・体験版(4話)までを一応予定。
・幕間は不定期に更新予定。
・原作と内容や戦闘の流れの一部が変わっているので、ご注意を。
・未購入の人には序盤のネタバレになります。
・皆もスパロボ。買おう。
以上の注意点に気をつけてご覧ください。
なお、12月ということもあって仕事が忙しくなってまいりましたので、スパロボ幕間の次の投稿は何時になるか分かりません。
ご了承お願いします。
※本編は1~2週間に1話のペースとなります。
半舷上陸を終えたドライストレーガーは『南原コネクション』の敷地から再び空中に浮かび上がると、背部のノズルから炎を噴出しながらその2キロ弱ある巨体を前へと進ませる。
その戦艦が次に赴く先は東京。その目的は未だ全体に伝わっていないが、乗員達は南原コネクションで得たコン・バトラーVやバトルチームとこれから来る新たなる戦力と仲間達に期待が高まっていた。
「おーい、アルフォンスっつったか? お前、異世界から来たんだって?」
「こことは異なる世界という意味では合ってますよ。どうしました?」
ドライストレーガーの格納庫でアルはコン・バトラーVのバトルチーム。そのリーダである『葵 豹馬』に声をかけられた。
『異世界から来た』という街中で使えば精神病院行き待ったなしなパワーワードにアルは苦笑を漏らしながら肯定すると、豹馬の横からバトルチーム唯一の女性である『南原 ちずる』が何かを期待するような表情でアルに迫ってきた。
「じゃあ魔法も使えるって本当なの!?」
「……ちずるさんが思ってるようなファンシーな呪文とかじゃないですけどね。音割れもしませんし、サブミッションもまだまだですし。あ、リリカルト○レフならできますよ?」
女の子と魔法という取り合わせに、アルは日曜日のテレビアニメのようなファンシーな魔法使いか、肉弾戦で悪と戦うヒロイン達か、相手を魔法で縛り付けて周囲の魔力をかき集めて砲撃する白い悪魔ぐらいしか思いつかなかったが、目の前の女の子的にファンシーな魔法使いだろうとアガートラムを纏った手の人差し指から小さな火の玉を顕現させる。
「なんや? 手品かいな」
「どこにタネがあるっと?」
バトルチームの『浪花 十三』や『西川 大作』の声を聞きながらアルはクスクスと笑いながら、人差し指の少し上に浮かぶ火球を維持しつつ、中指から薬指と開いていってはそれぞれの指の上に火球を生み出していく。小さな声で『メラ○ーマ』と呟くが、反応する人間が居ないことからアルは少し悲しくなった。
やがて、5本の指の先からそれぞれ火球を生み出したアルは、それらを一気に消滅させると『タネも仕掛けもございません』と礼をする。
「も、もう一度見せて下さい! なにか指に仕掛けでもあるんですよね?」
「いや、本当に仕掛けも何も無いんですけどね」
バトルチーム中で最年少かつ、IQが200もある麒麟児の『北 小介』が興味深そうにアルの周囲に仕掛けがないのか探るが、何も出てこないことに落ち込んだ。アルからしてみれば単純に演算してそこに魔力を流し込んだだけなのだが、ふとセッテルンド大陸に住まう人特有の感覚があったことを思い出した。
「すみません。僕達……というか僕の居た所では脳内にとある演算領域があるんですよ」
「演算領域?」
「はい、そこでパソコン言語みたいに処理を組み合わせて魔法を顕現させます」
「俺も説明聞いたが、そこが良く分かんねぇんだよなぁ。脳内っていうのが全然分からん」
「そうそう。メイヴィーさんが端末でスクリプトを使った説明をしてくれたおかげでイメージ沸いたけどね」
いつの間にかジークン達もその話に加わっていたらしく、それぞれがアルの魔法についての感想を漏らす。
だが、ほとんどが演算を行うための仮想的な演算領域、『
「ねぇ、他に魔法は無いの?」
「そういえば、私達も火球を見せてもらっただけで他の見せて貰ってないなぁ」
「それじゃあ、ついでですから色々見てもらいましょうか。異世界軍も白兵戦仕掛けたりしそうですし」
