ライヒアラ騎操士学園へと赴いたアルは、馴染みの衛兵に挨拶をしながら教官達の詰所へ向かう。勝手知ったるなんとやらでスイスイと廊下を歩くアルに、彼の人となりを知っている学生達は気楽に挨拶をしながらも『また授業するんですか?』と隠し切れない期待感を露わにする。
ただ、試験に受かっただけでどのような契約になるのかはこれから決めることになっているので、その答えを持ち合わせていないアルは『どうですかねー』と下手な期待感を持たせない様に立ち振る舞いながらも学園長であるラウリの執務室まで足を運ぶ。
「アルフォンスです」
「ああ、入ってくれ」
ノックをしながら入室許可を求めると、中からすかさず入室の許可が下りる。『失礼します』と言いながらアルが扉を開けると、自身の祖父であるラウリがまるで当たり前のものを見ているかのような意思が籠った視線をアルに投げかけた。
「では、再び……。アルフォンス・エチェバルリア、再び戻ってまいりました」
「うむ、よく戻ってくれた。では、詳しい契約の話をするとしよう」
2人は応接用のソファへと腰を落ち着けると、再びアルが教職に就く上での契約の話へと移る。
まずは受け持つ教科だが、これは
「これは騎士団の仕事に専念させたいという学園側の考えじゃ。……まぁ、他の意味もあるがの」
「あぁ、騎士団や新しく作る騎士団に入れてくれって言う要望の防止ですよね」
「……そうじゃな。もしや、マティアス辺りから聞いたか?」
「いえ、先王陛下からこういった根回し系は何を目的にしているのか確認を取らないと大変な行き違いがあるからちゃんと確認するのが良いと、昔に教えてもらったので」
せっかくボカした意味合いをサラリと言うアルに、『先王陛下の入れ知恵か』と孫の1人を取られたような心境のラウリはカンカネンの方角を見据える。
学園側は、アルを迎え入れるにあたってやはり騎士団関係が学園側に舞い込んでくることを大いに懸念していた。
例えば、銀鳳騎士団は今やアルヴァンズのような秘匿騎士団を除くとフレメヴィーラ王国を代表するような練度と知名度を誇るので、設立当初よりは少なくなったが未だになんとか入れないかと画策する連中も息を吹き返すだろう。さらに耳聡い貴族であれば、騎士団が教官を務める新しく創設予定の騎士団も
「話は戻るが、授業の方も無理にシルエットナイト応用学に合わせなくても良い。馴染みそうな応用学に入れただけで、本来は西方で新たに生まれた様々な概念を学園でも取り入れるために話をしてもらいたいだけじゃからな」
「なるほど。授業の準備とか、進捗について話し合いをする必要が無いことに安心しました」
ラウリから言い渡されたこの授業の主旨について、アルは頷きながら返事をする。
その為にはなにより、その技術を習得した者──騎士団の人員からの教えを請わなければならない。つまり学園側の事情は、『西方の最新技術を教えてほしい』という一点に帰結する。
しかしながら、騎士団といえばエドガー達やフロイドといった
そんなくそ忙しい中にアンブロシウスの脅しに屈し、本来ならば少しでも開発したいという欲求をぐっとこらえて試験勉強を行ったアルからすれば『試験する必要あった?』と一旦納得した不満が再び頭の中に存在するごみ箱からまろび出てきた。しかし、そこは大人──というかアルの知らない世界でのやりとりも存在するので、アルはその不満を宥め賺す。
ただ、試験勉強の過酷さを思い出したその不満は『だって』とか『でも』とちょくちょくゴミ箱から出て来るのだが、最終的にアルは力づくでゴミ箱に押し戻すとラウリの話に注力する。
「さて、では給与の話に移ろうか」
そんなこんなでラウリと共に行われる契約内容の確認は続く。
給金については騎士団と二重取りになってしまうために前回同様固辞したが、『前にも言ったが、そこはちゃんと教官に任命して払っているのだから、受け取ってくれないと我々が困る』といったラウリの言葉に1日のみ登壇するレア教官としては結構高めの給金が支払われることになった。
