小さな村の前には3機のツェンドリンブルや
「すまないねぇ、騎士様」
「お婆ちゃん、それは言わない約束よ」
そんな銀鳳騎士団博覧会のような風景を前に、黄色と黒の斑に塗った鉄兜を被ったアルは家から出てきたお婆ちゃんと他愛のない会話を交わしながら村長からもらった地図にメモや記号を付ける。その後姿に、村の女衆は自分達の想像していた騎士とのギャップに首を傾げそうになったが、オルヴェシウス砦が出来てからの銀鳳騎士団の奇行とも言うべき行動の数々を思い出したのか次第に『まぁ、あそこの騎士団だし』と妙な納得をしながら差し入れの準備をし始める。
そんなおなじみの突発的な行動をし始めた彼ら銀鳳騎士団だが、なぜこのようなことを仕出かしているのか。それは、ボキューズ大森海開拓を主眼においた共通土木パッケージの改良が完了した所まで話が巻き戻る。
***
改良が成功した当日。一仕事終わったことで工房内にも関わらずお祭り騒ぎに興じていた
「あの騎士団長。こっちが無理って頃合を見計ってスケジュール組むから度し難いよなぁ」
「そうそう。今回だって改修だけでも試験が大変なのに、新しいオプションワークスとか何考えてるんだって思ったけど、割と何とかなるもんだな」
「なに言ってんの。副団長がラボから当時の設計図とか、見本とか色々もらってきてたじゃない。あれが無かったらこんな短時間で出来なかったわよ」
話はいつの間にか今回の共通土木パッケージの改修がいやに早く終わった理由にシフトしていく。改修とは簡単に言うが、各オプションワークスの耐久試験も含めれば現在も酒盛りをしている暇は無かった。
ただ、現場の事態を重く受け止めたアルは単身で
そうすることで作業の勘所が掴めた
「でも、あの騎士団長のことだから副団長の行動も予想してスケジュール組んでそうだよな」
「言うなよ。スケジュール通りに納まりそうだと喜んでた副団長が不憫になる」
なぜかべらぼうに暇な期間があるにも拘らず、頑なにスケジュールを伸ばさないエルに対して愚痴を言いながら各地を飛び回っていたアルの姿を工房から見ていた
「これ、どうやって陛下に見せるんだ(の)?」
2人の言葉に騒いでいた周囲の言葉が途絶える。そして、『たしかに』やら『どうするんだ』といった状況に不安視する声が工房内に充満し出した。
もちろん、彼らもプロの
全ての腕にチェーンソーやドリルを装備させたイカルガの姿は控えめに行って化け物以外に見えなかったのだが、それはさて置くとして──これらの
「カンカネンの演習場を掘り返すか?」
「均した地面でやっても効果がいまいち分からないし、それは下手しなくても怒られるよ?」
演習場を犠牲にするという意見を皮切りにあーでもない、こーでもないとディスカッションを行う
「そういえば、ここにある村って森林部が近くてよく魔獣出現の報せ出してきますよね」
「なら、デモンストレーション代わりに森林部切り開いて大き目の緩衝地でも作りましょうか。調査飛行の準備の進捗を伺うついでに許可とか取ってきますかね」
地図を引っ張り出しながらちょうど良さそうな場所を見繕う副団長と対策やそれを行う措置を即座に提案する騎士団長によって即効で片がつく。
その後、村側の許可を取った2人はリオタムスから開拓の許可が出されたことで、『余計な人員が"1人"増えたこと以外は』楽に村の開拓となった。
***
数人の大人が両腕を広げてようやく囲えるぐらいの太い巨木に取り付いたモートリフトが
「おっちゃん、これで良い? ……うん。やってくれー!」
「おうさー!」
モートリフトの近くに居る男性に質問し、十分だと判断を受けた
