深海棲艦?ちいさいメロン級   作:Alika

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前回のあらすじ


霧島ネキは強い、はっきりわかんだね。


第2話

 

 

「あのねぇ。だからわたしの名前は夕張だって、何回言ったら覚えるのよ。ほら、わたしの名前は?」

 

 

「ヲッ。」(ちいさいメロン、お腹すいた。)

 

 

「アンタやっぱりケンカ売ってるんでしょ!?」

 

 

 

 

 

 

まるはちまるまる、そろそろ遅刻する時間じゃない?急いでね?夕張よ。

 

 

それにしてもこのヲ級、わたしの名前を小さいメロンだと思い込んでいるのだろうか。それとも挑発しているのか?それともいわゆる深海棲艦ジョークなのだろうか。

あれからヲ級を締め続けたわたしは、四半刻ほど前にようやく冷静になることが出来た。けど、とりあえず躾けのためにもう一度ボコしておくことにする。

 

 

 

 

「もういいわよ、メロンでも。ただし、二度と小さい言うな。気にしてるんだから…次に言ったら…わかるわよね」

 

 

 わたしは主砲を彼女の腹に押し当て、砲弾を装填した。ゴキン、と主砲内部に砲弾が装填される金属音が響く。

 

 

「ヲ、ヲッ!」(イエス、マム!)

 

 

 ようやく主従関係を理解できたのか、すぐさま彼女は亜米利加式の敬礼を行った。

 

 

 

 

 なんで涙目でプルプル震えてるのかしら?もしかしたらあれが深海棲艦なりの敬礼なのかしらねぇ、うふふ。

 

 

 ふと思う。そういえば、深海棲艦には名前ってものがないのかしら。確かに彼女は自分の事を漱石風に、吾輩はヲ級である、名前はまだない。なんて言っていたけれど。

 

 

 未だに敬礼を続けながらプルプルしているヲ級を見ながら、わたしは彼女に屈辱的な名前を付けてやろうと思った。決して小さいメロンなんて呼ばれたことの報復ではない。繰り返す、報復ではない。そんなに器の小さい娘ではないのだ。そう、小さくない!

 

 

 

 

 

 

「そうだ!あなたに名前をあげるわ。ヲ級がたくさんいたらわかんなくなりそうだもんね~。アンタの名前は…そうねぇ…「ナイ」。決定、異論は認めない。」

 

 

「ヺッ!」(ナイチチと申したか!)

 

 

 

 

 わざわざある一部をガン見しながら言ってやった。ハハッ、ざまぁwww。

 

 両手をブンブン振り、ピーピー喚きながら何やら抗議しているヲ級「ナイ」をしり目に、わたしはとりあえずナイを無視して現状把握を行うことにした。

 

 

 

 

1、お腹の空き具合から、燃料については半分を切った程度。このままだと、あと1日程度で活動限界が来てしまう。燃費の悪い艦体(からだ)でホント困るわ。

 

2、特にだるさも感じないことから弾薬についてはまだ八割程度は残っているだろう。体感だけど。この辺って結構曖昧なのよね。

 

3、艦装は中破判定。主砲20.3cm連装砲二門及び副砲10cm連装高角砲二門については、多少の被弾はあるものの正常稼働。61cm四連装酸素魚雷については左脚部3番4番発射管に被弾、装填不可。ってところね。提督が良い装備を優先的に回してくれてたから多少の戦闘はどうにかなりそうだわ。

 

 まあ結局のところ、早めに補給及び入渠する必要性があるわね。付近に鎮守府とかないかしら…

 

 

 わたしは振り返り、ナイに尋ねてみることにした。

 

 

 

 

「ねぇ、ナイ。この付近に補給できるとこってない?見ての通りわたしボロボロなのよ。ご飯食べたりお風呂入りたいんだけど、場所知ってる?」

 

 

「ヲー!ヲッ!?…ヲヲッ。」(チチがないだけまだマシだけど!ねぇ聞いてる!?…って聞いてないし。)

 

 

 

 

 だまらっしゃい。アンタの名前はもう決定したのよ。文句があるなら絶滅危惧種だろうが海の藻屑にかえてあげるけど、それをお望みなのかしら。零距離から主砲一斉射撃したらさすがの正規空母も一撃轟沈だと思うのよね、わたし。

 

 

