銀鳳の副団長   作:マジックテープ財布

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126話

 日を改めたエルがシュレベール城へ登城し、リオタムスから銀鳳騎士団の新たな姿について説明が行われている頃。幻晶騎士(シルエットナイト)作りの聖地(メッカ)の1つであるデュフォールの会議室では、アルと所長のオルヴァーが資料片手にガイスカを筆頭とした騎操鍛冶師(ナイトスミス)集団の説明を聞いていた。

 

「──で、あるからして。この機体に詰め込んだ思いは"生存性"であります。そのために些か外れやすいという問題があったオプションワークスの排除。アタッチメント部分は頑強な固定式に入れ替えています。また、マギウスジェットスラスタによる短時間かつ長距離移動の実現。さらに、全身のシルバーナーヴやストランド・クリスタルティシューに2本目を用意することで、過激な操縦から断線を抑制する機構を取り付けております」

 

「素晴らしいの一言ですね」

 

 説明を聞き終えたアルは、手放しで機体を褒めた。

 試作型指揮官機。機体コンセプトは先の説明にもあった通り、『生きて帰ってくる性能を突き詰めた機体』である。

 その何が何でも騎操士(ナイトランナー)を生存させるという想いは機体の各所に散りばめられており、『カラングゥール』という近接に比重を置いた改造が為された機体を素体にしたのも贅沢な話だが、なんといっても一番特徴的なのは左右の肩部と後ろ側の腰部から2基伸びる、計4基魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)の存在であろう。

 これらの魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)によって接敵時には相手の攻撃や間合いから逃れることが出来、撤退時には高速での移動によって伝令や再編の指揮をいち早く行うことが可能となっている。

 

「比較的新しめのマギウスジェットスラスタを取り入れることもさることながら、カルディトーレ系統の強みの一端を担うオプションワークスを取り外すのも冒険しましたね」

 

「はい。我が孫娘ながらそちらの騎士団でなにやら悪いことを覚えこまされたらしく、最初はこれよりもかなり……アレでしたので」

 

 『アレ』と称された内容が若干気になったオルヴァーだが、藪を突いて魔獣が出かねないのでそれ以上の言及を避けると改めて書面に目を通す。

 カルディトーレの装備である追加装備(オプションワークス)。様々な武装を追加することによって任務や隊の特色ごとに武装を変更できる画期的な装備群であった。

 ただ、アタッチメント越しに機体と様々な武装が接続する関係上、どうしても整備面や被弾時においての欠落のしやすさといった些細な不満点が出てきていたのも事実で、今までの国立機操開発研究工房(シルエットナイト・ラボラトリ)はそういった不満を少数派として『じゃあ、使わなきゃ良いじゃん』と非常に心苦しい選択を強いられてきた。

 

 しかし、この機体は『ならば種類は不要』とばかりに武装を固定化と非常に潔い。これならば、点検する武装の種類も1種類しかないので整備がしやすいし、しっかりと固定されていることから騎操士(ナイトランナー)も武装や重要部品の欠落を気にせず戦うことが出来る。

 

「僕としては操縦負荷の分散機構が好感度高いですね」

 

「ベヘモス事変の際にそちらの中隊長の機体が整備直後であったにも関わらず、クリスタルティシューがパーツ単位で疲労断裂が起こっていたという情報を孫娘から聞きましてな」

 

「デシレアさん、貴女こっちでなに勉強してきてるんですか」

 

「あたしはただ、ダーヴィドや他の騎操鍛冶師(ナイトスミス)から話を聞いただけだよ。騎士のあんたらには分からないかもしれないけど、騎操鍛冶師(ナイトスミス)にとってパーツの疲労による自壊で幻晶騎士(シルエットナイト)が大破するのは稼働率と損耗率を満足に計算できない半端物ってことなんだよ? 当時から居るやつら、結構気にしてたよ」

 