すると、返事とともにカルディトーレが退避したモートリフトと入れ替わる形で姿を現した。その腕には細かな刃を連ねらた鎖を高速回転させることで木を切り倒す装備──所謂チェーンソーが装着されており、カルディトーレの
「周囲ヨシッ」
十分に確認が取れたので、
「停止っと……誰か来てくれー!」
「お、倒れるのか。周囲確認するぞー」
順調に巨木の半分の所まで切り終えると、
「周囲に人影なし」
「こっちもだ」
「じゃあ倒すぞー!」
仲間達の返事に再びチェーンソーを起動させた
「丸太通りまーす」
「アルフォンスめ。初めから使える物を開発するではないか」
律儀にアルから手渡された黄色と黒の斑に塗られた鉄兜を被っている『余計な人員』ことアンブロシウスは、伐採を行っている方向とは別方向にジルバティーガの首を向ける。そこには円錐状の物体を景気よく回転させているカルディトーレが
別の方向に目を向ければ、グゥエラリンデの両腕に装備された万力の形をしたクローアームが伐採後に残った切り株をしっかり掴んでから力任せに引き抜き、土中から出てきた太い根っこをイカルガが両手に装備した先端が鳥のくちばしのように鋭く尖った鉈で力任せにぶった切っている。
『根っこ硬いですねー』や、『エドガーさんに預けた装備借りてこようかな』という独り言がイカルガから聞こえてくるが、何度も鉈を振り下ろすことによって切り株と根っこは完全に分離された。
「じゃ、ここに柵とか櫓を建てるんすね。資材持って来るんでお待ちを」
「助かります」
ジルバティーガの足元でも、
そんな時──。
「報告! 東西から魔獣が接近中!」
「種別は?」
「西側は体格からして決闘級の牛のような魔獣が数頭。さらにそいつらが猪のような小型魔獣を多数追い立ててます。東側は貝のような魔獣が1匹です」
上空で警戒を行っていた3機のトゥエディアーネから魔獣襲来の報が入る。決闘級も居ることから、
「貝……どっちの魔獣でもシルエットギアには荷が重いですね。1機は上空から索敵を継続、1機は騎士団長を貝にぶつけるので、伝令をお願いします」
貝型の魔獣はアルの知る所だと2種類しかおらず、どちらも
「副団長、村の見回り完了しました! 非戦闘員と重要人物も収容完了です!」
「結構。では、行きますか」
「ちょっとぉ! ナイトスミスの方々がいらっしゃいますよ!? 非戦闘員では!?」
「え、うちではいつものことですから」
なぜか非戦闘員である
「そういえば副団長。専用機はどうしたんです?」
「あれ、戦闘用の装備詰め込みすぎて開拓用の装備積めるほどの拡張性がないんですよ。だからお留守番させてます」
現場に急行する僅かな時間。アルの近くで巨大な斧をモートリフトの肩に担いだ
本来であればアルもシルフィアーネ・トレーナーやストライカーといった専用機を持ってきたかったが、前者は
また、イカルガも共通土木パッケージは搭載できるのだが、かなり特殊な
しかし、結果は『最近、イカルガを満足に動かしてあげてないので』と。まぁ、いつものよく分からない言い訳をされて『
閑話休題
無事に合流したアルを先頭に、
「よし、掴んだ! 誰か止めをお願いするよ!」
「よしきたぁ! タイチョ、離しちゃ駄目っすよ!」
「ちょっ、待ちたまえ! 掘削用の装備であ"ぁ"あ"あ!」
完全に動きを止めた牛型魔獣の横っ腹目掛け、第2中隊所属の赤いカルディトーレが右手を振りかぶる。その前腕部には甲高い起動音を鳴らしながら回転するドリルが装備されており、次の行動を予知したディートリヒは制止の声を上げるが間に合わなかった。
カルディトーレが繰り出した回転状態のドリルが牛型魔獣の腹に衝突し、数瞬ほどその魔獣の持つ堅牢な甲殻と分厚い外皮に押し留められるが、それを呆気なく破ると肉片や血を辺りに撒き散らす。
