零「現実世界では遅いがな、ゼロワン終わるぞ」
翔「次のライダーってセイ...」
卯「ちょっ!?ネタバレダメッ!ってかまた名前被りじゃん...」
神「神事屋M-SのSはSaverのSだもんな」
零「そんな後付けみたいな設定誰が...ってもう全部言ってるじゃんか!伏せ字はどうした作者、本編にヤバイ単語出てきたら入れるくせにここには入れないのかよ!?」
霊「ねぇ...私の邪魔しないでよ。はぁ、今回は●※*#だから...」
翔「何か急に声が聞こえ辛く...ってなぜここで伏せ字?」
霊「作者...覚えとけよ(怒)」
「コラー!!止まりなさい!!」
複数の警備員が誘導棒を掲げて合図する中、そのバイクは無謀にも直進してくる。やがて止まる気配が無いと警備員は気づくが時既に遅し。衝撃に備え顔を覆うとバイクとは違う何か弾きとばすような衝撃を受け、道の端に転がされる。
「おい!大丈夫か!?お前銃で撃たれたんだぞ!」
「えっ!?いや着弾はしてないみたいだけど」
「何て連中だ」
と呟いた警備員は耳に着けた通信機で警備本部に報告する。
「ただいま、暴走したバイクが管理局内に侵入!一台ですがサイドカーがついており、三人が乗車しております!バイク後方の者は銃を所持、既に止めに入った警備員に向けて発砲しています!」
それを耳に挟んだバイクの後ろにまたがっている少女こと卯一が、
「連絡行ってるみたいだし、後は針太郎さんが中央棟に移動させたであろう警察の皆さんがぞろぞろ来るね」
とヘルメット越しに言った。
このヘルメットは防音機能が整っており、着けながら喋ったとしてもその声が外に漏れる事はほとんどない。
なので三人は内部にイヤホンマイクと特製の補聴器を着けており、三人の会話ではイヤホンマイクを外の会話を拾うのには補聴器を使い分けている。
そんなこんなで管理局本部に向かって爆走していると、お目当て通り前方で機動隊が盾を構えて並んでいるのが見えた。
何故普段は管理局にいない機動隊が今ここにいるのか。それは昨日三人が再び時神家に帰った時、針太郎達警察が任務の為に今日一日管理局を警備することになった事を伝えられた。
理由は重要人物との会談とされているが、相手は十中八九レオンだろう。警察に警備を担当させたのも恐らくレオンの差し金だろうが、管理局側もレオン達『虹の王国』のテロリストが会談中に襲って来るのを危惧して警備させた面もあるだろう。
会談相手は二人という可能性から霊香がいる可能性が非常に高い。しかし会談後に管理局の設備でそのまま地球から離れる可能性も否定出来ない為、会談中に管理局に乗り込むという作戦となった。
この場合、最も脅威となるのが警察である。戦闘力の零矢、頭脳の卯一、予知の翔を持ってしても数多の警官相手に一騎当千というわけにはいかない。
そこで針太郎の協力を煽り、決行時間に警官を入り口から遠ざけるように手回しをしてもらい、侵入と同時に囲まれるというリスクを回避する。
その後警察が進路を阻めた時点で卯一が対処し、残りの二人で包囲網を突破。恐らくバイク対応と護衛担当に別れるので護衛担当の方を零矢が対処している間に翔が本部へと乗り込む。
本部に乗り込む翔が最も重要と思われがちだが、零矢と卯一が警官隊を食い止める時間が長いほど翔の行動時間が増える為、負担は最初の二人の方が大きい。
加えて針太郎の指示により二手に別れさせることは出来ても、どの比率で別れるかが直前までわからない為、下手をすると零矢か卯一どちらかの負担が重くなる事が予想された。
その上、確実に戦力となる魔王装備は警官を殺害しかねない為に零矢は使用を禁止し、神力も服装が変わる(ヘルメット状態から『変身』しても素顔が露になるのを実証済み)為、零矢、卯一両方が使用を制限した状態で対処しなければならない。
これは例え“神”が防犯システムを掌握出来たとしても警官隊に素顔を見られるのを防ぐためである。
しかし翔は神力を持たない上、能力が戦闘向けでなく場合によっては霊香と戦闘する可能性があるため対抗出来る魔王装備を使用する許可を出している。
また作戦後の身元特定防止策として特殊インクによる染色が各武器になされている。主な例としてGod-tellの色がマリンブルーから深緑となっている。
このルールに基づいた場合、最も不利になるのが体力の少ない卯一となってしまう。その為に武器製造の大鎌に開発を急がせたのが三人が今乗っているこのスーパーマシンだ。
『
「そこの原付、止まりなさい!!!!」
機動隊の指揮を執っていると思わしき人物がメガホン越しに忠告する。それを聞いた零矢がサイドカーが死角になるようにバイクを停めた。
零矢が機動隊側に降り、卯一がサイドカー側に降りる。翔はサイドカーから立ち上がってバイクの前に回った。
