銀鳳の副団長   作:マジックテープ財布

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盆休みの振替があっても外出できない・・・


87話

 (ドレイク)と呼ばれる不可思議な飛空船(レビテートシップ)を討伐するために第1、第3中隊と別れた第2中隊はある意味では先の2中隊以上の戦力と共に西に向かっていた。第2中隊にはツェンドリンブルが配備されていないため、幻晶騎士(シルエットナイト)という歩幅も相応に大きい物体に乗っていても現地への到着には相応に時間がかかり、数度の夜営を経てようやく目的地だった城塞都市付近に到着した。

 

「丘陵地帯ですね。アル、リーコンを展開してください」

 

「アイサー」

 

 城塞都市付近は丘陵地帯で、ツェンドリンブルに乗っているアディが暴れやすい地形となっている。ただ、丘陵地帯は同時に見晴らしの良い場所でもあるので空を飛ぶ飛空船(レビテートシップ)も動きやすく、大部隊も展開しやすいので偵察して優位に立とうと考えたエルはアルに指示を送った。それを聞いたアルはパッチワーク・アラーニェの背部にあるリーコンを上空へと伸ばすと移動しながら偵察を開始する。

 

「手前の森林地帯ですが、上から見る感じ伏兵は居ないですね」

 

「アルフォンス、やっぱりその足は慣れないんだが」

 

 まずは自分達の周囲に存在する森林地帯に伏兵が居ないかを偵察するアルだが、ディートリヒが少しだけ気持ち悪そうに文句を言いながらアルの乗機であるパッチワーク・アラーニェを見る。

 四脚型という節足動物に似た動きをしながら歩く独特の足。これが少々つたない動きならばまだ可愛げがあったが、その動きは妙に生々しく動くのでその動きにディートリヒは僅かに嫌悪感を抱いていた。それに釣られるようにほかの第2中隊員も同意なのか、カルディトーレの首を上下させる。

 

「えー、この動きをマスターするのに結構時間かかったんですよ?」

 

「そうですよ。僕が見る限り、3日は寝ずに訓練してましたよ」

 

「エル君、そこは止めようよ」

 

「いや、イサドラ様が無理やり止めてたので良いかなと」

 

 アルはディートリヒの文句にブーたれながら苦しかった訓練の日々を思い出す。

 まずアルが行ったことは、現物が出来るまでに模型を使って足運びを練習することだった。バトソンに頼んで銀線神経(シルバーナーヴ)蓄魔力式装甲(キャパシティフレーム)の端材を利用したミニチュアのパッチワーク・アラーニェを作ってもらい、それを直接制御(フルコントロール)で十全に操作できるまで練習を頑張った。

 当然、初めは上手く動かずに転倒させたりと失敗続きだったがミニチュアなのでポケットなどに忍ばせやすく、銀鳳商騎士団の仕事中や休憩時間といった合間の時間を使って練習を繰り返し、何とか転倒させずに動かすことに成功したアルは次にようやく実機を使用した訓練に移る。

 

 はじめにミニチュアを使って訓練したおかげか大まかな動きは失敗せずに出来たが、不整地での移動や速度を上げて移動といった応用的な操縦を行うと失敗が目立ったので、アルは朝になったら真っ先に工房へ行って実機訓練をし、夕方頃から貯まった仕事を行う。そして、夜中には私室でミニチュアを使った訓練を行ってまた朝日が昇る頃に工房へ出かけるといった言葉の通り、寝る間を惜しんで訓練に明け暮れた。

 そんな生活が1日過ぎ、2日過ぎ、3日といったところで『起きた時の恒例行事』がないことに不審に思ったイサドラに行動が尾行され、4日目の朝日が出た頃に確保。説教の後にイサドラの監視の元という名の付きっ切りで寝かされた。

 これにはそろそろ怒るつもりだったエルも部屋に赴いてみればアルの腹の上を枕にして二度寝を決め込んでいるイサドラの姿と寝苦しそうにしているアルのうめき声に、苦笑いで『おやおや』と意味深な言葉で部屋を後にしたとかなんとか。

 

閑話休題

 そんな事情もあるので安易な『動きが気持ち悪い』といった文句はアルには利かなかった。むしろ、高速移動時には魔導大気推進器(マギウスエアスラスタ)を使ったホバーを取り入れただけでも感謝をして欲しいと思っていたりもしたが、それを言うとこじれそうなので、そのまま無反応で周囲の偵察を続けているとアディが『なんだろ。あれ』とツェンドリンブルの片手に装備した槍をその方向へ指し示した。

 

「煙……そして……小さいですが……ビンゴ!」

 

 槍が指し示した方角にリーコンを向けると一筋の煙の近くに飛空船(レビテートシップ)が今までのものとは異なる速度で飛んでいることが分かった。心なしかその飛空船(レビテートシップ)が生き物のような形をかたどっていたのでアルが叫んだ途端、ディートリヒは中隊に前進を指示する。

 

「運があるのかないのか。ひとまず急いだほうが良さそうですね」

 