「#$%&#$!!」
当然、牛型魔獣を拘束していたグゥエラリンデにもその血肉が満遍なく降り注ぎ、ディートリヒは
「一狩り行こうぜぇ!」
それぞれの手にある物は等しく開拓を行う人間にとっては唯一無二のパートナーだが、ひとたび戦闘に用いれば相手を駆逐する武器にもなり得る。
「害獣死すべし!」
例えばシャベル。平べったい部分でぶっ叩けば相手を昏倒させるだけの地面を掘る道具だが、現在進行形で猪型の小型魔獣相手にシャベル片手で襲い掛かったモートリフトのように横に振るったり、押し込んだりすれば簡単に魔獣を仕留めることが可能な武器へと変わる。
「肉よこせ!」
また、実際に戦っている人間の戦意も大きな武器となる。
魔『獣』と称する通り、魔獣の中には肉を食用に転用できる──今まさに彼らが相手をしている存在のような種類が居る。もちろん、流通に乗せることは固く禁じられているし、食べた上で腹を下しても自己責任案件なのだが、それを守るのであれば前世のハンターのように消費するのは一切問題にはならない。
まさに今、土を耕したり均等に均すのに使用する鍬を正確に猪型魔獣の頭部に見舞って1匹でも良質な獲物を狩ろうと躍起になっているモートリフトに搭乗する
銀鳳騎士団は口が裂けても薄給とは言えないが、家畜の生肉は結構値が張る。なので、銀鳳騎士団員はたまに来る『肉が食べたい欲』をベーコンやハム、塩漬け肉といった加工肉によって凌いでいる。
そんなナウでヤングな彼らの前に食用に出来る豚(猪だが)肉と牛(どちらかというとバイソンのようだが)が現れたらどうなるか。
カンカンになるまで熱くなった鉄板の上に広げられた生肉はジュワリという美味しい音が耳を支配し、メイラード反応によって漂ってくる香ばしい匂いや褐色の焼き色から嗅覚と視覚へ美味を脳へ訴えかける。
そんな拷問のような時間を必死に耐え、ようやく手にした焼肉。軽く味付けをして口に放り込むと、鉄板で焼かれたことによって表面上に浮かび出た甘い脂の味が舌の上に広がり、味覚の尖兵として神経から脳に向かって進撃を始める。たまらず肉本体に歯を立てれば、焼いた熱で内部に貯えられた脂肪分が溶けた肉汁となって口内に飛び出し、香辛料などの味付けと強く混ざってさらなる美味と口福を食した人間にもたらすだろう。
長々と語ったが、一言で言うと『肉食いてぇ』である。
そんな
なので、最初こそ本格的な戦闘訓練を受けていないであろう
無論、モートリフトは装甲や五指を生やした手を増やしたことによって
基本的には相手に空振りを誘発させてから集団で攻撃を叩き込むという戦法を用い、彼らは次々と魔獣という人類の天敵をひたすら駆逐していった。
「足だ! 足を狙え!」
「ほぉい!」
「ほぉい!」
形勢が不利だと悟ったのか、猪型魔獣は突如進路を森の奥へ変更する。そんな戦意喪失した相手に対して彼らは足を砕いたり、頭に強かな一撃を見舞うことによって昏倒させていく。
仰向けに昏倒するというあまりにも無防備な姿だが、そんな状態でも容赦なく反撃してくるのが魔獣という生物なので、
そんな彼らの狂戦士ぶりに、『
そんなこともあり、逃げようとする魔獣は人里に多大な被害をもたらす可能性が高いので、人間の勝手で非常に残念だがフレメヴィーラ王国に生まれてきたのが悪いということで駆逐されることとなった。
この世界──というか魔獣が出没するフレメヴィーラ王国には害獣を擁護する愛護団体が少ない。理由は言わずもがなだが、『おかしなことをのたまう奴の居場所は、本人の意向を一切考慮せずに"様々な場所"や"様々な状態"で放置される』ということだけ言っておこう。怖い世界である。