バイクの死角に隠れた卯一はバイクとサイドカーを切り離し、God-tellをサイドカーの内部の凹みに装填する。すると画面に変形の文字が現れ、卯一がそれを押すとサイドカーの下部から固定する為の脚が飛び出し、一つだけ付いていたホイールがスライドするように車両前部に移動する。
「おい、後ろの者も手を上げろ!!お前、車両をどかせ!」
既に手を上げていた零矢に命令し、バイクをどかさせるとそこには手を上げた状態の卯一がいた。だが、
「な、何だそれはッ...!?」
上手くバイクに隠れ変形が終了し大型武器を身に纏っていた。それは最早サイドカーの原型を留めてなかった。六輪の機関砲が車体の左右に一つずつ付属した固定砲台とも見てとれる物に卯一はすっぽりと入っていた。
これが『青二輪』の真骨頂。サイドカーの変形機能である。大人数を相手する事を前提に実装された
実際ガトリング内部は『GK銃』の弾丸を変換し連射可能な状態にする装置しか組み込まれておらず、単体だと近接武器に劣る。
だが耐久値に注意すれば弾切れの心配はなく、『武器庫』のアシスト機能で移動しながら戦闘する事が出来る。今回卯一はこの武器を使用するに辺り自分と整備中の霊香のGod-tellから拝借した『GK銃』を用いている。
「ちょっと予定より多いけど問題なし。さてと」
卯一は左右の『GK銃』のトリガーに指を掛けると、
「お勤めご苦労様ですが、少しここで寝ていてもらいます。
軽く一礼し、トリガーを押し込む。凄まじい勢いで弾丸が連射され、目の前に位置していた機動隊が盾を構えたまま後方に吹っ飛び、まるでドミノ倒しのように後ろの警官が倒れていった。
「怖...」
「絶対喰らいたくないな...おい翔!」
余りの威力に翔が引いていると零矢から声を掛けられバイクの後方に飛び乗る。続いて零矢が前方に乗ってすぐさまアクセルをふかす。そして一度後方に向けて走り出した。
それを確認した卯一が隊列を組み直している機動隊の中央に向け再度発砲する。そして再び隊列を崩し、その隙間目掛けて零矢達がバイクで走り抜けた。
「追えーッ!!逃がすなぁ!うわッ!?」
隊列の後方にいた警官に叫んで命令している指揮官のメガホンを卯一が弾きとばす。更に挑発するように手を伸ばし手招きをする。
「あなた達の相手は私、後輩クン達を追いかけたいなら私を倒していきなさい?」
周りに聞こえもしない声を発し、再びトリガーに手を掛ける。流石に学習したのか機動隊は横にバラけ、卯一の周りを囲うように移動する。
だがそれも予想済みな卯一はグリップを握ってガトリングの向きをずらす。号令で一斉に迫ってくる機動隊を回転しながらガトリングで蹴散らしていく。
……後百人ぐらい?倒れた何人かが復帰したとしても押しきられる事はないだろうし、これは優良案件♪さっさと蹴散らして私も前進するか
どこか慢心の表情をした卯一を『武器庫』は画面越しから不安そうに眺めていたのであった。
※ ※ ※ ※ ※
「どうしたんだ、そんなにそわそわして。心配しなくても俺の周りにはあんたのボディーガードがこんなに張り付いているんだ。あんたに危害を及ぼしたくても無理だろうよ」
管理局本部、その一室の真ん中に置かれた来客用のソファに荒々しく座った男、レオンが相手に対して軽口をたたく。
対峙しているのは地球管理局局長の年老いた男だ。もしもの為に複数のボディーガードをレオンの周りに配置し、最も信頼出来る五名を自らの傍らに立たせていた。
もちろんそのボディーガードはレオンだけではなく、レオンに同行してきた少女の方にも付いていた。しかしその戦闘力は理解していないのかボディーガードの数は少女、霊香の方が少なかった。
「それよりさっきから言ってるだろ?俺達が要求するのは
機密文書とは地球管理局が他の惑星管理局と人類に対してひた隠しにしている内容が記されたものだ。陰謀論などで良く話が上がる事があるが何故レオンがそれが本当に存在している事を知っているのか老人にはわからなかった。
「公開だと?ふざけるな、この世を再び宇宙戦争時代に戻したいのか!先代が築き上げてきたこの平和を...」
「こんな仮初の平和をか?いつ滅びるかわからない人類にその危険性も伝えず隠蔽し続けてよく言うぜ。あんたがしてるのは先代の尻拭いだろ」
「何をッ!!」
腹が立った老人がソファから立ち上がりレオンに詰め寄ろうとするもボディーガードにたしなめられる。
「まぁ言っても良いんだがな。ケレースが消滅したのは俺のせいではなく、あんたらのミスだってな」
「ふん、どうせお前のような犯罪者の口から出た言葉など妄言と捉えられて終わりだ」
「本当に犯罪者ってのはどっちだろうな?まぁ俺は構わないぜ。そんなに仮初の平和が好きな老害どもごと『終末』で粉々だ。お前らは愛しい地球と一緒に破壊されるまで待ってるんだな」