また、前の教官時代に行われたクロケの森への付き添いといった学園行事については『その時は改めて騎士団に依頼するから積極的に参加しなくて良い』と確約を貰う。
こうして、契約で決められたことを各自がメモをしたり、ラウリから差し出された契約書にアルが1枚1枚丁寧にサインをしていきながら悠々と時間が流れ、ある程度のことが決まった時には既に昼の時間を回っていた。
「……こんなものかの」
「確かに確認しました。それで、肝心の授業は何時になるのでしょうか?」
契約書を纏めるラウリに、アルは授業を行う時間について聞く。その問いに、ラウリは机から騎士科の時間割を取り出しながら時計とにらめっこを始めると、学園の外──具体的にはライヒアラの城壁に取り付けられた鐘がけたたましく鳴り始めた。
その鐘はライヒアラではあまり珍しくないツェンドリンブルが街に向かってくることを伝える符丁でなり続けていたが、突如その符丁が『街中に入って来る』という警告符丁に切り替わった。
「珍しいですね。ツェンドリンブルが街中に入って来るなんて。……あれ、うちでツェンドリンブル使う予定あったっけ」
「すっかり忘れておった」
ツェンドリンブルが普及して1年。未だ銀鳳騎士団以外では乗り手がそんなに居ないと、ラボのナイトスミスが言っていたことを思いだしたアルはメモ帳から本日の予定を確認するが、本日はトゥエディアーネのお披露目があるためにツェンドリンブルは外に出ることはないはずである。
アルが疑問に思いながらメモ帳を見ていると、単眼鏡で城門を潜ったツェンドリンブルの出で立ちを見たラウリがすっかり忘れていたことを思いだしたかのように頭を抱えて唸りだした。
「アルや。本日の授業には……その……大事な来客がおっての」
「お祖父様、ものすごい既視感があるのですが。お客様のお名前は朱兎騎士団の方では?」
「すまぬ、陛下にアルが試験に合格したご報告申し上げたんじゃ! おそらく、それを聞いた先王陛下からクヌート殿やフレドホルム卿に伝わったんじゃろう……」
とんだピタ○ラスイッチもあったものである。とりあえずとして、就任の挨拶をして授業を終えようとしていたアルは突然の訪問者にラウリから時間割をひったくると、鐘が鳴った音を思い出しながら授業の推敲を始める。
「夕方の最終コマだから、まだ時間は十分にある。えっと、あれやって……これは……まだ生徒には早いか。あれを教えるのも良いな。即戦力になりそうだし。……いや、ここは最初に決めたとおりに行こう」
鬼気迫る表情のアルに、ラウリは『ワシの執務室なんじゃが』という至極全うなツッコミは恐ろしくてできなかった。
アルが動かなくなること数十分。未だに動かないアルを見ながら、ラウリがアルの教官任命で書いた資料や契約書を片していると、唐突に執務室のドアがノックされる。ラウリが入室を許可すると、そこには──
「失礼する! 朱兎騎士団、騎士団長モルテン・フレドホルムと他数名! アルフォンス・エチェバルリア教官の講義を受けに参りました!」
トレードマークである朱色のマフラーをした見知った男が立っていた。
***
モルテンを含めた朱兎騎士団との顔合わせが済んだアルはその足で新たに用意された教室まで足を動かす。顔合わせや思い出話が思いの外長くなり、時間は最終コマが数十分後に行われる頃合になっていた。
『急げ、急げ』と口走りながら小走りで新たに割り当てられた教室に向かうアルの目に、割り当てられた教室から人だかりが漏れている光景が映った。
「あ、アルフォンスだ」
「ちょっと! 教官って言わないと!」
「お久しぶりです。お元気……でし……なぁにこれ」
高等部の最終学年まで上がった同期が気軽に挨拶してくる環境を心地よく思いながら、アルはふと教室を見て絶句する。