そう言うとアルはパッチワークの側に歩いていき、パッチワークの操縦席に置いていたサンパチを持って帰ってきた。その頃にはメカニックの数も増えており、いつの間にか甲児やアズをはじめとしたパイロットや陸戦隊の面々も集まって来ていたので『あれ、事前説明の意味は?』と若干疑問に思いながらもアルは再び説明を行うべく彼らの前に立った。
「えー、ではまずはポピュラーな炎系統から。これは破壊力が高いので、仮に騎士と対峙する場合は遮蔽物に身を隠すこと」
「視界を奪うのはダメなのか?」
「基本的に演算するので、視界を塞いでも自身の手前に大爆発を起こすように演算されたら終わりです」
どこからとも無く閃光手榴弾を取り出した陸戦隊の隊長に周囲が『何で持ってるんだ』という不審者を見るような目を向けるが、アルは問題点を提示しながら甲児に自身を取り押さえるように頼みながら目を閉じた。
「え、良いのか? 大人だぞ?」
「ええ、取り押さえられるならやってみてください」
そう言いながらココアシガレットを嗜んでいるアルの舐め腐った態度とクソガキ感満載の口調に少しカチンときた甲児は、例えわざとだろうが手加減は一切しないとばかりに抜き足差し足とアルの背後に回る。
アルの背後を取った甲児は、念には念を入れて靴を脱いで足音を完全に消してから一気に飛び掛る。しかし、アルにたどり着く直前で謎の風によって甲児は押し返されて勢いがついたまま床を滑るように倒れた。
「す、すみません。大丈夫ですか?」
「いてて……。大丈夫だが、さっきのあれはなんだ?」
「周囲に大気の壁を作ったんです。言うなれば、バリアー? ですかね」
ココアシガレットを最後まで噛み砕いたアルは、身体強化を使いながら甲児の手を取って一気に引き上げる。成人男性を軽々と引っ張るアルの膂力に、実際に引っ張られた甲児や陸戦隊の面々は目を剥くが、バトルチームは『バリアーってすげぇな』と感想を漏らしていた。
「次はさっきも使った風系統です。主に不可視なので危ないですよ。誰か、盾を持って構えてください」
「俺がやろう」
アルの指示に陸戦隊の隊長が背負った盾を前面に構える。先ほどの閃光手榴弾といい、用意の良すぎる隊長に周囲がどん引きしていたが、アルはサンパチを構えると
「ほほう、これが魔法か。若干手が痺れるな」
「さっきのが単発です。これから演算方法を変えます」
痺れた手を振っていた隊長を余所に、アルは集団から少しだけ離れると膝立ちでサンパチを構える。『勢いが強いので、ちょっと離れてください』という避難勧告の後、アルは先ほどの
その構えからライフルの大会で優勝経験のある十三の目が厳しくなり、アルから放たれるプレッシャーに隊長は思わず息を呑む。
「エアロダムド スナイプショット」
やがて、凝縮が終わった魔法が放たれる。先ほど凹んだ部分のすぐ隣に着弾した大気の砲弾──いや、周囲の景色が歪むほどに凝縮された大気の小さな塊は着弾すると共に先ほどとは比べ物にならない轟音と共に盾を持った隊長を吹き飛ばした。
「ほぼ見えない狙撃か。こら、難儀やで」
「基本は皆さんの想像する杖で魔法を放ってくるので、杖さえなくせば無力化できますがね」
異世界の騎士のレベルの高さに舌を巻く十三にアルは無力化の方法を教えるが、先ほどの魔法攻撃は
「後は雷系統ですが、飛距離は短いし演算は面倒くさい代物です。ですが、金属の盾で受ければ感電させれますし、射程内の敵にはほぼ百発百中です。……危ないのでこれは止めときましょう」
「そうしてくれ」
先ほどの魔法によって拳大ほどの大きさに凹んだ盾をどこかへ片付けながら隊長は騎士という規格外の兵士についてため息をつく。炎や大気を自由に操り、演算によって威力や射程距離も自由自在。
さらにメカニックに聞けば常日頃から大気を操る魔法によって格納庫を縦横無尽に駆け回っているこの少年の話をよく聞くので、機動力も並の人間では勝負にならないほどある。もし、そのような輩が白兵戦を挑んできたらどのぐらいの被害が出るか恐ろしくなってきた隊長は、アルに『騎士を無力化する方法』を問いかけた。
