俺達と神達と空想神話物語 番外編?   作:赤色の魔法陳

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卯「マジダメだって、三ヶ月不更新は。読者離れるって」

零「Twitterの方は結構活発だったんですけどね。コト◯マン入れてたし」

翔「私生活が忙しいあまり話の構成は出来上がっていても文字にするのに時間が掛かるらしいので」

麗「この話も大半は一ヶ月で書き上がってたけど残りが一週間で二文とか超ローペースだったらしい」

零「おかげでセイバー終わるぞ」

卯「なんか前書きでもう◯◯終わるぞって言ってばかりじゃない私達?ただの時報じゃん」

翔「せっかくの僕のエピソードが...それより本編の方を進めないとまた整合性めんどくさくなりますから、作者頑張って下さい。はい、二話どう...え、まだ一話?」


Kick off the meteor day again

 家に帰った後も僕はあの少女が言った言葉の意味を考えていた。七年前と同じように江流渡に隕石が落ちる。電車の中で調べてみたが今現在、衝突の危険性がある小惑星などは存在しない。それがあと二日で現れるものなのか?

 

「どうした?何かあったのか」

 

 ソファでずっとしかめっ面をしていた僕を心配してくれたのか麗華さんが水を持ってきてくれた。僕は彼女に不思議な少女とあった事を話すと

 

「そうか...その子にも何か事情があるのかもしれない」

 

「そう言えば首筋に魔方陣みたいな白いタトゥーがあって不気味だったんですよね」

 

「首筋に白いタトゥー...!?まさか...」

 

 今度は彼女の方が険しい顔つきになった。タトゥーのことを話してからその雰囲気が明らかに変わった。聞き覚えがあったのだろうか。

 

「すまない、少し気になる事がある。明日もう一度江流渡に行ってくれないか、今度は私も行く」

 

「?…わかりました、部活休みますね」

 

 ただならぬ気配を感じ彼女の提案を承諾する。彼女は僕の返事を聞くと携帯を取り出し、どこかへメッセージを打ち出した。相手はウィッチさんだろうか。

 

 しかしわざわざ連絡を取るということは何か深刻な問題なのかもしれない。僕は覚悟を決めるように水を飲み干すと部屋へと戻った。

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 五月十七日水曜日十五時半頃。翔と麗華の二人は江流渡に到着した。麗華の提案で下校後に一度家に戻り制服から私服に着替えてからやって来たのだった。

 

 翔は半袖のTシャツに裾の短いズボン、麗華も袖が短く風通しが良さそうなシャツに動きやすそうなホットパンツだった。

 

 二人とも財布を入れたショルダーバッグを掛け、ポケットにGod-tellを入れ、首に魔王装備のネックレスを掛けていた。

 

 傍目から見れば高校生カップルが学校帰りに江流渡へ遊びに来たように見えるかもしれない。しかし二人の険しいような不安を交えた表情はそのような目的で来たわけではないことが見てとれる。

 

「取りあえず例の少女を探そう。翔、前に私を探したみたいに予知することは出来る?」

 

「僕の能力は名前を知らないと上手く探せないんです。元々人探し向けの能力じゃないので。試しにこっちを使って駄目だったら予知で頑張ってみます」

 

 翔は人通りが少なく路上の監視カメラに映らない位置まで移動するとポケットからGod-tellを取り出す。画面上に現れた『変身』の文字を押すと身体が光に包まれる。

 

 すると先程の涼しそうな服装から更に風通しが良さそうな布だけの服装になった。翔は恥ずかしさを感じながらもその力を使うため深呼吸をして集中力を高める。

 

 身に纏うはノアの神力。手に入れてから数日しか経っていないが翔はこの力がどういうものか試していた。結果判明したのは、集中力を高めることで預言を口にすることがあるということだった。

 

 しかも十回に一回出るかどうか、出ても“力の目覚めを待つべし”などというおみくじのようなものでありそれが正しいのかもわからない。

 

 更に自分が言ったことを聞き取る人間がいないと預言が出たかどうかもわからず、預言が出た後は体力が切れたように疲労が襲ってくる。果たしてこの力を上手く使うことが出来るのかと翔は不安で仕方がなかった。

 

 麗華は集中する翔を固唾を飲みながら見守り、人が来ないか周りに注意を払う。すると瞑ったままの翔の眼がゆっくりと開き

 

「空の石が落ちし麓で運命の出会いあり。汝の過去と未来をその力で変えよ」

 

と呟くように言うと憑き物が落ちるように身体をよろめかせ普段の翔の姿と目付きに戻った。しかし本人はそれを言った記憶がないので成功したかどうかを麗華に尋ねる。

 

 麗華は預言の言葉をそっくりそのまま翔に伝えるが二人とも過去と未来を変えるという意味がわからず立ち往生してしまう。

 

……あの丘の麓に少女がいるってことなのか?でも未来はともかく過去を変えるって一体...