「僕は別行動します。グスタフと……藍鷹騎士団の皆さんのうちで何名か同行お願いします」

 

 目立たないようにいったんリーコンを仕舞ったアルはキャリッジに近づいてイカルガからグスタフの基部を受け取る。それと同時にキャリッジから数名のシャドウラートが降りてくるとパッチワーク・アラーニェの肩部や頭部、胸部装甲に張り付く。

 実はこの作戦には藍鷹騎士団も仮に避難民が居た際の誘導役や偵察要員として参加しており、構成人数もアルのパッチワーク・アラーニェが『とある行動』を行った際には少し無防備になるため、エドガー達の部隊よりも第2中隊の方が多めに藍鷹騎士団員が配置されている。そんな経緯からかアルと共に行動する者は森林地帯での隠遁やシャドウラートの操縦が得手な者が率先して張り付いていた。

 シャドウラートからの合図にアルは機体にしがみついている藍鷹騎士団員に一声かけるとパッチワーク・アラーニェの足をフル稼働させて森林地帯へと侵入する。バキバキと細い木をなぎ倒しながらも二足歩行ではてこずる不整地を難なく踏破し、いったん足を止めたパッチワーク・アラーニェは左手に装備していたサジタリウスを地面に置いた。

 

「これよりドレイクへ挨拶を行います。周辺警戒と撤退準備諸々をお願いします」

 

 アルの声に機体に取り付いていた藍鷹騎士団員が無言で散開した。数人が周囲の見張りをするために姿を消し、数人が数枚の銀板と銀線神経(シルバーナーヴ)を地面に埋めながら森林の奥のほうに姿を消す。

 彼らの準備を横目にアルはサブアームで掴んでいるグスタフ用の砲身を基部と合体させ、空いたサブアームにサジタリウスを掴ませてから操縦席のボタンを弄る。

 

「砲身を両腕と両足、そして根性で固定。魔力伝達経路をグスタフへ変更。スコープ展開」

 

 グスタフの基部から伸びる銀線神経(シルバーナーヴ)をパッチワーク・アラーニェは頭部に接続。そして基部と砲身を両腕でしっかりと保持し、アルも砲身が暴れないように操縦桿をしっかりと握る。次に機体が最低限行動できる程度の魔力を残し、他の全ての魔力をグスタフの基部に備え付けてある板状結晶筋肉(クリスタルプレート)に送ると、パッチワーク・アラーニェは四つある脚部の先から金属製の杭を地面に突き立てて機体を完全に固定する。最後に頭部にあるスコープを展開し、(ドレイク)へ向かってグスタフを構えると、スコープが読み取った映像が操縦席の幻像投影機(ホロモニター)へ映し出される。

 

「うへぇ、あれはもう魔獣ですね」

 

 左右の大きな翼に長大な尾、そして全てを食いちぎらんと誇示するような大きな口はまさしくフレメヴィーラで見かけるような魔獣の類だった。しかしその時、先ほど見た大きな口が開かれると中から牙のように敷き詰められた魔導兵装(シルエットアームズ)が顔を覗かせた。

 

「まずっ!」

 

 アルがそう言っている間にも既に発射形態へ移行した(ドレイク)はその口から真っ赤な火炎を城塞都市に向かって放つ。ほとんどが石造りの城塞都市は地上からの法撃には多少の防御力はあっても空からの法撃には全くの無力。むしろ堅牢な壁は炎の逃げ道を塞ぎ、城塞都市全てに満遍なく炎を行き渡される手助けをしてしまった。

 あっという間に城塞都市が陥落したことにその様子を見ていたアルだったが、素早くグスタフを構えなおすと(ドレイク)との距離に舌打ちをする。

 

 グスタフはミシリエの時とは違ってパッチワーク・アラーニェ1機でぎりぎり運用できるように切り詰めてある。そのせいで火力と法弾自体の速度が犠牲になり、その速度は炎の槍(カルバリン)よりも少し速い程度まで遅くなっている。その状態で遠距離から当てるには相手の動く先を狙うか、相手が止まった所を狙うのが最上なのだが、現在の状態だと当てる前に感づかれる可能性が出てくる。

 

(せめてもう少し……近ければ)

 

 アルがそんなことを考えているとその願いは最悪の形で叶えられることになった。

 城塞都市を覆う壁の一部が突如崩れ、中から幻晶騎士(シルエットナイト)や人間が散り散りになりながら逃げ出してきたのだ。生き残った人間が居たことにアルは安堵の表情を浮かべるが、その奥から件の(ドレイク)が旋回しながら巨大な爪を展開すると撤退する部隊に向けて降下を始めた。

 

「やらせるか!」

 

 そう言いながらアルはボタンを押し込んだ。魔法術式(スクリプト)を受け取ったグスタフの基部は備え付けてある板状結晶筋肉(クリスタルプレート)からの魔力が砲身へと送り、砲身内の紋章術式(エンブレム・グラフ)に従って巨大な炎弾を形成すると空に向かって放つ。炎弾は少しだけゆっくりとした速度で(ドレイク)に向かって直進し、別の方向から放たれた轟炎の槍を避けた(ドレイク)の爪に着弾すると大爆発を起こした。