言いたい事を全て言い終えたのかレオンは立ち上がると傍らのボディーガードをどかし、老人に背を向けてドアの方へと歩いた。
それを見計らって老人が傍らのボディーガードに目配せをすると、懐から拳銃のような物を取り出しレオンに対して発砲した。
ドアノブに手を掛けていたレオンは発砲音とほぼ同時にその動きを止めた。ボディーガード達は命中したのかと固唾を飲んで見つめていると異変に気づく。銃弾がレオンの足下に落ちていたのだ。命中していてもしていなくてもそんな場所に弾丸が落ちているはずがない。
そう思ったボディーガード達が一斉にレオンを見ると、
「ほらな、やっぱり汚い人間だろ」
と一瞥し部屋から出ていった。呆気に取られていたボディーガード達は霊香に注意を払っておらず、その隙に霊香は自分の近くにいたボディーガードの意識を瞬時に刈り取り、それらが倒れた音に気づいた他のボディーガード達の頭に『窒息ノ箱』を生成する。
あっという間に部屋のボディーガードが全滅したのに気づいた老人は殺気立った霊香にまるで命乞いをするように、
「待て、止めろ。私に手を出せばどうなるかわかってるんだろうな!?お前の家族なんてすぐに...」
と言ったが、魔が差した霊香は話し終える前に老人に蹴りを入れ意識を奪った。そのままドアを開けて部屋を後にすると廊下でレオンが待っていた。
「……あいつが言ってた。手を出したら家族に危険が及ぶって。大丈夫なの?」
「殺したか?」
「ううん」
「何を言ってようが殺したら皆だんまりだ。実に楽で良いのにな。それより腕でもなまったのか」
レオンは霊香を睨むように言った。その表情から霊香はずっと感じていた疑問を投げ掛ける。
「私達家族でしょ?心配...なんだよ。お父さんが」
目を合わせるのが気まずくなったのか霊香は目線を外して言った。年頃の少女は自分の父親から感謝の言葉が返ってくるのを期待していた。たった一言、ありがとうと。だが、
「あぁ家族だよ、俺の血が通っている唯一のな。だからお前を『終末』の起動条件にしたんだ。絶対に俺から離れる事のない娘を鍵にすれば、俺は牢屋にいても世界を恐怖に陥れる事が出来るからな」
「か...ぎ?親は子供の事をそんな風に言わないでしょ...?」
あり得ないというように霊香は狼狽えながらレオンに尋ねる。だが、レオンはフン、と鼻を鳴らすと
「お前あの家族に毒され過ぎだろ。子供は親の人形だろ?捨てられたくないなら子供は子供らしく親の言うこと聞いてれば良いんだよ。簡単だろ、それで幸せになれるんだ」
もう霊香の耳にレオンの言葉は入っていなかった。結局レオンは霊香の事を兵器の起動元としか考えていなかった。甘い言葉を投げ掛けて、霊香を離れられないようにしただけ。家族に憧れた霊香の気持ちを踏みにじっただけなのだ。
「ほら、いくぞ。折角時神 針太郎を呼んだんだ。きっちりお礼参りをしないとな」
そう言ってレオンは先に行ってしまう。しかし霊香は廊下で立ち止まりずっと動けないでいた。
……人形、私は人形。帰る所なんてもうない。お父さんの隣が私がいるべき場所...そこにいなきゃ私はもう...
押さえきれない程の後悔が心の底から沸き上がるように溢れてくる。唇をぎゅっと噛み、拳を固く握りしめる。そうしなければきっと自分の中の何かが溢れだしてしまう、そう霊香は思っていた。
……私は...私はそれでも私を愛してくれるなら
唇が切れ血が流れだし、掌に爪が食い込んでも霊香はまだ錯乱状態だった。父親との関係まで断ち切れば霊香は天涯孤独となる。何故かそうなる事が今の霊香にとって一番の恐怖だった。
久しく忘れていた涙のような感覚が霊香の中で甦る。鳴いても何も解決しない。そう理解した日から霊香はGD内でも泣く事を止めた。その代わり誰よりも努力した。だけど避けられない運命に涙した事があった。その時横で支えてくれたのは...
そこまで考えて霊香は口の血を拭い、拭き取った血を舐める。ほんのり鉄のような味がした後でそれは霊香を冷静な状態へと戻したのだった。
……私が生きてきたのはこの匂いの中、それはこれからもきっと変わることはない...
邪念が浮かんだ心に蓋をするように霊香は走り出した。
※ ※ ※ ※ ※
「ウィッチさん大丈夫ですかね?」
「あんな兵器使ってるし大丈夫だろ。まぁあれならバイクも使ってサイド●ッシャーみたいにすれば良かったのにな。そんな事より第二波がお出ましだ」
零矢が前方に連なる影を見つけ、ブレーキを掛ける。警官の服装をしていたので二人は警官とばかり考えていたが、その者らは拳銃を取り出すと容赦なく二人に向けて発砲してきた。
……片手で発砲って警官じゃないだろ...
