俺達と神達と空想神話物語 番外編?   作:赤色の魔法陳

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霊「とうとう...クライマックス。感激...」

卯「本編で名前が変わっている意味が明らかになるからね」

零「霊香編の集大成だな」

翔「本編の話のような懐かしの演出があったりしますしね!」

神「霊香と翔の関係も進展が...一方零矢と卯一は...」

霊「もう、ネタバレ禁止!じゃあ最後までよろしく!」


Always be there for me

「巳羅姉!?何でここに?」

 

 警備隊が離れたのを確認してヘルメットから口だけ出した状態で急に現れた彼女に話し掛ける。彼女と会うのは十二獣の集会以来か。あの時は卯と巳として会っていたので私服で、と言っても私はライダースーツだが大学の外で会うのは久し振りだ。

 

「ってか管理局内で素顔はヤバイって」

 

「平気よ、入り口の警備員何事もなかったように持ち場に戻ってたから恐らく連絡を司る制御室は既に制圧されてるだろうし。それより!」

 

 彼女は歩み寄ると私が被っていたヘルメットに手を掛け、それを取り外して放り投げ私の頭を彼女の胸に押し付ける。

 

「どれだけ心配したか!坊やはともかく目付きの悪い男と路地裏に消えるのを見掛けたからてっきり脅されてるのかと思ったんだよ!?」

 

 見られてたのか。彼女の豊かな胸部に押し付けられているせいで息が出来ない。因みに彼女のスタイルはモデル並、胸はおあいこである。私はギブと伝えるように彼女の背中を何回か叩くと

 

「あ、ゴメン」

 

 と言って解放された。ただでさえ激しい動きをした後で息が上がっているため本気で死ぬかと思った。胸で窒息と言うのもあながち間違ってはいない事を実感した。

 

「巳羅姉が言ってる目付きの悪い子は知り合いだから大丈夫だよ。それよりどうやってここまで来たの?まさか歩いて?」

 

「あぁ、私と同じで路地裏のお前達を探ってた奴がいて。そいつに連れて来てもらったの。たしか人外で名前は...」

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 

「林...あんた何で?」

 

「敬語使え馬鹿、歳上だぞ」

 

 突風が止み現れた彼女にそう話し掛けると機嫌が悪いのか叩かれた。そう言えば彼女は小学生のような見た目でも中身は立派な21歳。俗に言う見た目は子供、中身は大人。紳士的に言えば合法ロリというやつか。使い方合ってるか知らないけど。

 

 しかし彼女の風のお陰で敵は一人残らずのびているしどうやら助けに来てくれたと解釈して良いらしい。

 

「えーっと、林さんは何でこちらに?」

 

 これ以上機嫌を崩さないように敬語で質問するとその態度に満足したらしく事の経緯を説明し出した。

 

「何でってたまたまこっちに来てて帰る途中にお前らを見掛けて興味本位で追ってみたら歳上の女に捕まって、ここまで来たの」

 

「女って誰ですか?」

 

「大津って言ってたけど知り合いじゃないのか」

 

 知り合いに大津という名前は心当たりがない。となればウィッチさんか翔の知り合いか。それ以前にこの前あんなに怒っていた彼女が急に助けに来るなどどういう風の吹き回しだ?

 

「ってか俺らがここに来る前から見てたんですか?」

 

「あぁ、バイクの整備をしているのを屋根の上からな。お前らが行った後、大津って女が急に現れてそいつに私が人間ではないことを見抜かれた」

 

 見た目が小学生みたいなのに屋根の上に乗っていたりなんてしたら普通に人間ではないってバレるのでは。と思ったが口に出すのは止めておこう。

 

「それで脅迫気味に助けることを強要されたってこと。話は終わりだ。一番歳下の天パ小僧と海老味髪型の小娘を助けに行くんだろ」

 

 独特過ぎるあだ名で一瞬誰の事を指しているのかわからなくなった。海老味髪型ってツインテールのことか。小僧、小娘って見た目だけなら自分も十分小娘だと思うが。

 

「お前、小娘はお前だろとか思ってるだろ」

 

「自覚あるんですか?」

 

「あ"?」

 

「…すいません」

 

 睨み殺すかの如き形相を向けられたので思わず怯む。何だか須佐之男命を思い出す。

 

 しばらく睨んだ後、彼女は行くぞと言って歩き出した。俺は落としたヘルメットと『GK銃』を広い小走りで後を追った。

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 

「待っ、て...巳羅姉。もう...疲れた」

 

「そんなに走ったか?よくその体力で戦えたね」

 

「だって...動かなくていい、道具を...ハアッ、使ったから」

 

 全力で走り続けて数分後、早くも私は根をあげていた。呼吸が苦しく、体温も急激に上昇しているのがわかる。ってか気持ち悪い...

 

 思わず座り込むと、心臓の鼓動が物凄いスピードで脈を打っているのに気付く。こんな風になった高校の体育での長距離走を思い出した。授業の後よく保健室通いしたな、私。

 

「でも急がないと林はもっと先に行っちゃうし」

 

 話によると天狗の雨雲は後輩クンの方を手助けに行ったらしい。ということは彼女の風で移動することも出来ず私達は本部まで自らの足で行かなければならないということになる。

 

……塗装してないから『赤車』は使えないし、かと言ってこのまま走り続けたら確実にシャイニングストライク確定...巳羅姉ならともかく後輩クンに見られたら死ねる...

 

「おい、誰か前から走って来るぞ!」

 

 巳羅姉に肩を叩かれ進行方向を見ると黒い服を来た一人の男が周りを確認しながらこちらに走って来た。

 

「卯一、ここは私がなんとか...」

 

「後輩クン!!」

 

 能力を発動させようとする彼女の言葉を遮り私は叫んだ。その言葉を聞いて黒い服の男は屈んでいる私を見つけるとすぐに駆け寄ってくる。

 

「ウィッチさん!どこか怪我でも!?」

 

「ただの走り過ぎ」

 

「びっくりさせないでくださいよ...」

 

 彼に腕を引いてもらって立ち上がると、彼の怪我に気付いた。両手足に弾丸を喰らったらしく空いたスーツの穴から流れた血が乾燥していた。

 

「何で逆方向に来たの?」

 

「ウィッチさんもしかして走って来るのが辛いんじゃないかと思って迎えに来たんですよ」

 

 彼は私や翔君と違って自然回復の速度が何故か遅い。現に私がさっきくじいた手は既に治っているのに対し、彼は傷が塞がっている様子がない。こんな怪我を負っているのにここまで戻って来るなんて本当に効率が悪いのに...

