銀鳳の副団長   作:マジックテープ財布

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大西域戦争編_終章
幕間(僕らの親征前夜)


 エルとアルを伴ったエムリスが会議室に到着すると部屋中が重苦しい雰囲気に包まれていた。彼らの姿を見た貴族達はそれぞれエムリスやエルをまるで救い主を目の当たりにしたかのような目と歓迎するかのような口ぶりで会議室の椅子まで招くが、アルは扉の前で放置された。

 

(そーいえば、エムリス殿下の小姓として色んな所回ってたんだっけかなぁ)

 

 貴族と会う際、アルは必ずと言っていいほどエレオノーラやイサドラ、エムリスと行動を共にしていたので、貴族はアルが銀鳳商騎士団の副団長であることを知らない。いや、今の状況があまりにも逼迫していることからそれに気付く余裕すらないのだろうとアルは会議室のどこに突っ立ってようかと思案していたところ、エムリスがハンドサインでエレオノーラの近くにいるように指示される。用意された椅子もないので、アルはそれに従って『失礼します』とエレオノーラの傍まで近づいて突っ立っていると、怒鳴り声が上がる。

 

「!? 貴様、無礼であろう!」

 

「いえ、この方はエムリス様よりお貸しいただいた戦略に知見がある方です」

 

 エレオノーラからの言葉にアルは『グンシチガウ グンシチガウ』と口から紙を吐き出すロボのような否定をしそうになったが、その否定をぐっと押さえ込みながら疑惑の視線でエレオノーラを見る。ただ、その視線に気付いたのかエレオノーラが静かに手招きをし、アルの耳に口を近づけると、『いきなりですみません』と謝罪の言葉がアルの耳を響かせた。

 

「私は軍事について疎いので……他の方々が何を言っているのか助け舟を出してくださいませんか?」

 

「御意」

 

 エレオノーラからのお願いを無碍には出来ないとアルは小さく了承しながら貴族達の言葉に耳を傾ける。

 貴族達が言うには、(ドレイク)を中心とした小規模なティラントーを搭載した数隻の飛空船(レビテートシップ)で構成された強襲部隊が拠点のみを落とす戦術を取っているらしく、その話を聞いたエムリスも『最低限の武力で機動力を上げてきたか』と忌々しげに呟きながら椅子に踏ん反り返っていた。

 

「では、なぜやつらはここを狙ってこない? 申し訳ないが、ここを落とせば我等は窮地に立たされる。なぜだ?」

 

(兄さんがドレイクと戦えるからだろ。うちらをただの傭兵だと思ってんなこいつら)

 

 唐突な疑問が会議室に響くが、その疑問に対する回答を持ち合わせている貴族は居なかったのか、会議室はシンと静まり返る。その有様にアルは、クシェペルカ貴族にとって銀鳳商騎士団を対等な取引相手ではなく、強い武力を持つ傭兵と思っているのだろうと少しだけむっとしていると、先ほどの疑問に珍しくエレオノーラが回答した。

 

「エルネスティ様を恐れているのです。エルネスティ様は単騎でかのドレイクと戦うことが出来るお方です。そこに我らの兵や銀鳳商騎士団の方々が居れば恐らく……」

 

「厳しい戦いになるでしょうが、勝率は上がります。さらに言えば、我が方にはアルフォンスという長距離法撃と指揮のエキスパートが居ます」

 

(誰かあの口を塞いで欲しい。アディ! アディィ!)

 

 エレオノーラの言葉に乗っかるようにペラペラとセールストークを爆発させるエルに表情こそ無表情で聞いていたが、内心アルは必死に羞恥心に耐えていた。

 そして、案の定エルのセールストークに俄然やる気になったクシェペルカ貴族達が『全戦力を持って(ドレイク)を落とそう』という案が出されるが、エルはその案に『そうなると国境沿いのティラントーが攻めてきます』と冷や水を差す。

 

 ジャロウデクは(ドレイク)も強敵だが、同時にティラントーも油断も無視もできない強敵である。ミシリエの戦いでその数を減らしたが、未だ国境付近を陣取っている彼らをレーヴァンティア抜きで対抗するのは剣も持たずに魔獣と戦うようなものだろう。どちらの対応もしなければならないと言う非常に困難な案件に、マルティナはエルに向かって口を開いた。

 

「両方の備えをするにはやはり、ドレイクに銀鳳商騎士団をぶつけるしかないかと思いますが……」

 

「二度と不覚を取る気はありません。ですが、手の内を知っても厳しい戦いになるかと思います。せめてこちらの船が完成していればもう少し勝機を高めることが出来ますが、もう少し時が必要となります」

 

 ジルバヴェールは魔導演算機(マギウスエンジン)魔力転換炉(エーテルリアクタ)といった最低限戦いが出来るまでは組みあがっているが、外装や武装といった細々した改修や艤装は未だ未完成であった。ダーヴィドを中心になんとか急いではいるが、ジルバヴェールの他にパッチワーク・アラーニェの改修も加わっているのでこの瞬間に出撃が可能かと問われれば即座に『ムリです』と言えるような状態である。

