VIVE LA FRANCE   作:Fletcher

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宴の準備は念入りに

中央暦1639年4月21日

フランス パリ コンコルド広場オテル・ド・マリーヌ

海軍参謀本部

 

ここは花の都パリ。ヨーロッパ有数の美の街、セーヌ川北岸に位置するコンコルド広場には今日も人々が自らの生を賛歌していた。

 

海軍参謀本部。そこでは臨時会議が開かれていた。

 

「4000隻以上...か。今なきライミー供も顔を真っ青にするぞ。」

 

「内訳は?」

 

「偵察機によると木造帆走船ばかりであり軍艦は発見出来なかったと。」

 

ロウリア艦隊発見。それは偵察中の海軍所属機、PBYカタリナ飛行艇によって報告された。

数千隻になる大艦隊、海を埋め尽くす船の数に搭乗員は狼狽したと言う。

なお、この偵察機は1時間以上に渡って艦隊を偵察しロウリアのワイバーンが飛来するとそそくさと退散したため無事に帰還している。

 

そして今回の重要な議題としてこの大艦隊に対してどう対処するかが話し合われていた。

 

「艦隊の規模はクワトイネからの情報とも一致します。問題は船ですが...」

 

「帆船か...ガレオン船だとしてどの程度の艦隊で当たるべきか。」

 

敵の脅威度が未知数なのが各人が頭を悩ませる原因の一つであった。

これが敵に戦艦や巡洋艦がいれば戦力評価は簡単にできる。

しかし、相手は時代錯誤も甚だしい帆船による艦隊、だが数が尋常ではなく、その上ワイバーンと呼ばれる航空戦力、魔信なる相互通信能力がある。

 

「航空攻撃で漸減してしまえば良いのでは?西部戦線でのバトルレポートでは、ワイバーンは戦闘機の敵なりえないとあるぞ。」

 

「しかし何か強力な呪いが顔を出すかも。」

 

「その呪いで船を多く見せているだけでは?」

 

室内に笑いが響く。

海軍内部では陸上に展開した空軍と海軍航空隊の航空攻撃のみで十分ではないかとの意見が大半であった。初期の戦闘結果により自分たちはワイバーンの性能を過大評価していたと気づいたのだ。

そして何よりは、あの大戦終結からまだ数年しか経っていない現状、フランス海軍の内状は寂しいものだった。

 

「実際問題、動かせる艦が少ない。そしてその中に主力艦は含まれていない」

 

この時フランスは遠征艦隊を多数編成しクワトイネからの情報を元に多数の国家と接触を図っていた。その中のパーパルディア皇国へはこれ以前にも早い段階で外交官が派遣されているがお察しの通り文明圏外というだけで塩対応であった。

そこから進展せずに二ヶ月が経ち国内情勢をいち早く安定させたい政府は砲艦外交止む無しと判断、戦艦ストラスブール改を旗艦とする任務部隊を派遣している。

その他、戦艦ジャンバールは第二文明圏列強ムー国へ、前大戦の英雄艦ガスコーニュは第1文明圏へ、リシュリュー級クレマンソー及び改リシュリュー級ダンケルクllは北海危機での損傷が修復されておらずドック入りしたままであった。

巡洋艦や駆逐艦も軒並み任務部隊へ編入されており残った艦艇もドイツ、イタリア、スペインとの国境が海となった今、国防の観点から外す事も出来なかった。

 

「空母ベアルンとディクスミュードがたしか大陸へ航空機輸送に従事していたな」

 

「はい、現在2隻はバイヨンヌで航空機の積み込み中のはずです。」

 

「使えるか?」

 

「航空隊が少ないのが問題です。」

 

この時海軍航空隊の飛行隊はSBDドーントレスで編成された第2F海軍飛行隊が本土に展開する唯一の艦上機実戦部隊であった。主力の第6F、第12F海軍飛行隊はロデニウス大陸西部戦線に配置されていた。

 

「十分では?敵に艦上ワイバーンなんてものはないでしょう?」

 

「一個航空隊だけでは無理だ。最低でも巡洋艦は一緒に付けねば。」

 

「無理なローテーションになりますがこちらでなんとか確保します。」

 

大まかに決まっていった艦隊編成。そこに1人が声をあげた。

 

「オランダとベルギーにも艦を出させますか?」

 

「話を持っていけば首を縦に振るだろう。ベルギーはどうかわからんがオランダはどうしても取り分が欲しいだろうからな」

 

今回の戦争ではオランダ、ベルギーからは既に地上戦力が摘出されており、内訳はオランダが2個歩兵師団、1個独立旅団、戦闘機爆撃機他合わせて40機程。

ベルギーは1個山岳猟兵師団、1個騎兵師団、2個歩兵師団他、1個航空連隊約50機を派遣していた。

 

これはフランスとの協定によりロウリアを植民地とし、分割支配するという取り決めに基づくものだった。

 