 

「バカ...心配し過ぎよ」

 

 何故そこまで想ってくれるのか。私は不思議で仕方なかった。

 

「現に辛そうですが」

 

「うるさい...バカ」

 

「嫌われちゃいましたか...」

 

 そんなやり取りをしていると彼が急に腕を抱えた。寒いのかなと思ったが、何だか私の横を気にしているようだった。私が彼から横に視線をスライドすると鬼のような形相で彼を巳羅姉が睨んでいた。

 

「あ、あの失礼ですが大津さん...ですよね?」

 

「だったら何?」

 

 明らかに対応が悪くなっている。これまさか彼が私に馴れ馴れし過ぎるって怒ってるのか?なだめようとするも彼女は睨み付けたまま彼に歩み寄り

 

「それより卯一との距離感近くないか?もし狙ってやってるとしたらお前容赦しないからな」

 

 と脅しをかける。どうやら私の予想は概ね正解だったようだ。極道みたいな脅迫の仕方である。これではいささか彼がいたたまれない。

 

「ウィッチさんの...ご友人でしたか。助けていただきありがとうござい...」

 

「お前じゃない。卯一と坊やを助けに来たんだ」

 

「ちょっとストップ!」

 

 私が両手を広げながら二人の間に入り込み彼女と彼の距離を離した。そして彼女の方を向き

 

「この子は大切な後輩なの!そんな言い方しないで!怪我を負ってるのにわざわざここまで来てくれたんだよ!」

 

 と主張する。いくら友人でも親しき仲にも礼儀ありだ。何度も助けられた彼をそんな風に言われるのは気分が悪い。

 

 私が主張したのを聞いて彼女は流石に言い過ぎたと思ったのか私から目をそらしながら悪かった、と言った。それを聞いて彼の方に向いて謝罪する。

 

「巳羅姉は過保護な所があるから、本当にゴメン!わざわざ来てくれたのに」

 

「いや、慣れてますから大丈夫ですよ」

 

 と彼は言ったがその目には何だか闇を感じてしまった。まさか既に私と同じく『聖なる力』の負の面が出てしまっていて、色んな人から心ない言葉を投げつけられているのか?

 

 そんなの大丈夫じゃない。慣れさせるなんてさせない。私は彼の手を取ると自分の手を重ねて言った。

 

「大丈夫じゃないよ!何か悩みがあったらお姉さんに相談して、一緒に住んでるんだか...ら、あ......ヤバっ」

 

 思わず禁句を口に出してしまった。しかも最もそれが知られたらヤバイ人物の前で。彼もそれに気付いたらしく二人同時に彼女の方へ顔を向けると

 

「一緒にぃ、住んでるだとぉ~!?」

 

 般若だ。彼女はもうそれにしか見えない表情をしながら私が言った禁句を復唱していた。彼女に事情を説明するのを忘れていたため初めてその事実を知った彼女は彼に掴みかかろうとする。

 

 その時、辺りに突風が吹き空から雨雲 林が降りてきた。彼女は降りるとすぐに彼に跳びかかり

 

「何で逆方向に走ってくんだこのクソガキ!!」

 

 と宙に浮きながら彼の左胸ぐらを掴む。

 

「一緒に住んでるってどういう意味か説明してもらおうか!!」

 

 そこに巳羅姉が入り彼の右胸ぐらを掴んだ。もはや修羅場である。流石の彼もこれには完全に参ったのか見たこともないほど焦っていた。

 

 私が止めなければ、そう使命感に囚われた私はまぁまぁと言いながら二人を引き離そうとするが二人とも一向に話を聞かず、引き離す事が出来ない。

 

「普通前に行くだろ!何で戻ったりするんだ!」

 

「お前卯一に手出したりしてないよな?」

 

 二人に詰問されてる彼はまだなんとか意識を保っていたがあの、その、とほぼその二言のループで話そうにも聞き入れてもらえないらしい。

 

 ここは仕方ない。私はワイヤーを取り出すとそれを伸ばして彼にくくりつける。これで彼だけをこちらに引っ張れば流石に二人は手を離すはずである。

 

……目一杯縮め!

 

 彼を修羅場から抜け出させるべく強く念じるとそれに答えたワイヤーが一気に巻き取りを開始した。それにより二人は手を離し、二人の間を通るようにして彼が寄って来たのだが

 

「うわっ!?」

 

「きゃっ!?」

 

 勢いで近付いて来た彼と衝突し二人とも後ろに体勢を崩してしまった。咄嗟に彼が手を伸ばして私の腕を掴んで引き寄せ私との位置を交換する。

 

 彼は顎を引きながら地面にもう片方の掌から肘という順に着け、大怪我を防ぐがそこに私が倒れ込んで下敷きになってしまった。

 

「痛ったた、後輩クン大丈夫?」

 

 何とか手を着き、地面を見るがそこに彼の顔はなかった。あれ?と思っていると急に胸元がくすぐったく感じ、上体を起こすとそこに彼の顔があった。

 

 すぐに彼の上から離れると彼は何故か鼻と口の間に人差し指を当てながら目線をそらした。不審に思いよく見ると鼻から出血をしている。

 

「大丈夫!?ジッパーとか当たって切れちゃった?」

 

「あ、いやこれは別に...何かごめんなさい」

 

 何で謝るんだ?むしろこっちが助けてもらって謝らなければいけないのに。しかもまた怪我を増やしてしまった。本当に申し訳ない。

 

 私はスーツのポケットからティッシュを取り出すと、そこから数枚を引き出し、彼に近寄って横からそれを使って鼻を押さえた。

 

「取り敢えず治まるまで安静に...って動かないで!」

 

 何故か彼が顔を動かそうとするので左手を首に回し身体を押し付けて動けないようにする。それでも抵抗しようとするので

 