 

「取り敢えず、行ってみよう。例の子が何かを知っているかもしれないし」

 

 麗華に促され翔は息を上がらせながらも丘へと歩き始める。過去を変えるという言葉の意味を考えているうちにすぐに付近までついてしまった。

 

 そのまま丘の頂上へと続く林道に二人は入っていく。林道と言っても道が整備されているわけではなく、人が通って草が生えていない場所を探しながら歩くしかなかった。初夏ゆえに様々な虫の鳴き声が響き渡り、半袖の二人は虫に刺されないように注意しながら道を歩いて行く。

 

 木々の匂いや生い茂る草木を見て神聖区に存在する天狗山と似たような雰囲気を感じながら歩いていると誰かが駆け足で下ってくる音が耳に入ってきた。

 

 やがてその音が近づいて来ると一際大きな木の影から少女が出てくる。その少女は二人が探していたその少女であり、彼女は二人を見つけると何かに怯えているのかすぐに駆け寄った。

 

 麗華が少女を抱き締め、翔が首元を確認すると白いタトゥーが見受けられ、件の少女で間違いないと二人は確信する。すると少女は麗華の手を引っ張り林道から出ようとしだす。

 

 それに誘われるように林道から出ようとすると誰かが地面の枝を踏み締めながら歩いてくる音が聞こえた。足音だけではそれが人なのか動物なのかは判断出来ない。

 

 咄嗟に二人は構えると少女は背後の木の影に隠れる。やがて一際大きな木の影からローブを全身に羽織った屈強な大男が現れる。

 

「あれ?あのガキどこ行ったんだ?」

 

 大男は構える二人が見えていないのか辺りを見回して少女を探しているようだ。その様子と風貌からとても保護者とは思えない大男に翔が

 

「保護者...じゃなさそうですね、あなたは一体...」

 

 と尋ねると大男は

 

「何でいるんだよ...『聖なる力』は惹き合うっていうが流石に予想外だったぜ。久し振りだな“翠女神(ゴッドネス)”」

 

 フードを取りながら答える。その隠れていた顔を見た瞬間、麗華の表情は一瞬にして恐怖に染まった。

 

主人(ボス)...!?」

 

 GDの最高権力者、対象を移動させる能力を持つとされるがその詳細はGD内で知っている者がいるかどうか。その気になれば国家の戦闘部隊と一人で渡り合えると言われる桁違いの戦力を有すると噂される人物。

 

「こいつがGDの...親玉!?」

 

「おいおい、俺がそう見えないのかよプレディクションボーイ?」

 

「なッ!?」

 

 能力を言い当てられ同様する翔にボスは笑いかける。自らの手の内を知られている恐怖が彼の中に沸き上がる。

 

 ボスが翔に気を取られている間に麗華がボスの顔の回りに霊子の箱を作り窒息させようとするも

 

「子供騙しが」

 

 すぐに気づかれ顔の前の霊子の結合を破くように破壊されてしまう。だがその行動の隙を突いて麗華は右手で翔を引き、木の影に隠れていた少女を左手で掴んで駆け出した。

 

 麗華は今この状況でボスを相手取ったら全滅するのは確実であり、例えここに零矢や卯一がいたところで勝ち目があるとは思ってはいなかった。だからこの全員を守るには多少無様かもしれないが尻尾を巻いて逃げるしかない。

 

 草を踏み締め麗華は両手で二人を引いたまま道なき道を駆け下り、もう少しで大通りに出るというところで急に目の前の空間が歪みだした。

 

 最初は蜃気楼の類いかと思ったがすぐにその考えは消えた。歪んだ空間にひびが入りボスが中から姿を現す。

 

……これがボスの能力!?

