ハイカラさんが通る【完結】   作:代理投稿者サクマ

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エピローグ




緑の瞳に映る恋~青春パンク編 11(了)

 それからまたまた、しばらくが経った。あれからの私の日常はめまぐるしかった。とはいっても、自分でそうなるように仕向けたのだが。

 

 先ず私は、遊郭に行った。遊郭に行って、古明地こいし似の、例の彼女を買った。しかし、部屋に入っても私はなにをするでもなく、彼女と会話を交わすのみだった。

 

 彼女は驚くほどふつーの人間だった。

 

『お話だけして帰る人、結構いるよ』

 

 みたいなふつーの会話をした。以前彼女が一緒に歩いていた男について尋ねたい気持ちも起こったが、私はそれを聞くことをしなかった。あの男はどうにも〝モテそう〟だったから。帰りしな、彼女は、

 

『どうせなら、キスぐらいしていく?』

 なんて提案をしたが、私はそれを断った。理由は特にない。

 

 それから、こいしの置いていったものについて。

 

 まず、着物は売った。自転車は〝B〟のアベックにくれてやった。前に自転車を蹴り飛ばしてしまったお詫びに、と言ったら、彼奴等は怯えながらそれを受け取った。そして、部屋だが、部屋は元に戻すのが億劫で、そのままにしてある。無論、棚の中のパンフレットは色ごとに並べて、重ねられている。

 

 それから、〝F〟から始まる例の映画を二つとも観た。やはり二つとも、パンフレットを見てたときが一番楽しかった。

 

 ヤマメとキスメは別れたらしく、私の心の平穏は、二人の席の近さと同時に戻った。

 

 地底の深部にも行った。あの白いアネモネを探しに行ったわけだ。広い空洞のなか小さな花を探すのは骨が折れそうだ、そも枯れてしまっているのではないか、と覚悟して深部に降ったが、意外なほどにそれはすぐ見つかった。やはり、アネモネは作り物のような美しさでそこに在った。私はそれを摘んで自宅に戻り、キスメに貰った桶に土を入れて、植えた。その際に気付いたことだが、作り物のような美しさを放つその花は、まさに造り物だったのだ。私は悔しくなって、自分で同じぐらい綺麗な白い花を咲かせてやろうと、地上に種を買いに行った。妙な威圧感を放つ妖怪から、一年中どこでも育つアネモネの種を買って、それを育てた。しかし、ようやく咲いたアネモネの色は、驚くほどに紅かった。

 

 それから私は、少し汚れてやろうかな、とタバコなぞを始めてみた。それが、今現在である。私は地底の橋の欄干に肘をついて、淀んだ川を眺めているというわけだ。

 

 地上はもう冬らしく、地底もそれなりに冷え込んできて、私はマフラーなぞを巻いてるし、ニットなぞすら被っていた。長年、地底は季節の影響など受けない、と主張ししてきた私だったが、あれは嘘だ。夏は暑いし、冬は寒い。

 

 橋の上から眺める川は、今日も汚濁に淀んでいる。ガラクタやら骨やら肉やらが大量に流れていくその川は、もはや川と形容するには汚れすぎていた。私はそんな川に、自宅から持ってきた〝F〟から始まるビデオを二つとも投げ捨てた。ぐらぐら揺れながら川に落下したビデオ二本は、すぐに汚濁に紛れて見えなくなった。とても心がスッとしたので、吸っていたタバコも箱ごと川へ投げ捨てた。やはり、とても心がスッとした。それからしばらく、私は欄干に肘をついたまま、ぼんやりと川を眺め続けた。

 

「ああ、妬ましい」

 

 気付けば私の口からは半ば口癖と化したいつものそれが意味もなく溢れていた。

 

 頭上に開いた地底で唯一の大きな風穴から覗く空は、ひたすら高く、遠く。冬空らしい淀んだ灰色をしている。そんな真冬の鈍い陽が私の真上に昇る頃、私は一つため息を吐いて、いつもの店に向かうのだった。




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主演:少年、及び小野塚小町
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