「では直ちに取り掛かりましょう。敵艦隊が目的地と思われるマイハーク港へ到達するまで時間がありません。艦隊が迎撃できるまでどれくらいかかるか?」

 

「3日以内には派遣できます。」

 

「よし、二カ国へは私が通そう。各員掛かってくれ」

 

以下本迎撃作戦に参加することとなった部隊である

ロデニウス派遣艦隊

フランス

巡洋艦シャトールノー(旗艦)

空母ベアルン、ディクスミュード

艦隊水雷艇シムーン、テメレール、ミストラル、トロンベ

その他4隻

艦載機25機

3個航空連隊約180機

 

オランダ

駆逐艦 ファン ガレン(旗艦)

チェリク ヒッデス

1個航空連隊約40機

 

ベルギー

フリゲート アルテベル(旗艦)

ビクタービレット

 

オランダは外交艦隊も編成している中なけなしの駆逐艦を派遣してきた。ベルギーは国内最大の戦闘艦2隻を投入しやる気満々であった。

 

艦隊合同演習を行う時間がないことから総括指揮をフランスが執り各国ごとに単縦陣を形成、それぞれの適正戦闘距離において攻撃を行うことが決まった。

蘭白艦隊との合流は敵艦隊接触直前とされた。

 

 

 

 

 

中央歴1639年4月23日 マイハーク港

 

クワトイネ公国海軍第二艦隊は創設以来の慌ただしさであった。敵艦隊出撃の報を受け第二艦隊は約50隻になる軍船へ食料、武器を次々と搬入していた。

 

「壮観だ」

 

海軍提督パンカーレは港に並ぶ軍船を感嘆深く見入っていた。

50隻になる軍船は決して少ない数ではない。並みの文明圏外国家相手であれば容易く打ち砕ける、それがクワトイネ公国海軍であった。

 

今度の戦い、練度は十分、しかし数では大きく...いや、絶望的差がある。

どれ程死ぬのか、いやどれ程生き残るか。

 

パンカーレの心中は暗雲垂れ込めていた。

 

しかし!我々は軍人である!国を民を守る為に自らを犠牲にし安寧を銃後に残すのだ!!

パンカーレは自らを奮い立たせた。その時後ろから声が掛かった。

 

「提督」

 

「ブルーアイか」

 

パンカーレが振り返るとそこには副官のブルーアイが職業軍人らしく綺麗に背筋を伸ばし立っていた。

 

「提督、フランスから連絡がありました。フランス、オランダ、ベルギーの三国から艦隊を派遣してくれるそうです。」

 

「そうか、我々は猫の手も借りたい状態だ。ありがたいことだな...それで、規模は?」

 

ブルーアイが少々困った顔になりながら紙切れに目を落とした。そしてなかなか口を開かないブルーアイにパンカーレは訝しんだ。

 

「どうした?」

 

「いえ、ああ...向こうは15隻を向かわせると」

 

「...15?15と言ったか!?150の間違いではないのか!?」

 

パンカーレは素っ頓狂な声を出し、ブルーアイは目を伏せ首を左右に振った。

 

「それは三国合わせた数字なのか?」

 

「...はい、また向こうは観戦武官の派遣と、それと...ええ...」

 

「なんだ?まだ何かあるのか?」

 

「...貴艦隊は手出し無用、と」

 

何も言えない。パンカーレは一周まわって呆れていた。

三国合わせてたったの15隻、そんな死中に観戦武官を送ってこいと言い、挙句手出し無用だと!?

 

「提督、私に観戦武官としての派遣を許可願います。」

 

突然ブルーアイが言った。唐突な物言いにパンカーレは瞼を瞬かせた。

 

「許可するわけにはいかん。私に死んで来いと言わせたいのか!?」

 

「いいえ、私は彼らの実力を、この目で見たいのです。提督もお聞きになったでしょう?越境したロウリアの地上軍がフランス連合軍により壊滅したと。」

 

パンカーレは昨日報告された西方戦線の戦況報告を思い出していた。

 

曰く、強力な爆裂魔法が何度も何度も敵陣にて炸裂し鋼鉄の馬車や地竜に乗った歩兵が数十万になる敵を蹂躙、鉄竜がロウリアのワイバーンをいとも簡単に墜としていき壊滅させた、と。

 

信じられなかった。フランス連合軍の数は約9万、これだけでも並みの文明圏外国ではない数であるがロウリアはその4倍以上の40万、ワイバーン約300機である。列強でさえ、この数の差では押しつぶされるはずだ。

しかしフランス連合軍はそれを歯牙にもかけず逆に蹂躙せしめた。

フランスは神龍でも味方につけているのか!?いや、伝え聞く所業、その圧倒的な力は古の魔法帝国みたいではないか!!