「狙撃で相手の頭を狙うのが一番手っ取り早いです」
「君は……修羅の世界から迷い込んできたのかな?」
確かにそれを行えば無力化するのに手っ取り早い。そもそも頭部が無ければ生物として既に終わっているので無力化は出来ているのだが、取り押さえる方法を聞こうとしたら何故か『仕留める方法』を言ってきたアルに、隊長はつい聞き返してしまった。
「ああ、取り押さえ方ですか。まずはなんといっても杖です。基本的には先ほど僕が言ったように、皆さんが想像する木で様々な装飾がなされた杖なのですが、たまに僕のような変わった杖を持ってる人がいることも念頭に置いて下さい」
「たしかにアルフォンスのは杖というより、銃っぽいな」
「後はその腕につけとるやつからもさっき炎を出してたばってん」
説明の所々でジークンや大作が興味深そうにサンパチやアガートラムを見るので、アルはそれらを貸しながら説明を続ける。一般的な杖の形状を始め、材質や銀製の物が多い理由といったことを話したアルは、隊長から白兵戦用の大降りのナイフを借りつつ隊長が先ほど片付けていたベコベコの盾を引っ張り出してきた。
「銀が魔力を通しやすいのは事実ですが、鉄や合金が魔力を絶対通さないわけではありません。なので細工をしながら無理矢理魔力を通すことでこのようにっ……突き立てることも出来ますっ!」
「うへぇ、盾にナイフが刺さったぜ」
ナイフの柄に
「なので、杖っぽいものが無くても決して油断しないでください。僕の杖のように杖っぽくない物……指輪や舌の先にリングを付けたりと、魔力を通す材質の先に媒体があれば演算次第で様々な魔法が使えます」
「デタラメ人間の万国ビックリショーかよ」
あまりの規格外ぶりに陸戦隊の1人が呆れるが、これはセッテルンド大陸では『優しい方』である。西方のセフィーロという国では、触媒結晶なしの魔法の行使を始め、どこからともなくロボットを召喚したり、氷や癒しの力という攻撃的な魔法しか出来ないフレメヴィーラ王国の魔法とは形態が違う魔法があったりと色々規格外なのだが、説明できる自信が無いのでアルは黙っておいた。
「ほんと、楽に無力化するならドタマに一発叩き込むしかないですよ?」
「……一応検討してみるか」
アルは再度、身体機能を停止させる無力化方法を上申すると、これまでの様々な魔法現象と杖による武装解除の困難さを知った隊長は嫌々ながらも肯定的な意見を見せた。
そんな過激なことを言うアルだが、アル自身も実は人を殺すというのはかなりの躊躇いがあったりする。しかし、『自分に出来ることは相手も出来る』というマイナス思考特有の奇妙な謙遜の精神の下、仮想的をアル自身にするとあの手この手で逃げられた挙句に味方に多大な被害を及ぼすと危惧したので、先ほどのような過激なことを言ってしまったのだ。
ただ、補足をするとそのような器用なことが出来るのはエルやキッド、アディといった『ロボキチと愉快な仲間達』や騎士団の上位層のみなので、アルの考えは杞憂であった。
「次は、エンブレム・グラフについてですね。魔力の通し方的に専ら銀が使われていますが、術式を刻んで魔力を流すことで魔法が発動するんです」
「魔法陣! 魔法使いっぽい!」
「ちずるさん、アルフォンスさんに魔法陣は分からないのでは? えーっと、魔法陣って言うのは……」
「ああ、魔法陣は分かりますよ。これは、縦とか横の数字を全部足した時に同じ値になる奴とは異なるものですがね」
『魔方陣』も知っている様子に甲児が『こいつ本当に異世界人かよ』とツッコムが、あえて何も言わずにアルはパッチワークの側に置かれた
「これは火の玉を出すエンブレム・グラフです。規模や威力を大きくするごとに必要なエンブレム・グラフに刻むスクリプトの大きさや消費魔力も異なりますが、魔力を通すだけで魔法が発現するので陽動にはぴったりなんです」
