知らね、自分がしたいことを貫いていけ!
眠いので挨拶をこれくらいにして……どうぞ!
ここは平和な平和な商店街。
そんな商店街を歩く一人の男女が居た。
「ほら、置いてくぞ」
「おにぃちゃん待ってぇ!」
年はまだ5、6歳だろうか。
赤ピンクのワンピースを着ている少女がおぼつかない歩き方で少年へと走って行く。
しかし、走ると言ってもあくまでその程度の年の子だ。その長くて金色の髪が風でなびくことはなく、今にでも転びそうである。
「やれやれ……」
少女の年齢より
ボサボサな黒髪にジーパンと白いTシャツ、そしてパーカー。
ファッションセンスの欠片も無い青年は少女の元へ、けだるけにゆっくりと歩き出す。
「立てるか?」
青年は少女へと手を伸ばす。
少女は青年の手を取り、そのまま手を繋ぐ。
繋ぐと言っても、身長の関係で小指でしか繋いでないが。
「はぐれるなよ、ユラ」
「大丈夫だよぉ、おにぃちゃん」
この少女と青年は兄弟であるが、血は繋がっていない。
俗に言う異母兄弟である。
それでも兄弟の絆は存在する。
少女……『ユラ』は鼻唄を歌いながら商店街を青年と一緒に歩いて行く。
途中で腕に
「らっしゃい、らっしゃい! 安いよ~安いよ~」
「あらまぁ、奥さんまたですの?」
「そうなんですよぉ、またあの人が小説の投稿をサボって……」
「アイツ、ラブコメ、サボッタ」
商店街の中心まで来ると人も多く、とても繁盛しているようだ。
周りを見渡すと様々な店、人が居る。
八百屋、魚屋、肉屋、煙草屋、不幸屋、矢、荒野、行動、サボり屋、大きな荷物を持っている主婦、本を片手に歩いている学生、土下座する作者……個性的な物が沢山ある。
「あっ、おにぃちゃん、おにぃちゃん! お菓子だよお菓子!」
「買わねぇよ。今日買うのは魚だ、魚」
青年がそう言うとユラは顔をしかめ、青年のズボンを掴む。そのまま駄菓子屋へと引っ張ろうとするが、その程度の子供に負けるほど貧弱ではない。
「行くぞ、ほら」
青年はユラを猫のように掴み、だっこをする。
するとユラは借りてきた猫のように静かにして、耳を真っ赤にさせる。
「…………」
「ん、ユラ。もしかしてお前……」
「……ゴクリ」
青年はユラの耳が赤いことに気付き、少し目を見開く。
そのままおでこ同士をくっ付けて、熱があるかどうか測ろうとした。
「熱があるのか?」
「ち、違うよ! それにもう、大丈夫!」
ユラは青年を無理矢理引き剥がし、魚屋に向かう。
幸いにも顔が赤くなっていることはバレていないようだ。
「ユラ……」
青年はユラが歩き始めた方向を向いて呟きながら、ユラが歩いていった方向へと向かう。
「俺ってそんなに臭いのか? まさか、もう加齢臭だって言うのか? いや、そんな筈は……」
的はずれなことを考えながら。
「おっ、ユラちゃんとニィじゃないか!」
ユラと青年は目的の魚屋に来ると、早速店主が挨拶をしてくれた。
青年は『ニィ』と呼ばれたことに苦笑いをしつつも、魚を選ぶ。
『ニィ』と言うのはユラがふざけて広めた青年のあだ名で、商店街のみんなはそれに乗っかったのだ。
「……おっちゃん、サンマを四本頼む」
「まいど!」
青年はサンマを凝視してから、店主を呼び買うことにした。
ユラは青年が買い物をしている間、売り物の魚をじっと見ている。否、正確には死んでいる魚の目とにらめっこしている、と言った方が良いだろう。
「あ、おにぃちゃん終わったの?」
「あぁ、眠いから帰ろう」
「じゃあなユラちゃん、ニィ!」
「また来る、それとニィは止めてくれ」
二人は魚屋を後にしようとしたとき、店主がユラを右の親指以外の四本をチョイチョイと曲げながら「こっちに来い」と呼ぶ。ユラは店主に近づき、耳打ちをされた。それを聞いたユラは少し顔を真っ赤にして青年の方を見た。
「ほら、頑張りな!」
どうやら話を終わったようで、店主はユラの肩を優しく叩き、親指を立てる。
「ユラ、なんの話をしてたんだ?」
「か、関係ないよぉ!」
店主から何かを聞いたユラはそれから少しの間、顔が赤かったそうな。
そして帰る途中、ユラは青年の前に立ち両手を横に何度も降り始めた。
「おにぃちゃん、おにぃちゃん!」
「はいはい……」
どうせいつものだっこをせがまれるのだろう。そう思いながら、「やれやれ」と呟きながらしゃがむ青年。
その青年の頬に『チュ』と聞きなれない音が聞こえた。
その音の発生源は自身の頬、そして……
「…………ッ!」
ユラの唇からであった。
そのままユラはその場から逃げるように走っていった。
ユラは魚屋の店主に言われたことを思い出していた。
『ニィの頬にキスをすれば、好きだって気付くと思うよ!』
思い出すと同時に、また顔が赤くなったユラ。
そして一人取り残された青年はユラが走っていった方角を見て、ユラが先ほどキスをした頬を触る。
「ユラ……」
「ご飯粒が付いてるから、早く言ってほしかったな」
全く違う答えを導き、ユラを追う青年。
ユラの気持ちに青年が気づくことはあるのだろうか……?
いや、ない。きっとないだろう。何故なら、彼らは兄弟であり、鈍感な兄が居るのだから。
ラブコメ?私に書けるわけ無いでしょう。