 

「提督、いざとなれば自分の身くらいは守れます。どうかお願いします。」

 

ブルーアイはパンカーレの瞳をジッと見つめていた。

 

 

 

 

中央歴1639年4月25日 巡洋艦シャトールノー艦橋

 

ブルーアイにとってこの数時間は驚きの連続であった。

朝早くにマイハーク港へやって来たフランス艦隊は11隻の(ブルーアイの常識では)巨大な船で構成されていた。

3ヶ月前にフランスが接触して来た時、彼の国の船を臨検した船長は100mを優に超える巨船を臨検したと報告していた。ブルーアイはこの報告が自分の仕事を誇張する為の嘘であると思っていた。

しかし、今ここでそれが嘘ではないことがわかった。フランスの船は小さいものでも我が国のガレー船の二倍はあるではないか!?しかも船が進む為に必要な風力を受ける帆がない。伝え聞くムーやミリシアルの帆がない船のようであった。

そして眼前下にある、筒が二本突き出した鉄塊は遠くの敵を倒す為の武器であるという。まさか、噂に聞く第三文明圏唯一の列強国、パーパルディア皇国の持つ魔導砲と呼ばれるものでは?

それは矢の届かぬ距離から城門を一撃で粉砕できる威力があると言われている。

もしかすると、フランスの船はパーパルディア皇国の船に迫る性能を持っているのか?

しかし何故、文明圏外国がこのようなものを...

 

ブルーアイの脳裏にフランスに関する資料で見た異質な内容が横切る。

 

(転移国家...こことは別の世界から来たと記されていた。まるで第二文明圏のムー神話のような...)

 

ブルーアイが思考に耽っている時、猫を撫でるような声が掛かった。

 

「ブルーアイさん、少々よろしいか?」

 

「っ!はっ、はい。如何致しましたか閣下」

 

声をかけて来たのはロデニウス派遣艦隊司令長官バスチアン ルルネ少将であった。

ルルネは異世界転移時、地中海艦隊の巡洋艦戦隊の司令であったが事態鎮静後の異動により再編された南方艦隊第3航空艦隊司令になっていた。

ロデニウス派遣艦隊は第3航空艦隊所属の空母ディクスミュード 、巡洋艦シャトールノーが編入されておりルルネは旗艦であったシャトールノーと共に横移動して来たのだった。

ちなみに、ベアルンは第4航空艦隊所属であり、艦隊水雷艇群は予備役艦を転移後再就役させたものであり、乗員錬成が完了した直後に派遣艦隊へ編入された経緯がある。

 

「失礼ながらあなた方の海軍は、どのような方法で敵を撃退しますか?」

 

唐突に投げかけられた質問にブルーアイは戸惑った。

 

「それは、どういう...」

 

「そのままの意味ですよ。あなた方は船対船の戦いでどうやって相手を沈めるのですか?」

 

沈める、だと...?

 

「...敵船へ接近し、まずは火矢で攻撃を行います。後、敵船へ接舷し切り込みをかけます。抵抗が無くなれば、あとは火を放って燃やします...答えになっていますか?」

 

ルルネは目を細め口を三日月型にして笑ってみせた。

 

「ええ、ええ。十分な回答です。前情報の不備も無さそうですし結構結構。作戦参謀、作戦計画を参謀本部のものから私のものへと変更します。よろしいですね?」

 

「はっ、了解であります閣下。各艦へ伝達しておきます。」

 

「よろしい...航空参謀、状況は?」

 

「はっ、既に索敵機が敵艦隊を捕捉、監視中です。位置は我が艦隊よりの方位270、距離約60海里です。」

 

「以外と近くまで来てましたか。オランダとベルギー艦隊は?いつ合流できそうですか?」

 

通信参謀が受電した内容記したメモを見ながら言った。

 

「我が隊より40海里程後方を二艦隊合同で速度18ktで航行している模様です。合流はこのままいけば...」

 

「6時間後ですか。」

 

「はい、またベルギー艦隊へは補給の必要があるかと。」

 

「わかりました、両艦隊との合流を優先しましょう。艦隊進路0度!しばらくこの海域で遊弋します。」

 

「閣下...」

 

航空参謀が目で訴えて来ているのがルルネにはわかった。

そしてブルーアイはいきなり始まった会話にポカンとしていた。

 

「わかっていますよ、何もしない訳ないじゃないですか...ベアルン、ディクスミュードへ下令、第一次攻撃隊発艦!!水雷艇戦隊は対潜、対空警戒厳となせ!」

 

「「はっ!!」」

 

ルルネの命令に参謀達は即座に行動を起こした。そして、ブルーアイへ一言言った。

 

「ブルーアイさん、是非楽しんでいってください。」

 

ルルネは、静かに笑っていた。

 

 

 

 




もっとこう、心情描写を上手く書きたいものです。

次回は心踊る大海戦...もとい、殲滅戦です。乞うご期待。
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