閑話休題
そんな血生臭い現場をおっとり刀で駆けつけてきたジルバティーガの肩に取り付いたアルが、突発的な魔獣の襲来における対応能力について総評していた。ただ、目の前の惨状に加えてそれを行った主な人間が
「え、親方もシェイカーワームが襲ってきたときは撃退してましたよ?」
「自衛と積極的に攻勢に参加するのは違かろうが」
昔に見たことを棚に上げるアルにアンブロシウスは静かに項垂れるが、そうこうしている間に信号法弾が宙を駆ける。どうやら戦闘が終わったらしい。
「いやー、大猟大猟。村の人に保存食に出来ないか聞いてみようぜ」
「いいね。調査飛行中は美味い干し肉が食えそうだ」
獲物を背負いながらはつらつとした笑顔で戻っていく面々。そこにちょうど反対方向に出没した貝型魔獣の討伐に向かっていたイカルガやカルディトーレが合流する。嘴の部分に青紫の体液が塗りたくられている鉈を振り回しているイカルガも気になったが、後ろで数機の白いカルディトーレの肩を借りながら帰ってくるアルディラットカンバーの姿にアルやディートリヒ含めた面々の顔から血の気が失せる。
「え、まさか……」
「うそだろ!? ……でも、団長嬉しそうにしてるぜ?」
銀鳳騎士団屈指の実力者であるエドガーの負傷疑惑や、その割りに騎士団長が元気にしていることからまさかの仲違いからつい『ヤっちゃった』疑惑まで飛び出してくるので、アルは火消しのためにイカルガに一旦立ち止まらせると事情聴取するために胸部装甲にへばりつく。
「え、僕とエドガーさんが仲違い? なんのことです? あれはただの魔力切れですよ。"マジックサーベル"を使いましたから」
「えー、やっぱり消費量の計算ミスってたんじゃないですかー。ヤダー」
しかし、呆気に取られたエルから返ってきたのは『ただの魔力切れ』だった。どうやらアルディラットカンバーが装備していた『
その見た目は某機動な戦士を連想させる棒なのだが、起動すれば
だが安心して欲しい。これはどこも問題が生じず、とんとん拍子で開発できることが稀なエチェバルリア産である。
「すまない。チェーンソー……といったか? あれを甲殻で弾かれて使い物にならなくなったから、軽い気持ちで使ってみたのだが」
エドガーはいくらか
そんなチェーンソーの状態から相当硬い甲殻を持った相手だったことは容易に想像できるし、そんな相手を屠った
「あー、すみません。この愚兄が計算OKって言ったからヨシってやっちゃいました。カルディトーレで数十秒とか使えないじゃないですか! なにいっちょ前のレビュアー気取ってるんですか!」
「えー、だって……イカルガだと問題なかったんですもん」
「比較対象ぅ!」
ひとまずエドガーに謝りながら、アルは近くで『やっちゃったぜ☆』とあまり反省していないエルに食って掛かる。イカルガという実質無尽蔵の魔力を生産可能な心臓を持つ機体もってすれば、如何に馬鹿食い装備でも問題が無いように扱えるだろう。
だが、そうではない。見て欲しかったのは稼動状態の性能ではないのだ。アルは四つん這いになるとそのまま腕を地面に叩きつけ、あらん限りの文句を4文字に込めながら開発のことになるとかなり周囲が見えなくなる兄のことを馬鹿にするように叫んだ。
「いや、切れ味……というか。あれはなんだ? ただ、使い心地は悪くなかった! 本当だぞ!」
どこからどう見ても取り乱しているアルを周囲は極力刺激しないように遠くから見ていたのだが、エドガーは優しげに
