ビルド NEW WORLD~Masked Rider Lyricar Build~   作:ミノル

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戦「天っ才物理学者の桐生戦兎は、ジュエルシードを探索するにあたってビルドドライバーに非殺傷設定を組み込む事に成功する。更に、万丈が現在他の魔導師の元でジュエルシードを探していることを知る。」
ユ「一方、龍我さんはフェイトが仮面ライダーの事について知っていた事から戦兎さんの事について知っているのではと疑う。」
戦「そして、ジュエルシードの気配を追って物語は温泉街、海鳴温泉へと舞台を移そうとしていた。…ところでなんか巷ではお前のこと淫獣だとか言われてるんだが何したんだ?」
ユ「い、いやあれは不可抗力というか…そもそもあの時は僕、ちゃんと目を閉じるようにしましたから…」
戦「だから、何やらかしたんだよ?」
ユ「それは今回の話を見ればわかります!!さぁ、いったいどうなる第5話!?」
戦「あっ!?それ俺のセリフ!!」


第5話 再会するベストマッチな奴等

「海鳴温泉?」

 

仕事の休憩中に士郎さんが俺に話しかけて来た。

 

「ああ、うちは連休とかになると店の事はみんなに任せて海鳴温泉って言う温泉街でちょっとした家族旅行をするんだけど、次の連休で忍ちゃんやすずかちゃん達とあとアリサちゃんも一緒に行く事になっていてね…万丈君も良かったらどうかと思ってね。」

「俺もいいんすか?」

「もちろんさ。君も、もう半分家族の様な物だしね。」

 

家族っか…なんかそう言ってもらえるのっていいな…

 

「わかった、俺も一緒に行きます。」

 

こうして俺達は海鳴温泉に連休に行く事になった。

 

 

 

 

 

 

温泉に行く当日。

俺はフェイト、アルフと一緒にバスに乗り込み旅館に向かった。

 

「へえー、大きいね。」

「宿泊施設だからな…お前達はこういう所に来たことないのか?」

「うん。ずっと母さんの所だったから。」

 

だったら連れて来て正解だったな。

俺達は受付をすませて部屋へと案内される。

 

「いい部屋じゃないか。」

「フェイト、アルフ。俺は先に温泉に入って来るけどどうする?」

「いいねえ!フェイト、私達も行こ?」

「二人で行って来て。私はジュエルシードの正確な位置を調べるから。」

 

こいつはまったく…

 

「おいアルフ、お前反対側を持て。」

「あいよ。」

「戦兎?アルフ?」

 

俺とアルフはフェイトを両脇から抱える。

 

「な、何?」

「お前も今日はゆっくり休んでろ。」

「そうだよ。ジュエルシードの探索は夜でもいいじゃないか。」

「よし、それじゃ温泉にレッツゴー!」

「オー!」

 

こうして俺とアルフでフェイトを温泉へと連行した。

 

 

 

 

「ふぅ。いい湯だな。」

 

俺は温泉に浸かりながら体を伸ばす。

思い返せば今まで温泉に来た事はなかったな。桐生戦兎になってから今まではそれどころじゃなかったし、葛城巧だった頃も父さんは研究で忙しくて旅行とかに行かなかったし、あいつが消えた事で少しずつ思い出してきた悪魔の科学者と言われた頃もあいつ、社員旅行とかパスして研究ばっかしてたし。

 

「色々あったな、本当に色々…」

 

でも、まだ問題が山積みなんだよな…

俺は三日前にフェイトに母親の事を聞いた事を思い出した。

 

 

 

 

「母さんの事?」

「ああ、アルフは良く思ってない様で…昔は優しかったって聞いたんだけど…」

「もう、アルフは…」

 

フェイトは困った顔しながらそう言った。

 

「今の母さんは研究がうまくいかなくて切羽詰まってるだけだよ。昔は本当に優しかったんだよ。」

 

フェイトは懐かしそうに微笑んでそう言う。

 

「たとえば、花畑にお出かけした時も母さんは私に花冠を作ってくれてそれで……ッ!」

 

なんだ?急にフェイトが信じられないと言う様な顔で言葉を詰まらせる。

 