 

「イカルガ!」

 

 戦術級魔法(オーバード・スペル)にしては度を越した威力の轟炎の槍が放たれた出所を叫んだアルは法弾による損害を確認しようとせずにすっかり焼け付いた砲身を基部から外して地面に投棄する。固定していた杭も足に戻して藍鷹騎士団員を招集すると、パッチワーク・アラーニェはこの場から素早く離れるために偵察してもらっていた藍鷹騎士団員に誘導されながら森林地帯をさらに突き進んだ。

 

 狙撃を行った際、いつまでもその場にとどまると射点を特定した兵士や空爆によって袋叩きにあう。そのことをゲームで嫌と言うほど学んでいたアルは射撃地点からかなり離れた所でいったん止まると、サジタリウスを構えながら相手の出方を伺う。案の定、損害を被ったからか(ドレイク)はイカルガの相手をしながらも法弾で先ほどまで居た地点へ法撃をばら撒いていた。距離があるためにほとんどの法弾はエーテルに還っていくが、数十発の法弾は地上に着弾して地面を激しく叩く。

 

「今です!」

 

 その時、アルが叫んだ。すかさず近場で待機していた数人の藍鷹騎士団員は数人がかりで魔力を送ると先ほど細工を行った地点からズドンという腹に響くほどの爆音が轟いた。

 

「数枚の銀板の内、1枚しか反応しませんでした!」

 

「十分です! これからしばらく待ちになります! 隠蔽工作の準備をお願いします」

 

「了解」

 

 これで残骸を確認しない限り、狙撃を行っていた何者かは排除したと相手に誤認させることが出来るだろうと考えたアルは、(ドレイク)に対しての情報収集を始めるために藍鷹騎士団員に隠蔽工作の指示をする。指示を聞いた団員は数人がかりでパッチワーク・アラーニェの腰に装着しておいた木の葉などが付いた深緑や茶色、黒などをまだら状にした大きなシートを取り出し、機体の頭から全身にかけてそのシートを被せて森林の景色と溶け込むように機体を隠蔽する。

 

「片方の爪は完全に粉砕。両方潰したいですが……兄さんの邪魔になりますね」

 

 空中で今も壮絶な戦いをしているイカルガを少しだけ幻像投影機(ホロモニター)に映すが、グスタフの残弾は残り1発。続けて放っても良いが、(ドレイク)が意外に速いので今は下手に撃って外れる。もしくはイカルガに誤射することもありえると考え、アルは本格的に偵察を行うためにリーコンを真上に伸ばして周囲と(ドレイク)を同時に観察する。

 

「うへぇ、シルエットナイトを埋め込んでるんですか。僕だったら機銃にするかなぁ」

 

 (ドレイク)の胴体に埋め込まれたティラントーを発見したアルは嫌そうな顔をする。アニメとかでは戦艦に埋め込まれていたり、戦艦と共闘して攻撃を行う機体なども存在するが、そのほとんどはいざという時は分離できる仕様となっている。しかし、現に(ドレイク)に埋め込まれているティラントーは分離する気配が一切なく、ただひたすらに法弾を放つためにパーツと化しているので、アルは『兄さんキレてそう』と今もなお空を鋭く飛翔するイカルガを呆然と見つめていた。

 

「アルフォンス様、撤退中の味方に追撃部隊が迫っています。現在は第2中隊が対応していますが、追撃部隊の中に手練の存在も確認しています」

 

「了解です。ここから狙うので、藍鷹騎士団員の方々はカウンターに備えて遠くまで退避を」

 

 藍鷹騎士団の報告にアルはリーコンとサジタリウスの向きを撤退途中の味方の方向へ移す。幻像投影機(ホロモニター)には追撃部隊と第2中隊が乱戦している状態が映っており、その乱戦の向こう側ではグゥエラリンデが機体の所々に剣を装備させた妙に動きの良い機体がと相対していた。

 

「まずは手練を潰す!」

 

 乱戦状態だと誤射の可能性が高くなるので、アルは戦闘能力が高い手練を潰そうと剣だらけの黒い機体の胸部装甲──操縦席に狙いを絞ってボタンを押しこんだ。サジタリウスから放たれる槍状の法弾は一直線に剣を大量に配した黒い機体に襲い掛かるが、寸でのところでその黒い機体が方向転換したことで法弾が機体の肩に配した剣に突き刺さった。

 

「剣であり、装甲ですか。っとぁ!?」

 

 狙撃が外れたことでいったん板状結晶筋肉(クリスタルプレート)を交換しようと操縦桿を動かしていたアルだったが、黒い機体が何かを蹴るような動作を幻像投影機(ホロモニター)で捉えた途端、ものすごい悪寒を背筋に感じた。まるで全力全開のイカルガと対峙した時の様な悪寒にアルは即座に射点を変更しようと移動を開始した途端。胴体に数本のショートソードが突き刺さった。