 

「アルフォンス様。今の話を総括していただけませんか?」

 

「そうですね。ドレイクを相手にするにも私達の船の準備が整っていない。ただ、準備を待っている間に国境付近の城塞がドレイクにやられてしまう。全戦力を持ってドレイクを相手にしてもその間に領内をティラントーに荒らされる。……でしょうかね」

 

「ありがとうございます。ならば……デルヴァンクールを目指しましょう」

 

 エレオノーラの言葉に会議室がざわめく。軍事に疎い彼女が放った突然の王都奪還宣言に貴族が口々に『危険な賭け』や『誰がフォンタニエを守るのか』と問いかけるが、エレオノーラはその言葉の群れに決して俯かずに前をしっかりと見据えていた。

 

「アルフォンス様。フォンタニエを守らなければならない理由はなんでしょうか?」

 

「エレオノーラ様がいらっしゃるからですね。ジャロウデクからすればエレオノーラ様はこの戦の主導者なので、我らが進軍する間に確保される危険性があるためです」

 

「ならばそれを打開するにはどうすれば良いでしょうか?」

 

「1つは誰にも知られずにエレオノーラ様の身を隠すこと。具体的にいえばフレメヴィーラ辺りに亡命されることですかね? まぁこれは逃げると同義なので、現場の騎士からの信頼を失う行動となりますね」

 

 エレオノーラの質問にアルは淡々と答える。アルが考えた1つ目の打開策は兵達がデルヴァンクールを奪還している間、エレオノーラや王族には敵の手が比較的回らない東の秘境であるフレメヴィーラ王国に亡命してもらうことである。たしかにそれならばフォンタニエが落とされても王族が生きているので、ほとぼりが冷めた頃に国へ戻ることが出来る。

 

 ただ、それでは仮にフォンタニエが落ちたとすると兵はデルヴァンクールからフォンタニエを奪還することになるので、そこでまたデルヴァンクールが落とされるといったイタチごっこ。最悪、消耗戦になりやすい。そして、ようやくジャロウデクを追い出してエレオノーラがのこのこと帰ってきたとしても、『逃げてただけ』や『なんのために戦っていたのか』という考えが生まれやすいので、エレオノーラへの忠誠心はマイナスになってしまうだろう。

 その打開案を悪びれもせずに言ったアルに貴族達は顔を真っ赤にしながら怒るが、エレオノーラは反対にクスクスと笑っていた。

 

「策をいくつか提案する場合、アルフォンス様は最初に最悪を提案する癖がある。やっぱり皆様が仰った通りですね」

 

「誰が言ったのか後で教えてください。……いえ、いいです。目星は付けているので、捕らえてから幼馴染に銀貨30枚程で売却します」

 

 今は会議中のためか、アルは無表情で一点──吹けていない口笛を吹こうと口を尖らせているエルを見つめると、空気を変えるために咳払いをしながら『エレオノーラ様の御心に既に存在している策かもしれませんが』と前口上を伝える。

 

「エレオノーラ様も共にデルヴァンクールまで向かうことです。これによりジャロウデクは全ての戦力をこちらに向けるでしょう」

 

「ドレイクもその例外ではないと?」

 

 アルは黙って頷く。

 『親征』と呼ばれるそれは、端的に言えば国王騎が自ら軍の指揮を取る行動である。国王騎、つまりエレオノーラが戦場に居るからこそ兵の士気も上がり、フォンタニエでエレオノーラを守護する必要がないので全戦力が投入できるという多大なるメリットがある。

 しかし、裏を返せば『国王騎が討たれたら全てが終わってしまう捨て身の攻撃』でもあるのだが、提案したアルの目には軍事に疎いと思っていたエレオノーラもアルと同じような考えをしているように思えて仕方なかったのだ。

 

「それでは、アルフォンス様はそれが最善だと?」

 

「いえ、決めるのは陛下です。私は銀鳳商騎士団の一員。戦うための鉄の騎士は我々が調達しましょう。敵を打ち倒す杖も我々がお手伝いします。物資の輸送も……敵を打ち砕く剣も、御身を凶刃から守るための盾も我らの力をお貸しします」

 

 仰々しく周囲を見ながらアルはエレオノーラの前で跪く。数拍の間を置き、最後に『ですが、決めるのは貴女の御心です』と頭を垂れると、その言葉を待っていたかのようにエレオノーラは『旧王都であるデルヴァンクールを取り戻します』と宣言した。

 その宣言に貴族達は沸き立ち、即座に近衛騎士団に命令を伝達しようと会議室を後にする。そんな慌しい空気の中、いつまでも跪いていたアルにエルとエムリスは呆れ顔で近づいた。

 

「君は吸血鬼ですか?」

 

「この場面で使わずしてどこで使うんですか。それに、僕が言わなくてもエレオノーラ様も同じ考えだったと思うのですが?」

 