「どうした?」

「う、ううん…なんでもない。とにかく、優しい母さんだったんだよ…」

 

それっきりフェイトは黙ってしまった。

その夜、俺は昼のフェイトの様子が気になり、フェイトとアルフが寝てる隙に以前、美空の腕輪のベルナージュの思念を読み取った応用でフェイトの記憶を覗く事にした。

こっそりフェイトの頭に装置をつけると、パソコンのディスプレイに映像が映し出された。

花畑に黒髪の女性と金髪の少女がいた。フェイトの母親と小さい頃のフェイトだろう。

 

「はい、出来たわよ。」

 

母親はそう言って花冠をフェイトに被せた。

 

「こうして見ると優しそうな女性だな…」

 

俺はそんな母娘の微笑ましい様子を見ていた。

しかし、次の母親の言葉に耳を疑った。

 

「良く似合ってるわよ、“アリシア”。」

 

……。

 

 

 

 

「アリシア、か…」

 

あの女の子はどう見てもフェイトだった…アリシアから改名したのか?でも、フェイトはそんな事一言も言わなかったし、何の為に名前を…?

俺は温泉に浸かりながら思案していると最終的にのぼせてしまった…

 

 

 

 

 

 

俺は、士郎さん達と海鳴温泉に来た。そういやここに来る途中で別の旅館の奴が温泉でのぼせて運ばれてくのが見えたな…顔はタオルを掛けてて見えなかったけどバカだよな。

部屋に来たら俺達はすぐに温泉に入る事にした。ユーノの奴がなのはに女湯に連れていかれる時こっちに向かってキューキュー鳴いてたけどなんだったんだろうな?まあ、いいか…

 

 

 

 

「ふぅー、いい湯じゃねえか。」

 

俺はゆっくり湯に浸かりながら息を吐く。

 

「どうだい、万丈君?」

 

士郎さんがそう言いながら隣に来た。

 

「いや、サイコーすねこの温泉。」

「ははっ、そう言ってくれると誘ったかいがあるよ。」

 

そう言って笑ってるんだけど急に真剣な顔になった。

 

「ところで…万丈君、少し聞くんだけど…最近なのはと一緒に何をしてるんだい?」

 

士郎さんがそう言って来た。

 

「何って…」

「危険なことなんだろ?」

 

ダメだ、この人は誤魔化せない…

俺は観念した。

 

「すみません、言えません…」

「そうか…」

「気付いてたんすね。」

「まあね、こう見えて昔は裏家業だったからね。」

 

裏家業って…

 

「ヤクザとかっすか?」

「そんなひどいのじゃないよ。僕の実家の剣術を利用して要人の護衛をね。だから、こそこそ何かを企んだり行動したりしてるのはすぐに分かるんだ…そういう事に敏感じゃないと護衛は勤まらないからね。僕が大怪我で入院したのは知ってるかな?」

「なのはの奴に聞きました。」

「あの時も本当は護衛の仕事をしていた時にね…護衛対象は守り抜いたけどちょっとへまをしてね。あの時はなのはに寂しい思いをさせた…その仕事を最後に裏の世界からは足を洗うつもりだったからこれからは家族の為に生きようと思ったんだ。」

 

俺は黙って士郎さんの話を聞く。

 

「だから、家族が危険な真似をしようとしてるのを黙って見過ごす事はできない。」

「あいつのしてる事をやめさせろって言いたいんすか?」

「万丈君からもお願いできないか?」

 

そんなこと…

 

「無理だ…あいつがやると決めた以上、誰が何と言ってもあいつはやめねえよ…だけど、俺が絶対に危ない目には会わせねえ。信じてくれ…」

 

俺は士郎さんの目を真っ直ぐ見た。

 

「…わかった。君も相当修羅場を潜ってるみたいだからね、信じるよ…なのはのこと、頼むよ。」

「任せとけ!」

「ああそれと、僕と話す時の口調はそのままでいいよ。無理して丁寧な言葉遣いをしようとして時々口調がおかしくなってるよ?」

 

士郎さんはそう言うとあがって行った。

 

 

 

 

 

 

 

「あー、まだ少し頭がクラクラする…」

「まったく、風呂入りながら考え事してのぼせるなんてバカじゃないのか?」

「戦兎、大丈夫?」

 