「取り敢えず落ち着いて」

 

「ウィッチさん、当たってます...」

 

「血を止めるためなんだから当てるに決まってるでしょ!」

 

「そっちじゃなくて...」

 

 鼻に手を当てるのは普通でしょと思いながら手当てをしていると呆れた雨雲が

 

「二人で天パ小僧迎えに行っていい?」

 

 と聞いてきた。独特なあだ名に困惑するも、元々原因はそっちの二人ではと思いながら

 

「私達を風で連れてって!お願い」

 

 というと素直に近付いて来ると手を振って辺りに風を吹かせる。すると一緒に近付いて来た巳羅姉が

 

「そいつから離れれば血は止まるぞ」

 

 と言うので、何故か聞こうと口を開いた瞬間身体が浮き上がり

 

「行くぞ」

 

 と言う雨雲の声と共に私達の身体は遥か上空まで浮かび、横へ移動していく。下を見ると建物の屋上が見え、まるで透明なガラスの上に立っているようだった。

 

 しばらくすると下にオアシスのような場所が見え、その先に戦車のような物も見えた。その先には宇宙船のような乗り物も確認出来る。レオンはあれで逃亡する予定だろう。

 

 すると戦車と宇宙船の中間辺りに翡翠色に光る何かが動いていた。もしかしなくてもあれは十中八九霊香ちゃんだろう。しかし翔君の姿が見当たらない。魔王装備を纏っていないからだろうか。

 

「取り敢えずあのオアシスの所で降りるよ」

 

 と雨雲が言うと、私達は降下を始めた。内臓が持ち上がるような感覚に襲われながらも私達は無事オアシスへと着陸する。

 

 噴水の水で彼が血を洗っている内に私はGod-tellのカメラで戦車の周りを確認した。どうやら既に何人かは倒れていることからあの場で霊香ちゃんが戦ったのは間違いないだろう。

 

 戦車までの道のりを縮小しながら辿って見ると、途中で倒れたままの黒い『青二輪』を見つけた。よく見るとサドルがなくなっていることから脱出を使ったのがわかる。

 

……となれば翔君は一体どこに?ただ視認出来なかっただけかもしくはもう...

 

 取り敢えずこの長い道のりを再び進む必要がある。しかし雨雲に送ってもらうにも戦車の所までだと『青二輪』が回収出来ないし、逆に『青二輪』の所だと戦車が動き出した時に攻撃を受ける可能性がある。

 

 雨雲は上空に避難すれば良いが巳羅姉は回避手段を持ち合わせていないはず。そもそもこれ以降彼女の能力を使う場面が思い付かない。

 

 それに雨雲の能力も連発の代償がわからない以上、むやみに送ってくれとは言えない。更に言えば全てが終わった後、さぁ帰ろうと言って正面から帰るのはNG。諸々考慮するならば...

 

「ここからは私と後輩クンの二人で行った方が良いかも。二人はここに待機してもらって帰る時にまた能力を借りたい」

 

「構わない」

 

「私も別に良いが、そいつ負傷したままで頼りになるのか?」

 

 完全に血が止まった彼が苦笑いをする。確かに彼は両手足を撃ち抜かれているが現に走れるほどの頑丈さは持ち合わせている。

 

「彼にはまだ切り札がある。だから頼りにしてるよ後輩クン!!」

 

「頑張ります」

 

 そう言って私は渇を入れるように彼の背中を叩くと背中God-tellを取り出した。

 

変身(チェンジ)、ラファエル」

 

 鳥が空へ飛び立とうとするように背中から光の翼が生える。ライダースーツから少し肌が露出した衣装へと変化し、頭上に光のリングが浮かび上がる。変身が完了すると彼の傷口にそっと手を添える。私が目を閉じて集中すると、それを見ていた二人が感嘆の言葉を挙げた。

 

「傷口が塞がっていく...」

 

「卯一、その格好は...?」

 

 私が目を開けると彼の傷口は完全に塞がり、傷痕すら残っていなかった。これでよしと思って彼から離れようとすると急によろけてしまう。

 

「大丈夫ですか?」

 

「アハハ、何かもつれちゃったみたい」

 

 しかし、彼に支えてもらい何とか転ばずに済んだ。何と情けない...しかし何で急によろけたりしたのだろう。転んでどこか打ったのか?

 

 そう思い、痛みを感じる箇所を探して身体のあちこちを押している私の横で彼はポケットから取り出した『紅蓮の剣』に呪文を唱え鎧を着込んだ。

 

「卯一、気を着けろよ...あとお前、ちゃんと卯一を守れよ?死んでもな」

 

「もちろんですとも」

 

「ヤバそうだったらそっちまで迎えに行ってあげる。その時は何か標となるものを」

 

「わかった、雨雲さん」

 

 返事をした後で私と彼はその翼を羽ばたかせ空へと飛翔した。上空を移動しながら私はさっき引っ掛かっていたままの問題を考え直す。

 

……普通霊香ちゃんだけ鎧を来たまま宇宙船へ行くなら既に翔君との戦闘は終了しているはず、なら彼は既に負けて最悪死んでいる?でも明らかなサインを出していた彼女が彼を殺す確率は低い。ならば戦闘不能になっているか、魔王装備が奪われている...ってあれ?