 扉が開け放たれたことでキッドのなんとも格好いい横顔に少しだけ頬を朱に染めていたエレオノーラにアルが何気なしに問いかけると、エレオノーラは先ほどの一幕を思い出して恥ずかしそうにしながら『何も分からない小娘を装った方が守りたくなるとお聞きしたので……』とまさかの計算だったことを明かした。

 

「たしかに! 先ほどのやり取りで一層貴族達は奮起するだろうな!」

 

「さて、陛下の御心は定まったので僕達は僕達の仕事をしましょうか。……なんでアルは僕を縛り付けてるのですか?」

 

「人の個人情報を流出したり、人を過度に持ち上げる不逞な輩を銀貨30枚で売ろうと思って」

 

 慣れた手つきでどこからか持ってきた麻縄でエルの胴体や両手の親指同士を縛るアル。ちなみに、縛り方は某騎士団の親父仕込なのだが、いつの間にか変な技術を習得してきたことと割とガチで抜け出せないことにエルは少しだけ声を上ずらせるが、アルは気にせずにエルを担ぐと部屋から元気に退出する。

 

「では皆さん。決戦ということなので、鍛冶師の皆さんは特に頑張って下さい。アディとキッドもジルバヴェールの皆の命を預かっているので、エーテルリアクタを見張るだけと腐らずに頑張って下さい。……あ、アディ。後で銀貨30枚持ってきてくれればこれ好きにして良いですよ」

 

 指示を出すついでにアディに向かって雁字搦めにしたエルを手渡したアルはそのまま銀鳳商騎士団と別れて城の中を進む。その後ろで『鬼! 悪魔! ユダ!』と悪口と思われる物を吐いているナマモノが居るのだが、それを気にせずにアルはズンズンととある一室。イサドラの私室へ足を運んだ。

 

「イサドラ様……あれ、居ない?」

 

「アル、こっち」

 

 ノックをしたのにイサドラが出ないことに不審に思ったアルだったが、唐突に隣──アルの私室の方からイサドラが出てきたことにアルは『自分の部屋があるでしょうが』と苦言を呈しながら自身の部屋へ入り込む。イサドラも『だってアルの部屋の方が面白いんだもの』と悪びれもせずに答えながら勝手知ったる様子で椅子に座ると『どうなったの?』と会議の様子を問いかけてきた。

 

「親征が決まりました……が、僕の目からすればエレオノーラ様はクシェペルカ貴族の方々を頼りにしているのか微妙ですね。ドレイク退治は譲歩しても決断に僕の意見を求めるのはやりすぎかと」

 

「そりゃぁ、私達を助けに来たのが銀鳳商騎士団だし。レトンマキ男爵よりも後に合流した高位貴族も居るからじゃない? それに、大きな声では言えないけど銀鳳商騎士団が貴族の人達から下に見られてるって噂もたってたから、ヘレナもどうにかしようとしてたと思うわ。そんなに責めないであげて」

 

 イサドラの反論にアルは顎に指をつけて考え込む。たしかに、銀鳳商騎士団はエムリスを除けば騎士の集まりである。貴族達にとっていかに戦力があろうとも、その土地の出身ではない集団を自分達と同じ立場で見られず、結果的に軽く見てしまうのも十分に頷ける話だ。

 だが、貴族達を差し置いて銀鳳商騎士団に話を持ちかけるのは自分の治める領土の貴族を信用していないことにも繋がるので、今後を考えるならばどうにかしておきたいとアルは頭の中で思い浮かんだとある一計を投じてみることにした。

 

「イサドラ様。貴族の人や騎士団の人……大隊長や中隊長ぐらいまでかな? 口聞きできます?」

 

「え? そりゃお母様と一緒に行けば確実に会えるけど……どうするの?」

 

「もっとクシェペルカが結束できるように仕向けます。なぁに、こういった傍から見れば臭いものでも当事者になれば十分に酔えるものなんですよ」

 

 ニヤリと笑うアルに、『またいつもの悪巧みね』とイサドラは呆れながら頼まれごとをされて部屋を出て行く。

 その数日後、アルの下にはイサドラやマルティナ経由でフォンタニエに別宅を構える様々な貴族や騎操士(ナイトランナー)からそれぞれ『一輪の花』が贈られてきた。かなりの数が集まったそれをアルは1つの花束にすると、誰にも──主にエレオノーラやキッドに見つからないように城を出てとある営舎に向かった。

 

***

 

 エレオノーラがデルヴァンクールへ親征に向かうと宣言してから2週間。新生クシェペルカ王国の王都となったフォンタニエの周辺では、新生クシェペルカ王国所属の幻晶騎士(シルエットナイト)が続々と集結しつつあった。法撃特化型のレスヴァント・ヴィードや新生クシェペルカ王国の量産機の座についたレーヴァンティア。さらにそのレーヴァンティアに多種多様な追加装備(オプションワークス)を付けることで戦況に特化した専用機も集まり、その壮観たる様子と風の噂で聞いた近日行われる出立式の情報にフォンタニエの住人は大いに勇気付けられていた。