 

「追加装甲は正義ですね。あっぶねぇ……。ああいうのを動物的な勘とでも言うんですかね」

 

 幸いにも追加装甲が被害を肩代わりしてくれたおかげで機体自体に損害はないが、隠蔽を施したのに法撃の射点を割り出した目の良さ。否、野生の勘ともいうべき本能性と剣だけで遠距離もこなす腕前にアルはこのまま剣だらけの黒い機体への法撃を続けて良いものか悩む。

 パッチワーク・アラーニェは重装甲なので多少の攻撃ならば物ともしないが、先ほどよりも剣戟のスピードが上がっているのでディートリヒに誤射をしてしまう危険性が高くなる。そうなるとやはりディートリヒには目の前の敵に専念してもらい、撤退中の味方を助けるために乱戦の相手をした方が良いのではないかと考えたアルはサジタリウスをサブアームに接続し、機体重量を軽くするためにグスタフを手放したパッチワーク・アラーニェは四脚の根元に括りつけてあったナンブを両手に装備する。

 

「アルフォンス様。全員の撤退が完了しました。私もこれより撤退します」

 

「遠目で良いのでグスタフの御守りもお願いします。何かあれば例の信号弾を」

 

 そう言いながらアルは思いっきり鐙を踏み込んで森林地帯から躍り出る。そしてパッチワーク・アラーニェの脚部を折りたたんでから下部に取り付けてある魔導大気推進器(マギウスエアスラスタ)で機体を地面から数mほど浮かせると胴体に取り付けた推進用の魔導大気推進器(マギウスエアスラスタ)で地面を滑るように駆けた。

 

「っんだぁ!? あん化け物っ! お前の知り合いか? 双剣のぉっ!」

 

「ああ、そうだよ! 僕の知る中で1~2を争うほど頭がおかしくて同時に僕の目標の一つだよ!」

 

 地上をものすごい速度で滑る幻晶騎士(シルエットナイト)の常軌を逸している代物を戦闘中に遠目で確認した至る所に剣を張り付けた同じく幻晶騎士(シルエットナイト)が装備する武器の常識を逸している機体--『ソードマン』の騎操士(ナイトランナー)、『グスターボ・マルドネス』は剣を振り回しながら相対するディートリヒに問いかけた。その剣を受け止めつつ搭載されている魔導兵装(シルエットアームズ)、『風の刃(カマサ)』を放つディートリヒは、会話中にもかかわらず必殺のつもりで放った風の刃(カマサ)を躱されたことで残念そうに舌打ちをしながら今も爆走しているであろうパッチワーク・アラーニェの方を見ずに返答代わりに剣をソードマンに打ち付ける。

 その後、会話を続けながらもその剣の冴えは徐々に鋭く、苛烈になっていく。もはや彼らの間を何物も邪魔することは出来なかった。

 

***

 

「……ん? うわぁぁ! なんだあの化け物ぉ!」

 

「なんだありゃ! 来るんじゃねぇ!!」

 

 時を同じく、乱戦の現場に近づいたアルが待っていたものは法弾の雨だった。近づいてきた幻晶騎士(シルエットナイト)──見た目からして幻晶騎士(シルエットナイト)なのかすらも怪しい代物に半ば狂乱したような声を上げながらティラントー数機が法撃を行ってきたのだ。

 

「やっぱ俺達の認識は間違ってなかったぁっと!」

 

 だが、乱戦中によそ見をしていた者がどうなるか。近くに居た第2中隊のカルディトーレの銀の鋲が打たれた拳の右ストレートが炸裂する。鋲に刻まれた外装硬化(ハードスキン)紋章術式(エンブレム・グラフ)によってティラントーの顔面が破砕し、ティラントーの顔面を破砕するほどの衝撃によって騎操士(ナイトランナー)は昏倒したのか、足元がおぼつかなくなったティラントーは力無く倒れる。

 

「うっしゃあ次ぃ! ってありゃ……副ダンチョ」

 

 両拳を激しく打ち鳴らしながら気合を新たにした中隊員が次の獲物を叩きのめすために振り返ると、そこには四脚を器用に用いてティラントーの四肢を拘束しながら押し倒しているパッチワーク・アラーニェの姿があった。拘束されているティラントーからは『やめろ』や『食われる』といった弱音が漏れているが、パッチワーク・アラーニェの右手に装備したナンブの銃口は迷いなくティラントーの腹部に添えられた。

 

 数十発の細かい炎弾がティラントーの装甲を叩き、やがて耐えきれなくなった外装が砕けると腹部に納められてある魔力転換炉(エーテルリアクタ)に直撃する。魔力転換炉(エーテルリアクタ)はミスリル製なので壊れることはないが、周辺の吸排気を行う装置は別である。法撃を続ける内に次第に魔力転換炉(エーテルリアクタ)からの吸気音は途絶え、ティラントーの面覆い(バイザー)から光が消えると、パッチワーク・アラーニェはやっとティラントーから降りて先ほど声をかけてきた中隊員と合流する。ところで横合いからハンマーを構えたティラントーの奇襲を受ける。

