鬼遊戯(ごっこ)   作:月日火

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前回のあらすじ

 十二鬼月やめました。


おねいさん

 結局、彼女がお団子を食べに行けたのはあれから3日後の昼ごろだった。

1日目はそもそもが柱との戦闘で髪を含め血が付いていない所はないと言う有り様だったので山奥にあった河川で身を清め。

2日目は服がボロボロでとてもじゃないが街に繰り出すような格好では無かったのでそこら辺の人間から拝借し、ついでにどうやら柱の女を探しにきた鬼殺隊の隊員と遭遇したので。

 

「ちょっと質問なんですがァ…ここの近くにお金を持ってそうなお家ってありますかねェ?」

 

と、血鬼術をちらつかせ命と引き換えだのなんだのと脅してみれば何やら藤の花の家紋の家とやらがそうらしい。

取り敢えずはそこに向かう為の地図を書かせて、空に浮いてた鴉と一緒に爆砕砕、美味しく頂いた。

次いでに何人か布を顔に付けたやつがいたのでそいつらは1人を血気術の餌にして後は同士討ちさせて全滅させた。

 

それが終わり夜になる頃にその藤の花が咲き誇るお家に到着したので、取り敢えずその家にいる人達を全滅させ、後は丁度良い大きさの服と持てるだけのお金を頂戴してその家を焼き払った。

 

そんなこんながありつつも、今現在。

血染は目的の街の茶屋へ向かい、みたらしとこし餡のお団子をゆっくり堪能…するはずだったのだが。

 

「ひっく……ふぇぇ…」

 

茶屋の外で太陽の暖かな光を堪能しつつ、約20本にも及ぶお団子を1本ずつ口に含みその柔らかさを味わい始めてから四半刻。

少し前に急に隣に座って泣き始めた小さな娘を血染は多少鬱陶しがっていた。

が、このまま放置していては誰かに誤解されるのも面倒なので1度お団子を食べる手を止めその娘を一目見る。

 

一見するとそこらかしこにいるありふれた少女にしか見えない体と顔。

しかし、頭頂部を見ると僅かだが黒の間に桃色の髪が存在している事がわかり

血染はそこに目を向けた。

というのもこの鬼、新しいものが大好き。

今まで髪の色が桃の人間など見たこともなく精々が黄、黒、白の4色だった事もあり血染の興味は一気にこの娘に注がれた。

 

これは思わぬ発見だと、目を細めまずは情報収集だとこの娘に話しかけてみる事にした。

 

「ねェ、お嬢さまはどうして泣いてるのですかァ?」

 

その声に反応した娘は何度も涙を拭おうとしたのが目に見えてわかるぐらい目を真っ赤に染めてその声の方向を見上げる。

 

「…おねいさん、だあれ?」

 

いや、お前こそ誰だよ。という声を飲み込み笑顔は絶やさないようにし娘を警戒させないように心がける。

長年の子どもを喰う時に培った技能がこんなとこで使われるとはと遠い目をしがらも僅かの時間で考えついた偽名を伝える。

 

「私は妖姫ですよォ。お嬢さんは?」

 

「…みつり、かんろじみつり」

 

「良い名前じゃないですかァ…それではみつりちゃん、どうして泣いていたんですかァ?」

 

「…えっとね」

 

そこから娘が語ったのは意外にも家族とのありきたりなお話。

ただしその中でも2点、普通の女児ではおおよそ考えられない話があった。

1つ、父と腕相撲をした際に圧勝し父を大層驚かせた事。

2つ、友人と遊んでいた際に友人を大きく吹っ飛ばしてしまい泣かせてしまった事。

特に2つ目はつい先程やってしまった事、さらにそこでその友人から本気の拒絶を受けた事が相当心にきたのか話を終えると再び娘は泣いてしまった。

 

まぁ主観が大きく入ってはいるのだろうが、ここに血染は着目した。

見たところまだ十にも達していない幼子、勿論親が手加減した可能性やその友人が娘より小柄の可能性など充分にあるし実際そうだと血染は考える。

が、何せ髪が桃という異質な髪をしている娘だ。何かしらのものを秘めている可能性がほんの僅かでもある以上、そこを突き詰めないのは愚の骨頂。

取り敢えずはその話が虚偽でないかを確かめることにした。

 

「……ふむふむ、ではみつりちゃん。私と腕相撲でもしましょうかァ」

 

「…ふぇ?」

 

「私と勝負をしましょう、そうですねェ…あなたが勝ったらこのお団子を全部あげちゃいましょうねェ〜!」

 

そんな風に目に見えるご褒美をチラつかせば…

 

「ほんと!ほんとに!!?」

 

ほら。涙を引っ込めて目を光らせる。

 

 

 

「はぁい、私の勝ち」

 

当然の事ではあるが、血染と娘の勝負は血染の勝利で終わったのだが血染はこの娘の興味を更に跳ね上げていた。

何故ならば、この娘筋力が幼児のそれではない。

決して強い訳でもないがそれでも鬼である自身の筋力の約3割とほぼ同等など人の中でも男、更にはあの鬼殺隊の者に限られる。それを女の更にはこんなにも小さな娘が成し遂げるなど普通ではない。

間違いなくこの娘は人の中でも異常の位置に相当する。

 