二人は素早くバイクを盾にして銃弾を避ける。鋭い金属音がし、弾丸が地面に落ちる音が聞こえた。やがて発砲音が止むと、零矢は翔に忠告する。
「回り込まれたら終わりだ。俺が囮になるからお前はその隙にバイクにまたがれ。『運転手』頼む」
翔は免許を持っていない為、バイクの走らせ方を知らなかった。なので手はず通り『運転手』による自動運転で翔は本部まで向かう事となる。
「了解しました」
バイクのスピードメーターに映った『運転手』がエンジンを掛ける。それに合わせて零矢がサドルに手を掛けバイクを乗り越えた。偽の警官隊は零矢に狙いを定め銃を構えるが零矢は発砲より先にその手を『GK銃』で撃ち抜く。
だが十数人が銃を構える中、瞬時にしかも外すことなく全員の手目掛け撃ち抜くなど射撃の訓練を受けていない零矢には不可能だった。撃てたのは四発、拳銃を弾くことができたのは二発。後は外した。
そして複数の場所から一斉に発砲されてしまう。零矢は身体をひねってバク転をするも腕と脚に二発ずつ喰らい、体勢を崩してしまう。
絶体絶命と思わしき時、バイクにまたがった翔が複数人に突進していき、相手を翻弄する。その隙に零矢が物陰まで移動したのを確認した翔は『運転手』に合図しバイクは本部の方へと走っていった。
それを追おうとする偽の警官隊の複数人にワイヤーが巻き付けられる。その方向を全員が見ると負傷しながらも物陰から再び姿を現した零矢が腕にはめたワイヤーの射出装備を構えて立っていた。
「お前ら警察官じゃないだろ」
ヘルメットを少し上にずらし相手に声が聞こえる状態で零矢は尋ねた。すると偽の警官隊の中の一人が、
「ご名答、我らは『虹の王国』のメンバーだ。この服は拝借してね、まぁ持ち主には眠ってもらってるが。君達が騒ぎを起こしてくれたお陰で簡単に忍び込めたし、更に防犯カメラなどの制御室も制圧できた。そうして先回りもできたというわけさ」
と自慢そうに話す。零矢はてっきり警察の警備の中、真正面からくることはないだろうと思っていたが、自分達の計画を利用されるとは思ってもいなかった。
「仕事が出来る人達なんだ。ちなみにその服の持ち主は殺したのか?」
「まだ生きてるさ。警察を殺しても別に意味がないし、こちらが不利になるだけだからな」
針太郎が生きてる事を確信した零矢はこの状況に突破口を見いだしていた。確かに個々の戦闘力は高いだろうが数は警察の連中よりも少ない。数で押されるということはないだろう。問題は負傷中の身体でどこまでやれるかだった。
ただでさえ他のメンバーより傷の治りが遅い上、既に四発も身体に喰らっている。尋常ではない程の痛みに耐えながらこの場にいる十数人を制圧できるかと考えれば正直零矢にもきついと言わざるを得なかった。
だが目的は翔の時間を稼ぐ事である。翔側にも『虹の王国』のテロリスト達が行っているかもしれない事が心配だが、自分がここでこいつらを引き留めておけば良いと零矢は考えていた。
「話は終わりだ。お前には昨日何人か警察送りにされているからな」
銃を構えたのを見て、零矢はワイヤーを巻き取り複数人を盾にするようにその陰に隠れる。その間にGod-tellを銃にセットすると、
「
の掛け声と共に盾にしたしたテロリスト達に向けて銃を構え零矢はトリガーを引いた。
「
銃口から発せられた握り拳の形状の弾丸がワイヤーで身動きが取れないテロリスト達に命中する。その瞬間にワイヤーを取った零矢は反動で少し後ろへ下がった。
一方命中したテロリスト達は前に立っていた別のテロリスト達を巻き込み地面を転がる。それに巻き込まれなかった数人が零矢に向けて発砲する。
零矢は避けるように獣の如く四つん這いになると体勢を低くしたまま走り出す。そして一発も喰らう事なく一人のテロリストに近づくと首に手を掛けそのまま背後に移動し周りから狙われないように盾にすると、銃を奪って捨てた。
反抗しようとする人質の首を腕だけで絞めあげ抵抗をさせないように零矢がしているのを見て、テロリスト達は何故こんな子供がここまで立ち回れるのか不思議だった。
……まさか昨日メンバーが警察に送られたのは兵器の力などではなく純粋にこいつらの素の能力なのか?サブやレイカ姫のような能力をこいつらも持ってるならば...
ここで殺しておかなければ、『虹の王国』にとって障害となり得る存在だと認識したテロリスト達は人質に取られているメンバーに構わず一斉に銃の引き金を引いた。
仲間を見捨てるとは思わなかった零矢は判断が遅れ絞めた腕を緩めるのが精一杯だった。弾丸が盾にしていたメンバーを突き抜け零矢にも命中し、数発はヘルメットにも命中した。
「おっと失礼。これはカスタムしてあってね。簡単に貫通するのさ。ま、冥土の土産にでも」
見捨てられたメンバーは糸が切れた人形のように前に倒れ、その後ろの零矢も受け身を取る事なく倒れた。
二人の倒れた下から血が流れだし、辺りに鉄の匂いが立ち込めてきたのを確認した他のテロリスト達は、零矢の死亡を確認しようとヘルメットを頭から取ろうとすると、
「...
という零矢の声が聞こえ、回りのメンバーが銃を構えた瞬間、急に零矢の身体が光り出した。眩しさのあまり全員が目を瞑るとそこに横たわっていたはずの零矢はいなかった。
「制御室、制圧したって言ってたよな。お陰でこっちのメンバーの一人が要らない子になっちまったが、お前らならこれ使っても別に構わないよな」
背後から声がし、全員が振り向くとそこには巫女服のような服装をし、長くなった頭髪を日輪を模したかんざしで止めた青年が立っていた。
「えっ、コスプレ?」
驚くテロリスト達を他所に零矢は銃を投げ捨て掌を天に掲げる。そこから発せられる眩い光に再び目を覆うと何人かが呻き声をあげて倒れる音が聞こえた。
零矢は掌から閃光を発しながら五人程の懐に瞬時に掌打を決めていく。もちろん手加減しているので掌がそのまま胴を貫くようなグロテスクな惨劇にはならない。
……これだけ広いなら太陽光線を撃っても...あれは反動が凄いけどやるしかねぇ!!
