VIVE LA FRANCE   作:Fletcher

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文明国

中央暦1639年4月末

 

ロウリア戦役は呆気なく終了した。王国三代将軍達が立てた防衛計画もフランス連合軍の電撃的侵攻により意味を為さなくなり、気づけば首都の目の前まで迫っていた。

王都に最初に入ったのはフランス陸軍一の精鋭と名高い第19歩兵戦車大隊だった。街道を塞ぐバリケードもAMX戦車の前には無力でありなす術なく王都は占領され、ハーク・ロウリアも囚われの身となった。

ロウリアは無条件降伏しその土地はフランス、オランダ、ベルギー、ルクセンブルクの三国によって5:2:2:1に分割され植民地となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ルルネ少将の独断には恐れ入る」

 

「全くだ。オランダとベルギーから抗議文が届いているそうじゃないか」

 

「自国主義なのはいいがこの世界で我々は孤立しているんだ。孤独にならない為には同郷の者たちを大切にせねばならん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ムー国首都 オタハイト

 

地球で言えば20世紀初頭の英国に近い街並みがそこには広がっていた。それはムーが一度通った道ではあったが、力を失ったムーは昔の栄光を取り戻す為、日々前へ進んでいる状況だった。

 

そんなムーの行政機関の1つ、外務部では今日、遠く東の世界からやってきた者たちと対談していた。

 

「まさか、失われた大陸が貴国とは、これは神の導きがあったとしか思えませんな」

 

「同感です。我らが祖先の故郷、その同郷の者に出会えたのは生涯の喜びです。しかし、もはや我々は郷愁の念に駆られることすらなくなってしまった。」

 

「仕方のないことでしょう。1万年もの長い時間をこの世界で在ったのですから。ところで、我が国と他三国との間で正式に国交を結ぶ案は如何だったでしょうか。いくばか内容の擦り合わせは必要だと思いますが」

 

「そうですね。ざっと目を通させていただきましたが、擦り合わせは必要でしょうな。」

 

「わかりました。それでは出来るだけ早く行いたいですな。私は全権を委任されています。オランダ、ベルギー、ルクセンブルクの各大使も同様です。早急なる国交開設を願います。」

 

 

 

ムー国首都 オタハイト港湾地区

 

「で、でかいな...」

 

技術士官マイラスは目の前に聳え立つ巨艦を前に冷や汗を流していた。

 

(ミリシアルと同程度と聞いていたが全くその通りだな)

 

外務部から招集された時は、なんだなんだと思っていたが、機密事項だとして第三文明圏外から来た国の技術調査を命令されて余計になんだが増えた。

機密事項と謳っているものの、ここまで来る道中の港の見物客の数から言って、秘密にはできていない。仕方のないことだ、こんなに巨大な戦艦はどうしても目立つのだから。

フランス海軍戦艦ジャン・バールの舷梯をマイラスは震える足を懸命に動かしていた。

 

 

 

「38cm?」

 

「ええ、それをこの通り四連装に纏めて前部に2つ集中配備しています。...どうかしましたか?」

 

「い、いえっ...いや、あの」

 

マイラスは少々動揺してしまった。主砲の後継がデカかったからではない。38cm砲は確かに大口径だ。自国の新鋭戦艦であるラ・カサミ級は30.5cm砲と幾分か小さいが、しかしそれは悲観するべき事ではない。対外諜報によりミリシアルの新鋭戦艦の主砲は36cm以上と結論が出ている以上、ラ・カサミ級は次なる戦艦への布石である。ただバランスが良くこれまでの戦艦よりも強力な為、それまでの主力艦を置き換えることとなり、大量建造される。なので内外に強力な新鋭戦艦であるとでかでかと宣伝している訳である。(口径以外は)

既に次級の戦艦主砲は34cm砲と決まっているし、40cm砲の研究も行われている。マイラスが驚いたのは

 

「そんな簡単に口径を明かしていいんですか?」

 

案内役の艦長があっさりと主砲口径を言ったことにある。

普通戦艦の主砲口径は秘匿されるべきものである。フランスが転移する少し前の地球でも、戦艦の主砲口径は機密扱いであった。

この世界でも主力艦の主砲口径というのは機密情報であり、各国諜報機関はそれを求めて日々攻防を続けていた。特にミリシアルの防諜っぷりは凄まじく主砲自体に認識阻害の魔法を掛け、乗組員に忘却術を施すほどである。

そんな国防の最重要機密である主砲口径をさらっと言った艦長は、あっけからんとしていた。

 

「我々にとって、あまり主砲口径は重要なものではありませんよ。詳しく話すと長くなりますが聞きます?」

 

「...是非ともお聞かせください」

 

艦長が話したのは転移する前の地球で起こった大洋大戦とそれに続く北海危機の話だった。

 

「要は、交戦距離が伸びたのと大口径化の限界があったからと?」

 

「そんな感じです。後者について言えば更に経済的な問題とも」

 

大洋大戦末期、日本がV2ロケットの技術と非公式ながら存在した未来技術会により実用化した対艦弾道弾はソ連のキメラ戦艦、戦艦空母クラスヌイ・ドルジバを一撃で轟沈せしめた。これにより各国で戦艦主砲の射程外から敵艦隊を撃沈できる兵器の開発が盛んに行われた。

 

「そんな...戦艦主砲の射程外から?嘘だあり得ない!」

 

「事実ですよ。実際この艦にも、射程40km以上の対艦ロケットが搭載されています。」

 

「4、40!?」

 