 

 二人を庇うように麗華が前に出つつも後ろへと退いていると、翔が飛び掛かるように拳をボスの胴体に叩き込んだ。しかし

 

「弱い」

 

 の一言で全く微動だにしない。続いて拳より威力があるであろう蹴りを入れるも左手で簡単に防がれ、そのまま脚を掴まれて投げられてしまう。

 

「ぐぁッ!!」

 

 木に叩き付けられ翔が呻き声をあげ滑り落ちる。見かねた麗華が少女を下がらせ自らの左手に霊子を収束させ拳の一撃を叩き込むがそれを右手で掴まれてしまった。

 

 しかし、その掴まれた左手を軸とし空中に足場を生成した麗華は右手をそこへ付き左脚をボスの側頭部へ入れた。

 

「効かないな」

 

 普通の人間ならば脳震とうを起こして倒れる程の強さで蹴ったものの全く歯が立たず、横へ軽々と投げ飛ばされる。大木に衝突する前に翔が麗華を受け止めたものの勢いを殺し切れず地面を転がってしまった。

 

 それでも何とか二人は立ち上がるが

 

「次、行くぞ」

 

 左足を踏み込んで加速したボスが右拳を構えて低く跳躍する。瞬時に翔が予知を使って麗華に注意を促し、麗華は腹の前に霊子の壁を重ねるように生成した。

 

「うぐぅぅっッッ!!」

 

 それにより直撃は避けたものの、拳圧が壁を通り抜け身体を拳で貫かれたような衝撃が麗華に走る。それは後ろにいた翔も同様で二人合わせて背後の大木に叩き付けられた。

 

 幹に亀裂が入る程の衝撃を腹部に喰らった二人は口から血を吐き、その場に崩れ落ちる。互いの血液が土と混ざり異様な臭いが鼻腔をくすぐった。立ち上がろうと手に力を入れるも身体が言うことを聞かない。

 

 二人が戦闘不能と判断したボスは木に隠れて怯えながら見ていた少女に歩み寄る。少女は逃げようとするも、二人を圧倒した戦闘を見た事で恐怖で足が動かなかった。

 

 とある目的の為にボスがその少女を捕まえようと手を伸ばそうとした時

 

天使の(エンジェル)...光撃(ショット)ッッ

 

 どうにか上体を起こし背中を翔に支えられた状態の麗華が大型の銃をボスに対して構え、その引き金を引いた。

 

 白色の光弾が銃口から発射され、それがボスへと向かっていく。すぐに弾道を見極めたボスは弾を粉砕すべく拳を突き出して対応するも

 

「ッ、何!?」

 

 拳が光弾に触れた瞬間目映い光が辺りを包み込み、目を開けられなくなってしまったボスと少女は顔を腕で多い隠した。

 

「ううううああっっッッ!!」

 

 その隙を利用して麗華は気合いの叫びと共に立ち上がると震える手でGod-tellの変身のボタンを押し天使ルシフェルの力を身に纏う。

 

 背中の羽を広げて浮かび上がると左腕で翔を抱えて前方に向けて跳び蹴りを放つ。

 

地獄堕とし(ヘルエンジェルドライブ)!!!!

 

 突き出した右足に空気中の霊子を収束させ威力を強化し、ボスの身体へと蹴り込む。屈強な体格であるボスも反応が少し遅れ防御が間に合わず直撃した為によろけ、その隙に右腕で少女を抱え混み上空へ飛び去る。

 

「フン、逃げたか。あのガキがいれば時間が掛からないと思ったが地道に探せば良いし...あいつらと戦うのはごめんだ」

 

 残されたボスが目を閉じたまま呟き、麗華の蹴りを喰らった場所の土を落とすように手ではたいた。その様子から麗華の奥の手のような攻撃でさえ全くダメージを負った様子が見受けられず、もし二人が見ていたらおそらく戦慄したであろう。

 

……さてあと調べてないのは半分か...腹減ってきたしさっさと済ましてラーメンでも食って帰るか

 

 ボスは再び枝を踏み締め街とは反対側に向かう林道の奥へと入って行った。

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※

 

 

「うぐッ...」

 

 ボスからもらったダメージがかなり深刻なようで無理を重ねた私の身体は悲鳴を上げていた。威勢よく飛び上がったもののすぐに限界が来て墜落してしまい、おそらくさっきいた場所からはそんなに離れていない。

 

 ボスがこちらに来ないことを祈るしかないが、もし来たら最早絶望しか残らないため予断を許さない状況のままだ。しかもこの負傷と、少女が近くにいる状況ではまともに魔王装備も使えない。

 

「大丈夫?お兄ちゃん、お姉ちゃん?」

 

 少女が木に背中を預けながら傷が癒えるのを待つ私と翔に心配そうに声を掛けた。

 

「大丈夫だから、ちょっと休ませてね」

 

 心配をかけまいと翔が答えるがその声はかなり苦しそうで何とか作り笑いで誤魔化している様子だった。それもそうだ、私達は内臓にダメージを負っているのだから。『聖なる力』の保持者でなければ今頃ここで死んでいる。

 

 今は取り敢えず傷が癒えるのを待つのが最適だろう。その間すべき事は...