夜になって俺達はジュエルシードの捜索に出てるんだけど、酷い言われようだな…

 

「しょうがないだろ?天っ才には色々考えることがあるんだよ。」

「まったく…。」

「ところで万丈達がここに来てるって本当か?」

「ああ、さっきアンタがダウンしてる時に見かけたよ。この間、忠告しといたから今回は話しかけなかったけどね。」

「そうか…」

 

まあ、アイツは言っても聞かないだろうけどな…

 

「見つけた…まだ発動してない。」

「さすがアタシのご主人様。」

「さっさと回収しよう。」

 

ジュエルシードの元へと向かい池の架かる橋に来た。どうやらジュエルシードは池の中のようだな。フェイトがバルディッシュを池の方に向けるとジュエルシードが浮かびあがってきてバルディッシュに吸い込まれる。

 

「待って!!」

 

どうやら来たみたいだな…

俺達は声の方を向くと白いバリアジャケットの女の子と一匹のフェレットがいた。

 

「あの…」

「おい、戦兎!!今までお前どこに行ってたんだよ!?」

 

あのバカがあとからやって来た。つか今女の子がしゃべり掛けてたでしょうが!

 

「何処って、状況見ればわかるだろ?今までこの子達と一緒だったんだよ。」

「やれやれ、忠告はした筈だよ!」

 

俺の後にアルフが言う。

 

「え?忠告…?」

 

女の子が何の事かわからないといった顔をしてる。まさか…

 

「あ、悪い。言うの忘れてた。」

 

その場の全員がズッコケた。やっぱりかこのバカ!

 

「アンタねぇ…まあいい、とにかく今度は容赦しないよ。」

 

そう言ってアルフが狼の姿になる。

 

「なのは、あの使い魔は僕が…」

「うん、お願い。」

 

そう言ってフェレットが地面に降りると足元に魔法陣が現れてアルフと共に消える。

 

「いい判断だね。賢い使い魔だ。」

「ユーノ君は使い魔じゃないよ!私のお友達。」

「おい戦兎、どういう事か説明しろよ!?」

「今はまだ説明出来るような状態じゃないんだよ。」

 

まだ俺もフェイトの母親の目的を知らないからな。

 

「それより、ちょっと実験に付き合えよ。」

 

『Rabbit!』『Tank!』

『Best match!』

 

ようやく非殺傷設定を試せる!

 

「マジかよ…本気なんだな?」

 

『Wake Up!』

『Cross-Z Dragon!』

 

俺達は同時にボルテックレバーを回す。

 

『『Are you ready?』』

 

「「変身」」

 

『鋼のムーンサルト、ラビットタンク!イェーイ!!』

『Wake up burning!Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!』

 

俺達が変身するのと二人の少女が飛びたつのは同時だった。

 

 

 

 

 

 

やっぱりだ。この子、とても寂しそうな目をしてる…

 

「戦兎はあなたが悪い人じゃないと言っていた…」

 

戦兎さんも…

 

「龍我さんも、戦兎さんと一緒にいるあなた達は悪い人じゃないって言ってたよ。」

「けれど、私にはジュエルシードが必要だから…あなたのジュエルシード、いただいて行きます。」

 

女の子がまた襲いかかってくる。

 

「ジュエルシードはユーノ君の探し物だから…」

 

やっぱり、戦うしかないのかな?

 

 

 

 

 

 

 

「ロストロギアをどうするつもりなんだ!?」

「ごちゃごちゃうるさい!アンタ達がたとえ悪い奴等じゃなくても、ジュエルシードを集めてるならアタシ達の敵だよ!!」

 

ジュエルシードをちゃんと集めて来ないとプレシアがフェイトに何するかわからない、そうさせないためにも、目の前のフェレットにアタシは牙を向ける。

 

 

 

 

 

 

「おい、戦兎!あのジュエルシードがどんだけやべぇ奴なのかわかってんだよな?」

「当たり前だろ!」

 

俺達は戦いながら話を続ける。

 

「なら、お前らはなんであんな物集めてんだよ?」

「逆に聞くけどお前達はなんでなんだよ?」

 