以前の講義を鑑みたアルは、もう少し大きな教室を申請していた。学園側もアルの提供する知識や情報は学年を隔てて説明するには惜しいと判断し、その申請を受理。比較的大きな教室を使用するようにしたのだが、その教室から人がはみ出ていた。
「今度から最大級の講堂頼みましょう」
「そうした方が良いよ。この人だかり見て帰った人も居たし」
さらに人数が増える余地が残されていることを知ったアルは両手で頬を張り、気合を新たに教室に突入する。予め設置しておいた踏み台に乗り、壇上から教室にみっしりと納まっている学生(とOB)を見つめる。見つめられた彼らも負けじとアルの一挙一投足を観察していると、ふとアルは『皆さん』と語り掛けた。
静かな教室にアルの声は響き渡り、全員はアルの次の言葉を待ちわびていた。
「魔獣は怖い生き物です。魔獣と一括りされていても、蓋を開ければ能力も習性も全く異なる。人間が太刀打ちできるのか、それともシルエットナイトでようやくなのかも調べなければ分かりません」
アルの言葉に実務経験豊富な騎士達は無言で頷くが、未知の最新技術を求めて来た学生達は刺激が足りなかったのか少しばかりざわめきが起こる。『誰だって知ってる』や『大丈夫なのか』といった否定的な意見が聞こえるが、アルは続けて『ですが!』と続けた。
「魔獣よりも怖い生き物は当然存在します。それは、獣よりも柔軟な思考を持ち、集団や国家、宗教といった数多の概念の下に結束し、同じ種族を様々な理由を付けて害する……僕達人間です。明日になったら君達の横に居る人間が敵になったりするかもしれませんよ」
アルはあえてお道化たように言い放ったが、冗談に聞こえなかったのか数人は隣に座っている人間と自身を見比べる。そんな数人は壇上から見ると一目瞭然で、そちらの方が滑稽に思えたアルは少しだけ笑いながら『冗談ですよ』と言いながら船の様な絵を描き出す。
「ウエスタン・グランドストームの概要は……、芝居小屋とか劇場を見てきた人には分かるかと思います。ファダーアバーデンとかいう100年以上も昔の大国を復活目論む……かの国の正当なる継承者なのかも定かではないジャロウデク王国がロカール諸国連合やクシェペルカ王国を飲み込みました」
手を動かし続けながら、アルは
その質問に黒板で絵を描いていたアルの肩が上下に動くが、アルはゆっくりと振り返ると『良い質問です』と答えた。
「シルエットナイトの優劣が戦力の決定的差にはなりません。戦術が噛み合ったり、だまし討ちの様な搦め手を使うなど。同性能のシルエットナイトでも運用次第では化けますが……。しかし、今回に至ってはその限りではありませんでした」
ティラントーは
「どうやらどこも似たような改修案を設計しているようですね。ジャロウデク王国は新しいシルエットナイトを投入してきました」
あくまでも『フレメヴィーラ王国が一切関与していない場所で、似たような設計が行われた』という説明に、アルの描いたティラントーの図体がカルディトーレの図体と似ても似つかないような外見であることも手伝ってか学生だけは納得していた。
「質問です。シルエットナイトが最新になっても、長距離での行軍は厳しいのではないでしょうか? カルディトーレでも、街から街への往復で消耗すると聞いたことがあります」
「またまた良い質問です。確かに最新鋭のシルエットナイトを携えてもロカール諸国連合やクシェペルカ王国を横断するのは厳しい! ですが、実際にジャロウデク王国はそれを成し遂げた! さぁ、考えてみてください!」
学生の質問に手を打ち鳴らしたアルが、まるでジャロウデク王国を褒め称えるような口調で両手を広げながら全員に質問する。
たしかに、ロカール諸国連合とクシェペルカ王国をあっという間に攻め滅ぼした電撃戦は作戦だけ見れば見事というほかなかったし、侵攻速度についての謎も感じていた。当時もエムリスが同じような疑問を抱いたが、その絡繰りが分かるまで騎士団はかなりの時間を要した。