 

 急に背中の翼が制御が利かなくなり私は自由落下を始めた。動かそうとしても力が入らず段々と視界が霞んで来る。

 

……もしかしてあの回復で私の残りの体力が全部使われちゃったの...?コスパ悪い...な

 

 段々と近付いて来る地面にもはや恐怖すら感じないほどの脱力感が身体全体を包んでいた。やがて変身が解け翼を失い堕落する天使のごとく私は地面に引き寄せられる。

 

「ウィ...チ...ん!!」

 

 私を呼ぶ彼の声を聴きながら私は地面にキスをする前に目を閉じた。

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 まるでロケットが発射するような轟音が辺りを包む中、私はレオンが逃走を図るつもりである宇宙船の前までたどり着いた。

 

 飛行船のような形をしたそれは後方から炎を吹き出し、正に宇宙へ飛び立とうとする準備をしている真っ最中という様子だった。私は入り口のドアを蹴破り中へと侵入する。

 

 するとそれに気付いた『虹の王国』のテロリスト達が私に向かって銃を発砲してきた。それを避けることもなく全て受けるが鎧に傷一つ付くことはなかった。

 

 どうやら実弾の銃が効かないというのは予想済みだったテロリスト達は背中に担いでいた鞘から霊子で作られた剣を取り出した。

 

 先頭の合図で全員が同時に斬りかかってくるが、私は微動だにすることもなく全てその斬撃を喰らう。手応えありといった様子のテロリスト達が手に持った剣の刃を見ると、変な方向へ曲がったり、欠けてボロボロになっていた。

 

 それにテロリスト達が驚いていると船内に放送が鳴り響く。

 

「無駄だ。そいつにサブの道具は効かない。霊香、ここにその鎧を纏って来たということはさしずめこの船を落とすつもりでいるのか?」

 

「場合によってはそうかもね。私はあなたの人形じゃないから、全てあなたの思い通りに事が運ぶと思ったら大間違いだ」

 

「本当に頭の中まで完全に染められるとはな。やはりホテルに来た時点であの坊っちゃんは殺しておくべきだったな。だがお前の思い通りに事が運ぶと思っても間違いだ。二階のホールまで来い、子供が親に逆らうとどうなるかたっぷりしつけてやる」

 

「……上等」

 

 私が弓矢を背中から取り外し手に持つと蜘蛛の子を散らすようにテロリスト達は壁によって私の前に道を作った。

 

 道なりに進むと螺旋状の階段がありそれを上ると廊下があり、ホールに続くドアを発見する。慎重に近付きドアの向こうの気配を確認してドアを開こうとした時

 

「――ッ!!」

 

 目の前が光り出したかと思うとドアが爆発する。まともに壁も作れないままその衝撃をもろに喰らった私は吹き飛び廊下の反対側の壁に叩きつけられた。

 

……ドアの開閉に連動する爆弾を設置されてた...迂闊だった、もし生身だったら今ので腕は消しとんでたかもしれない

 

 私が立ち上がると煙で塞がれた入り口の向こう側からボウガンの矢のような物が飛び出し、私の頭のすぐ隣に突き刺さる。どうやら彼も本気らしい。少しでも気を抜いたら命を取られるだろう。

 

 私はすぐさま立ち上がると、入り口に向かって走り煙を突き抜けて中へと入った。その瞬間に前方から飛んでくる矢。それを弓で弾き、その方向へ矢を放つ。

 

 すると何かがショートするような電気音がして、その方向を見るとそこには自動で矢が発射されるように作られた機械が置いてあった。

 

……レオンじゃない!?じゃあ一体どこに!?

 

 すると天井からタイマーのような音が聞こえるのに気付いた。まさかと思い私が頭上を見上げるとまるで夜空のごとく赤いランプがびっしりと天井を埋め付くし、タイマーの音と同時に点滅していた。

 

 私は窓に向かって走り出す。そして身体を丸めるようにしてその窓へ飛び込んだ。直後光と共に背後から爆発音と同時に爆風が私の背中を押し、宇宙船から投げ出された私は地面に何度も激突し弓を持った手を離した。

 

 それと同時に鎧が私の身体から剥がれ落ちる。流石に鎧の上からでも衝撃を完全に殺す事が出来ず何度も地面に打ち付けた身体は動かす事は出来なかった。

 

 何とか動かせる首で宇宙船の方を見るとホールと思わしき場所には大きな穴が飽き黒煙が舞い上がっている。そして真っ二つに割けるように倒壊した。

 

……最初からレオンはあの船に乗っていなかったのか...私がサブの霊獣と戦っている内に用意し、私を誘き寄せたのか

 

 すると横から影が近付いて来るのがわかった。目線を何とかそちらに映すとレオンがそこに立っていた。

 

「これで十分だろう、霊香。これが現実だ。たった一週間関わった家族に深入りしてどうする?そんな事をして一体何になるっていうんだ?結局は裏切られるだけだろ、その点俺はお前を捨てない。だからこうして死ぬギリギリで済ませてやってるじゃないか」

 

 そう私に声をかけると彼はしゃがみおそらく血で汚れているであろう前髪を引っ張って私の顔を上げさせる。

 

「お前は傷の治りが異常に早い。これぐらいの傷一週間もしない内に治るだろう。それと同時にあの家族の事も忘れるだろう」

 

 そう言うと彼の後ろについていた何人かが倒れて動けないままの私を担架に映しそのままどこかへ運んで行く。すると倒壊した宇宙船の後ろにもう一つ別の宇宙船が停まっているのが見えた。

 

……あそこに入れられたらもう終わり...私はまたただの殺人マシンに...

 

捕縛射撃!!

 

 その叫び声と共に担架を抱えていた一人が体勢を崩し私は地面に転がり落ちた。レオンが憤怒の表情でその方向を見る。私は付き添いのテロリスト達が壁となりその姿は見えなかった。それでも私ははっきりとそれが誰なのかを理解していた。

 

「かけ...る」

 

 私の目から大粒の涙がこぼれ落ちる。しかしそれを手で押さえる事が出来ず、それを見たテロリスト達は困惑していた。

 

「姫が泣いていらっしゃる...」

 

「あの者は姫にとってそれほど重要な者なのか」

 

「黙れお前ら。おい、時神の坊っちゃん。どこまで邪魔すれば気が済むんだ?」

 

「彼女を取り戻すまで...どこまでも」

 

 その答えを聞いたレオンは顔を押さえ高らかに笑うと狂気的な表情に早変わりし

 

「お前はレイカの記憶に巣食う害鳥だ。俺の娘をたぶらかした罪、その命で償ってもらうとしよう」

 

 と宣言すると、翔もそれに合わせ

 

「僕達の家族を傷付けた罪、その身柄で償ってもらいます」

 

 そう宣言した。それを聞いたレオンは激昂し、懐から拳銃を取り出す。

 

「ぶっ殺してやる!!」

 

 そう叫ぶと拳銃の形がショットガンに変わる。そして乱射するようにトリガーを引いた。

 