 ナイをにらみつけると、そんな考えを察したのか、またもやプルプルし始めながら彼女は答えた。曰く、付近に鎮守府らしき施設があり、彼女たちはそこに帰港しているとのこと。そこで彼女もエリート空母に改装したなんて言い出した。

 

 

「ヲッ、ヲッ。」(メロンは仲間だから連れて行く、そろそろおやつのボーキにも飽きたし。)

 

 

 いや仲間って…ああ、結局タ級と勘違いされたまんまって訳ね。もういいわよ、さっさと行きましょ。提督もこの出撃が終わったらわたしを改装して夕張改にするって言ってたし、どうせだからそっちの鎮守府で改装してもらって提督を驚かせるのも面白いかも!ところで、どこの鎮守府かしら、この付近だと泊地かしら?

 

 

 

 

「そうと決まればここでのんびりしている暇は無いわね。機関始動!夕張、抜錨!両舷原速、宜候!」

 

 

「ヲーッ、ヲッ、ヲッ!」(ばつびょー、りょーげんげんそく、よーそろー!)

 

 

 このまねっこちゃんめ。意味分かって言っているのかしら?

 

 

 

 

 

 

 スクリューが調子よく回る。四刻程前には艦生詰んだと思っていたものの、渡りに船とはこのことか。なんだかよくわからないが、ナイについていけば泊地に帰港できる程度の補給を受けることは可能だろう。なんだかうれしくなってきた。

 

 

 

 

 それから半刻程進んだところで再度方角の確認を取ったところ、このまま真っ直ぐ進んでいけば鎮守府に着くとのこと。ナイはさっきから哨戒機を飛ばしているものの、付近に艦影は無いようだ。わたしはふと気になり、ナイに尋ねてみることにした。

 

 

「ねぇ、さっきから飛ばしてる哨戒機ってなに?九六式艦戦や九七式艦攻とちがってプロペラがついてないみたいなんだけど。それってもしかして凄いレアな装備なのかしら?」

 

 

「ヲッ。」(最初から持ってた。F-14Dって書いてある、お気に入り。かっこいいでしょ。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 わたしにはナイの言っていることがよくわからなかった。スーパートムキャットを持っているのなら、やっぱり彼女は亜米利加さんに関係あったのだろう。わたしは考えるのをやめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうでもいい会話をしながら後ろをちょこちょこ着いて来るナイを見る。

 

 正規空母ヲ級、その見た目のかわいらしさと懐いた者にちょこちょこ着いて来る習性から、数多の提督が「ヲ級ちゃんprpr!」と言いながら捕獲を命じたため、現在は絶滅危惧種に認定されている深海棲艦の1種である。まさにレッドデータガールね。彼女は今から向かう鎮守府に保護されているのかしら。

 

 なお、わたしが過去に呉鎮守府に出向していたとき、他のヲ級を見たことがあったのだが、彼女たちにも理由はわからないらしいのだが、意思の疎通が出来る娘と出来ない娘がいた。

 

 ナイに理由を尋ねてみたところ、深海棲艦は、エリートクラスになれば意思の疎通ができ、フラッグシップクラスになればきちんと会話できるのだとか。現在のところ通常海域においてエリートクラスやフラッグシップクラスと接敵することがなかなか無いため、わたしは出会ったことがなかったのだ。そのため、ナイの話はなかなか興味深かった。

 

 そして彼女の話を聞いているうちに理解した。ナイはわたしをタ級フラッグシップと勘違いしていたのだ。髪をおろしているから気付かなかったのかしら?

 

 わたしはあくまで軽巡洋艦であって戦艦ではないのだと、彼女に伝えようと思ったところ、突如ナイが艦影を補足したと言った。

 

 

 

「ヲッ!」(艦影3、九時方向より速度約30ノットで接近中!)

 

 

「艦種特定、急いで!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 哨戒機より、イ級3隻が接近中との報告。約1海里の距離にあり、こちらに向かってきているとのこと。ナイは戦う必要があるかもしれないと言っていた、どうも深海棲艦同士でも戦いは起きるものらしい。程なくして私たちは警戒体制のまま、彼らと接敵したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「イーーーーッ!!」」(オ……!オ……オ……!)

 

 

「うわー!!やめろっ!!ショ○カー!!!って思わず言いたくなる鳴き声よね。てか毎回気になってたんだけど、なんて言ってるのかしら。なんか周波数が合わないような…雑音交じりの怨嗟の声みたいなのが聞こえてて気味悪いのよね」

 

 

「ヲッ。ヲッ!!」(お菓子クレって言ってる。持ってないよ、あっち行って!!)