 

「見てー。出陣用の軽鎧仕立てたんだってー」

 

「おー」

 

 そんなフォンタニエを納める城の一室では得意げなアディの横で恥ずかしそうなエレオノーラと自信たっぷりな様子のイサドラが騎操士(ナイトランナー)用の軽鎧を纏っていた。その姿を見たキッドはいつもと違うエレオノーラの姿に少しだけ熱を浮かせたような表情をするが、アルは少しだけ面倒──もとい、『感想求められても、何を言えば良いんだろう』という表情でイサドラを見ていた。

 

(似合う? いや、もう一捻り要求してきそう。可愛い? 綺麗? 鎧にそれはないなぁ。格好良い……甲虫類の外骨格みたいで格好良い……これで行こう)

 

 それで喜ぶのはどこかの自然大好きな士官だけなのだが、アルは意を決して感想を強請るようにエムリスやアルの前でくるくると回るイサドラに声をかけようとした時。

 

「ああ、よく似合ってる。格好良いぜ!」

 

「キッド……もっと他に言うことあるでしょ」

 

(あっぶねぇ! サンキューキッド!)

 

 先にエレオノーラに声をかけたキッドがアディにツッコまれ、エレオノーラに苦笑されていた。その姿を見ることでアルが言おうとしていた言葉がこの場にそぐわないことだと確信し、再び何を言えば無難なのか脳内会議を始める。なお、その横でエムリスが『格好いいぞ。イサドラ』とイサドラの軽鎧姿を褒めているのだが、アルは脳内に居る全住民に決議を取っていたために聞いちゃいなかった。

 

 そして、ついに全員の視線がアルに集まり、アルが言う褒め言葉を今か今かと待つと言う羞恥プレイが始まる。全員に促され、改めてイサドラの軽鎧姿を見て『髪を後ろに纏めるのも邪魔にならなくて良いなぁ。後でイサドラ様にしてもらおう』と感想に全然関係ないことを考えていたアルは、ふと軽鎧について気になりだした。

 

(んー、似合う似合わない以前に金属なんだよなぁ。安全のために革鎧にすべきでは?)

 

 そんな考えが浮かんだアルは、まるで珍しい物を見たかのようにイサドラの軽鎧を凝視する。その行動と()()()()に部屋全体がざわめくが、アルは特に気にした様子もなく軽鎧の装甲部分をペタペタ触ったり、軽く叩きながら『うーん、硬いなぁ』と呟きながらイサドラに声をかけた。

 

「革鎧じゃないんですね。これだと衝撃が来た時に金属部に当たって怪我をするのでは?」

 

「……………………」

 

 イサドラが黙ってしまったことでアルの質問が不発に終わり、質問の声が小さかったのかと不安になったアルは装甲部分に触れていた手を離してイサドラの顔へと視線を向けた。

 

 ──さて、ここでアルとイサドラの身長差について話をしなければならない。

 エルと比較的……比較的! 似た背格好のアルに対し、イサドラは少しだけ身長が高い。その状態で軽鎧の装甲部分を確認しようとすればどこに視線が向くか。詳細は省くが、母性の象徴たる部分である。

 

 傍から見ればアルはその部分を凝視し、挙句の果てには『うーん、(金属だから)硬い』と言いながら軽く叩いたり不躾に触れたりしているのだ。これより先は言わずとも分かるだろう。

 完全武装ゆえに大幅に強化されたイサドラの拳により、アルは部屋から吹き飛ばされる。それを見ていた銀鳳商騎士団員達は『アルフォンスってたまにああいうポカやらかすよな。下心ないのに』と呆れ、エムリスは快活に笑うといういつもの光景が広がることとなった。

 

***

 

「アル、今回のはアルが全面的に悪いですよ」

 

「鎧に触っただけですよ。俺は悪くねぇ!」

 

 幻晶騎士(シルエットナイト)が集まったことで騒々しさが増した城下町をエルとアルが歩きながら駄弁っている。

 あの後、アルは『詰め物やベルトで固定しているので衝撃で怪我をすることはないし、そもそもクシェペルカの騎操士(ナイトランナー)は革鎧をあまり使用していない』とエレオノーラや軽鎧の着付けを行っていた女性騎操士(ナイトランナー)に説明されたので、渋々ながら謝罪したアルだったが『あそこまで怒らなくても』と未だに不満を吐き出しながら自室から持ってきた大き目のかばんをしっかりと持ちながら店や露天を物色していた。

 

「お母様、今日の夕飯はなんですか?」

 

「ツッコミどころが多いんで一つだけ。悪いな、俺は童貞なんだ」

 

 どこかで鈴が鳴る音が聞こえそうなセリフを吐きながらも豚肉の塊や卵と様々な物を購入し、肩にかけた大き目のかばんに詰め込んだアルは目的地である藍鷹騎士団の支部になっている酒場の前まで足を運んだ。その酒場には他の酒場にはあった雲が出来るほどの活気は既に失われ、とうに店じまいをしているだろう気配を感じながら扉を潜るとその気配を感じ取った数人の従業員がエルとアルの姿を見ると騎士が行う礼をしてくる。