戦艦ジャン・バール

大洋大戦中期にアメリカにて就役したリシュリュー級の2番艦である。

リシュリューと共にアメリカ大西洋艦隊、イギリス王立海軍と連合艦隊を結成し、時の帝政イギリス海軍と死闘を繰り広げた。

北海危機では直接戦闘には参加しなかったが、トルコへ派遣されソ連海軍黒海艦隊の地中海進出を無言の威圧で押しとどめた。

そんなジャン・バールの現在の兵装は以下の通りである

主砲:38cm四連装砲 2基

副砲:19.4cm連装砲 3基

備砲:100mm連装砲 12基

37mm連装自動砲 8基

20mm単装機銃 41丁

その他:Vez小型対艦ロケット発射機 2基

Vlz対空ロケット十八連装発射機 4基

 

ムー国海軍なんて鎧袖一触!!な性能を誇るジャン・バール

もちろん艦長は全てを曝け出す事はない。主砲よりも長い射程の兵器があるとは言ったが詳細は伏せているし、速度性能も21ktと偽っていた。

案の定、マイラスは偽りの数字でも十二分な衝撃を受けたわけだが。

ちなみに、ロケットの射程は40km以上と言ったがそれは主砲射程であり(仰角を38度まで上げれるよう改修されたため主砲射程は大和型と同等)対艦ロケットの射程は約80kmと二倍である。

 

(これは、不味い。ラ・カサミが勝てるビジョンが全く見えてこない!これが、第三文明圏外から来たって?冗談も程々にしてくれ!!)

 

マイラスは軽くショック状態だったが艦橋トップへと案内された途端、陰鬱な気分は吹き飛んでしまった。

そこから見えるのはオタハイトの港湾と言わず遠く内陸部まで街を見通せた。そして眼下に鎮座する巨大な主砲塔、全てが強力で美しい。

マイラスの心が沸き立った。

 

(これは、越えるべき壁だ!!)

 

 

 

神聖ミリシアル帝国西部沿岸 港湾都市ホールワンド

 

ムーとの交渉が始まる少し前

 

ミリシアル帝国の第7魔導艦隊が根拠地とするこの都市は首都ルーンポリスよりも南へ下がった地域にある大都市である。

いつもならマーキュリー級魔導戦艦2隻が係留されている場所には見慣れない巨艦が2隻いた。

 

仏蘭第一文明圏派遣連合艦隊

戦艦ガスコーニュ、ネーデルラントの2隻である。

ガスコーニュは言うに及ばず、ネーデルラントもマーキュリー級と同等以上の艦容を擁しているため、非常に目立っていた。

随伴の艦艇群も近場の桟橋へ係留されており異様な光景が広がっていた。

 

「なんだあの船、スレイストラ(マーキュリー級)よりでかいじゃないか!?」

 

「新型戦艦か?」

 

「無骨すぎる、魔導船じゃないみたいだ」

 

「それじゃあ、ムー!?」

 

「いやムーの旗じゃないぞ、あんな旗見たことない!」

 

港湾には異様な船の噂を聞いた見物客で賑わっていた。

浮き足立っているのは見物客だけではなかった。ホールワンドにある海軍庁舎でも慌ただしい雰囲気であった。

 

「外務から連絡は来たのか?」

 

「はい、既に担当官が帝都を出発したと。2時間ほどで到着します」

 

「陸戦隊は?」

 

「臨検チームを編成して待機させています。今のところ向こうは大人しいですよ」

 

「陸軍も待機しています」

 

「これは海軍の管轄だ。陸軍は引っ込んでいろと言え!」

 

「既に一次交渉は終わっている。向こうは国交開設を求めて来たのだろう?何をそんなに殺気だっている?」

 

慌ただしい将兵を見て第7魔導艦隊司令長官フュルステは言った。

 

「しかし閣下、奴らは文明圏外から来た野蛮人ですぞ!何か突拍子のないことをするやもしれません!」

 

「野蛮人か、そんな印象はなかったがな...」

 

「何を...」

 

「彼らは紳士的だったよ、非常にね。そして従順で規律正しい。見ろ、甲板上に並んだ水兵たちを。こちらとの対比が面白い。まるで駄々を捏ねる子供と理性的な大人だ。」

 

「なっ...」

 

基地司令は絶句してしまった。目の前の艦隊司令は世界一の国である自国よりも、第三文明圏外から来た未開人たちの方を高く評価した。

フュルステは基地司令を見て、内心で溜息を吐いた。

 

(全く、しょうがないか。役人が来るまでに二次交渉をした方がいいかな)

 

「7艦隊の司令部要員で再度交渉してくる。基地からも人を出してくれ」

 

 

 

 

 

 

 




お久しぶりです皆様。

前回のやつ、非常に出来の悪いものになってしまい申し訳ありません。最後力尽きちゃったんです。直す気力もないで...トホホ

簡潔に言うとナパームみたいなやつを艦隊前方に撒いて対空ロケットの焼夷弾頭で引火、逐次散布を続けて3分の1を炎が囲い船艇4分の1を焼失したっていう感じです。
強引過ぎる...

なお統率を失った艦隊は散り散りに逃げたため(強引に陸に揚がったもの多数)追撃戦における直接的な撃沈艦は少ないです。オランダ、ベルギーの艦隊も結局港湾への対地砲撃しかしてない感じです。


フランスがいた前いたパラレル地球の設定はありません。取り敢えずフランスは強化してるとだけ
もしかしたらパラレル地球の話も出すかも?でも収集つかなくなりそうだから作中に小噺が出てくる程度にしたい。


今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

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