前述したが、魔力消費量さえ目を瞑れば堅牢な甲殻であっても意に介さない一刀となりうるのだ。ここで開発を終わらせるのは惜しいとフォローを入れるが、アルは『スポーツカーみたいな燃費の悪さじゃあかんのやぁ! 軽トラ並の利便性と小回りと燃費揃ってなあかんのやぁ!』とひとしきり叫ぶと、近くの切り株に座り込んでぶつぶつと脳内計算を始める。
正直、アルの言ってることがよく分からなかったのだが、彼なりに改善しようとしていることを察したエドガーは一旦アルのことを無視し、無事な機体や
「ほんと、ここの騎士団どこかおかしいよ。どこの世界に騎士よりも率先して魔獣狩る鍛冶師が居るの?」
「どこっつってもあそこに居るだろ。俺もおかしいと思ってるが、少し前まで密偵送って王族攫おうとしたり、暗殺を仕掛けてきた国相手にしてたからな」
元気に帰ってきたかと思えば何事もなかったかのように作業に復帰し出す
その後は森の中に漂う血臭のおかげか迷い出てくる魔獣は皆無だったが、
それでも尋常ではない量なので、来る調査飛行のために保存食となる乾燥肉や腸詰、ハムといった加工肉にしてもらうように依頼を出し、明日にでも纏まった金銭を持ってくるという約束をした銀鳳騎士団はオルヴェシウス砦への帰路についた。
***
「ところで、先王陛下はまだカンカネンへ帰らないんですか?」
「リオには成果を確認してくると伝えておるからな。ここで帰るわけにはいかん」
「本音は?」
「今度はジルバティーガにあのオプションワークスを付けてはくれんか? 実際に開拓してみたい」
アルの疑問に心の底の声がダダ漏れにしつつ、アンブロシウスはライヒアラの街中を無防備に歩いている。なぜ、先王という立場の人間がもう少しで暗くなる頃合の街をうろついているのか。それには水溜りのように浅い理由があった。
本人が常々言っている通り、アンブロシウスは銀鳳騎士団が改修した共通土木パッケージの成果を見届けるという役目を現国王であるリオタムスから命令を受けていた。そんな彼が1日の成果を確認してからその足でカンカネンに戻るという面倒くさい行動をするわけがなく、本当に命令が本物なのかという確認を最低限の護衛として張り付いてきた藍鷹騎士団の団員に確認を取っていたエルとアルに向かってアンブロシウスは『今夜から世話になる』と言い出したのが開拓作業が始まる3日前。
ようするにこの男、開拓が終わるまでエチェバルリア邸を下宿先に決めたのだ。そんな彼が『世話になる』という言葉と共にいきなりエチェバルリア邸を訪問した3日前は、少々天然が入っているセレスティナでさえも慌てるという嵐に見舞われたが、今では彼女がエルを除いた家族で一番順応していたりする。
「話は変わるが、パーサーも兼任出来る者達だけ一時的にラボに戻すことは可能か?」
「本人達の意向次第では?」
家に帰り、未だ慣れないラウリやマティアスと共に食事を済ませたエル達はいつものようにアンブロシウスを伴いながら自室へ入っていく。身元がはっきりしていなければ怪しさ100%の行動だが、彼らは真剣な面持ちで車座に座るとアンブロシウスは帰宅時の話を詳しく話し始めた。
「レビテートシップやウィンジーネスタイルの増産が止まらなくてな。特にマギウスジェットスラスタの増産が追いつかん」
「たしかにあの部品は複雑ですからね」
そういった理由で、一旦
「トゥエディアーネのマギウスジェットスラスタって一定の品質……言い方悪いな。同じスクリプトですよね?」
「そりゃそうですよ。騎士に合わせて1機ずつスラスタの調整とか、製作者が居る僕達の騎士団ぐらいしかやってませんよ」
印章の形に凹んだ蜜蝋をしげしげと見たアンブロシウスだが、よく手紙に押されている何の変哲もない封印なので首を傾げながらアルに意図を尋ねる。
「なにをやっとるんだ?」