お互いに拳を受け止めながら聞く。

 

「あれはユーノ、あのフェレットが発掘したもんだ。アイツはその責任でジュエルシードが誰かの明日を壊さねえように回収しようと一人でこの世界に来たんだよ。」

 

なるほどな、善意からの行動か…にしても一人でなんて根性あるじゃねえか。

俺はそう思いながら万丈を蹴っ飛ばしてタンクボトルを交換する。

 

『Diamond!』

『Are you ready?』

 

「ビルドアップ!」

 

俺はトライアルフォーム、ラビットダイヤモンドになる。

 

「そんで、お前達はなんでなんだよ?」

「まだ知らない。」

 

俺は一言そう言って、万丈に飛び蹴りを放つ。

けどそれはかわされて逆に重い拳を一発をもらった。

 

「知らねえじゃねえよ!知らねえのに協力してんのか!?」

「色々事情があるんだよ。」

 

俺は立ち上がりながらそう言う。ダイヤモンドの防御力であまり痛くはない。

 

「まあ、安心しろ。あいつらは悪い奴じゃねえから…」

「そりゃお前がそっちにいるのならそうだろうけどよ…」

 

万丈はそう言って少し俯いた。

 

「隙あり!」

 

俺はその隙にボトルを交換する。

 

『Gorilla!』『Diamond!』

『Best match!』

『Are you ready?』

 

「ビルドアップ!」

 

『輝きのデストロイヤー、ゴリラモンド!イェーイ!!』

 

俺はベストマッチ、ゴリラモンドフォームになる。

 

「うわ!?ずりぃ!」

「余所見したお前が悪いんだよ。」

 

レバーを更に回す。

 

『Ready go!』

『ボルテックフィニッシュ!』

 

俺は目の前にダイヤモンドを形成するとそいつを巨大な右腕、サドンデストロイヤーで粉々に砕く。砕かれたダイヤモンドは散弾のように飛んでいく。

 

「必殺技は洒落になんねえだろおいー!?」

 

そのまま、万丈に当たり、万丈は吹っ飛ばされてそのまま変身解除された。

 

「つうー。マジで手加減抜きかよ!」

「悪かったって…けど、痛みは有っても傷一つないだろ?」

 

俺はそう言って万丈に話し掛けながら変身を解く。

 

「本当だ…どうなってんだよ!?」

 

万丈は自分の体を確認しながら俺に問い詰める。

 

「魔法の非殺傷設定って奴をライダーシステムに組み込んだんだよ。今回はそれが機能するか試したんだよ。」

「それならそう言えよ!」

「だから悪かったって言ってるだろ?今度お前のドライバーにも組み込んでやるから。」

「たくっ…絶対だかんな。」

 

万丈はそう言ってそっぽを向いた。

おっ!どうやらあっちも決着みたいだな。

 

 

 

 

 

 

私は相手の女の子の攻撃をかわして距離を取ります。

 

「レイジングハート!」

『Mode change.Cannon Mode.』

 

私はレイジングハートにキャノンモードになってもらって砲撃を射つ準備をしました。

 

『Divine Buster 』

「ディバインバスター!!」

 

私はしっかり狙いを定めて引き金を引きました。けれど、

 

「バルディッシュ…」

『Scythe Form』

 

あの子は私の攻撃をギリギリで避けて、そのまま距離を詰めて魔力の刃を私の首に当てました。

 

『Put Out.』

 

するとレイジングハートがジュエルシードを一つを出しました。

 

「レイジングハート?」

There is no point in continuing further.(これ以上は無意味です)You can't beat her.(あなたでは彼女に勝てません)

It is a wise decision.(賢明な判断です)

「主人思いのいい子なんだよ…」

 

女の子はそう言ってジュエルシードを取って行きました。

 

「これ以上、ジュエルシードと私達に関わらないで…次は手加減できないから。戦兎、アルフ…行くよ。」

「あっ…」

 

このままだと行っちゃう。その前にせめて…

 

「ねえ!お名前教えて?」

 

女の子は一瞬だけ止まるとこっちを振り返えって…

 

「…フェイト・テスタロッサ…」

 

一言そう言いました。

 