「
一度掌から出る閃光を止め両掌を残りの十人程に向けて構える。目を覆う程の閃光が消えたのを察知したテロリスト達は後方にいるメンバーに声を掛け、その三人を最前列へと移動させる。
「
仰け反る程の反動と共に零矢の両掌から『GK銃』の如き光線が前方へ放射される。足元のコンクリートが削れ足を着いたまま身体が後方にゆっくりと移動していった。
光線は真っ直ぐに最前列の三人へ向けて向かっていき直撃した。数秒の間、辺りが再び光に包まれる。そして零矢の体力が切れ光線の放射が終わると、辺りは土煙で満ち、直撃した三人はおろか後ろの数人の生死すら判別不能だった。
「やり過ぎたか...?」
※ ※ ※ ※ ※
「何だか胸騒ぎがするな」
卯一はガトリングを駆使しながらふとそんな事を思っていた。作戦を立て、それが上手く行くのは好都合であり最も助かるのだがあまり上手く行き過ぎていると逆に不安になってくるものだ。
……機動隊がツインガトリング持ちの女の子に翻弄されるってちょっと警察が心配だけど...
国家の防衛機能に心配を抱いていると、奥から何かバズーカのような物を持ってくる隊員の姿が見えた。
「構え、よーい!!」
「うっそ、バズーカ!?こんな個人相手にやり過ぎじゃ...」
ヘルメットをしていなければ耳をふさいでいたであろう轟音と共に何かが発射される。それに対抗すべく卯一はぐるりとガトリングをバズーカへ向けると弾丸を撃ち落とそうと構えていると、
「何もない...空砲?何の為に?」
拍子抜けした様子で卯一は再び近づいてくる機動隊目掛けガトリングを動かそうとした時、異変に気づいた。
「何これ?ガトリングが動かない!?」
故障なのか急に両側のガトリングを回す事が出来なくなってしまった。焦った卯一はすぐに取り付けられたGod-tellの『
……霊子製の武器?もう実践投入されてるの!?
霊子製の武器が使われているということ、すなわち警察内部にも能力者がいる可能性が高い。しかも機動隊に持たせるぐらいだからかなりの数いるかもしれない。
通常の人には霊子を見ることが出来ない。見ることが出来るのは、『聖なる力』を持った卯一達や『隠された力』の一部の能力者だけである。
しかし全く見えないというわけでもなく、感受性や集中力が高い人間のごく一部に見える者がいる。例えばたまたま人型に見えてしまい幽霊等と言ってしまうのがその例だ。
つまりここにいる機動隊達は極限まで集中力を高める訓練を施された状態だということだ。卯一は心の中で前言を撤回する。やはり警察、もはや軍隊と化しているが地球の平和は守れるだろう。
「“神”、防犯カメラのハッキングまだ!?」
「それが既に別の奴にハッキングされてるみたいで、大分時間掛かりそう」
ガトリングの周りの網を全て撃ち抜くのは時間が掛かってしまう。卯一は“神”と話しながらもそう考え、ガトリングの接合部から『GK銃』を取り外しサイドカー内から脱出する。
それを見計らったかのように周囲を囲んだ機動隊が盾を構えたまま徐々に距離を詰め、逃げ場を無くしていく。
卯一は近くの盾に向かって発砲するが、当たった一人が倒れるとすぐに別の誰かが入り込み隊列を直されてしまう。このままだと袋の鼠だと考えた卯一は覚悟を決め、入り口側にいる機動隊員目掛け一直線に走って行くと、
「
と叫びながら右足で地面を蹴って跳躍し、跳び蹴りを放つが盾で防がれてしまい逆に跳ね返される。ワイヤーを伸ばそうにも囲まれているため、フックを固定する場所すらない。
結局受け身も取ることが出来ず右手を下に出したせいで手首を捻るという醜態を晒すこととなってしまった。
その痛みで卯一は右手に持った銃を地面に落としてしまう。銃二丁でも寄せ付けないのが精一杯だったのが一丁になった事で最早迫りくる機動隊を止めるのは不可能だった。
……最っ悪...ここまでか
押し寄せる人の波に卯一は目を閉じた。
※ ※ ※ ※ ※
……取り敢えず戦闘不能にまで追い込んだなら前進するか後退するか、どっちにせよ体力の消耗でしばらく動けそうにないな。あの大技は連発しない方がよさそうだ...
零矢が疲労のあまり膝を着く。恐らく自身の体力を光のエネルギーにして放射する技だと認識し、次は引き際を考えておくべきだと思っていた。
しかし、そんな余裕はすぐに消え去る事となる。土煙が晴れるとそこには十数人のテロリスト達はおろか前に出てきた三人のメンバーすら無傷で立っていたのだった。
直撃したはずなのに全く攻撃が通っている様子がない。絶望を感じた零矢の視界は段々と霞んでいった。何とか気合いで立ち上がるも、この体力では結果は日の目を見るより明らかだった。
「今度こそ冥土の土産に教えてやろう。霊子は万能でな。延性に優れ更に目に見えない。だが最もな特徴はその耐久力だ。一度壁を生成すれば例え戦車が突っ込んで来ようと壊れることはない」
目に見えないという単語を聞いて零矢はGod-tellを三人のメンバーに向けると全員が質素な盾のような物を持っていた。銃ばかりに気を取られて『探査』を怠った結果だった。
……最悪だろ、こんな所で倒れたらウイッチさんや翔に合わせる顔がない!!