 銀鳳騎士団が諸悪の根源とばかりにガイスカが言ってくるが、アルも彼女自体の高すぎるやる気が原因だろうと疑問を投げかける。すると、デシレアは騎操鍛冶師(ナイトスミス)の観点からベヘモス事変後のグゥエールについて述べてきた。

 騎操鍛冶師(ナイトスミス)にとって幻晶騎士(シルエットナイト)は自身の腕と誇りをかける対象である。当然、自身の担当する機体や乗り込む騎操士(ナイトランナー)の癖や各部位の使用頻度は熟知しているし、そこから癖を強みに昇華させる改造も仕事の内だ。

 そんな彼らに綱型結晶筋肉(ストランド・クリスタルティシュー)が未だ無かった時代とはいえ、オーバーホールしたのに魔力不足や疲労断裂で自壊した機体を見せられたらどうなるだろうか。

 今では蓄魔力式装甲(キャパシティフレーム)板状結晶筋肉(クリスタルプレート)といった魔力を貯蓄する技術も発展し、綱型結晶筋肉(ストランド・クリスタルティシュー)も未だ発展中なので、マガツイカルガでも相当な無茶をしなければ疲労による各部位の損傷といった不祥事は無いだろうが、それでも当時の騎操鍛冶師(ナイトスミス)の記憶には消し難い汚点が残っていた。

 

「だから少しでも壊れにくいように"予備"を作ったの。例え、あの規格外な騎士団長が乗っても壊れないように。でも、まずは──」

 

「僕が乗って壊れないかの心配ですね?」

 

 言いたいことをアルが言ったからか、デシレアは『当たり!』と元気良く答える。

 そんな騎操鍛冶師(ナイトスミス)の執念のようなものを感じたアルは、まずはここまで作り上げてくれた騎操鍛冶師(ナイトスミス)に感謝を述べた後に具体的な試験を詰めていく。

 

「そういえば、現地に行ったやつらからシルエットナイトと何かを合体させたって話出てたんだが、本当かい?」

 

「本当ですよ。原理としては──」

 

 その最中、ふとボキューズ大森海から早めに帰還した騎操鍛冶師(ナイトスミス)達の報告で『合体』という新たな技術の審議が問われる。新たな新技術の予感に鼻息を荒くしながら周囲に集まってくる気配を感じたアルは、『後でやります』と言えるような状況ではないことを悟って先に合体に対する説明を始める。

 またしても新技術の検証と納期の対応に追われそうな予感に、オルヴァーは『またかー』と母国の軍事力が高まる期待と所長ゆえに各方面への対応という悲哀が入り混じった表情で彼らを見つめるが、彼の視界の端を体は老人、頭脳と腕は一線級、そして心は少年といったちぐはぐな存在が非常に喧しく自己主張をしている。

 

「所長、ワシも……」

 

「もう、御好きになさってください」

 

 もはや『新技術大好き爺さん』と化したガイスカを放出したオルヴァーは、ひとまずマガツイカルガの合体機構を検証する旨をリオタムスに報告するために部屋を後にする。

 度重なる議論と『おれこっちやりたい!』、『あぁ? お前がやれよぉ!』といった興味が出た部分をやりたいという我が侭を押し通す腕力の末、デシレアから試験監督官の任を(強制的)に押し付けられた騎操鍛冶師(ナイトスミス)を主軸とした運用試験班が結成された。

 

 ちなみに腕力や就いていた元の権力によって自由を勝ち取った一部の騎操鍛冶師(ナイトスミス)+αは、合体機構の検証として『降下用追加装甲(ヘイローコート)をもっと大きくし、降下という限定的な使い道から陸上機を空に上げる装備に出来ないか』という多少マガツイカルガの能力に引っ張られた構想を練り出したのだが、それを見ていたアルは『説明しただけだし、俺しーらね』とばかりに口笛を吹いて無視した。

 

 そんな紆余曲折があったが、次の日から試作型指揮官機の運用試験は幕を開けられた。

 