 

「ご迷惑おかけします」

 

「いえ、騎士団長閣下と連絡要員のすり合わせをしなければいけなかったので。これが終わったらすぐに出立する予定です」

 

 礼を解いた男がニヤリと笑いながらエルをテーブルに招く。親征という大戦に備え、彼ら藍鷹騎士団は先んじて侵攻ルートの脅威を偵察するという任務に就く為に既に行動を開始していた。

 現在、エルと連絡要因について話をすり合わせている親父も国境付近を偵察するために話が終わったらすぐに出立しなければならないため、この酒場も本日を持って営業を停止しなければならない。そんな話を聞きつけたアルは、ちょうど良いと趣味に走るためにエルと共に転がり込んだのだ。

 

「んじゃ、厨房借りますよ」

 

「後片付けは親征に付いて行くやつに任せるから好きにしてくれ」

 

 親父からの許可を得たアルは意気揚々と台所に立つと持ってきたかばんの中を開け放つと、葉物野菜や厚さ1センチほどに切られた数枚の豚肉など料理で使用する材料やら器具を次々と台所に置き始める。

 最後に前世の一人暮らしの味方である『銅で作られた底が浅い長方形の鍋』を取り出したアルは、台所に元々あった鍋と取り出したばかりの長方形の鍋を竈の上に置くと調理を開始する。

 

 手始めにアルは細かく刻んだ豚の脂身と少量の水を鍋に入れてから弱火で熱することによってラードを作り、続けて数日前に焼いたのかすっかり固くなってしまったパンをおろし金で削って粗めのパン粉を作る。

 

「勝利のカツ……安直ですが、こっちでは薄いのしかないんですよね」

 

 アルは少し不満気にパンを力いっぱいおろし金に叩きつけながらこの世界ではどうしようもない文句を言う。

 ライヒアラやカンカネン、フォンタニエでもこういった揚げ物の屋台は両手で数えきれないほどあるが、どの店も薄めの肉を使っているので『とんかつ』という料理を知っているエルやアルには物足りなかった。なので、親征で相対するであろう強敵に『勝つ』という安直なゲン担ぎ、そして『自分が食べたいし、兄さんも食べたいはず』という暴論の結果、こうして藍鷹騎士団の酒場の厨房を貸してもらって作ってみようと画策したのだ。なお、頼まれた側も先だっての水中用幻晶騎士(シルエットナイト)の件で少し負い目を感じていたのか、二つ返事で了承している。

 

 『ファサッ』という効果音が付きそうなやけにスカしたポーズで豚肉にややきつめの塩コショウを塗し、小麦粉、卵液、パン粉の順番で豚肉を潜らせた後にパン粉を落ち着かせるために清潔な板の上に放置する。

 

「ソース欲しい。オイスターでもお好みでもいいから欲しい」

 

 もう二度と口に出来ない『黒い液体(ソース)』を懐かしみながら、アルは数個の卵を木製のボウルに割り入れると2本の木の棒──箸を使ってかき混ぜながら長方形の鍋に油を入れて強火で馴染ませる。卵液に砂糖と塩を少量淹れて再びかき混ぜていると鍋から薄い煙が立ち上り始めたので、アルはその鍋の中に作った卵液の3分の1ほどを流し入れた。

 『じゅわり』というなんとも食欲のそそる音と共に熱によって卵液がじわじわと固まり始める。しかし、固まり始めた表面から気泡が膨らんでくるので、一旦鍋を火から下ろしたアルはその気泡目掛けて箸を突き刺すことで次々と気泡を潰していく。

 

「さてさて、まずは1回目」

 

 久しぶりの体験に、アルは逸る気持ちを抑えながら手首のスナップを利かせて焼き固まった卵を手早く巻き始める。馴染ませた油が利いているのか鍋から卵がするりと離れ、小さく折りたたまれていく。

 

「お、懐かしい。うちは出汁入りでしたね」

 

「そんな物ここにあるはずないでしょうが」

 

 そこに話し合いが終わったのかエルが厨房に乱入してくる。用意している物からメニューを読み取ると、『安直ですね』と呆れる。そんな彼も現在進行形で巻かれている卵から目を離さないので、まだ日本人の魂があることに少なからず安心したアルは、箸で巻いた卵を鍋の奥に寄せてから油を再度敷いて追加の卵液を投入。焼き固まったら奥の卵と共に巻き込んでさらにもう一度同じような行動を繰り返すことで日本人のお弁当の定番、『卵焼き』が完成した。

 

「大根おろしに日本酒……米で出来たジュースが欲しいですね」

 

「ねぇよ」

 

