまった...
次の更新は本編の方だと思うので番外編はまたお預けです。
早筆になりたい!
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