 

「あなたは一体...何者なの?」

 

 この少女が何者なのか、それを探る事である。GD、それもボスが狙う程の人物となれば何かしらの能力を持っている可能性が高い。となれば持っているのは『隠された力』か、それとも...

 

 考え込んでいても彼女から何も反応がなく、不思議に思っていると、どうやら何者と聞かれて何と答えたら良いのかわからない様子で悩んでいた。

 

「えっとね、君の名前は何て言うの?」

 

 見かねた翔が言葉を言い換えると彼女は

 

「空星...」

 

 と答えた。続いて翔が

 

「お父さんとかお母さんは?」

 

 と質問すると

 

「いない、私捨てられたから」

 

 と答え俯いてしまった。いわゆる捨て子というやつだろう。翔が言っていた通り彼女は背丈は小学生辺りに見えるが、多少汚れた髪やボロボロの服は帰るべき家が無いように思えた。

 

「でも一人じゃない...ここら辺を歩いている時に博士に拾ってもらった」

 

「博士?」

 

「うん、天野博士。隕石の研究をしていて私はその手伝いをしている」

 

「え?天野...博士!?まさか...だって行方不明じゃ...」

 

 天野博士という名前を聞いた翔が突然狼狽え始める。その様子から彼は天野博士の事を知っているようだった。

 

「誰?その人」

 

「江流渡の有名な研究者です。よく子供向けのセミナーを開いてて昔僕も行きました。メテオデイの当日も奏はそのセミナーに参加していましたし。その責任を追及されて今は行方不明のはず...」

 

 つまりその行方不明者がこの付近に潜伏していて捨てられたこの子を拾ったということか。ならこの子の首筋にあるタトゥーはその天野博士の能力である可能性が高い。そしてその能力は私がGDにいた時に耳にしたものだ。 

 

「博士が言ってた、七年の時を経て腐ったこの街に再び隕石が落ちる。希望なんて意味がない、全てが無に還るって」

 

 そう語る彼女の目は少し狂気に取り憑かれたようで私は怪訝な顔をするしかなかった。しかし、その姿はどこか昔の私と似ていて希望も何も信じず自分の力だけを信じていた私と無意識に重ねようとしてしまう。

 

「ふざけんな...あの隕石で何人死んだと思ってるんだ...あの人が全員を避難させていれば今頃奏は...」

 

 翔が絞り出すような声でそう呟く。地面に置かれたままの彼の拳が草をむしり取る程強く握り締められていた。先程まで穏やかだった翔が変わった様子に彼女は少し驚き半歩下がる。

 

 私はその悲しみに寄り添うことが出来ず逃げるように辺りを見渡すと何だか既視感を覚えた。

 

……この木の配置、この花の色どこかで

 

 突然私の頭に記憶が流れ込んで来る。それはかつて私がこの場所を通り過ぎ頂上まで歩いている映像、それがおそらく七年前だという事はすぐにわかった。

 

 しかし映像が途切れるように現実に引き戻される。デジャブのようなものだったのだろうか。しかし今のが正しければ七年前の隕石落下に私が関わっていた可能性は高い...いやもう黒か。

 

 私は翔の悲しみにを分かち合う事は出来ない、そんな資格など存在しない。だが私がいたという事実をそのまま伝えて今の関係が崩れるのも嫌だ。つくづく自分勝手だとは思いつつ私は今出来る事を探す。

 

「その...博士とやらはどこにいるの?」

 

 怯える少女にそう尋ねると彼女は

 

「ここよりもう少し奥、街からは見えない崖の麓に小屋がある。私は食べ物を買っていつもそこに戻ってる」

 

 崖ということは隕石が落下した後の地表の変化で出来た場所に小屋を作ったのだろう。となれば世間から追われた後でその場所に住み着いた可能性が高い。その後この子を拾ったのか。

 

「行ってどうするの?お姉ちゃん達もさっきの奴の仲間?博士に隕石を落とすのを止めさせるの?」

 