「あの、私は…あっ…」

 

フェイトちゃんは、そのまますぐに行っちゃった。

 

「名前…言えなかったな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「終わったな…それじゃあ俺も行くな。」

 

そう言って戦兎は金髪の奴と一緒にいこうとする。

 

「まだあいつらと一緒に行くのか?」

「ああ、まだ気になることもあるからな…」

「あいつらが何に利用されてんのかか?」

 

戦兎は何も言わない。

 

「あいつらと一緒にいて理由がわからねえって事はジュエルシードがほしいのはあいつら自身じゃねえってことだろ?」

 

いつもはバカで察しの悪い俺でもそれくらいは解る。こいつが、もしあいつらが悪い事に利用されてんなら助けだそうと思ってんのもな。

 

「お前がそうしようとしてんならまあ間違いないだろ…お前の戦う理由は何時だって…ラブ&ピース…だろ?」

「…最悪だ…」

 

戦兎はそう言って振り返る。

 

「俺も同じ事考えてた。…そいつらの事はお前に任せるぞ、万丈。」

 

そう言うと、そのまま歩いて…。

 

「おっと、そうそう…」

 

行かなかった。

 

「なんだよ?」

「ズボンのチャック全開だぞ?」

 

そう言われて確認したら本当に全開だった。

 

「うわマジか!?いつから?」

「変身する前から…」

「はじめからじゃねえか!なんで言ってくれねえんだよ!?」

「どのタイミングで言えってんだよ。自分で気付けバカ。」

「バカってなんだよ!せめて筋肉付けろ!!」

 

俺がそう言うと戦兎の奴は走って逃げやがった。

 

「たくっ…お前に言われなくてもこいつらの事はそのつもりだよ。」

 

俺は、もう姿が見えない戦兎に一言そう言った。

 

 

 

 

 

 

その後、俺達は一応追跡されても大丈夫なようにバラバラに遠回りして旅館へと戻った。

 

「いやー、大収穫だったね!ここにあったジュエルシードだけじゃなくて、あの白い魔導師の持ってたジュエルシードも回収出来るなんてね!」

 

アルフは上機嫌だった。

 

「どうだフェイト?実際に戦ってみて。」

「…魔力はかなり多いね。あの砲撃も、当たってたら落とされてた。けど…」

「けどそれだけだね、フェイトの敵じゃないよ。そもそもバインドも掛けずに一直線の砲撃を撃つなんて素人の証拠だよ。」

 

フェイトとアルフの評価は大体俺と同じか。けど…

 

「油断は禁物だぞ?多分あの子は俺か万丈かと言ったら万丈タイプだろうからな。」

「どういう意味?」

 

俺の言葉を聞いてフェイトが質問してくる。

 

「ある奴が俺と万丈の事をこう評したんだよ。あんまり思い出したくない奴だけど…万丈は戦うために生まれてきた才能だらけの天然物、俺は科学の力で強くなる養殖物ってな。多分、あの子は総合的に見たらフェイトより才能あると思うぞ?」

「そうかい?とてもそんな風に見えなかったけどね。」

 

アルフが俺の言葉に半信半疑だな。

 

「現にフェイト、お前の最初の内の攻撃をあの子は荒削りだけどちゃんと対処してたろ。確かに手加減してたのもあるだろうけど、それでもあのデバイスの形状から見て接近戦なんてほとんどやったことが無いような子がだぞ?」

 

そう言われてフェイトははっとしていた。俺が見た限り手加減してたとはいえあの時のフェイトの攻撃はそれでもただの素人が対処出来る物じゃなかった。けどフェイトは攻めきれなかった。

 

「あの子に一本とれたのはあの砲撃の隙を突いたときだけだろ?それにあの判断ミスも単純に対人戦慣れしてなかっただけだろうな。次に戦うときは確実に今より強くなってるぞ?」

「…たとえそうでも、私達は負けないよ。そうだよね?バルディッシュ。」

『Yes sir.』

 

俺の言葉にフェイトは俯きながらそう言って、バルディッシュがそれに答える。

 

「そうか…。」

「ねえ?戦兎から見たらフェイトはどっちのタイプなんだい?」

 

アルフが聞いてくる。

 