 私からは翔の姿は見えない。それでもきっと彼はそれを対処している、そう祈りながらテロリスト達に声を掛けた。

 

「もしあなた達がレオンではなく私の願いを聞いてくれるなら...私に翔の勇姿を見せて」

 

 付き添いのテロリスト達は少し戸惑った様子を見せたが私を抱え起こすと担架の上に座らせ、それを持ち上げて特等席を用意してくれた。

 

 翔は弾丸を右目を白銀に輝かせながら全て手に持った槍で防ぎ、レオンとの距離を詰めていった。そして槍が届く範囲まで来ると、トリガーが引かれる前に槍をレオンに対して突き出す。

 

 しかし、防弾チョッキでも着込んでいるのかレオンは怯みもせずトリガーを引いた。翔の右目は光っておらず、避けることも出来なかった翔はその弾丸を腹部に喰らい吐血した。

 

「翔ッ!!」

 

「レイカ!よく見ておけ、俺がお前の未練を絶ち切る瞬間をなぁ!」

 

 膝を着いた翔の首を掴むと手に持ったショットガンを拳銃に変えその銃口を翔の額に押し当てる。

 

 私は身を乗り出し止めようとすると私の右にいた女のテロリストがいつの間にか手に持っていた注射器を私の腕に突き刺す。驚いた私を余所に彼女は一気に液体を注入した。

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 

「ウイッチさん!!」

 

 急に変身が解け落下する彼女が地面に激突するギリギリで手を掴み地面とのキスを避ける。一度着地して鎧の装甲を解き、気を失った彼女をおぶり、近くにあった『青二輪』の元へ移動した。

 

 すると『青二輪』は自動で起き上がると何故か外れていたサドルが内部から補填され、スピードメーターの画面に『運転手』が現れる。

 

 俺は事情を説明し、彼女をバイクにまたがらせるとバイクから身体を固定するための枷などが飛び出し彼女の足やハンドルを握らせた手、腰に巻き付いていき、安定した体勢のまま固定された。

 

 そのままオアシスへと向かったのを見送り、俺は『紅蓮の剣』を手に持ったまま戦車の方へと走り出した。しばらく走っても攻撃して来る気配がないので戦車の影に身を隠し、覗くと戦車に張り付くように何十人ものテロリスト達が気絶していた。

 

 既に戦闘は終わったのかと宇宙船の方向へ歩いていこうとすると力なく膝で立っていた白髪の男性を発見する。

 

「生きてたんですか」

 

「悪かったな」

 

 と軽口を叩き、宇宙船の方へ行こうとすると、

 

「行っても何も変わりませんよ」

 

「はぁ?そんなのやらn」

 

 突如会話を遮るほどの爆発音が鳴り響き、何かが崩れる音が聞こえて来る。宇宙船の方向を見ると黒煙が立ち上っていた。

 

「我が魔王が仕掛けた爆弾でしょう。今頃お嬢様は...」

 

 俺はそれを聞いて駆け出そうとするが足元を何かに引っ張られ転びそうになるが何とか踏みとどまった。地面を見るが何も足をとられるような物は見当たらない。

 

……疲れてるのか?

 

 と思い再び歩こうとすると、今度ははっきりと足が引っ張られ身体が宙に浮いた。そのまま地面に叩きつけられる。まさかと思い白髪の男性を見るとその両眼が白く光輝いていた。

 

「いかせませんよ、これ以上は」

 

「これ以上ってことは翔はあっちに行ってるってことだよな」

 

「あの子供に我が魔王が負けるはずがない」

 

 そう言って右手を振り上げるとそれに連動するように俺の身体は宙に浮き、振り下ろすと俺は地面に叩きつけられる。

 

……何だあいつの能力?重力場を操っているのか...いやそう言えばさっきのテロリスト達は...

 

 俺は剣をコンクリートに突き刺すとそれを杭として掴み宙に浮かせられるのを防ぐ。そして足元をGK銃で撃つと何かに引っ張られている感覚はなくなった。

 

 霊子の武器、しかも目が光っていたことから既存の武器を使っているわけではなく即座に作り出して攻撃していると言うことになる。

 

……種がわかればどうって事はないが一定数の大きさにならないと『探査』しても見えないのは厄介だな...

 

 流石に空気中に含まれる霊子を全て視認する事は出来ない。だが見えないだけで何かを握ったりする仕草で武器を持っているかを判断する事は出来そうだった。

 

 男が手をコイントスのような形にしてこちらへ向けて来るのを見て右へ駆け出す。すると俺の移動に合わせその手を横にスライドして来た。恐らく構えているのは拳銃。霊子製なら音も鳴るかわからないので発砲のタイミングが掴めない。

 

 それに持久戦に持ち込まれると負傷しているこちらが圧倒的不利になるのは目に見えている。正直この男の相手をしている場合ではない。

 

 警察だってやられっぱなしではないはずだからもう動き出しているかもしれない。そうなれば霊香に話をつける以前に捕まってしまう。

 

「“神”!!お前暇ならこっちに来い!」

 

 とGod-tellに届くように叫ぶのを聞いて、男は

 

「増援ですか、別に構いませんよ」

 

 と余裕そうに言った。あてが外れて気の毒だが増援なんて大層なものではない。俺は“神”からの返事が来るまでの間、GK銃にGod-tellを設置し、男へ向けて駆け出した。

 

「運任せの一撃な、任せとけ」

 

 その途中で“神”が自分の役回りを察したのか俺に確認をとってきた。そして画面上にチャージと言う文字と共に銃口にエネルギーが溜まっていく。 

 

 それを男に見られないように左半身を下げ剣を持った右手を男に突き出した。するとまるで壁にでも当たったように何もない空中で剣先から火花が飛び散る。

 

 そして剣が押し返されたかと思うと男の手が長い柄のような物を持つ手付きになったのを確認し、男が突き出して来るのをしゃがんで避け、剣を逆手に持ち変えて柄の部分を使ってアッパーをお見舞いする。

 

 後ろに仰け反った男が体勢を直す前に俺は左足を後ろに回して一回転すると

 

「終わりだ「運任せの一撃(シークレットショット)」」

 