***

 

 デュフォール前の広大な草原の前では1機の鉛色をした機体が静かに佇んでいる。その周囲には騎操鍛冶師(ナイトスミス)構文師(パーサー)といったこの機体に携わった者達が、かの機体が動く瞬間を今か今かと待っていた。

 

「それでは、試作型指揮官機……"ニキチッチ"の稼動試験を開始します」

 

 すると、その機体の拡声器からアルが開始の合図を告げる。ニキチッチというのは、昨日の試験内容を詰める時に『呼び名がないと不便』ということで、またもや雑学オタクが火を噴いた名前である。

 元はキエフの三兄弟という前世の物語に出てくる登場人物で、『栄光』といった良い意味の名前を持つというのが1割の理由。その他9割は詳しい話は省くが、『既に朽ちた肉体をなんやかんやして再構築しながら冥府から舞い戻る』や、『心臓はめ込んだら生き返った』という物語があるぐらいに生命力が半端ないという理由からである。

 

 閑話休題。

 片手で試験行程に書かれた操縦席内のチェックリストを見ながら、もう片方の手で指差し点検をしていたアルの耳に拡声器越しの騎操鍛冶師(ナイトスミス)の声が届く。

 

「立ち上がりの確認が取れ次第、駐機体勢と直立体勢を5セットお願いします」

 

「分かりましたー」

 

 まずは挨拶代わりに基本姿勢である駐機体勢と直立体勢を反復させる。この試験項目だが、仮にNGが出た場合は国立機操開発研究工房(シルエットナイト・ラボラトリ)騎操鍛冶師(ナイトスミス)は確認も出来ないヘボという烙印が押されるほど超基礎的な項目である。

 しかし、万が一があっては困るという騎操鍛冶師(ナイトスミス)達の熱い要望でねじ込まれた試験をアルは念入りに声掛けをしながら実施していく。特に何の苦もなく駐機体勢と直立体勢の反復が終わると、次は肩部の稼動域テスト。その次は股関節の柔軟性テスト。そのまた次は五指を小指から順番に握りこんでいくテストと、アルは基本的な試験を順調に消化していく。

 

 なお、ちょっとだけ某機動戦士なプラモデルの稼動域の広がりによるポージングの多様化に目を輝かせていた前世の記憶を思い出したのは秘密である。

 

「続けて3秒間全力疾走、その後急停止。……もちろん"本気"で構いませんよね?」

 

「はい、そうでないと副団長殿を呼んだ意味がありません」

 

「ナイトスミスはあらかじめ班毎に集合!」

 

 ある程度基本操作の試験が完了した頃、いよいよ実践的な試験に入る。『本気』という言葉に今一度真剣な面持ちでニキチッチを見た騎操鍛冶師(ナイトスミス)達は、それぞれ幻晶甲冑(シルエットギア)に搭乗してあらかじめ決められた班に分かれていく。

 彼らは全力疾走後の脚部を即座に診断することで、直接制御(フルコントロール)──エル達が持つ異能による機体の負荷を検証する役目を担っている。最初は3秒と言う短時間での検証だが、これで綱型結晶筋肉(ストランド・クリスタルティシュー)が2本ごと千切れ飛んでいたらニキチッチはお蔵入りとなってしまう。試験の行く末を見守る騎操鍛冶師(ナイトスミス)達の間に嫌が応にも緊張が走る。

 

 彼らが見守る中、直接制御(フルコントロール)によって機体を掌握したアルは、ニキチッチにクラウチングスタートの構えを取らせる。

 

「3秒後、足裏のスパイクを忘れずに!」

 

「了解! …………行きますっ!」

 

 瞬間、まるで陸上競技の選手のような綺麗なフォームでニキチッチは平野を駆ける。カルディトーレよりも速く、力強い加速に全員の目が皿にように見開きながらニキチッチを追いかけていく。