「随分と手こずらせてくれたが所詮はただの高校生、姫を誘拐しようとした罪を詫びながら死んで行け」
そういって最初に零矢に説明したメンバーが前に出て銃を零矢の顔に向け、引き金に指を掛けた。
零矢はただ睨むことしか出来なかった。
※ ※ ※ ※ ※
「翔様ご気分は大丈夫でしょうか?」
メーターの表示盤に『運転手』が現れそう言った。かれこれバイクに乗って十分程度経ったが酔いのようなものはなく、むしろスーツやヘルメットの隙間から入る風が心地よくさえ感じた。
「もう少しで本部に着くようです。一度あのオアシスのような場所で様子を見ましょう」
目の前に見えた泉のような物がある場所にバイクを停めると僕は屈みながら本部の様子を伺う。流石に距離があって正確にはわからないが入り口付近に何人かがいるのはわかった。しかし嫌でも目に入ったのは、
「あの戦車動いたりしないよね...」
テレビですら見たことない戦車が入り口付近に三台も停まっていた。どう考えても常駐しているとは思えない。敵に備えて管理局が置いたのか、それともテロリスト達が置いたのかは定かではないが攻撃されたら一溜りもないことなど予知するまでもない。
悩んでいる時間などない。こうしている間にも先輩方二人は敵の進行を防いでくれている。覚悟を決めて顔に水を掛けると、僕は再びバイクにまたがった。
「念の為言っておきますがこのマキナでは砲は耐えても一発ほどです。最悪乗り捨ててくれて構いませんので、その時は脱出ボタンをお使いください。サドルが飛びますので」
メーターの部分に脱出と書かれた表示が出現する。僕は『琥珀の槍』のペンダントを握ったまま、ハンドルに手を掛けた。
エンジンが掛かりオアシスを後にする。走り続けて行くと気付かれたのか戦車の銃口がこちらに向かってゆっくりと動いているのが見えた。
……もし当たればマキナは耐えても僕の身体はバラバラになる...死んでも避けなきゃ!
僕は体勢を低くし戦車の銃口にだけ意識を集中させた。まるで人の視線のように、その穴はこちらを伺うようにスライドする。そして戦車の傍らに立っていた人が唐突に手を挙げた。
……来る...!!
直後タイヤが急激に回りだし今まで走っていた速さよりも更に加速する。振り落とされないように必死にグリップを握っていると後方から耳をつん裂くような轟音が鳴り響き、背中に欠片のような物が飛んできた。
背後を見ている余裕はない。このまま走り続けながら避けなければ弾を正面から喰らってバラバラになる。その考えが僕をこの場から遠ざけようと躍起になるが、それに逆らうように僕はグリップを握り続けた。
自動運転によりマキナはフルスロットルのまま時に左右に曲がりつつ着弾を避けていく。例え手前の地面が割れようと足場の悪さを物ともせず、その場に留まる事なくマキナは走り続けた。
やがて戦車の近くに立っていた人のシルエットがはっきりするほどまでに近づいた時、『運転手』は催促するように告げる。
「脱出を。翔様!!」
手を離す事が出来ず、僕はヘルメットで頭突きをするように画面の脱出と書かれたボタンを押した。すると手を離してくださいという文字が表示されたので恐る恐るハンドルから手を離すと、
「うわっ...うわあああっっッ!!」
サドルが思いっきり跳ね上がり僕は遥か上空まで投げ出された。戦車の外に立つ人々が僕を見上げるように顔を上げているのが見てとれる。
僕は握り締めたままの『黄金の槍』に念じると、それを解放するための呪文を唱える。
「
ペンダントサイズだった槍が原寸大にまで拡大され、メッキが剥がれるかのようにひびが入っていく。やがて封印を解かれたように黄金色の光を放ちながら内部から一回り小さな槍が出現し、剥がれ落ちた破片が拡大して僕の周りを取り囲むように浮かんだ。
(さぁ私の力を使え。心のそこまで残虐になり、この場にいる全員を地獄へと誘おうではないか)
頭の中に再びあの声が鳴り響く。しかし、僕はそれを拒もうとはしなかった。全て受け入れるように、自らの力に変えていくイメージで。
「力は使わせてもらう。だけど誰かを殺すためじゃない、霊香さんから本音を聞くために。僕はお前の思い通りにはならないけど、お前には僕の思い通りになってもらう」
支配される前にこちらが支配してやる。その心意気で僕は槍を握り締めた。それを気に入ったのか、頭に響く声は高らかに笑うと、
(良いだろう、お前が残虐性に目覚めるまで見届けるのも悪くない。私の力を存分に使うがいい。私の名はプスィフロス。残酷な現実の先に黄金色の未来を導く魔王なり!)