だが、既に問題を解くヒントは黒板上に出している。アルは『お好きに話し合ってください』と言うと、学生達は周囲に座っていた仲間達で集まっていく。瞬く間に出来上がった集団の1つ1つに朱兎騎士団の団員が1人ずつ入り込み、カルディトーレを実際に動かしてみた経験や行軍など大規模に動いた際の損耗具合を学生達に共有する。
「すぐに集団を作ったか。本当にここの学園はレベルが高い」
「同じ学園の人間ですからね。これが別の学園も含んだ騎士団だとどうなるか分かりませんよ。……で、騎士団長閣下は降参ですか?」
学生達の動きに舌を巻きながらアルに近づくモルテン。そんなモルテンに対し、アルは挑発的な笑みを浮かべていると、モルテンは『まさか』と言いながら周囲に聞こえない様に口を開く。
「ヒントは教官殿が書いた例のレビテートシップなるものだろう? ラボのカーゴシップを見せてもらったことがあるが、あれぐらいならば小隊ぐらいは入るだろうな。そこから導かれる答えは、あの船を輸送用に使った……だろう?」
モルテンの答えにアルは片手で○を作る。そうしている間に学生達も『
そうなると後は
「では、そんな考えを覆す方法を1人で謎を解き明かしたモルテン騎士団長閣下にお話ししてもらいましょうか」
「おいおい、なにを勝手な」
「一応生徒ですし」
モルテンは騎士団長だが、今この場においてはアルに教えを請う生徒である。なにより、本来学生の場である教室に押し掛けている身なので、モルテンは少し納得がいかない様に唸るがそのまま自身が考える短時間で2つの国を攻め落とした絡繰りを話し出す。
ただ、そんな彼らの密かな笑い声が耳に届いたモルテンは、指で摘んでいたチョークを手首のスナップを利かせながら笑っていた団員の額に見舞うと、指で廊下を指差しながら極力優し気な声色で『笑う余裕があるなら廊下に立っていろ』と促した。
「騎士団長閣下、教官になりません?」
「クヌート殿が隠居されただけで、私はまだ現役なのだが? ……話を戻そう」
なんとも天職のようなハマりっぷりに、第2の人生を提示するアル。ただ、モルテンは一言だけ断るとすぐさま続きの説明を再開する。
やがて、
「さてさて、騎士団長閣下がレビテートシップの有用性を語ってくれたと思います。確かに、輸送能力に秀で、さらにはシルエットナイトという戦力をも素早く輸送できる奇跡のような船ですね。……ですが、これはウエスタン・グランドストームと共に世に出回りました。……分かりますか?」
「我らも操船方法を知る必要があると?」
「いえ、それは学園が新しく学科を作るらしいので、ご希望ならそちらに転科をお願いします。空の脅威の対処をはじめとした、ウエスタン・グランドストームで学んだことを話すことが僕の授業です」
ようやく授業の骨子が見え、その有用性や情報の価値を正しく理解できた学生はアルの目をじっと見据える。そんな中、朱兎騎士団の団員達がモルテンと数枚の紙のやり取りをしているが、アルは『懐かしい』と特に気にすることなく説明を続ける。
味方の
山という天然の防壁に隔たれ、魔獣というこちらの言うことも全く聞かないという許容しがたいリスクを除けば優秀な警備兵が蔓延るフレメヴィーラ王国だが、
そうなると、
「手始めにレビテートシップの特徴や弱点をお話しし、ウエスタン・グランドストームで騎士団が行ったレビテートシップに対する攻撃方法をお話していきます。その上で、クシェペルカ王国と共同で開発したシルエットナイトのバリエーションについて解説していきます。……ここまでで不明な点はありますか?」
「レビテートシップは、今後どのように変化するのですか!」
「既に空を飛ぶシルエットナイトというものを開発されたそうですが、この学園にも練習機は存在しますか!」
「うちの領は西方にかなり近いのですが、どのような備えが必要でしょうか!」
「アルフォンス教官、うちのツェンドリンブル乗りを今後の授業に参加させてもらっても良いだろうか? 朱兎騎士団や砦を預かる身として、なんとしてもその情報は欲しい」
