いつからだったのだろうか。
暖かい家庭で暮らしていたあの頃。
穏やかで優しい母様。
名家の当主でありながらも家族思いの父様。
姉らしく振舞おうとする背伸びした姉様。
まだちっちゃくて可愛かった妹。
「変わりましたね」
変わった、変わらざるを得なかったのが正しいのだろう。
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スカーレット家は吸血鬼の中でも最上位に君臨する支配階級の名家だった。
その為、スカーレット家のご令嬢を見ようとする者は多く、そしてその縁談もまた多かった。
特に次女のクーリア・スカーレットはとても美しく、見惚れた令息が大量におり、彼女を自分の物にしようと縁談が相次いだ。
「クーリア。気になった男はいたか?」
「いいえ、特には。可愛い女の子に視線を向けていたので」
「……お前はそういう子だったな」
優しい姉と甘えたがりな妹のおかげでシスコンになったクーリアは男性よりも女性のが好ましく思っていた。
その殆どは彼女の両親と姉妹達によるものだったが、女性にだけはその効果が及ばなかったのも大きかったのだろう。
「ああ、そういえばメリル家の令息が私を見ていましたね。かなり強い魅了をかけてきてましたから」
「ほう……」
「野心の強い家だったはずです。私含め、スカーレット家を手に入れる気でしょう」
クーリアの能力は他と比べてとても異質であり同時に特異性も秘めていた為、能力目当てで何度か手を出されていた。
無論その手に対応出来るように戦闘は出来るようになっていたので返り討ちにしていた。
「……父様。もし、私がこの家から消えたらその時は探さないでください」
「……!なんてことを言うんだ。お前は私とフェリシアとの宝だ!」
「そうだとしても私がいる以上は付け入る隙を与える口実になります」
「だとしてもお前はこの家に居ていい。親が子を守るのは当然だぞ」
慈しむようにクーリアの頭を撫でる父に恥ずかしくなりつつ、告げられた言葉の温かさに泣きそうになった。
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「『幻想結界・潰滅』」
ぐちゃり、と何かが潰れる音。
「……あと3人」
クーリアは館に残っている人数を探知すると、大規模な魔法を組み上げる。
齢にして数十歳の吸血鬼の子供が、御しきれるとは思えないほどの高難易度な魔法を使っていた。
「私たちの城から消えろ、
対象者となる侵入者を捕捉し、その対象を消滅させる魔法。
古代にて使われていたそれはクーリアの持ちうる力全てを吸い取って行った。
「……あはは……」
虚しい笑いが木霊した。
「クーリア……」
「クーリアお姉様……」
心配そうにクーリアを見つめる
壊れかけているクーリアに寄り添おうとしても何故か近づけないからこそ何も出来ない自分たちが悔しかった。
「……姉様、フラン。私はしばらく外に出ます」
「え、ええ。分かったわ」
「うん……気をつけてね?」
「はい。…………後はもう任せました」
陽炎のように消えたクーリア。
いくら待っても帰ってこない彼女に2人の姉妹は館で静かに泣いた。
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「姉様」
「っ……何かしら?」
「フランも交えて寝ましょうか。昔みたいに」
クーリアからそんな提案が来るとは思っていなかったレミリアはキョトンとしながらも本当に良いのかと聞いた。
「もう過去の事です。ちゃんと理解しましたから。もう大丈夫ですよ」
「そう……なら一緒に寝ましょう?」
「はいっ」
嬉しそうに頷いたクーリアの表情はぱぁっと咲いた花のように綺麗な笑顔だった。
数百年ぶりに見たその表情にレミリアは妹ながらもドキッとしてこの感覚もとても懐かしいと思いながらもフランを抱えたクーリアと共に寝室で仲良く3人眠りについた。