「出来るなら...ん?隕石を落とすのを止めさせるって、まさかその博士が隕石を自由に落とせるってこと!?」

 

「多分、そう...だよ。博士言ってた」

 

 そんな無茶苦茶な能力が存在するのか?宇宙空間に浮かぶ小衛星をピンポイントで落下させる能力、そんなの組織にいた所で危険視されるに決まっている。追放されたというのはそういう理由だったのか。

 

「...じゃあ七年前の隕石は...まさかッ!!」

 

「天野博士が落としたってことですよね...」

 

 いつもよりも二周り程低い声で翔がそう呟き私は驚く。よく見れば翔は口からの出血が止まっており、首元のネックレスが解き放たれんと魔王がうごめくかの如く揺れていた。

 

 琥珀の槍に宿る魔王は冷酷(プスィフロス)。名前から見て使用者に残虐な心理が働けば働く程、その強さを増す魔王武器。今の翔では監理局の時の私のように無意識に鎧を纏ってしまうかもしれない。

 

……私が何とかしないと...!!

 

 まだ完璧に治りきっていない身体を震い立ち上がらせ私はその少女にその場所へ連れていくように言った。

 

「僕も行きます。僕が必ずそいつを...」

 

「ダメ!!」

 

 自分でも思ってもいない程の大声で立ち上がった翔に私は叫んだ。

 

「どうしてですか!?奏を殺した奴かもしれないのに仇すら取れないなんて!!」

 

「だから...ダメ。復讐なんてしたところであなたの人生に枷が出来るだけ。それに...この状況で暴走されたら足手まといだから...だからッ...」

 

 自分がこんな言葉を彼に投げ掛ける資格など無いのではないか、偉そうに語ってはいるものの彼と同じ喪失感を味わったことのない私が言えることではないのではないか、そう自問自答を心で繰り返しながらも私は冷酷さを装い

 

「ここで...待機してて、私が話をつける」

 

 そう告げると私は困惑する少女を促し翔をその場において林道の奥へと歩き出す。置き去りにされた翔がどれだけ悔しいことか、その思いが私の背中に突き刺さる。

 

 それでも振り返ることなく数分間歩き続けると周りから見ればそこにあるのかどうか一目見ただけではわからない小屋が建っていた。それもしっかりとしたコンクリートではなく壊れて木から落ちたようなツリーハウスのような見た目だ。

 

 空星にその場にいるように指示すると私は恐る恐る小屋へと歩みを進めていく。突然中から叫び声が聞こえたかと思うと扉を破りながら誰かが転がり出た。

 

 それは黒髪に所々白髪が混じっている初老のような男がこちらに気付きもせず自身が転がり出た小屋の方を睨む。すると小屋の中には

 

「悪いな、お前の能力は面倒だから用が済んだら消えてもらうしかないんだ...ん?チッ、早いな翠女神」

 

 先程死闘を繰り広げたばかりのGDのボスがそこに立っていた。その背後に見える小屋の中は電気回路がショートしているのか剥き出しの配線から火花が吹き出ている。

 

 小屋の中に何かの機械があったのは明確であり、恐らく今私の前にいるこの男が探していた天野博士だろう。しかしこの男なんだか見覚えがある気がするが。

 

「お次はGDを追放された者同士の邂逅か、まぁでもお前らは顔見知りじゃなかったか?七年前に同じ任務に就いてただろ、この場所でな」

 

「ふん、昔の事など忘れたわ。今更わしを殺したところでメテオデイの再来は避けられない。第一辰神、お前達GDは人間の神への信仰を消す事を生業としているが、それなら別にわしが隕石を落とそうとなんら問題ないではないか。それでも他に理由があるのか?」

 

「あったとしてもこれから死にゆくお前に話す義務はない」

 

 やはり私は任務でこの場所に来ていたのか。恐らくこの天野博士の手伝いとして派遣され、そして時神奏を...

 

 私は爪が食い込むほど拳を握り締める。私は翔の仇相手なのだ。そんな奴が復讐を止めろとはよくいったものだ。

 

 今すぐ私がこの男を殺して私も、そう思ったがまだ空星が近くにいる。この男がどうであれ空星にとっては親のような存在であろう。この男を殺せば私に殺意を抱くかも知れない。それを絶対に防ぐ為に今私がすべき事は...