 

「潰れろ! 化け物!」

 

「化け物じゃないですって!」

 

 袈裟斬りのように斜め上から繰り出されるハンマーを前に、アルは文句を言いながらもパッチワーク・アラーニェの両手に構えていた2丁のナンブをティラントーの頭部に向けて投擲する。ゆったりとした速度で放り投げられたそれをティラントーの騎操士(ナイトランナー)は危険物か判断するために数瞬ほど目で追いかけるが、危険物ではないことを知ると再び目の前のパッチワーク・アラーニェに狙いをつける。しかし、その時にはもう先ほどまで叩き潰そうとしていた対象は目の前から消え失せていた。

 

「なん……グエェ!」

 

 どこに消えたのかティラントーの首を回して確認しようとした矢先、騎操士(ナイトランナー)に操縦席全体が揺れるほどの衝撃が走る。もはやパッチワーク・アラーニェのことを気にするよりも先に機体状況を把握するのが先決だと考えた騎操士(ナイトランナー)魔力貯蓄量(マナ・プール)が急速に減っていることに気付く。そして、ティラントーの首を下に向けると、自身のティラントーの腹部に突き刺さった銀色の杭が幻像投影機(ホロモニター)に浮かんでいた。

 

「やるなぁ。副ダンチョ」

 

 やがて魔力貯蓄量(マナ・プール)が一定値を切ったのか、膝立ちしながら機能を停止するティラントーを見やりながら先ほどまで相手を殴り倒していた第2中隊員が呟いた。

 先ほどのパッチワーク・アラーニェの動きを言葉にしてみればなんてことはない。ナンブを相手に放り投げたパッチワーク・アラーニェはホバー移動時に使用する推進用の魔導大気推進器(マギウスエアスラスタ)を用いて一瞬のうちに相手の懐に飛び込んだのだ。そして、相手の腹部に右手を添えると前腕部の装甲から先端が尖っている銀製の筒棒が勢いよく射出され、ティラントーの腹部に深く突き刺さる。その衝撃は魔力転換炉(エーテルリアクタ)こそ破壊できなかったものの、ティラントーの腹部に収まっていた魔力転換炉(エーテルリアクタ)をさらに奥に押し込む形となり、慎重に配されたであろう吸気口や魔力をティラントー全体に行き渡らせるのに必要な銀線神経(シルバーナーヴ)といった部品関係を損壊させる結果となった。

 そうして、満足に魔力が生成出来ない状態になったティラントーは魔力切れというなんとも締まらない結果を迎えて地に伏したのである。

 言葉にしてみれば簡単だが、一歩間違うと返り討ちにあっていたほどの危険行為である。いつもは『安全な所から殲滅したい』や『皆で安全に幸せになろうよ』と日和見がちなアルだが、近接戦闘への覚悟は魔獣蠢くフレメヴィーラ王国の騎士なんだということを見せ付けられた第2中隊員は周りの状況を見ながらすぐさまパッチワーク・アラーニェのカバーに入る。

 

「副ダンチョ! 下がるぞ! 味方もだんだん撤退してる!」

 

「了解!」

 

「ディータイチョはどうすっかなぁ」

 

 魔導大気推進器(マギウスエアスラスタ)を使う際に生じる甲高い音を聞きながら第2中隊員が唸りながら幻像投影機(ホロモニター)を見る。その視線の先には今もハイレベルな剣戟を繰り広げる2機の幻晶騎士(シルエットナイト)の姿があった。その内に1機は間違いなく自分の所属する中隊の隊長なのだが、味方が撤退しだした今、自分達がこのまま下がると隊長であるディートリヒは間違いなく孤立することは安易に想像ができる。

 しかし、このまま踏みとどまってもいつまでも横をすり抜けられないという確証はないので、押さえ込めている今こそが撤退のチャンスだとも中隊員達は考えていた。

 

「だけど、俺達が束でかかっても秒も持たなさそうだなぁ」

 

「同感」

 

 いつもは我先に突っ込む脳筋達も二の足を踏む。

 本当ならば乱暴な援護してでもディートリヒと共に撤退しなければならないが、彼らの剣戟はもはや外野が簡単に手出しできるレベルを遥かに超えており、どのように手を出して良いものか第2中隊には分からなかった。その間にもティラントーが再び攻勢をかけてきたので、第2中隊はひとまずはそれを押し返そうとそれぞれが武器を構える。

 だが、そのティラントーの集団の内の1機に炎の槍が飛来した。その不運なティラントーは砲撃によって片足が膝から先を消失し、そのままバランスを崩して転倒する。隣に居たティラントーが味方が転倒したことに気付いて首を横に向けていると今度はそのティラントーの頭部が吹き飛んだ。

 

「距離がある法撃戦ならこっちが有利ですよ」

 