 そう言いながらもせめてもの慈悲と箸を渡し、エルがそれで器用に卵焼きを割って口の中に放り込む間にアルは水分が全て蒸発して純粋なラードのみが残った鍋から丁寧に脂身の残りを取り去ると、パン粉を落ち着かせたカツを鍋の中へ滑り込ませるように投入する。

 

「んー、男料理!」

 

「しゃあねぇでしょ。男なんだから! 嫌なら食べなくても「やです!」」

 

 カツの揚がる音を聞きながら反論するアルに被せるようにアルは拒否する。日本の管理された卵ではないので安全面も考え、ぱさぱさになるまで焼かれたいかにも男臭い卵焼きなのだが、久しぶりに懐かしい物を口にしたエルは卵焼きが乗った皿を終始離さなかった。

 

「全部食べたよこの人。……人のこと"日本が懐かしいのか? "とか言いながら食べやがったよ」

 

「ほら、外国とかでたまに日本食見ると食べたくなるじゃないですか」

 

「……後で労働という名前の対価を払ってもらいますからね」

 

 全部食べたのにも関わらず、謝りもしないで『はよカツ食べさせろ』とばかりに皿を突き出すエルに、『そういえば、魔力転換炉(エーテルリアクタ)作ってもらう約束あったな』と、国に残してきた愛しの触媒結晶ちゃんのことを思い出しながら葉野菜を千切りにした物を皿に乗せ、揚げたカツをザク切りにしてエルに渡してやりながら自分の皿も準備をする。

 

「気を取り直して……ドレイクに勝ちましょう」

 

「勝ちましょう」

 

 酒類の準備をしていなかったので厨房に置いていた果実水を拝借し、2人だけの晩餐が始まる。最初は『カツの端っこをソースで漬けておきたい』や『カツ丼は卵かソースか』など、昔のことを思い出しながら和気あいあいの雰囲気で始まったはずの晩餐会だったが、数十分後に唐突に出てきた『飛空船(レビテートシップ)の工期どうしよ……』と言う話題に一気に空気が重くなった。

そんなまるで成果が上がらない納期直前のランチミーティング中のような終始重い空気の中、2人はため息をつきながら料理を平らげる。精神に反して身体は若いのに、心なしか少しだけ胃もたれしたような感覚がしたのはご愛嬌である。

 

***

 

 フォンタニエ周辺に留まっていた幻晶騎士(シルエットナイト)が重厚な足音を立てながらフォンタニエの門前に集まっていく。エレオノーラが発した親征の宣言から数週間という僅かな時間に話を聞きつけた各地の貴族が自身の擁する騎士団を派遣し、集まった数は既に旅団規模を超えていた。

 やがて、門前を大きく開けて整列した幻晶騎士(シルエットナイト)がそれぞれの動きを止めると、フォンタニエと外を繋ぐ門が開け放たれ、中から1機の華美な装飾に身を包んだ幻晶騎士(シルエットナイト)が姿を現した。

 

「カルトガ・オル・クシェール!」

 

「先の戦で破壊されたはず……再建なされたのか!」

 

 その姿を見た辺境から集まってきた騎士団の面々がざわめくが、近衛騎士団が一斉に自身の機体を駐機状態にすると機体の胸部装甲を開いて外に出る。各々が前方の国王騎に向かって姿勢を正すと、辺境から集まってきた騎士団の騎士団長や団員達も急いでそれに倣った。圧縮空気が漏れる音や開かれた胸部装甲の上に騎操士(ナイトランナー)が立つ足音がようやく落ち着くと、門を出てから微動だにしなかったカルトガ・オル・クシェールの胸部装甲が開かれる。

 

 その音に全員の目がまさに今、国王騎の胸部装甲の上に立つ1人の『王』に注目する。ジャロウデクが攻め入られる前、蝶よ花よと愛でられていた一人の少女は煌びやかなドレスから戦場を征く騎操士(ナイトランナー)が着る軽鎧へと装いが変わっていた。

 大輪の花と例えられたその美貌も、度重なる戦火や犠牲。後、お隣から親戚と共にやってきた約2名の好き勝手な振る舞いによって多少の陰りが見えるが、代わりに温室育ちでは見ることが叶わなかった明確な意思が籠った勇ましい顔立ちはこの場に集まった全ての騎操士(ナイトランナー)の認識を一つにした。

 

「クシェペルカの騎士達よ」

 

 カルトガ・オル・クシェールの上からエレオノーラは騎士達に語り掛ける。それは、騎士達にとっては屈辱の。そして、王女にとっては苦難を始まりを意味する『デルヴァンクールの陥落』の話であった。淡々と話される『ジャロウデクの有する幻晶騎士(シルエットナイト)に敗退』という事実に話を聞く騎操士(ナイトランナー)の手には徐々に力が入り、中には現在立っている装甲の上に()()()()を落とす者まで居た。

 

「ですが! 私達は友の手を借りて、再び立ち上がることが出来ました!」

 