「え、簡単にエンブレム・グラフを刻む方法ですよ。印章をエンブレム・グラフに刻み込むスクリプト。蜜蝋を銀板と考えるんです」
「あー、なるほど。タガネみたいな鋼鉄製の刃をマギウスジェットスラスタのスクリプトの形に並べて、銀板の上から圧力を掛けるんですね!」
画点がいったエルの言葉に、アルは『スタンプ作戦です』と胸を張りながら答える。
今まで手作業で
だが、今回のアンブロシウスの言葉に初めて『なら、作業の簡略化すりゃ良いじゃん』とアルの中に住む面倒くさがり屋に電流が走ったのである。
「ふぅむ。便利そうだが……そんなことが可能なのか?」
「調整はかなり必要そうですが、机上では可能なはずです。硬い金属の刃を垂直に振り下ろして銀板に傷をつけたら、それがスクリプトになっていた。ただ、それだけですから」
「硬い金属を使うよりもハードスキンを使えば、より耐久性が増すのでは?」
「それだと、ハードスキンの余剰魔力が銀板に通った場合に出来立てほやほやのエンブレム・グラフの魔法が発現しません?」
「あー、そっか。ならば、空気圧で釘を打つような感じでエアバレットとかを使えば……」
結局、朝まで掛けてその作業を行っていたため、両親やラウリを差し置いてアンブロシウスからお叱りの言葉を受けるのだが2人はけろりとした様子で開拓に向かっていった。
その数日後。デュフォールに紫燕騎士団のトゥエディアーネを用いた速達によってエル達の書いたスタンプ作戦の概要が届けられ、主に工房街を震撼させる。
そして、実際に検証してみようと簡単な
しかし、タガネ側の金属や厚さの調整や、刻み込むための鋭角部分をより鋭くすることによって無事に銀板からの魔法現象が確認出来た。そこから、続けて
アルフォンス君のびっくりドッキリメカ
共通土木パッケージ
ラボが開発した初期型をミシリエの陣地構築の際に使用し、その欠点を解消するべく改修を施した所謂 MkⅡ。
前腕部やサブアームに取り付けるドリルやクローアームやウィンチを作成し、シャベルやツルハシといった手持ち装備は据え置き。
※ちなみに先端が鳥のくちばしのように鋭く尖った鉈{鳶鉈、もしくはレナの鉈で検索}は、村を始めて訪問時に農家の兄ちゃんが作物の剪定を行っていたときに見てアルがときめいて追加作成。なお、エルが貝型魔獣の殻をぶっ壊すのに重宝したらしい。
マジックサーベル
アルディラットカンバーが使用したファルコネットを射出せずにその場に固定化させて振るう非実体剣。
絶えず魔法を発現し続けるので、ON/OFFの切り替えをしっかり意識しなければカルディトーレ系の機体でも数十秒で機体のリミッターに引っかかるほど消耗する武器。だが、威力は超強力なバーナーで焼き斬る感じなので火耐性でない敵には強い。
※『え、ビーム○ーベルって出力の強化できるじゃないですか!』と言った劇画タッチの表情を浮かべたアルが出力の調整機構を作り、『低出力にして温泉作りましょうよ』と言ったエルが近くの川で低出力のマジックサーベルを水に漬けるという試みをし、ナイトスミス達に怒られたのは内緒である。
スタンプ作戦
エルやアルの『怠け癖』がハンコや空圧式釘打ち機などのイメージを経て導き出したエンブレム・グラフの量産方法。タガネの刃を連ね、真垂直から圧力をかけることで一気にエンブレム・グラフを刻み込むという労災待った無しの手法。
実際の使用感はタガネがしょっちゅう折れたり、一部彫れていない部分があるという不満点もあったが、1から作る必要が無いので手間が省けると概ね好評な模様。
次回 こんなの
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