そう言いながらもアルが銀板の少し上に火の玉を出したり消したりする様子に、アズやちずると言った魔法使いに興味があるお年頃の子は目を輝かせながらその火の玉を食い入るように見つめる。それとは逆に、すっかり現実主義になってしまった大人達は遠隔操作による攻撃の登場に戦々恐々していた。
「アル。アル。箒で空飛べないの? モップでもブラシでも良いけど」
「アズ、そんな目で見ても魔法は万能じゃ。……あ、いけそう。やってみるか」
キラッキラッする女性陣の目に、自分のイメージがクール系パイロットから黒猫と共に旅に出る系魔女のそれになっていくことを危惧するが、ふと出来るのではないかと思ったアルはそそくさと格納庫の片隅からモップ掛け用のモップを引っ張り出す。
そのまま
「最後は身体強化です。騎士は絶対に習得しているので、これも注意ですね」
「どういった魔法なんです? 名前からパワーアップのような気がしますが」
小介の質問にアルは端末からとある漫画のワンシーンを表示させる。それは怒りによって超パワーを会得した主人公のシーンで、『これと似たようなものですね』と言いながらアルは全身に身体強化を施す。
筋肉の制御を始め、迸る力に内部構造が崩れないように骨格や皮膚の補強を行ったために少し倦怠感を感じるアルだが、近くに居た陸戦隊の隊員に組み手をしようと提案する。
「いや、さすがに大人と子供……」
「じゃあ退け、俺がやる。アルフォンスも弱い魔法込みでやってくれ! 改めて騎士の脅威度を測りたい!」
大人と子供の組み手など危なすぎて許容できない隊員に、隊長はその隊員の肩を掴んで無理やり退かせる。両者は無言で構えると、甲児が集団を遠ざけながら2人の中心に歩み寄り、片手を天に掲げた。
「はじめ!」
「エアバレット キャニスタショット」
振り下ろされる腕と共に告げられた開始の声に、先制攻撃としてアルはアガートラムを纏った腕で目の前の空間を殴りつける。すると、大気を圧縮した弾丸が
「シィッ!」
そのまま鋭い風切り音と共に隊長の右ストレートがアルの顔面目掛けて飛んでくるが、身体強化に加えて
豹馬の察したとおり、金属をまともに叩いてしまった隊長の顔が歪み、その僅かな隙にアルはアガートラムの手の平を隊長の方に向けて魔法を放つ。
「ソニックブーム」
手の平の先を一時的に真空状態にしたことにより、大気が戻る際の衝撃波が炸裂音と共に隊長を後方へ吹き飛ばす。吹き飛ばされながらも足を踏ん張ることで体勢を立て直した隊長だったが、彼の目の前には既に
顔面まで迫る小さな拳。だが、先ほどの魔法をガチガチに固めたであろうその鉄拳が顔面に叩き込まれる前に、隊長の手はアルの拳の横をするりと抜けて騎士団の隊服の袖に手をかける。
「ちっくしょうが!」
「なんのっ」
気合と共に袖を強く引っ張ることでアルの突進力をそのまま利用した力任せのぶん投げ。隊長の手が離れたことでアルは近くの壁に叩きつけられ──ることはなかった。
「うひゃー、あれを避けるのかよ!」
「もはや格闘漫画の世界ったい」
上半身を深く落としこんで攻撃を避ける様に、ケンカの血が騒ぐのか豹馬は興奮しっぱなしである。攻撃を回避したアルは、なぜか硬く握った拳を解くと拍手をするように左右の手を開いてから飛び上がる。
そして、隊長の目の前で開いた左右の手同士を激しく打ち鳴らした。
「ねこだまし!?」
両手が手甲で守られているので硬質な音になってしまったが、隊長を怯ませることに成功したアルはそのまま拳を突き出す。どう反応しても避けれないことを確信したアルは、組み手ゆえに拳の速度を緩めて寸止めに入ろうとする。
だが、その時。
閉じていたはずの隊長の目はぎょろりと大きく見開かれると、アルの拳を掴んで力任せに手首を極めはじめた。その尋常じゃない痛みにアルは悲鳴をあげる。その悲鳴はアズやちずるといった女性陣が耳を塞ぎながら目を閉じるのに十分な声量だったが、隊長は悲鳴が聞こえていないのか決して極めた手首を離すことなくそのまま信じられない行動に移っていった。