そろそろ鐘が鳴る頃合なので、簡単な質疑応答で済ませようとしたアル。ただ、誤算なのが思いの外
「それらの質問については、後の授業で説明することにします! 最後に、仮にレビテートシップが攻め込んできた場合の対処について各々の意見を羊皮紙1枚以内に書いてくるように!」
アルの力強い終了宣言を聞いた学生達はぞろぞろと教室から出ていった。かなりの人間が教室から出ていったので、アルも帰り支度を始めようと黒板消しを手に取ろうとしたところ、朱兎騎士団の団員が先に黒板消しに手をかけて黒板を綺麗にしていく。
「教官殿は騎士団長とお話してください。我らが片付けますので」
「あ、はい」
暗に『逃がすか』と言われたような気がするが、片付けてくれているので強くは言えなくなったアルはモルテンの隣に座る。彼らを見た朱兎騎士団からなぜかほわほわした雰囲気が漂ってくるが、モルテンは周囲の雰囲気など気にせずに『先ほどのことだが、本気だぞ?』と強い口調で語りかけた。
「これって編入になるんですかね?」
「分からんが、仮に編入できた場合はツェンドリンブル乗りから朱兎騎士団へ。そして、朱兎騎士団からディクスゴード公爵名義で各騎士団に情報を行き渡らせることを約束しよう。ただ、これらの話はラウリ学園長やディクスゴード公爵、なんならリオタムス陛下にもお話せねば始まらんがな」
「ほう、それは良いですね」
モルテンの魅力的な提案にアルは目を光らせる。
モルテンのいう提案はこうだ。まず、朱兎騎士団のツェンドリンブル乗り1人にアルが授業を受けさせる。その後、帰ってきたツェンドリンブル乗りが朱兎騎士団にそれらの情報を伝達。その情報がカザドシュ砦の資材的に実現が不可能な情報であってもそれらを纏め、ディクスゴード公爵名義で既に各貴族の領地で活躍している騎士団に送付。もしくは、直接勉強会を行う。
これならば、アルが内々で懸念していた各騎士団から騎士団へ勉強会という名前の出向や、今回のように飛び込みの参加という対策にもなるし、なによりディクスゴード公爵というビッグネームが後ろ盾になってくれる。
そして、ツェンドリンブルの脚力ならば、ここから馬車で数日の距離にあるカザドシュ砦から早朝に発っても昼頃にはライヒアラに到着できる。『朱兎騎士団やディクスゴード公爵が意図的に情報を隠そうとしている』という根も葉もない嫉妬紛いの噂話が蔓延るだろうが、そこはアルには一切関係ないので、モルテンの話はアルにとって良いこと尽くめの提案だった。
「でも、良いんですか? そんなにしていただいて。結構面倒なことになると思いますが」
「なぁに、最新情報を真っ先に手に入れることが出来ると言ったら納得していただける。……まぁ、俺達がいきなり来たから迷惑かけたって言う罪滅ぼしもあるんだがな?」
流石に本人に伝えずに来たのはまずかったと思ったのか、途中まで自信たっぷりだったモルテンが急にしおらしくなる。ただ、これもアルからしてみればラウリが忘れていたせいなので、向こうが謝罪したら反射的にこちらも謝罪するという『日本出身の下っ端社会人の悲しき習性』が前面に出てしまったアルは、『いえいえ、こちらこそ』とお辞儀をする。
結局、この
学園長の義理の息子曰く、『出来ないことは出来る人に任せれば良いんです』というスローガンの基、とある騎士団の騎士団長と先ほどとは違う騎士団所属の副団長が学園長の執務室に乗り込んでいるのを見たらしい。
その丸投げの速さに、当初話を聞いたラウリは『対処がギリギリ可能な話をいきなりこっちに振るのは止めてほしい』と憔悴した表情で懇願するような声を漏らしたとか。そして、今回のことでリオタムスやアンブロシウスと協議する羽目になった現ディクスゴード公爵は『どうして』と言いながら宇宙の真理を読み解いてしまった猫のような真顔になり、その横で既に家督を譲ったのであまり込み入った話に参加しなかったクヌートは『これがエチェバルリアだ』と息子をひたすら宥めていたとかいなかったとか。