と宣言した。それを聞き終えるのと同時、眼下の銃口が一斉にこちらへ向けられる。僕は槍を銃口に向けて構えると、腹の奥から声を出して叫んだ。
「変身ッッッ!!!!」
ドン、と言う鈍い音と共に砲弾が僕目掛けて一直線に迫って来る。それを防ぐため、僕は構えた槍を思いっきり正面に突き出した。するとまるでプラスチックのように砲弾がひしゃげて風穴が形成される。
絶句する人々を確認すると一台の戦車目掛け急降下し、槍の一突きで根本付近からまるで竹を切るかの如く銃口を破壊して着地する。
その際に見えた両手は既に琥珀色の鎧に包まれており真昼の日光を浴びて煌めいていた。その姿を見て戦車の外にいた人々は次々にうろたえていく。
意図も容易く戦車を破壊したことか、それともこの姿に面識があるのかは定かではないが僕が別の戦車へ向かおうとするのを止めることなく後退りして一定の距離を保っていた。
警戒しながら別の戦車のもとまでたどり着いた時、背中に衝撃を受ける。撃たれたと思い背後を振り向くが全員とも銃を構えておらず皆上を見上げていた。
不思議に思い上を見ると、まるでマジシャンのように空中に身を浮かせながら翡翠色の弓矢を構えた霊香さんが佇んでいた。
「ゴスロリ...ですか、似合ってますよ」
「……ありがと、でも零矢ならともかくあなたじゃ私の相手にならないんじゃない?」
「それはどうでしょうか」
「……試してみる?魔王...解放」
彼女が手に持った弓にひびが入り破片が飛び散る。それをガードしながら再び対峙するとそこには翡翠の鎧を纏い、日光に照らされた漆黒の顔面に浮かぶ白い目のようなものがギラギラと輝く翠女神が佇んでいた。
しばらくお互いが口を開かないまま、数秒の時が流れる。先手を切ったのは僕の方だった。手に持った槍を振り上げ、リーチの長さを利用して攻撃が届くギリギリの範囲まで踏み込み、槍を振り下ろした。
それを彼女は難なくバックステップで避けると弦を引いてエネルギー状の矢を放つ。それを槍で上手く弾くと、彼女は空中に壁を生成し、そこに手をついて一気に距離を詰め弧で切り裂こうとしてきた。
「
予知によれば彼女は僕がこの斬撃を躱したあとで振り下ろした弓で切り上げようとするつもりらしい。
我に返り、彼女の斬撃を躱すと見せかけて踏み留まり槍で切り上げを防ぐ。唾競り合いの状態になるが鍛えた彼女と僕とじゃ押し合いで勝てるはずもない。すぐに押し上げられ槍を離してしまう。
体勢を崩した僕に再び弓を振り上げ彼女は肩に弓を振り下ろした。片膝を着いたまま僕はそれを受け止める。押し潰そうと言わんばかりに強く押し付けられる弓を押さえながら僕は霊香さんに問い掛けた。
「もう一度聞きます。本当に嘘だったんですか...?」
「嘘だと言えば大人しく帰る?」
「どうでしょうか...」
彼女は弓を押し付けたまま左足を僕の身体に当てそのまま蹴り飛ばす。無様に転がった僕は何とか落ちた槍を掴み、杖のように身体を支えながら立ち上がった。
「……嘘なわけない...私はあなた達を本当に家族だと思ってた。私を温かく迎え入れてくれたあなた達に感謝してもしきれないほどに」
「じゃあどうして?」
「私達は血が繋がってない。本当の家族じゃない。レオンはあんなのでも血が繋がった本当の家族...例え道具として扱われても私は...」
彼女の弓を握る手が更にきつくなるのが見てわかった。弧の上の先端から下の先端まで一本の光の弦が生成される。その中間辺りを握った彼女がそれを引くと一本の翡翠の矢が姿を現す。
その矢の先端を僕に合わせるように彼女は弓を構えた。それに合わせ僕も槍の先端を彼女に向けて構える。
「
「
お互いが武器を構え覇気を込めた台詞と共にその手を離した。
「
「
互いの攻撃が空中でぶつかり合う。投擲された槍と翡翠の矢の先端同士から発生する余波が周りで固唾を飲んで見守っていたギャラリー達を吹き飛ばし、戦車に叩き付けた。
僕は右手を強く握り締めたまま槍に向かって走り出す。それを見て彼女も弓を構えて走り出した。
「はああああっっッッ!!」
僕はその握り拳を宙に浮いた槍の柄に向かって突きだす。推進力を得た槍は翡翠の矢を打ち砕き向かって来る彼女へと直進した。
すぐに弓で防ごうとするが威力を殺しきれず彼女は後方に吹き飛ばされる。ギャラリー達は彼女が負けた事に驚いたまま一言も喋らなかった。
彼女の武装が解除され再び可愛らしいゴスロリ姿に戻る。僕は彼女を起こそうと近づいて手を差し伸べようとした時、
「戻れ」
と低い声がしたかと思うと装甲が剥がれ落ち、その破片が一定の方向へと戻っていった。その方向には僕が放った槍を持ち上げていた白髪のタキシードをきた男性が立っていた。その後ろから拍手と共にレオンが現れる。
「まさか君が魔王装備を持っていたとは驚きだよ。それを使ってGDからレイカを救いだしたというわけか」
そう言った彼は傍らの男性に合図をするとまるでコインでも弾くかのように右手を前に出したかと思うと僕は何かに弾かれたように倒れた。
……え、痛...は?