「ばっ……! やり過ぎだ!」
腰のホルスターから拳銃が引き抜かれ、アルの頭に銃口が添えられる。明らかにやりすぎな行動に甲児や豹馬といった男性陣が飛び出すが、痛みに耐えながらもアルは隊長の顔や行動を見て顔を青ざめた。
一切の光が無く、まるで深遠のような空ろな目がアルを見ていた。口の端を限界まで吊り上げ、さらにあろうことか拳銃の引き金を引こうと徐々に力をこめている。
必死に演算をしようとするが、肩が脱臼しそうなほどに極められたことで満足いく演算が出来ない。万事休すかと思われた時──。
「おらぁ!」
「なにやってんですか! 子供相手に!」
「うわ、この人引き金に指をかけてるぞ!」
甲児の飛び蹴りが炸裂した。全体重を乗せたキックが隊長の横顔にめり込み、続けざまに奪われないように武器類をその場に置いた陸戦隊の面々が隊長の身体を抑え込みにかかる。
やがて、隊員の1人が隊長の手から拳銃を奪い取る。拳銃を奪い取る際に隊長の指が数本ほど折れるが、隊員は些細なことだとばかりに奪い取った拳銃のスライドを何度も引くことでマガジン内の銃弾を全て格納庫の床にぶちまけ、すぐに使用できない様に拳銃を分解して床に放り投げた。
「うぐっ! な、なんだお前ら?」
「隊長、あんた何やったのかわかってるんですか!」
そこでようやく言葉を発した隊長のあまりにも能天気な内容に隊員は口々に罵詈雑言を浴びせる。組み手という約束事を反故し、あろうことか拳銃を取り出して突きつけたのだ。今回は甲児や陸戦隊が間に合ったが、万が一という次元の話ではない。
そこにアルが甲児に背負われた状態で近づいてきた。てっきり怒ったり非難すると思わっていた陸戦隊だったが、アルの発した言葉の内容は『確認』だった。
「隊長さん、僕を取り押さえたことは覚えてますか?」
「ん? いや、ねこだましされたところまでは覚えててるが……俺は君を取り押さえたのか? 覚えが無いのだが」
「はぁ!?」
『自覚は無い』という話に隊員達からだけではなく、格納庫に居た全員からの非難が強くなる。その中ではアルは、取り押さえた際の隊長の様子に大きな違和感を持っていた。
空ろな目にアルの叫びに全く動じない精神性や拳銃を引こうとする明確な殺意。それらが今の隊長からはまったくと言っていいほど感じず、まるであの時の隊長に何かが乗り移ったかのような感覚を覚えたアルは背中がじっとりと冷たくなっていく。
その後、隊長は自らドライストレーガーのブリッジに出頭。モニターから様子を見ていたのか、ミツバが深刻そうな表情を浮かべる横でレイノルドが動機を尋ねるが、『分からない。急に頭に靄が掛かって気が付いた時には……』と何度も思い出そうと壁に頭を打ち付けるほどの狼狽えぶりに、再び拘束されることになった。陸戦隊も臨時の隊長が業務を引き継ぎ、元隊長は次の補給で地球連邦軍によってドライストレーガーから下ろされることでこの話は終わりとなった。
ただ、アルが魔法に対してレクチャーしたこの日を境に、異世界軍の騎士に対する陸戦隊からの印象が『超危険人物』に変わることになった。そして、実際にオセアニアで相対した騎士に対して陸戦隊がフル装備で『地球なめんなファンタジー』を敢行。シルエットナイトから這い出てきた騎士を四肢を撃って無力化していくことでトントン拍子に捕縛されるといった結果に終わるのだが、この時の陸戦隊は知る由もなかった。
~side ???~
ミツバの目を通して見ていたが、あの下僕はなんだ。私の指示に一切の反応を示さず、なおかつ高い戦闘能力を秘めたあの規格外な地球人は。
あの時はその戦闘力の高さについ処理をしようと下僕に指示を与えてしまったが、今となってはその判断は早計だったと悔やまれる。
……だが、案ずることは無い。違和感に気付いた者が居ても集団による意識の前には無力だ。じきに気のせいだと認識せざるを得ない。
しかし、あの地球人。いや、あやつは自らを異世界人といったか? あれはいずれ確実に処理せねば……。