 いつの間にか遠方──撤退する味方の最後尾まで引いていたアルが幻像投影機(ホロモニター)に映し出されたティラントーの集団と空中で何かを撒き散らした(ドレイク)を交互に見ながら呟く。

 第2中隊が敵を押し留めてくれたおかげで撤退も滞りなく進んでいる。後はディートリヒと戦う手練れと(ドレイク)が撤退を決めてくれれば良いのだが、両者ともまだまだ余裕があるのか引く気配は微塵もなかった。

 

「最新の情報が欲しいですね」

 

 突撃を仕掛けようとしたティラントーを都合4機ほど行動不能にしたからか先ほどのように力任せに突撃してくることは無くなったのでアルが改めて件の1機と1隻の様子を見るためにサジタリウスで前方の様子を見ながらリーコンを展開する。魔導演算機(マギウスエンジン)魔法術式(スクリプト)を少し変更し、幻像投影機(ホロモニター)に両方の景色を投影すると、アルは(ドレイク)と手練れ両方の戦況を観察を始めた。

 

「うわ、めちゃくちゃしてる」

 

 リーコンから見える景色には、ツェンドリンブルからの魔導飛槍(ミッシレジャベリン)がよほど不愉快だったらしい(ドレイク)が降下し、その千載一遇のチャンスに複数の銃装剣(ソーデッドカノン)から十では利かないほどの轟炎の槍(ファルコネット)を放つイカルガの姿が見えた。その無尽蔵な魔力に物を言わせた戦い方に『騎士様の戦い方じゃない』とまるで自分の機体や戦い方が騎士の戦い方をしているかのような言葉を呟く。

 もし、これをエドガー辺りが聞いたら無言で首を横に振り、イサドラが聞いたら『あなたもね』という言葉のナイフがアルの心臓に突き立てられること請け合いである。

 

「あっちは大丈夫ですね。ですが……あの黒い機体、かなり速くなってませんかね」

 

 再び空に舞い上がった(ドレイク)とイカルガにグスタフがなければ援護は不可能と断定したアルはディートリヒの戦いを注視する。しかし、先ほどまでの剣戟はすっかり鳴りを潜め、現在行われているのはソードマンからの一方的な攻撃であった。剣圧が増し、今までよりも一層縦横無尽に振るわれる剣はまるで剣自体が生きていると錯覚するかのような攻撃にディートリヒはまともに打ち合うことも叶わず、グゥエラリンデの外装から剣が打ち付けられることで生じる火花が舞っていた。

 グゥエラリンデが近接格闘に特化している性能ゆえに今だ動き続けてはいるが、このまま何もしなければグゥエラリンデに致命の一撃が入るのは明白である。

 

「ディーさん!」

 

 グゥエラリンデが防戦によって動きを止めたので、意を決したようにアルはサジタリウスを放つ。その炎の槍はソードマンを穿たんと突き進むが、法撃に気付いたソードマンは真後ろに飛んで法撃を回避しながら空中で剣を法撃の出所──パッチワーク・アラーニェに向けて投げつけた。本来ならば幻晶騎士(シルエットナイト)の膂力では決して届くことはない距離への攻撃だが、どういった手品なのかその剣は途中で地に落ちることなく回転しながら矢のような速さでパッチワーク・アラーニェに迫ってくる。

 

「んなろ!」

 

 何かあった時のために撤退する味方の近くで援護をしていたアルは、苦虫を噛み潰したかのような表情で少しでも機体への損傷を防ぐためにサジタリウスを前に突き出した。サジタリウスの銃身は切断されたが、剣はパッチワーク・アラーニェの装甲を軽く叩いた後に地面に転がる。今まで苦楽を共にしながらも改造してきた武器の喪失にアルは『やったな!』と怒り狂いながら足に括りつけていた最後のナンブを両手にソードマンへ突っ込んでいく。

 

「アルフォンス! こいつの相手は任せたまえ!」

 

 そんな時、グゥエラリンデの拡声器から大声が放たれた。それによって急停止したパッチワーク・アラーニェにソードマンから剣が放たれるが、グゥエラリンデが肩の魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)を用いて素早くパッチワーク・アラーニェの前に立ちはだかると投擲された剣を半ば折れている剣ではじいた。

 

「私は……まだ負けていない! もうあの時の私ではない! だから──」

 

 心に灯った『戦意』とも『凶暴性』とも言える感情を口の中で貯めながらディートリヒは正面の相手を見据える。その意思と魔法術式(スクリプト)を受け取ったグゥエラリンデは徹底抗戦の構えをとりながら騎操士(ナイトランナー)の声を外部へと出力した。

 

「第2中隊! 何時もどおり敵を打ち倒せ! 私はまだ前を進んでいるぞ! 着いて来い!」

 

 その号令とそれに呼応する中隊員の鬨の声を背にグゥエラリンデは再びソードマンに突撃した。今までの防御よりの姿勢ではなく、相手を打ち崩さんとする攻撃的な動きにソードマンからグスターボの楽しげな声が漏れる。

 