 陥落の話から一転。エレオノーラは先ほどまでの弱弱しい口調から力強く叫ぶように自身の想いを曝け出した。確かにレーヴァンティアという新しい剣と鎧はジャロウデクの有するティラントーと互角の戦闘能力を有し、新生クシェペルカを護る一助となっている。これにはレーヴァンティアを乗機としている近衛騎士団を中心に力強く頷いた。

 彼らの闘志と自信に満ちた表情はエレオノーラから次の話題──(ドレイク)について話した時。さらに『このままではもう一度あの夜を繰り返す』と消極的な言葉を語り掛けられても決して衰えず、それぞれが示し合せたかのように乗機の操縦席へ戻ると操縦桿を力強く握りながら王の命を待った。

 

「クシェペルカの騎士よ 全軍にて進軍せよ! この国を! 奪われた王都を取り戻すのです!」

 

 王からの命が幻晶騎士(シルエットナイト)の集団に駆け巡った瞬間、それぞれの騎操士(ナイトランナー)は鬨の声を上げながら乗機の装備を天に掲げる。エレオノーラがその声に少しばかり体を震わせる最中、その雷鳴のような叫びの中を1機のレーヴァンティアが自身の装備を全て隣のレーヴァンティアに渡し、カルトガ・オル・クシェールの前で駐機体勢を取った。

 

「貴方は……近衛騎士団の騎士団長ですね」

 

「はっ! 陛下にこれを」

 

 そう言って胸部装甲から身を乗り出した騎士団長は『失礼します』とカルトガ・オル・クシェールの胸部装甲に立っているエレオノーラに大きな花束を1束手渡した。突然の花束に目をしぱしぱと瞬きさせるエレオノーラだったが、手に伝わる感触から花束を構成している花1本1本が金属で出来ていることに気が付く。

 

「これは?」

 

「鉄華です。造花ゆえ決して散らないことから誓いに最適だと……とある騎士から窺いました」

 

 上を見ながら少し居心地悪そうにする騎士団長にエレオノーラは『こういう根回しが大好きな少年(アルフォンス)』が頭に浮かぶ。一つ一つの形状や出来栄えが違うことから数人、いや数十人が共同で作ったとみられる鉄華の花束は見た目こそ武骨で冷たいイメージが付きまとうが、エレオノーラには国を取り戻すために参戦した騎操士(ナイトランナー)達の熱い気持ちが確かに伝わってきた。

 

「残念ながら将兵1人1人とはいきませんでしたが、この旅団を取り仕切る長たる者達やフォンタニエで活動している貴族の方々が代表で作成しました。たとえ志半ばで絶えたとしても、我らは必ず王都を奪還する。必ずクシェペルカを元の豊かな国へ戻す。──と思いを込めて作りました。どうか……お納めください」

 

「ええ、皆さんの想い……ありがたくいただきます。クシェペルカに勝利を!」

 

 再度、親征の開始を告げる割れんばかりの咆哮と武器を地面に叩きつける鬨の声が響く。それぞれの幻晶騎士(シルエットナイト)から胸部装甲を閉じる音が響き、カルトガ・オル・クシェールを先頭に1個旅団余りの幻晶騎士(シルエットナイト)の集団とその幻晶騎士(シルエットナイト)をサポートする輜重隊は移動を開始する。

 

「はっは! あの演説は良いものだったぞ! ヘレナも女王の貫録が出てきたじゃないか」

 

 道を征くカルトガ・オル・クシェールの横にゴルドリーオが並び、エムリスが上機嫌にエレオノーラに話しかける。その言葉に気恥かしそうに受け取った花束を握りしめながら答えるエレオノーラをイサドラが元気づけていると、いきなり空が曇ってきた。

 

「お、来たな。対ドレイクの秘密兵器!」

 

 吠えるように空を仰ぐゴルドリーオに続いてカルトガ・オル・クシェールが首を上に向けると、飛空船(レビテートシップ)が悠々と空を泳いでいた。ジャロウデク王国が使用する飛空船(レビテートシップ)とはかけ離れた造形にエレオノーラが呆けていると、エムリスは『おっとそうだ。伝言伝言』と慌てた口調の後に咳払いを一つした。

 

「あのちっちゃい奴から伝言だ。"自国の騎士の皆さんも同じ気持ちなので、ないがしろにしないでくださいね"だとよ。まったく、王族をなんだと思ってやがんだ」

 

「まー、たしかにヘレナっていつもあの騎士さん横に置いてるじゃない? アルの目には自分の国の騎士と交流しない王族ってどうなの? って思ったんだと思うわよ」

 

「おい、それあいつの受け売りだろ。イサドラもあいつをアテにしてるだろ!」

 

 横と後ろで声による大乱闘が始まっているが、エレオノーラは先ほどの伝言を反芻する。

 たしかにエレオノーラが騎士様と呼ぶあの青年はフレメヴィーラの騎士である。それをお茶会に誘ったり、側仕えにしたりと思えば大胆すぎて思わず顔から火が出そうになったが、それをぐっと我慢したエレオノーラは『エムリス様。これからは自国の騎士ともお話してみます』と答えた。