 

 ネックレスに手を当てて念じると先端に着いている弓の飾りが巨大化する。普段鎧を纏い手に持つ弓より一回り大きいそれは持ち上げるのには少し重く、それでもなんとか持ち上げ構える。

 

「お前の相手は後でしてやる、黙って見てな翠女神」

 

「無理、例えこの男が誰であろうとあの子にとって大切ならば黙って見てることは出来ない」

 

 光の弦を引き翡翠の矢を放つがボスは意図も簡単に叩き落としてしまう。最早人間を越えている反応速度に驚きながらも私は怖じけずに天野博士の前におどりでて

 

「逃げろ、ボスは私が相手する」

 

 と呟いて弦を引いた。

 

「来いよ、純粋(アグネス)

 

 対してボスは片手を腰に当てつつ、もう片方の手で挑発するように指を曲げる。

 

「そこは翠女神(ゴッドネス)と言うべきでしょ」

 

 余裕もないのに無理な軽口を叩きつつ弦を指から離し矢を放つ。放つとすぐに脚に力を入れて地面を蹴り、矢と共にボスへと迫った。

 

「甘いな」

 

 ボスが先程と同じように矢を叩き落とそうと拳を掲げ、振り下ろそうとする。その仕草を確認して私は素早く指を鳴らした。それと同時、一本の翡翠の矢が数多に分裂し目の前に広がる。

 

 流石に全て叩き落とすのは無理と判断したボスは退くように小屋の中へと下がろうとする。それを読んで私は更に踏み込み、握りしめた弓の弧に霊子を収束させ斬撃を放った。

 

 しかし数多の矢が小屋の壁を貫き斬撃波が木をえぐっても小屋の中にボスの姿は見えず、そこには壊れた機械があっただけだった。

 

 ボスの能力だと気付くと共に背後から殺気を感じ、振り向こうとする前に襟を掴まれて身体を浮かせられ、扉があった場所の上の壁の部分に叩き付けられる。既に脆くなっていた壁はその衝撃だけで砕け、私の身体を木片が傷付けた。

 

 頭が下になった状態でそれでもなんとか弓を構えると地面に落ちる前に私は矢を放つが、ボスの腕の一振りで全て地面に落ちてしまった。

 

 すぐに霊子の壁を作ってそこに手を置き、頭からの落下を防いで砂利の上に着地したがダメージの影響で吐血してしまう。口の中に血を滲ませながらも腕に力を入れて立ち上がりまだ戦えるという意思を表すように弓を構える。

 

 そして再びボスに対して走り出すが、ボスは一瞬で距離を詰め拳を突き出してきた。私は弓で迎え撃とうと両手で弓を構える。両者が正に触れ合おうとする瞬間、間に何かが割って入り私は後ろへ吹き飛ばされた。

 

「ん、あぁプレディクションボーイか。仲が良いなお前ら」

 

 それは琥珀の槍を地面に突き立て普段の表情とはうって変わり人を殺すのも厭わないような冷たい目、計らずも過去の私のような目をした翔だった。

 

 彼は突き刺さった槍を抜くと私やボスには見向きもせず事の動向を観察していた天野博士の方を向き槍を引きずりながら歩き出した。

 

 槍と地面の間に火花が飛び散りその装甲が剥がれ落ちていく。それが徐々に彼の身体を琥珀に覆っていき、やがて彼の身体は解放の呪文なしに冷酷(プスィフロス)の鎧を見に纏っていた。

 

……管理局の時の私と同じ!?魔王装備は『魔王解放』の呪文がなくても鎧を使用者に装着させる事が出来るのか、それとも感情の増大に応えて魔王側から力を解放したのか...

 

「まさかお前は時神奏の兄の翔か...」

 

 天野博士がそう呟くと彼は反応したように脚を止めるがその金色に包まれた手をよく見ると柄を握る手が強くなっているのがわかった。そしてその手を肩の上まで挙げ槍を両手で握る。

 

……まずい!!