 やがて、3秒という短すぎる時間を経たニキチッチの足裏からは機体固定用のスパイクが展開され、地面を削り取りながらも徐々に速度を緩めていき、しだいに停止した。

 

「状況確認開始! 副団長殿はそのまま待機でお願いします!」

 

「おら、急げ急げ急げ!」

 

「装甲外すぞ!」

 

 試験監督官から発せられた拡声器の声を合図に、十数は下らない幻晶甲冑(シルエットギア)の群れがニキチッチの脚部に取り付いていく。あらかじめ外れやすいような作りにしてあったのか、バカリと開かれたニキチッチの内部に張り巡らされた綱型結晶筋肉(ストランド・クリスタルティシュー)と綱状の銀線神経(シルバーナーヴ)をパーツごとに検査していく騎操鍛冶師(ナイトスミス)達。魔導光通信機(マギスグラフ)から発せられる光で照らしながら少しの損傷も見逃さないように注意深く確認する。

 時間にして数十分。ようやく騎操鍛冶師(ナイトスミス)達が一斉に顔を上げると、頭の上で大きく『○』を作った。

 

「全部無事だ! 損傷なし!」

 

「まだ喜ぶなよ! たった3秒の全力走行が成功しただけだ!」

 

 分散目的で取り付けられた『2本目』も含めて劣化は無いという嬉しい結果と相成ったが、たった3秒という短時間では試験の入り口にもなっていないと試験監督官は檄を飛ばす。

 結局その後は10秒、30秒、1分と全力疾走をする時間が増えていくが、2本目の存在によって負荷が分散されているからだろうか機体が即時壊れるほどの損傷は見受けられなかった。

 ついには1日かけてデュフォールの外周をひたすら回っていたニキチッチからようやく部品の劣化が見受けられ、カルディトーレよりも負荷に強いという輝かしい結果にアルを含めた騎操鍛冶師(ナイトスミス)達は歓声をあげて喜んだ。

 

 そして夜が明け、頑強さが証明されたニキチッチが次に挑むのは本機に取り付けられた固定装備の試験である。

 

「サロドレア持ってきましたよー!」

 

「よーし、そこに停めてちょっと来てくれ」

 

 デュフォールの門からウォーハンマーを持ったサロドレアが歩いてくる。騎操鍛冶師(ナイトスミス)が集まる付近まで近づいたサロドレアはニキチッチと相対するように向きを調整し、胸部装甲を開きながら停止する。

 そのまま胸部装甲から地面に降りてきた騎操士(ナイトランナー)は、試験監督官とアルの前で気楽げに挨拶を交わした。

 

「あ、お疲れ様でーす」

 

「おつかれっす。いきなり骨董品のサロドレアに乗って来いって言われて驚きましたよ。もうこの国はカルディトーレに置き換わっているってのに」

 

「腕の固定武装がどの程度の攻撃に耐えられて、どのぐらいの質量を引っ張れるか分からんからさ。カルダトアだと怖いから、ひとまずデュフォールにある中で一番旧式のサロドレアで1回試してみよう」

 

 『ウィッス』という軽い返事を残した騎操士(ナイトランナー)は再びサロドレアをよじ登っていき、アルもまた自身の魔法で一気にニキチッチの操縦席に飛び込んだ。

 しかし、アルはそのまま操縦席に座らず、操縦席周辺に剥き出しの状態で置いていた銀線神経(シルバーナーヴ)の束を掴むと再び外に出て地面に着地する。

 

「その技術、本にしたら売れそうだね」

 

「感覚でやってる部分が多いんで、コツが上手く文章化出来ないんですよ」

 

 銀線神経(シルバーナーヴ)越しに直接制御(フルコントロール)を行うことで操縦席に座らずとも機体を操作できる術に騎操鍛冶師(ナイトスミス)達が羨ましそうにアルを見る。ただ、この遠隔操縦はアルでも机上の理論から形作り、そこから習熟するのにかなりの時を要した技術である。

