ハイカラさんが通る【完結】 作:代理投稿者サクマ
うん。いまね、水蜜と仲直りしたところ。でも、ぬえが言ってた通りに、水蜜、出て行っちゃうんだって。そりゃ、寂しいけどさ。でも、プレゼントあげられたし、二度と会えないなんて、言ってなかったし、そこまで寂しくないよ。だってなにより、友達だもん。
え? なんで喧嘩してたの、って。それは、その。あれは、喧嘩とかじゃなくて、なんというか。水蜜がね、わたしのこと、卑怯だって、臆病者だって言ったの。急にそんなこと言われてさ。わたし、驚いちゃって、ショックでさぁ。
でも、水蜜の言うこと、間違ってなかったから、恥ずかしくて、悔しくて、えへへ。ねえ、こいし。わたしさ、人を殺すの、下手なんだ。ほんとだよ。いままで、たくさん殺してきた、みたいなこと言ってきたけど、あれね、嘘なの。だってさ、恥ずかしいじゃん。妖怪のくせに、人殺しが下手だなんて。水蜜に頼まれた殺しも、結局失敗しちゃってさ。代わりに、昔一回だけ上手に出来た骸骨を置いて、誤魔化したんだよ。笑えるでしょー。
でもね、わたし、もっと上手になろうって決めたんだ。嘘を嘘じゃなくすればいいんだって、気づいたの。だからね、いつか水蜜にも教えてあげられるくらい、上手になろう、って、決めたんだ。あ。ここだけの話なんだけどね、その。……水蜜って、人殺せないんだって。なんか、尼? なんだってさ。な、内緒だからね。誰かに言っちゃダメだよ。
え、知ってたの? なんで?
え、しかもぬえに喋っちゃったって。えー。なにさ、せっかく、わたしだけの水蜜の秘密だったのに。ちぇ、つまんないの。
へえ、それで、謝りたいんだ。なるほどね! そういうことなら、まだ間に合うんじゃないかな。水蜜、いったんねぐらに戻って、身支度やなんかをして、それから出て行くらしいから。急げばきっと間に合うよ。
大丈夫だって。きっと、許してもらえるよ。だって水蜜、優しいもん。誰かに冷たくしたりなんて、しないよ、絶対。なにより、わたしのはじめての、上の名前がない仲間だしね!
そうだ。こいしも、なにかプレゼントを持ってってあげなよ。水蜜、泣いて喜んでくれたんだから。え、もうあげたの? ふうん、そっか。
あ、わたし? わたしはねぇ。コツコツ頑張って集めたトランプを、すべてみんなぜんぶ、水蜜に、あげちゃいましたー。えへへ。
あ、それからね。水蜜にお願いされたことがあってさ。こいしには関係ないかもしれないけど、いちおー、言っておくね。なんか、水蜜が仲良くしてた男の人、いるじゃん? そう、わたしが殺し損ねたやつ! なんでもね、あの人、やっぱり殺さないでくれ、だってさ。他の人はいくらでも殺していいけど、あいつだけは見かけても放っておいてやってくれ、なんてさ。変だよね。殺してくれって言ったのに、やっぱり殺さないでくれ、なんてさ。だからね、わたし聞いたんだ。なんで? って。そしたらさ、またでたよ。
それは、その。恋ってやつだよ。
なんて言ってさー! くー! かっこいーよねー! クールだよね、飄々としてるよね、オトナだよねー!
いやあ、わたしもさ、なんだかよくわかんないけど、してみようかな、なんて思ってさ! 恋!
あ。それからね。そのあとにあの、お菓子屋さんに行ったんだ。うん、お菓子食べたの。途中で取り替えっこして食べたんだけど、やっぱり、水蜜の言うバナナ? っていうのはわかんなかったんだ。あれは絶対プリン味だよ。水蜜はさ、いいやつなんだけど、味蕾だけは信用できないね。やっぱり。
でもね、話はここからなんだよ。お菓子が三分の一くらいに減ったころ、水蜜がさ、例の手品のタネを教えてくれたんだ。しかも、実演で! でもね、ひどいんだよそれが! わたし、思わず怒っちゃったもん! ああ、でも、そのあと急に、なんか寂しくなっちゃって。ちょっとだけ、泣いちゃって……。
ああ、水蜜出て行っちゃうんだよね。思い出したら、また泣けてくるよ。およよ。
あ、ごめんごめん! 急いでるんだよね! もう、わたしなんて無視してさっさと行っちゃえばよかったのに! ……って、あれ? もういないじゃん。いつの間にいなくなっちゃったんだろ。てゆーか、誰と話してたんだっけ。えー。わたしひとりで喋ってたってこと?
うわあ、はずかしー。
えへへ。