「フェイトは俺と同じ養殖物だろうな。フェイトの場合は科学じゃなくて努力して習得した技術で強くなるタイプだ。言っとくけどこれはどっちが優れてるとかないからな?現に俺と万丈は強さにそんなに差はないし…」

「だったら大丈夫だよ!たとえあの魔導師の才能がフェイト以上だったとしても、フェイトが今までしてきた努力の数を思えばそんなすぐに追い付かれるもんかい。」

「うん、そうだね。」

 

アルフが自信満々にそう言った事でフェイトは微笑みながらそう言う。

けどな、案外万丈タイプは敵にまわると厄介なんだよな…万丈は初め俺よりハザードレベルが低かったのに短期間でどんどんレベルを上げて、一時期俺を超えたからな。エボルトの遺伝子の影響による物だとしてもこれも万丈が生まれ持ってた才能の一つだ…

 

「とりあえず今日はもう遅いから寝ろ。長居して、万丈達と鉢会わせても気まずいから朝一のバスで帰るからな。」

 

これ以上水を指しても仕方ないから、俺それだけ言ってから布団に入って寝た。

 

 

 

 

 

 

戦兎達が行った後、俺達はゆっくり歩いて旅館に戻ってた。

 

「どうした?元気無いな。」

 

俺はさっきから暗いなのはに話し掛けた。

 

「うん、ちょっとね…」

「あのフェイトって奴の事か?」

 

なのはの肩がピクッと動いた。図星かよ…

 

「そんなに負けたのが悔しいのか?」

「ううん、そうじゃないんだ。ただ…フェイトちゃんの名前は聞く事が出来たけど、私の名前は言えなかったから…」

 

それそんなに深く考える事か?よくわかんねえな。

 

「彼女達に取って僕達はジュエルシードを集めるのに邪魔な存在。それ以外の何者でもないのかもね…」

「それは、そうなんだろうけど…」

 

なんか歯切れが悪いな…

 

「大体お前はあいつとどうしたいんだよ?」

「それは…」

 

なんだ、はっきりしてねえのかよ。

 

「それがはっきりしてねえと何を言ってもあいつには届かねえんじゃねえのか?」

「うん…」

 

こいつはジュエルシードを集める理由は出来たけど、あいつとどうしたいのかはわかってねえのか…

 

「なんだったらわからねえなりにぶつかってみたらどうだ?」

「わからないなりに…」

「確かに目的や理由が無いやつには何も出来ないっていったけどよ、じっとしてても何もわかんねえだろ?だからとりあえず動いてみろ。そうしたらお前自身がどうしたいかわかるかもしれねえだろ?そうすりゃお前の言葉も届くかもしれねえ。」

 

俺はそう言ってなのはの頭を撫でてやった。

 

 

 

 

 

 

そうだよね。とりあえず今出来る事をしないと。

 

You can't beat her.(あなたでは彼女に勝てません)

 

フェイトちゃんと戦ってる時にレイジングハートが言った言葉が頭を過りました。

 

「ねえ、レイジングハート。私じゃフェイトちゃんには勝てないって思うの?」

At least not possible now.(少なくとも今は…)

「そっか。」

 

今はって事はこれからどうなるかはわからないんだね。だったら…

 

「ユーノ君、レイジングハート、龍我さん…」

 

みんなが立ち止まってくれる。

 

「このままじゃフェイトちゃんとどうしたいのかわかっても、その思いを届けられ無いと思うから、だから…私に戦い方を教えて下さい。」

 

私は頭を下げてお願いしました。

 

「もちろんいいよ!ねっ、レイジングハート?」

Of course!(当然です。)

「言っとくけど俺は厳しいからな。覚悟しとけよ。」

 

みんな、真剣に答えてくれた。

私の中の思いを伝えられるようになるために、今よりもずっと強くなる。

私、高町なのはの一世一代の大決心です。

そうして私達は旅館に戻りました。

 




次回予告

「くそ、どうすれば…」

ジュエルシード、暴走!?

「おい戦兎、ハザードトリガーを寄越せ!!」

万丈の秘策

「止まりやがれ!!」

第6話 ジュエルの暴走

『Hazard ON!』

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