 技名を“神”とハモらせながらトリガーを引いた。銀色の光弾が男の状態に命中し、そのまま男は吹き飛ばされる...と思っていたが男はその弾丸を抱え込むようにしてそれを消滅させた。

 

「は?嘘だろ!?」

 

 俺は一旦距離をとり、God-tell内の“神”に

 

「もう一発いくぞ」

 

 と提案したが、“神”は

 

「馬鹿、同じ必殺技は連続して撃てないの!ゲームじゃあるまいし」

 

 という新情報を告げる。確かに今まで同じショットを連続して撃った事はないがこの場で初耳の情報を告げるのはどうかと思う。ゲームならばルール説明を抜かされた感じだろうか。

 

「お前それ先に言えよ...」

 

「戦闘中にお喋りとは随分と余裕ですね!」

 

 God-tellの方を眺めていた為、霊子の銃が『GK銃』に当たり弾き飛ばされてしまう。さらにその衝撃で左手を痛めた為、すぐに銃を拾って反撃できるかというとかなりキツいかもしれない。

 

……何とかしてコイツを倒さないと、翔と霊香が!

 

 俺は痛めた左手を強く握り締めた。それを見た男がまるで勝ち誇ったかのように

 

「先ほどまでの余裕はどこへやら。これで終わりです」

 

 そう言って手をコイントスの形に構える。God-tellがない今、不可視の弾丸を全て避けるのは勘しかない。フェイントを掛けられれば命中は避けられない。だが今の身体の状況で一発でも喰らったら次に立ち上がれるかどうか。

 

……まだ、終わらない。二人を助ける為に、コイツを必ず倒す!

 

 感情が高ぶりどこからか力が沸き上がって来るのを感じていると勝利を確信した男の目が徐々に曇っていった。

 

……倒す倒す倒す倒す、ぶっ倒す!!

 

 痛みを感じていたはずの左手が元に戻ったように自由に動き、その場所に身体中の全エネルギーが集束していくのを感じた。

 

「能力を発動させるものか!!」

 

 と言って男がトリガーを引く素振りを見せた。それに合わせしゃがもうとした瞬間、俺は地面に倒れ込んだ。身体の自由が利かない、体力切れだ。

 

「こけおどしですね、今度こそ終わり...」

 

二輪弾(マキナショット)ッ...!

 

 男がとどめを指す前にどこからか声が聞こえた。男の目の前にタイヤを模したエネルギーの弾丸が回転しながら命中する。男はそれを両手をクロスしながら耐え、何とか上方向に衝撃を逃がすが、続けざまにまた別のエネルギーの弾丸が命中し、被弾した男は地面を転がる。

 

 二つのタイヤは空を舞った後でお互いに近づきその場に『青二輪』が生成された。勿論そこには先程乗せてオアシスまで送った彼女はいない。

 

 弾丸が飛んで来た方角を見ると、戦車の上でうつ伏せになりながら銃を構えていた彼女と目が合った。彼女は笑い掛けると、そこから降りようとするが何故か動きを止める。

 

「あはは、腕が疲れきって降りられないや」

 

 と言うので俺はその下まで行き手を差し伸べる。彼女がその手を掴み滑るようにして降りてくる足を腕で受け止める。

 

 それからゆっくり降ろすと、俺は彼女に先程聞いた初耳の情報について訪ねる。

 

「あー、言ってなかったっけ。ヤバイな、言った気になってた。ごめん、取り敢えずそういう事だから。でもおかげで敵の隙を作れたということでご勘弁...」

 

「あんなバ●カー撃退砲みたいな技喰らってあの人平気なんですか...」

 

「多分霊子で作った鎧を着込んでただろうし命に別状はなさそうだよ」

 

 彼女がそう言って男の方を指差すと倒れた男が低い呻き声をあげていた。どうやら無事...ではないが存命だった。

 

 それはそうと何故戻って来たのか聞こうとすると彼女は既にバイクの方へと歩き出していたので、落とした銃を拾いGod-tellを分離して銃をホルスターにしまう。

 

 何故だか彼女との間に距離を感じる気がした。彼女の方が避けてるようなそんな気だ。他人から避けられ過ぎてそういう感覚が研ぎ澄まされているせいだろうか?

 

 周りを見回すと不釣り合いな木が一本立ちその近くに岩が見えた。あんな場所に木なんて生えてたっけ?でも戦闘に夢中で気付かなかっただけかと思いバイクにまたがる彼女に話し掛けた。

 

「気を失ってたんじゃ?」

 

「起きたらバイクに縛られてるんだもん...エッチ」

 

「えっ...それは」

 

「冗談、起きた時点からUターンしてこっちに戻って来たの」

 

 と言って彼女はヘルメットを着けた。それに合わせて俺も傷が着いたヘルメットを顔に着ける。というかこれ俺が運転するわけじゃないのか。

 

 俺が乗るか戸惑っていると

 

「ホラ、早く!!」

 

 と、あるドラマの一話のようにサドルを叩かれ

 

「失礼します...」

 

 と一度謝ってから彼女の後ろに乗り、恐る恐るお腹の前に手を回し、あまり触れないように手を彼女のお腹の前で組んだ。それを確認したのか彼女はエンジンを掛けて走り出す。

 

 黒煙がする方向に走っている最中に彼女が口を開いた。

 

「あのさ一応私も二人を助けたくて君と一緒に来たんだから、送り返されたってわかった時ちょっとイラッときたんだよ」

 

 これが距離を感じた原因か。確かにあのまま送り返すのは最適解だったとはいえ二人を助けると奮起した彼女の気を削いでしまったことに変わりはない。

 

「それは...すいません。あそこに置いておくわけにもいかないと思ったので」

 

「……君は本当に良い子だね。こんな私のワガママみたいな事を受け止めてくれて。だから悪いけど私のワガママを聞いてね」

 

 そう言うと彼女はバイクを停止させて背後を見るように少しだけ首を動かした。

 

「次同じ事したら...私は君を仲間として見れなくなるから」

 

 彼女の表情はヘルメットで全く見えず読み取る事は出来なかった。その横顔を何度見ても映るのは反射した俺のヘルメット姿、彼女の顔は一切見えない。

 

 もし自分が同じ事をされたら、戦力外と勝手に判断され作戦から外されたらどう思うか。彼女の怒りはわからなくもなかった。それは俺が昔感じた疎外感に似ていた。

 

 経緯は違うとはいえ、あの時の自分と同じ彼女に何と声を掛けるべきか。その答えは...