 一方で彼の片割れはホイホイと習得していき、あまつさえその技術を全然使っていないのは腹立たしいが、それを抜きにしても本来は直接制御(フルコントロール)前提の難解な技術である。なので、仮に本にしても『前提条件の時点で意味不明。かつ、非常に限定的な有用さ』という評判を予想したアルは適当な言い訳をする。

 

 会話をしていながらも直接制御(フルコントロール)による遠隔操縦は続けており、ニキチッチの両腕をクロスさせて防御体勢を取らせる。サロドレアもウォーハンマーを構えてニキチッチの正面に立つと、『いつでも行きますよ』と準備完了の声を上げた。

 

「十分離れたな? ……よしっ、副団長」

 

「"簡易ラーフフィスト"の耐久性テスト、開始!」

 

 開始の宣言と共にサロドレアはウォーハンマーを振りかぶると、一気にニキチッチの両腕に振り下ろした。金属同士が激しくぶつかり、車と車が衝突したかのような轟音が平野を駆け抜ける。

 稼動時の負荷にはかなりの強靭性を見せたニキチッチ。しかし、外部からの攻撃にはどうなのかを試すためにこうしてサロドレアに攻撃してもらったわけ……なのだが、いささか新型幻晶騎士(シルエットナイト)を前に想像力が欠如し、こういった危険性がある試験は早まったかもしれないとアルを含めた騎操鍛冶師(ナイトスミス)達の脳裏に『人が乗っていた場合』のイメージが駆け巡る。

 ただ、『これに乗って魔獣を戦う以上はそういった試験もやらなければならないから』という論理武装をすぐさま施した彼らは、サロドレアに乗った騎操士(ナイトランナー)にハンマーをどかすように指示する。

 

「おいおいおい……。マジかよ」

 

 サロドレアがハンマーを手元に戻すにつれ、ニキチッチの防御していた両腕は顕になる。先ほどものすごい音と共にハンマーが叩きつけられた腕だが、装甲がひしゃげただけで各部位を形成する細かな部品や前腕部に取り付けられた『簡易執月之手(ラーフフィスト)』と呼ばれる固定式の武装は原形を留めている。

 攻撃を行った騎操士(ナイトランナー)も決して手を抜いてはいない。が、骨董品とはいえ幻晶騎士(シルエットナイト)の大質量攻撃を真正面から食らいながらもダメージらしいダメージを負っていないことに、彼は信じられないといった様子でニキチッチを見ていた。

 

「このまま稼動チェックに入ります」

 

「変な挙動をしだしたら、即座に試験中止を告げてください」

 

「的の用意を! サロドレアも的の横まで移動!」

 

 一見どこも異常がない風貌のニキチッチの操縦席にアルが座り込む。胸部装甲を何度か開閉することで直接的ではないにせよ攻撃を受けても開閉異常がないことを試験項目に記録した彼は、改めて幻像投影機(ホロモニター)の正面に移る的を見据えて操縦桿を動かす。

 幻像投影機(ホロモニター)にカルディトーレのような照準機能(レティクル)が表示され、それを的にしっかりと合わせてからアルは使用宣言と共にボタンを押し込んだ。

 

「簡易ラーフフィスト、発射!」

 

 右前腕部から生えた手首から生えている手とは異なる1本の手。それが炎の尾を生やしながら的へと飛んでいく。その手は遠く離れた的を掴むと、その腕が生えていた右前腕部のリールが激しく回転しながら手と前腕部を繋ぐワイヤーを巻き取っていく。

 

「このまま、強度を測ります。的を破壊しますがよろしいですか?」

 

「はい、やっちゃってください」

 

 許可が出たこともあってかワイヤーを巻き取る力がさらに強まるが、巻き取り装置も簡易執月之手(ラーフフィスト)やそれらを繋ぐワイヤーも何の異常も見せずに眼前の的を千切り取らんと出力を維持している。とてもじゃないが、先ほどウォーハンマーによる一撃を食らったとは思えない。