「ははっ! やっぱお前は面白れぇよ双剣のぉっ! だがよぉ、俺っちとソードマンの方がつぇぇんだよ!」

 

 先ほどまでの焼き直しのような剣戟が続き、次第にグゥエラリンデの武装である2本の剣も使い物にならなくなってくる。それでも前に進みながら突っ込む姿にアルは咄嗟に援護をしようとするが、直前にディートリヒが叫んだ『意思』に森林地帯へ向かって転進した。

 倒せる敵は援護してでも倒す。この選択は間違っているかもしれない。だが、ここで援護をして仮に相手を打ち倒してもディートリヒの心は間違いなく銀鳳騎士団から離れてしまうだろう。

 

(意地を通してください。ディーさん)

 

 あの時──銀鳳騎士団の任命式でディートリヒが口にした誓いを思い出しながらアルは森林部へ駆け込むと、藍鷹騎士団の誘導に従って放り投げていたグスタフを手に取った。再び空を目をやると何故か急上昇を開始した(ドレイク)とそれに追随するイカルガの姿を捉え、(ドレイク)の無防備な姿にアルはニヤリと笑った。

 

「せっかく遊びに来たんです。お土産も持っていってくださいよ」

 

 そう言いながら手早く機体の魔力経路を弄くったアル。

 魔力も十分貯まり、狙いも上々。惜しむらくは射程が些か心もとなかったが、そのまま撃たないよりはましと判断したアルは全ての確認が終わるとボタンを押し込んだ。グスタフの砲身の先端からイカルガの轟炎の槍(ファルコネット)よりも強力な炎弾が再び顕現し、上空へ上がる(ドレイク)に襲い掛からんと一直線に進む。

 流石に法弾の大きさが大きさなので、監視員に気付かれたのか(ドレイク)の周囲から先ほどから幾度と轟炎の槍(ファルコネット)を防ぎ切った雷の網ともいえる魔法現象が(ドレイク)に埋め込まれたティラントーから投射されるが、グスタフから放たれた法弾はその雷の網を食い破りながら直進し、(ドレイク)の胴体に爆炎の華を咲かせた。

 

「ははははっ! 流石僕の直掩機です!」

 

 思いがけぬ援護にエルは上機嫌になりながらも射程距離が足りなかったせいか胴体を黒く焦がすのみだった(ドレイク)を追うためにイカルガは雲の中を突き進む。

 

「おのれ! 鬼神ならず別の難敵が……法撃の恨み忘れぬぞ!」

 

 そして、(ドレイク)──ジャロウデク王国全ての飛空船(レビテートシップ)の親である『オラシオ・コジャーソ』が心血を注いで作り出した純戦闘型飛空船(レビテートシップ)、『ヴィーヴィル』の艦橋では先ほどの法撃の主を忌々しげに呟くドロテオが居たのだが、それは地上でグスタフの砲身を丁寧に取り外して撤収準備に入っているアルには聞こえるはずもなかった。

 いつの間にか戻ってきたアディのツェンドリンブルがグゥエラリンデを引き回しているので、地上の決着がついたと確信したアルは藍鷹騎士団の面々を機体に乗せるとホバーで一気にツェンドリンブルまで近づいて併走を行う。

 

「ディーさん生きてます?」

 

「今、グゥエラリンデが死にかけだよ。アディ! 親方に引き摺られたって言っておくよ!」

 

 ガリガリという嫌な音を操縦席で聞きながら『功労者に対して酷い後輩だよ』とぼやくディートリヒ。その横でアルはご立腹であろうディートリヒを宥めながらもパッチワーク・アラーニェの拳をグゥエラリンデの真横まで動かした。

 

「なんにせよ。意地は突き通せましたか?」

 

「ああ、感謝するよ。副団長。……だが? 私がやられるとは思わなかったのかい?」

 

「その時はグスタフをティラントーの集団に撃って、皆でたこ殴りにしようかと」

 

 アルが機体の拳を差し出してきたことの意図を察したディートリヒはまだ動く片腕で握りこぶしを作るとパッチワーク・アラーニェの拳とぶつける。その時、アルから仮に自身がやられた時のサブプランを聞かされたが、どう考えてもあの剣をたくさん身に着けた『自分とは違う意味での馬鹿』が大人しく撤退する絵が想像できなかったディートリヒは、『自分が相手をして良かった』と心から安堵するのだった。

 

***

 

 (ドレイク)の存在によって戦いのアドバンテージは再びジャロウデク王国よりに傾いた。それに加え、エルとイカルガという『鬼神』という二つ名を付けられたエースオブエースが(ドレイク)相手に痛み分けで終わったという情報に、新生クシェペルカの将兵の間ではこの戦いの行く末について不安が広がっていた。

 

「まずはアル。マギウスエアスラスタの改造案で助かりました」

 

「なんのことです?」

 