 

 私はすぐに駆け出し彼を止めようと手を伸ばすが、彼は私の声に反応しないまま槍を振り下ろそうとする。それを阻止すべく私が能力を使おうとした瞬間、彼と天野博士の間の空間が歪み、ガラスを割るように空間を切り裂いてボスが現れる。

 

「お前に殺されちゃこっちも困るんでな」

 

 ボスは槍を掲げ、がら空きとなった彼の腹部に拳を入れて退けると天野博士の方を振り向きその胸ぐらを掴む。その二人の間に私が矢を射って移動されるのを防ぎ弧で斬りかかる。

 

「あなたには渡さない」

 

 弧を素手で掴んだボスはやってみろというように挑発的な笑顔を浮かべた。しかしすぐに表情を変えると私の後方を振り返った。

 

 そこにはいつの間にか体勢を直し槍を突き刺そうとする翔が迫っていて、ボスは右手で弧を掴みながら左手を槍へと伸ばす。

 

 琥珀の槍の先が鮮血で赤く染まりボスの左手を貫いた。しかしその痛みで顔を歪めること無くそのまま貫かれた手で槍を掴み、上半身を回すように私と翔を投げ飛ばす。

 

「こりゃひでぇ、手に穴が空いちまったじゃねぇか」

 

 しかしそんなボスの言葉とは裏腹にその風穴はゆっくりと塞がっていく。その治癒能力の高さは私達がよく知る体質と同じだった。

 

「さて“聖なる”に邪魔されたら面倒だし場所を変えようぜ、博士」

 

 そう言ってボスは右目を白銀に光らせ始める。しかしその胴体に琥珀の槍が突き刺さると右目は元の黒色に戻り、その目が奥を見ると翔が槍を投げた体勢で立っていた。

 

「どんだけ俺の身体に風穴開けりゃ気が済むんだ、こんなの別に何とも...ん?」

 

 ボスが再び天野博士に近付こうと脚を動かそうとするも全く動かない様子で顔をしかめた。それを見て私が矢が射ると任意で分身するように、槍で貫いたものの動きを制限出来るのでは、と私は仮説を立てようとするも翔が脚に力を溜めて走り出す体勢をしているのに気付き思考を止める。

 

……なんでもいい、今この瞬間ボスを退けられるなら!!

 

 私はすぐにボスに向けて走りながら解放の呪文を唱えて鎧を纏い走り出す。同時に翔も反対側からボスに向けて走り出し、二人同時に地面を蹴って跳躍した。

 

 鎧のエネルギーが琥珀と翡翠の炎へと変換されそれぞれの足先に集まり勢いをつけた飛び蹴りがボスの左右同時に叩き込まれる。

 

 両者の蹴りを上体に喰らったボスは弾かれるように吹き飛ばされ砂利を撒き散らしながら地面を転がった。

 

 その隙に私は博士の手を取ろうと手を伸ばすもその腕を翔に掴まれる。その表情を伺おうとその顔を見るも黒い仮面に隠されたその先を見ることは出来ない。

 

 だが私の腕を掴むその行為が博士をこの場で殺すという明確な意思を持っていることはわかった。

 

 そんなやり取りをしていると急に博士が

 

「空星!!近くにいるんだろ!?今すぐここから離れて街に行け、全速力でだ!!早く行け!!」

 

 と叫ぶ。すると遠くで空星が走っていく音が聞こえた。避難させたのかと思い博士も共に避難させようとするとその首元に白いタトゥーが入っているのが見えた。

 

……またこのタトゥー、自分と関わりがある人物につけると聞いていたがこれは一体...?

 

 そう考えていると脇腹の辺りに衝撃を感じて私は横に倒れる。翔から攻撃を受けたのかと思ったが彼も私とは反対側に倒れていて、私達の間には血を垂れ流しながら拳を構えていたボスが立っていた。

 

 ダメージを負っているだろうが全く気にしない様子でボスは懐から何かを取り出した。それは注射器の様な物で、それを右手で持ちながら左手で博士を殴り寝転がせる。

 

 そのまま腕を取ると針を刺し何かの液体を注入する、すると博士が苦しみ出すがボスの手を振りほどく事が出来ずなす術がない様子だった。

 

 私がそれを止める為に走り出すがボスに触れたと思った瞬間、目の前からボスが消え翔が現れてぶつかってしまう。倒れながら背後を見るとボスはピストンを引き博士から血液を抜き取っていた。

 

……ワープさせられたのか!?それよりあれは一体...