 

「わかりました...俺の生き返りたいというワガママを聞いてくれている以上、あなたのワガママを聞くことは覚悟していますから」

 

 全てを受け入れる覚悟を示す事である。彼女が自分と同じだと言うつもりはない。全く違う赤の他人であり住む世界が違うのは重々承知の上での判断だ。

 

 彼女の事を面倒くさいと突き放すつもりはない。袖振り合うも多生の縁を盾にして彼女を俺の家に繋ぎ止めていたことも単なる俺のワガママに過ぎない。

 

 親しき仲にも礼儀あり、むしろそういう意見も含めて理解しあって行けば良い。俺達は協力関係なのだから。

 

 彼女はしばらく動きを止めていたが何も言わずエンジンを掛けて走り出す。そんな彼女に掴まりながら俺も一言も口を開く事はなかった。

 

 やがてしばらく走っていると霊香と翔が立っているのが見えた。霊香の足下にはレオンが地面に伏している。

 

「もしかして...終わった?」

 

 ヘルメットを取りながら彼女が二人に話し掛ける。それを聞いた霊香が

 

「あぁ...綺麗さっぱりと」

 

 と満足そうな表情をして微笑んだ。

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 

「何...これッ!?」

 

 謎の液体が身体に入っていくのを感じながら私は注射器を握る女に問い掛ける。睡眠薬ならまだしも麻薬の類いだったら一大事である。針が血管内に残るのを防ぐ為迂闊に動く事が出来ない。

 

「落ち着いてレイカ姫。これは超回復剤、身体の傷もすぐに治ります。『聖なる力』なら恐らく一瞬で元通りになりますから」

 

「あなたの事を信じるとでも?」

 

 そう言うと注射器を握った女は少し戸惑った表情をすると

 

「まぁ、そうですよね。でも一応私はあなただけの為の医療班長なので。私達『虹の王国』は人類の幸福を目的にしていますが、ここにいる私達通称“姫専”にとってまず幸せになってもらいたいのは姫、あなたです」

 

 と答えた。周りを見ると担架を支えていた全員が私の方を見て頷いた。『虹の王国』も一枚岩ではないということか。

 

 すると、翔に撃たれて倒れた男のテロリストが立ち上がりポケットから『翡翠の弓』を取り出す。どうやら回収してくれていたらしい。

 

「俺は撃たれ損ですが姫さんが幸せになるなら別に構いませんよ」

 

 と言ってそれを渡してくれた。その時には既に私の身体は自由に動くようになり、傷も完全に塞がっていた。すぐさまその弓でレオンの銃に向けて矢を放ち、翔を解放する。

 

「お前らぁっ!」

 

 止めを邪魔されたレオンが私に向かって吠える。私が再び弓を構えようとすると撃たれ損と言った男が私の前に右手を掲げて躍り出た。

 

「祝え!」

 

 それに合わせ担架の周りにいた自称“姫専”のテロリスト達が私を崇拝するように跪く。私がそれを怪訝そうに見ていると、躍り出た男が高らかに宣言した。

 

「麗しき華の如く人々を幸福へと導く霊子香る救世主!その名もレイカ・ディ・アルコバレーノ!正に新たなる歴史が幕を開けた瞬間で...ございます!」

 

「……長い...まぁこの際どうでもいいや」

 

 一礼して男は私に道を開けると傍らに跪いた。この人達は私の為にレオンに反抗するつもりなのか。何故会って数日の私の為に?

 

……同じなのか...翔もこの人達も。私の幸せを心から願ってくれているのか

 

 ならばこの人達の面子を立てる事も含んで私はレオンの支配から解放される為に戦うだけだ。もう一度時神家に戻りたいから。

 

「どいつもこいつもッ!!」

 

 苛ついたレオンが私に向けて発砲してくるが私は左手を前に構え、壁を目の前に生成していった。それで弾を防ぐと弓の弧で壁を切り裂きレオンに歩み寄っていく。

 

 するとレオンの両目が光り、来ている服がまるで生きているように形を変え始め、その先端が鋭く変形すると私に向かって襲いかかってくる。

 

 それを身体を捻りながら回転するように飛び、華麗に躱しながら空中に作った壁に手を着いてレオンの後ろに回り込む。そのまま弓で一閃すると、上着が破れたが中に霊子の鎧を着ていた。恐らくサブが作った物だろう。

 

……だったら利用させてもらうだけ

 

 そう考えているとレオンの両目が再び光り、手に持った拳銃がナイフのような短剣に変化する。この物を変える...いや武器に変える能力はサブと同じ類いだろうか。

 

 切りかかってくるのを弓で受けるが素早いナイフさばきに位置を予想してその場所に弓を移動させる事に精一杯になり反撃の余地がない。

 

 どこにナイフが来るか予想でも出来れば何とか持ち返せるのにと考えていると後ろから

 

「ロー!!」

 

 と言う翔の声が聞こえたので腰の高さに壁を生成して手を置いてそこに重心を掛け、ナイフが通る軌跡に合わせて側転のように回り、側頭部に蹴りを叩き込んだ。

 

 レオンがよろけるのを確認して着地後すぐに蹴りを入れる。そのまま地面に転がるレオンに弓を引き矢を放つ。だがレオンはすぐに立ち上がりその矢を弾いた。

 

「数時間前とはうってかわって随分と反抗的になったじゃないか」

 

「子供を人形扱いする毒親に反抗するのは当然...」

 

「そうかよ」

 

 レオンは急に前転して弾かれた矢を拾うと私との距離を一気に詰めて来たので弓を引いていた手を離すがその矢もレオンに弾かれてしまう。

 

 拾った矢を投擲するレオン。それを弓で防ぐとその弓を掴まれて引き寄せられ左手肩にナイフを刺された。空いた左手でナイフを抜こうと手を掛けるがレオンが押し付けているため抜く事が出来ない。仕方なくその手を降ろすと