 (ドレイク)退治から帰った数日後、エルとアルはお馴染みの会議を行っていた。話題はもちろん数日前に相対した(ドレイク)のことなのだが、その前にエルは頭を下げる。

 なんでも、(ドレイク)と相対している最中に(ドレイク)から煙幕のような法弾が飛んできたらしく、戦っている最中は何も異常がないように見えたので戦闘を続行していたらしい。しかし、帰ってからダーヴィドの入念な整備の結果、魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)内部の金属に夥しい量の傷がついていることが確認されたとエルが報告した。

 

「金属片や硝石を混ぜ込んでいたらしく、おそらくマギウスジェットスラスタの破壊が目的だったのかと」

 

「あー、石を取り込んで失敗した時のあれですね」

 

 ここまで説明されるとようやくアルも合点がいったかのように手を叩く。過去にパッチワークが魔導大気推進器(マギウスエアスラスタ)内部に石を取り込んだ結果、紋章術式(エンブレム・グラフ)が破壊されたことがあった。その改修として紋章術式(エンブレム・グラフ)を覆うように別の金属の板で挟みこみ、安易に紋章術式(エンブレム・グラフ)が削られることを防ぐようにしたのだが、どうやらイカルガの魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)にも同じような改修をしれっと取り込んだらしい。改修を別の物に取り入れる横展開は作品のクォリティを上げるので喜ばしいことだが、それを抜きにしても一言ぐらいは言っておいて欲しいと思ったアルは『特許取ってれば良かった』とふざけ半分で言うと当初の予定であった(ドレイク)の話題に入った。

 

「エーテルリアクタの複数使用が妥当ですね」

 

「ええ、あれほどの巨体を動かすとなると魔獣の居ない西方で運用するにはそれぐらいしかないかと」

 

 

 まずは軽いジャブとしてあの(ドレイク)幻晶騎士(シルエットナイト)を埋め込んで近接防御を行っていることについてそれぞれが考察を出したが、両者共に『幻晶騎士(シルエットナイト)魔力転換炉(エーテルリアクタ)(ドレイク)の中で直結させている』という考察に2人揃って『やっぱりかぁ』というなんともいえない表情をする。

 

「僕は大きなエーテルリアクタを作るって考察もあったんですが、あんだけ大量のティラントーが並べられてたらそっちに察しがつきましたね」

 

「あー、詳しいことはいえませんが特注のエーテルリアクタをここで作るのは割と難易度高いんですよ」

 

「へー、ジャロウデクみたいな大国でも?」

 

「大国でも厳しいでしょうね」

 

 アルの疑問にエルは指を顎に当てながら答える。魔力転換炉(エーテルリアクタ)皇之心臓(ベヘモスハート)級の特注となると魔獣の触媒結晶が必要である。それを手に入れるためには魔獣と連日連夜どったんばったん大騒ぎする魔境、『フレメヴィーラちほー』に赴かねばならないのに加え、師団級や大隊級といった魔獣では少なくとも1騎士団が出張ってくるので、それを横から掠め取るのは並の諜報員には不可能だろう。

 そうなると後はもう金で購入するしかないのだが、魔力転換炉(エーテルリアクタ)の製法をそこらの鍛冶師が知っているわけがないし、仮に知っていたとしてもそんな大物の触媒結晶を買えるような金銭をポンと出すなら先ほど述べたように魔力転換炉(エーテルリアクタ)を複数つなげたほうが安上がりである。

 

「でも、複数繋げて大きくするだけって大鑑巨砲主義みたいですよね」

 

「僕の生きる時代にアレは必要ないですよ。あんな……シルエットナイトを部品にするような代物は」

 

 アルの言葉に一瞬だけ身の毛がよだつような真顔になったエルが言葉をかける。(ドレイク)を許容し、あまつさえクシェペルカが再び滅んでしまえば世論はどうなるか。おそらく、『魔力転換炉(エーテルリアクタ)を積めるだけ積んで、魔力盛り盛りにした超巨大飛空船(レビテートシップ)使えば優位に立てる』という構想がそこかしこから出てくるだろうし、それによって幻晶騎士(シルエットナイト)が淘汰されるのも時間に問題になってくる。

 もちろん、すぐさまそうなるとは思わないが『そんな可能性がある』という事実が許せないのか、エルは僅かに笑いながら『アレを潰します』と静かに宣言した。

 

「兄さん。マ○ロスは?」

 

「あれは変形するし……。それぞれの形態で強みがあるからセーフですよ。あれがもし人型に変形するなら鹵獲一直線でしたけどね」

 

 一度命を無くしてもなお激しく燃え上がるロボット魂とそれにより発露された無茶振りを通り越した物言いにアルはもう一度、(ドレイク)に対しての対策をエルと話し合うのだった。




パッチワーク・アラーニェの秘密
 ・腕部の謎
  銀製の筒棒はパイルバンカーではなく、筒棒を遠くへ投射する所謂『腕部グレネード』枠。
  ラーフフィストの術式を転用し、相手に筒棒を飛ばして突き刺した後に魔力を流し込めば爆発させることが可能(今回は爆発させると自機まで被害が出るので断念)
  
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