 

(キッドよ……強く生きろ)

 

 自国の騎士と話すだけで、『キッドの扱いはそれはそれ、これはこれ』と捉えられるような発言にエムリスは心の中で空に居る件の騎士様の冥福を祈った。

 

「ぶぇっくし!」

 

「キッドきたな~い。風邪?」

 

「いや、なんか悪寒が」

 

 一方のその頃。親征に向かう列の上空を飛んでいる『ジルバヴェール』の格納庫付近に設えられた大部屋ではキッドとアディがせっせと(ドレイク)との戦いで使用する特殊な魔導飛槍(ミッシレジャベリン)を量産していた。

 量産といっても本体や紋章術式(エンブレム・グラフ)銀線神経(シルバーナーヴ)といった材料は『空では鍛冶仕事は出来ない』というエルとアルの意見から先んじて作成され、ジルバヴェールに運ばれている。後はそれを合体させるだけなのだが、1斉射100本の魔導飛槍(ミッシレジャベリン)を少なくとも2斉射分。つまり、200本以上も量産するのはいかにエルやアルの愛弟子達でも苦行と感じる作業だった。

 

「あ"き"た"~」

 

「踏ん張れアディ。……もし、ここで変わるって言ったらお前か俺がアルと同じ目に合うんだぞ」

 

 大部屋に女性を捨てたかのような寝ころび方をして不満を撒き散らすアディに、キッドは一度周囲を見渡してから小声で注意を行う。その注意の中にあった『アルと同じ目』の段階で飛び起きたアディは再びやる気を取り戻し──否、『アルと同じような作業をやりたくない』ために黙々と魔導飛槍(ミッシレジャベリン)を量産していく。

 

 一方その頃。寒風が吹きすさぶジルバヴェールの外では腰に備えられた2本のワイヤーアンカーや銀線神経(シルバーナーヴ)、伝声管の管などを命綱にアルが装甲板を背中に背負い、魔道トーチを片手に宙吊りになっていた。

 

「痛い。寒い。怖い。痛い。寒い。怖い」

 

「はい、そこに仮止めしてください」

 

 エルの指示に『痛い』、『寒い』、『怖い』の3単語しか繰り返さないアルが手に持った装甲板をジルバヴェールに宛がい、手に持った魔導トーチで熱することで仮止めをする。そして、やっと先ほどの3単語以外の『OK』という単語がアルから発せられると、エルはすぐさま外装硬化(ハードスキン)の範囲を書き換えて仮止めした外装をジルバヴェールと一体化させた。

 

「あと何枚ですか?」

 

「あと5枚ですね」

 

 実はこのジルバヴェール。親征が開始された現在でもまだ改装が済んでいなかった。もちろん、ナイトスミス達がサボったわけでもなく、エルとアルの設計に穴があったわけでもない。単純に時間が足りなかったのだ。ただ、『時間が無いから今日は徹夜ね』という悪魔の宣言をしたり、その宣言により寝不足で誰かが大怪我や倒れた際の補填が絶望的になってしまう。

 そこで、エルは先日の2人だけの晩餐会中に『飛びながら改装しましょう』という禁断の手段を提案した。

 改装が済んでいない部分は外装が1割程と魔導飛槍(ミッシレジャベリン)の量産のみだったが、その中で外装を担当する際は誰かが外で装甲板を仮止めし、中で魔導演算機(マギウスエンジン)内の外装硬化(ハードスキン)の範囲を書き換えるという『いざという時、安全に地上に降りれる』かつ、『仮止め後には即座に内容を書き換えるという離れ業』をやってのける人材。つまり、エルとアルまたは、キッドとアディのどちらかに絞られた。

 そして、厳正なる審査(じゃんけん)に負けたエルが、アルとさらに厳正なる審査(あっちむいてほい)をした結果、アルが自身のシルエットギアであるストライカーを纏いながら外装を仮止めする作業を行っている。

 ちなみにこの作業。あと5枚とエルがいったが、朝から30枚近くの装甲板をアルが貼っているのでアルは寒さといつ落ちるかも分からない恐怖に歯をガチガチ鳴らしながら作業を行っていたりする。

 

「高所作業手当請求しますからね! 絶対しますからね!」

 

「うちにそんな物はありません。……次は86番ですね」

 

「ちくしょぉ! 国へ帰ったら絶対請求してやる! 訴えてでもしてやる!」

 

 悲痛な叫び声が上空で発せられるが、親征軍は地上に居るために全く気付かずに行軍を続ける。

 ただ、アルが言った高所での作業──主に飛空船(レビテートシップ)や今後発明される『とある幻晶騎士(シルエットナイト)』に関わる者を対象にした給与の内容には、アルが言った『特別な手当』の旨がしっかりと存在する。

 つまり、そういうことである。




もういくつ寝るとスパロボ30発売日・・・
格納庫にガンダリウム合金で作った社にジャパニウム鉱石とサイコフレーム納めて毎朝ゲッター線照射しないと
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