 

「血など使って何のつもりだ」

 

 腕を押さえながら博士がボスに聞くがボスは小瓶を注射器から取り外し懐にしまうと用が済んだように注射器を投げ捨てる。

 

「さぁな、部下達の指示だよ。おい、プレディクションボーイ!もう良いぜ、殺しても」

 

 ボスがそう告げると翔は私を押し退け槍を杖にして立ち上がる。それを見た博士は観念したかのように押さえていた手を離し大の字に寝転がった。

 

「どうせ死ぬなら道連れだ、仲良く地獄へ堕ちようか。殺人者ども」

 

 そう呟くと博士の首元のタトゥーは怪しく光始め周囲に異様な空気が流れ出す。そして今にも閉じそうなその瞼の下の両目が白く光り始めた。

 

 それは能力を使用する際の合図、博士の能力の概要を既知している私達三人はほぼ同時に空を見上げた。太陽とは別に光る何かがその空にはあり、その何かは徐々に大きくなっていく。

 

引力石(メテオフォール)

 

 博士のその呟きが風で霞むほど私達三人は頭上に意識を集中させていて。落ちてくる隕石をどう対処すればいいのか必死に考えるが最適解が見つかるはずもなく、ただその場から走り出すことしか出来なかった。

 

 翔の手を握り二人揃って走り出す。しかし脚を踏み込むのは既に遅く、鼓膜が張り裂けるような轟音が聞こえると共に地は砕け、目の前は霞む。

 

 平衡感覚を無茶苦茶にするような衝撃、自らの五体が満足なのかどうかすらわからない程鈍い感覚。刹那的過ぎるがゆえに恐怖などを感じる暇もなく、次に開眼して見る景色が現世なのか、はたまた魑魅魍魎が蔓延る地獄なのか考える余裕すら与えない。

 

 骨が、肉が、内臓が、血管が、身体全身が悲鳴を上げ、力んでいなければ壊れてしまうように精神をすり減らす痛みが襲い、目を開けることすら出来ずにただ静かな時が流れた。

 

 一瞬かそれとも何時間かわからない時間が過ぎ自分という存在が無くなってしまったのかと錯覚するに至っても、たった一つ大事な者の手を握っているその感触が私の自我を繋ぎ止めていた。

 

 ふとその手を強く握ると反応するように翔も握り返した。私達はまだ生きている、それを実感するように私は目をゆっくりと開いた。すると翔の顔が目の前に映り、私は安堵する。

 

 衝撃の影響か魔王装備は二人とも既に解けていて生身の状態で地面に寝っ転がっていた。目に余る程の傷が付き腫れたようにボロボロになった私達の腕は関節以外の場所で曲がってはいたもののその掌は互いを握っていた。

 

 二人とも生存していたことは良いものの痛みのあまりその場から動くことが出来ない。腕がこの状態なら脚は見るに堪えない状況になっている可能性が高い。

 

 震える声で私は“神”に呼び掛けるも衝撃の影響でGod-tellが壊れているのか応答がない。ならばこのまま回復するまで待つしかない。

 

 しかしここは一体どこなのだろうか。隕石が落ちた後吹き飛ばされて麓の方まで来てしまったのであろうか。それなら腕などちぎれていてもおかしくはないが幸運なことに腕はまだ付いている。

 

 そんなことを考えている間に私達の腕の傷は塞がっていき、骨も徐々に戻り曲がった腕は段々と元の形に戻っていく。

 

 やがて腕が治ったのを確認しそれを支えに身体を起こし残りの三体を確認するがどれも欠損は見られなかった。立ち上がれるまで回復し二人でなんとか立ち上がり互いを見るが目立った外傷は消え、服も魔王装備を纏っていたため血みどろではない様子だった。

 

 辺りを見渡して見ると翔が驚いた様子で嘘だろ、と呟く。その方向を見るが只の江流渡の街並みでありどこがおかしいのかと思っていると

 

「観覧車がない...しかもあのビルってもう取り壊されたはず。まさか...」

 

 翔はそう呟きよろよろと街の方へと向かっていく。それを追うように私も歩いていくと人通りの多い道へと出た所で翔が脚を止めた。壁に掛かったテレビをじっと見上げて動かない。

 

 私もそのテレビを見た瞬間、何故翔が違和感を抱いていたのかを理解した。だが今の状況は完璧に理解から遠く離れていて、まだ微かに血の味が残る唾液を飲み込むしか出来なかった。

 

 テレビは今夜行われる街の祭りの事を放送していた。しかしそこには今年2()3()1()5()年の江流渡祭とテロップが映り、キャスター達も間違えている様子はない。

 

 私達はどうやら七年前にタイムスリップしてしまったようだ。




「君には関係ないもんな」

「あ...ああっ...嘘、そんな...」

「結局こうなっちゃうの?」

「予知が使えない...ってこと?」

次回 『All things are decided by guiding star』

「止めるわよ...私達で」
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