ここで初めて血染はこの娘の名前を覚えておこうと決め、未だに目をぱちくりさせるみつりを改めて…

 

「つ」

 

「つ?」

 

「つよ〜い!おねいさんとってもつよいのね!びっくりしちゃったわ!」

 

「ありゃ、そうきましたか…ま、良いでしょう。…これであなたは普通だってわかりましたかァ?」

 

「…で、でもわたしは…」

 

なんだか喜ばれるのは予想外ではあったが、まぁこんな筋力があればさもありなんと思い直し血染はみつりの恐怖を容赦なく撃ち抜く。

みつりは先程よりも大きく目を開き、その目に恐怖を浮かべる。

受けた拒絶がかなり心の奥にまで刺さっているのだろう、わかりやすく態度を一変させ涙を浮かべる。

 

「まァ、みつりちゃんはちょ〜っと他のみんなとは違うかもしれませんがァ…」

 

「っ…!」

 

「ま、それがあなたです、自信を持ちなさいな」

 

「じしん…?」

 

「そうですねェ…例えばみつりちゃんのお母さまが重いものを持てずに困っています。でもそれは重たすぎてお父さまも持てません。でもみつりちゃんだけはそれを持ててお母さまを助ける事ができます。さてどうしますかァ?」

 

「もちろんたすけるわ!」

 

「そうでしょう?ほら、みつりちゃんは今お母さまの役に立ちました!勿論、それはみつりちゃんのその力が無かったら出来なかった事でしょ?」

 

「…うん」

 

「なら、それはみつりちゃんの個性、その力はきっとカミサマがみつりちゃんの為にくれたものなんです」

 

「…カミサマが?」

 

「そうです、だからもっと自信をもってあなたらしく生きる事をオススメしますよォ」

 

「わたし…らしく」

 

そういって頭を撫でてやれば、みつりは少し驚いた後に目を細めてふにゃりと笑みを浮かべる。

 

「おねいさん…ありがとう!」

 

「いいえ、それじゃあ一緒にお団子を食べましょう?」

 

「うん!」

 

みつりの悩み事も解決し、話を終わらせるべくお団子へとみつりの意識を移した瞬間、血染は一滴みつりの湯呑みに血を垂らす。

みつりはそれに気づく事なく、お団子を食べて、茶を飲み切り、やがて探しに来たみつりの母親らしき人に手を引かれて自宅へと帰っていった。

 

「ふぅ…」

 

元気よく手を振るみつりの姿が見えなくなってからゆっくりと息を吐いてから口に弧を描く。

正直言って、今すぐにでもあの娘を解剖なりなんなりしてその原因を究明したくて仕方なかった。

だが、こんな衆人観衆の前でそんな事をすれば確実に面倒な事になるのは目に見えていた。

だから、我慢した。

しかし、あの時適当に聞き流さなくて本当に良かったと思う。

 

『わたし…ふつうじゃないのかしら…』

 

あぁ、そうだとも。

君は間違いなく異常で、他人とは違う。

だからこそ、それを隠すのは余りにも惜しい。

大きくなれ、みつり。

その力を惜しむ事なく成長させそしていつか。

 

「またあいましょうねェ…!」

 

その身を惜しむ事なく調べられる事を願って。

 

それまでばいばい、検体1号(みつりちゃん)

 

 

 

恋柱、甘露寺蜜璃は任務を終えたある時の昼頃の茶屋でふと思い出す。

 

かつてこんな暖かな日に幼き日の自身を励ましてくれてた『おねいさん』がいた事を。

 

友人との違いを初めて自覚し、心がぐちゃぐちゃになって勝手に飛び出してしまい泣いていた自分を慰めてくれた優しい人がくれた温かな思い出。

 

撫でてくれた手は少し冷たかったけど、それでも彼女が言ってくれた言葉を今でも甘露寺は覚えている。

 

覚えていたから、あの時のお見合いで酷いことを言われても耐える事が出来た。

泣かず、俯かず、振り向かず。

それはこうして柱となった今でも忘れない甘露寺蜜璃の《はじまり》。

 

あの時のおねいさんは今何処にいるのだろうか。

あの時からもう10年以上経ったし、きっともっと綺麗になっているに違いない。

私と違って、もしかしたら素敵な殿方を見つけて幸せに暮らしているかもしれない。

 

それとも…

 

そこまで考えて甘露寺は勢いよく首を振る。

そんな事を考えてはいけないと否定して、その考えを払うべく頼んだお団子を一心不乱に食べ続ける。

口の中に広がる甘さを堪能し、幸せに頬を緩める。

 

しかし。

 

『シレー!シレー!』

 

そんな時間も長くは続かないのが鬼殺隊の宿命。

聞けば、ここ3日の間に10里程離れた山で隊員が次々と失踪しているという事件が発生。

もしかすれば、十二鬼月である可能性かもしれないという懸念もあり近くにいた甘露寺に指令が下されたそう。

 

隊員が生死関わらず犠牲となっているのは柱としてそして甘露寺個人として絶対に見過ごす事は出来ない。

 

急いでお団子を完食し、急いで現場へと甘露寺はその足を伸ばすのだった。

 

…その背に何故だか嫌な予感を感じながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




大正こそこそ話

血染は未知な物が大好き!
反面もう知った事にはとことんまでに興味を無くしてしまうんだ。
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