胸に痛みを覚えた僕はその場所を触ると、そこにはべったりと血が付いていた。撃たれたのかと思ったがあの瞬間銃を構えている奴はいなかった。となればやはりあの男性が何かしたのだろう。
「サブ、その銃を下ろして」
「しかしお嬢様...」
サブと呼ばれた男性はタキシードの胸元に何かをしまう素振りを見せた。もしや透明な銃を持っていたのではと考えていると一つの結論に達した。
霊子で構成された銃ならば目に見えない。僕が考えられる限り普通は視認することが出来ないものはそれだけだ。
「何言ってるんだレイカ、こいつはここで殺しておくのが賢明だ。お前はこいつの家族と関わり過ぎて正常な判断が出来ていないようだな」
レオンが倒れたままの彼女に歩み寄り、傍らでしゃがむとそう告げた。そして立ち上がると再び離れていく途中で、
「先に俺は宇宙船に向かう。お前がこれから先俺と共に来るならばそいつの息の根を完全に止めてから来いよ」
と振り向きもせず告げると歩き去っていく。すると今度はサブと呼ばれた男性が彼女に近づき立ち上がらせると、
「辛いようでしたら私が」
と告げると仰向けに倒れた僕を転がしてうつ伏せにしたあと、紙を引っ張られて首を浮かせられる。そしておそらく鎌のような形であろう見えない何かを首筋に沿わせた。
最早どんな抵抗も無意味だ。折角先輩方が時間を稼いでくれたのに僕の人生はどうやらここまでらしい。実感すると急に目から涙が溢れてきた。
僕にはまだやらなければいけないことがある。奏の死の真相を突き止める義務がある。両親の前に笑顔で帰るという義務がある。こんなところで死ねない。
「憐れな狼よ、さらばだ...ん?」
痛みに向けて目をつむるがいつになっても首を切られたような痛みは走らなかった。天国にすぐ行けたのかと思い目を開くとそこは現実で、サブは宙で何かを掴んだまま、それが動かないのか手を震わせていた。
「……やらせない...翔だけは絶対に...」
声がした方に首を何とかして向けると、右手を宙に掲げ右目を銀白色に光らせている彼女がいた。彼女が手を横に流すと僕の上に乗ったサブは地面に転がされた。
「霊香さん...」
「私達は血が繋がってない。本当の家族でもなんでもない...それでも翔の家族は私に寄り添い、支えてくれた」
彼女はそう呟きながらサブの方へ向けて歩み寄っていく。
「家族は血筋じゃない、私が家族になりたいと願った人達が家族なんだ。そこに血なんていらない。私を私として見てくれる人こそが私の本当の家族なんだ」
「お嬢様、ご自分が言っている事がおわかりですか!?」
「わかってる。これが私の決断だ。正常だろうが異常だろうが関係ない。私はアポカリプスとやらの鍵でも霊子香る翠女神でもない“レイカ”であり、私の家族はレオンじゃなくてここにいる翔の家族だ!」
サブは苦虫を噛み潰したような顔をすると懐から見えない銃を取り出し、彼女に発砲する。が、彼女は手を横に一振しただけで発砲したはずのサブの方にダメージが入っていた。
「『霊操』の私に霊子製の武器は効かないの知ってるでしょ」
膝を着いたサブが今度はカプセルのような物を取り出したかと思うとそれを思い切り地面に投げつける。
「ギガンテス!!」
直後地響きと共に辺りに煙が立ち込めると何かがそこに現れたのを感じた。僕が目を凝らすとそこには五メートルは優に越すであろう武装した巨人が立っていた。
僕が逃げようとすると、彼女が僕を抱き起こし戦車の壁に持たれかけさせる。僕を置くと彼女は堂々と巨人の前まで歩き出した。
「力を貸して、アグ。魔王解放!」
彼女が持つ弓が再び翡翠に光り出しひび割れる。割れた破片が空を飛び交い巨人を翻弄させる。
その間に彼女は両手を上げて頭上でクロスし、開くようにゆっくりと胸の横まで下ろすと弓を持った右手を前に構えて左手を下げる。そして構えた右手で空を切るように右に移動させると、今まで一度も聞いた事がない大声で叫んだ。
「変...身ッッ!!」
宙を舞っていた破片が一斉に彼女の元へと集いその姿を変えていく。身体の至るところに弓矢の意匠が施された翡翠の鎧を纏った彼女は巨人に対峙するとこう言い放つ。
「私は人形なんかじゃないって事をあの馬鹿親父に言いに行くから、悪いけど容赦しない!」
瞬時に背中に翼を生やした彼女は空へ飛び上がると巨人の身体目掛け弧の刃で切り裂いていく。攻撃を喰らわない範囲を旋回し、翻弄しながら彼女は一方的に攻撃を与え続けていった。
やがて巨人が膝を着いたのを見計らい彼女は霊子の鎖で巨人を拘束する。そして弓を引いて巨大な翡翠の矢を放った。
その矢を霊子の壁を使って静止させると自分は宙返りしてその矢に蹴りを放つ。
「
矢と一体化した彼女はストッパーの霊子の壁を突き破り、そのまま真っ直ぐに巨人へと飛んでいきその頭部を貫通した。首を失った巨人が消滅すると辺りに霊石の雨が降り注ぐ。
宙から降り立った彼女は呆気に取られたサブに近寄ると、
「レオンが乗った宇宙船はどこ?」
と聞くがサブはまるで魂でも抜けたかのように覇気の無い声で呟く。
「今更どうするんですか。私達はいずれ滅ぶ身、魔王に逆らわずともこの星はやがて壊れてしまうのですよ」
「そんなこと、私達が止めてみせる」
「しかし...時神 翔の連れはもう...」
「私が認めた二人だ。そう簡単に死ぬわけない」
※ ※ ※ ※ ※
卯一と零矢が覚悟をしたのと同時刻上空に二つの影が浮遊していた。直後卯一のすぐ近くにその影は降下すると一人を置いて自らは零矢の元へと飛んでいく。
卯一の近くに現れた人物はすぐさま指を鳴らす。そして手に持ったビニール袋を宙へ放り投げた。すると機動隊は卯一に押し寄せるのを止め何故か一心不乱に飛んでいくビニール袋を追いかけていってしまう。
一方零矢の周りには突風が吹き荒れテロリスト達は風に飛ばされて壁に身体を打ち付けて気絶していく。
その場で呆然とした二人にそれぞれの人物は話し掛けた。
「「全く何やってるんだか」」
「一緒に住んでるってどういう意味か説明してもらおうか!」
「だから悪いけど私のワガママを聞いてね」
「彼女を取り戻すまで...どこまでも」
「いつか時神の名に変わるその日まで」
次回『Always be there for me』
「ただいま」