 

「お前は俺から逃げられないんだよ」

 

 耳元でレオンが囁く。それに対し

 

「……捕まえた」

 

 と呟くとレオンがようやく自らの異変に気付いた。

 

「っ!?動かない!お前っ!」

 

粘着壁(アヒージョン)、身体の周りに生成させてもらった」

 

 そう言ってもがいているレオンのナイフに手を掛ける右手を開かせ離れると、肩に刺さったままのナイフを抜き取って投げ捨てた。

 

「私はあなたの支配から抜け出してやる、だから名前も変える!でもあなたとの繋がりを捨てたくないから名字だけは虹神...アルコバレーノの血を引くものとしてこの名字にしたい...いつか時神に変わるその日まで。それが人形じゃなくレイカとして私が生きる道だ!」

 

 とレオンに宣言すると私はその後ろに薄い壁を三枚奥に並ぶように作った。そして自らの後ろにも弾力性に富んだ霊子の壁を生成する。そして背後に思いっきり飛ぶと、私の身体は壁にめり込んだ後トランポリンのように跳ね返り前に推進力を得た。

 

レイカァァァッッッ!!」

 

 と叫ぶレオンの胸目掛け空中で蹴りの構えに移る。そして蹴り込む瞬間に粘着壁とレオンが着た鎧の霊子を分解して自らの右足の先に集束させる。

 

 拘束が外れたレオンに私の蹴りが叩き込まれ後方の壁に押し付けられる。その衝撃で壁は壊れ、レオンはさらに後ろの壁へと叩きつけられた。

 

 それから私が蹴り飛ばすように力を入れると壁は壊れ私が着地するのと同時にレオンは最後の壁に叩き付けられる。

 

地獄送り(ヘルドライブ)

 

 と呟くとレオンは口から血を吐きその場に崩れ落ちた。それを横目に私は“姫専”の女に駆け寄ると

 

「超回復剤、まだある?」

 

「まだありますが...どうぞ」

 

 注射器を受け取ると、血を吐き続けるレオンに近寄りその腕を取って薬を注入した。周りから何故、と言う声が上がる。それはレオンも例外ではなかった。

 

「何故こんな事をする...」

 

「……決まってるでしょ。唯一血が繋がった家族なんだから。今は一緒にいたくはないけれど、死んで欲しいとは思ってないよ...お父さん」

 

 そう言うと、レオンは少し哀しげな表情をした後で

 

「レイナに...似てきたな」

 

 と呟いた。それを聞いて私は

 

「当たり前でしょ、お母さんの娘だもの」

 

 と笑いながら答える。するとどこからかバイクの音が聞こえてきた。その方向を見ると、ヘルメットを着けたライダースーツの二人組がバイクに乗っていた。

 

 運転していた人物がヘルメットを取ると私に問い掛ける。

 

「もしかして...終わった?」

 

 私は微笑みながらこう答えた。

 

「あぁ...綺麗さっぱりと」

 

 そう言うと彼女、妖美 卯一は手に持ったGod-tellを私に渡した。それを受け取ると登録していた電話番号をタップしてある人物に掛ける。しばらくコール音がなった後

 

(もしもし)

 

「針太郎さん、レイカです。ご心配おかけしました」

 

(霊香ちゃん!?)

 

 電話の奥で驚く針太郎さんの姿が容易に想像出来る。まぁ敵かもしれない人物から電話が掛かってきたのだ。これが普通の人の反応だろう。

 

(無事なのかい!?翔も?)

 

「私も翔も生きてますよ」

 

(良かった!!本ッ当に良かった!!)

 

 だけど彼はそんな私でも本当の娘のように心配してくれていた。裏切ったと思われても仕方がない状況にも関わらず、家族として扱ってくれる事を実感し目の奥に熱いものが込み上げた。

 

(あ、でもこっちでは君はまだレオン側となってるから大きな声で話せないけど...また家に帰って来てくれるのかい?)

 

「またお世話になりたいですけど...実際大丈夫なんですか?」

 

 宇宙船、戦車、及び管理局内の設備破壊。警察に対する工務執行妨害、及び傷害罪。女子高校生誘拐、及び殺人未遂、そして国家反逆罪。簡単に考えても冥王星の最重要危険人物の牢獄に入れられて当然の部類である。

 

 しかも下手をすれば翔達神事屋、お父さん達『虹の王国』両方が一斉逮捕されても不思議ではない。完全に詰みである。

 

「俺が身代わりになってやる」

 

 どうしようもないと考えを巡らせているとお父さんが口を開いた。全員が彼の方を向いたのを確認して彼は話を続ける。

 

「俺が連れていた女は集めた女子高校生どもの中の一人にそっくりになるように部下に変装させた奴であって本物の破神 霊香は監禁されていた。しかしその部下に裏切られ乱戦の際に俺は重傷を負って置き去りにされた...支配者の末路を表した完璧なシナリオだろ?それを説明してやる、レイカ携帯を貸せ」

 

 私はお父さんに携帯を渡すと自称“姫専”の連中の元へ行く。彼らも元ボスの決断に動揺を隠せないでいた。私は女のテロリストに問い掛ける。

 

「これからどうするの?」

 

「ボスの面子を保つ為、一応ここから脱出して何とかタイタンに帰ろうと思います。しばらくは復興作業に精を出すつもりです」

 

 彼らはお互いに頷くと耳に付けている機械で管理局内にいるメンバー達に事の経緯を説明する。その作業をしながら彼らは私に一礼すると海に接している方向へと走り去っていった。

 

 翔の元へ行こうとするとふとお父さんの会話が耳に入って来た。

 

「娘が改名を希望だ。特別措置ですぐに変えさせてやってくれ。家の娘に何かあったら許さないからな」

 

 何だかんだ言って娘として扱ってくれてはいるらしい。そう思うと私はそちらを向かずに翔に手を差し伸べる。彼は今にも泣きそうな表情でその手を握った。

 

「おかえりなさい」

 

「ただいま」




?「あれ~終わったと思いました~?まだですよ明日もう一話出ますからね。え~っとなになに...エピローグ...まぁタイトルは見てからのお楽しみにしておきましょう。では~」
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