 

 

 

 

 

 

 少し離れたところからイ級が叫びながら向かって来るものの…お菓子ねだってたの!?毎回叫びながら襲い掛かってくるから、わたしたちになにか恨みがあるのだと思い、だからなんだとばかりに問答無用で殲滅していたのだが、真実はじつにくだらなかった。

 

 ああ、聞かなかったことにしていつも通り殲滅してしまおう。結局殲滅するのがわたしの仕事なんだから。そう思い、艦体を戦闘態勢に移行させようとしたところ、イ級2隻の後ろから一回り大きなエリートクラスのイ級と思わしき艦が現れた。

 

 

 

「イッ、イー!」(お菓子ないなら、ちいさいタ級とナイチチ、かじらせろ!)

 

 

「ヲッ!ヲッ!?ヲー!!」(タ級じゃないよ、メロンだよ!ちいさい駄目だよ!?あとナイチチ言うな!!)

 

 

 意外とツッコミ激しいわね、ナイ。それにわたしはメロンじゃないよ、夕張よ。話が聞こえるってことは、やはりエリートクラスなわけね。てかナイ、あんたナイチチ呼ばわりされてたのねwww。そしてイ級、どこをみて小さいって言った。オイ。

 

 

「イッ?イ?イ、イー!イー!」(メロン?ちいさい?わかった、ナイチチ!ちいさいメロン!かじらせろー!)

 

 

「ヺーーッ!?」(オーマイガー!バカだコイツ!地雷原でブレイクダンス踊りやがったぜベイベー!?)

 

 

 

 

 亜米利加さんのようなリアクションを取った後、油が切れたブリキ人形みたいな動きでこちらを向くナイ。彼女の怯えたような瞳の中には、ハイライトの消えた瞳で薄ら笑いを浮かべている自分の姿がちらりと見えた。

 

 

 うふふふふ……そんなギギギって音がしそうな感じでこっちを見られても困るわ。わかっているわよね、ナイ。奴は敵である、殲滅対象だ!粉砕!玉砕!大喝采!よ!!

 

 

 駆逐してやる!この海上から…塵一つ残さず!このわたしがっ!!

 

 

 

 

「駆逐してやるうぅぅ!!!絶っ対!許さないんだからぁぁぁ!!機関出力臨界!第一戦速!全艦隊!砲雷撃戦よぉぉぉい!!全砲門ひらけぇぇ!!」

 

 

「ヲッ!?ヲ、ヲーッ!!」(えっ、ちょっ、まっ!?フ、ファイターユニット!テイクオフ!ハリー、アァップ!!)

 

 

 機関を臨界まで回し、艦体(からだ)を完全に戦闘態勢に移行させる。全身に力がみなぎり思考がクリアになる。主砲、副砲のロックを解除。続いて砲弾を装填。脚部魚雷発射管へ注水、並びに酸素魚雷を装填。

 

 わたしの号令にあわてて反応し、持っていた杖を掲げながら、頭に乗っかっている帽子型の艦装の中から戦闘機(艦戦)を発艦させたナイの先制攻撃により、制空権を掌握。敵艦隊に損害を与え、随行艦のイ級を一隻撃沈させた。

 

 イ級側は制空権を掌握されたため、混乱しているのか陣形が崩れている。これなら容易に各個撃破が可能だ。わたしは目標をあの失礼なイ級に定め、スクリューを限界まで回しながら一直線に接近をはじめた。

 

 

 

 

「ナイ!残りの随行艦は任せるわ、あの旗艦はアンタの分までわたしが零距離からブチのめしてくる!大丈夫!私の師匠、艦隊の頭脳である霧島ネキはノーガードの殴り合いで最強なんだから!きっと弟子のわたしも強い!主砲、一番、目標合わせ!撃ち方、始めぇぇぇっ!!」

 

 

「ヲ!?ヲッ!ヲーー!」(ちょっとまってよメロン!?艦隊の頭脳の定義がわからない!その人ぜったい脳筋だよーー!)

 

 

 

 

「逃げる奴は深海棲艦だ!逃げない奴はよく訓練された深海棲艦だ!ホント戦場は地獄だぜぇ!!フゥハハハーハァー!!」

 

 






艦これSSって結構ガチな小説が多いので、かなりふわっとした設定の艦これを作ってみたかった。

後悔はしていない。
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