 

 すると、ようやく的を固定していた金属製の基部が騒々しい音を立てながら壊れ、固定を失った的は簡易執月之手(ラーフフィスト)の手の平に収まったままニキチッチの右前腕部へと連れて行かれた。

 

「すごい出力ですね。ワイヤーも特別製ですか?」

 

「デシレアさんがいうには、ストランド・クリスタルティシューと同じく綱型にしたシルバーナーヴ。あとは純粋な硬度を求めて鋼線をより合わせたそうです」

 

「そりゃ、こんな出力出て当然ですね。どうせ、マギウスエンジンにも手を加えてるんですよね? あんなことがあっても未だマナ・プールが8割ですよ」

 

「そうですね。一応、カラングゥールを素体にはしましたが、素体の部材や術式はほとんど別物に変わっているかと」

 

 幻晶騎士(シルエットナイト)からの全力攻撃に耐え、その後に固定武装の出力を上げながら使用したのにも拘らず、魔力貯蓄量(マナ・プール)が8割を切っていない状況に騎操鍛冶師(ナイトスミス)にどのような改造をしたのか聞いてみたアルはその『無茶苦茶ぶり』に銀鳳騎士団節を感じた。

 ほとんどを入れ替えたのなら、それはそれで素体としているといえるのだろうか。しかし、テレスターレも外見ごと中身をほとんど新技術を用いた部材に入れ替えた記憶から、アルはそれ以上話を追求すると自分のことを棚に上げたような気がしたので口を閉ざした。

 

「では、続けていきます」

 

「はい、次は──」

 

 その後も簡易執月之手(ラーフフィスト)を飛ばしたり、巻き取ったり、ふと良い事を思いついたアルが騎操士(ナイトランナー)騎操鍛冶師(ナイトスミス)に許可を取ってからサロドレアの装甲を簡易執月之手(ラーフフィスト)で掴み、そのまま巻き取ってニキチッチの側に引き寄せたりと実験は続けられていく。

 やがて本日の試験は無事に終わったのだが、結局のところ試験中に数度は巻き取り部品やワイヤーが破損するだろうと身構えていた騎操鍛冶師(ナイトスミス)達は、簡易執月之手(ラーフフィスト)の思わぬタフさに肩透かしを食らっていた。

 

 アルがデュフォールで試験を開始して早3日。機体や固定武装の性能はアルディラットやグゥエラリンデと比べると流石に専用機に軍配は上がるが、カルディトーレだと二回りほど強くしたような感じに思えた。

 だが、これは現状の評価である。最後に待っている魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)の高機動試験次第では、恐らくは銀鳳騎士団製の専用機にも手が届くだろう。

 改めて国立機操開発研究工房(シルエットナイト・ラボラトリ)の底力をひしひしと感じたアルは、明日に行われる最後の試験に向けて床に就く。

 

「アルフォンス様、アルフォンス様。お仕事です」

 

「ノーラさん、もう寝かせてください。明日に響くんで」

 

「今、この場で意識を落としてクシェペルカに向かいたいと? ……わかr「起きます!」」

 

 1日目は長旅や移動の疲れもあるだろうと温情を与えていた藍鷹騎士団だが、2日目でついに牙を剥く。ノーラという最大の敵を前に、アルは為す術なく机に向かうと一心不乱にクシェペルカへ送る手紙を書き出した。

 気分は夏休みの宿題を忘れて教師監視の下でやらされる学生であろうか。そんなアルの部屋から一晩中、添削を要求する赤○ン先生ばりの声や『意味が伝われば良いでしょうがぁ!』という嫌味ったらしい抗議の声が漏れていたという。

 

***

 

「えー、では最後の試験に……寝不足ですか?」

 

「シルエットナイトが楽しみすぎて眠れませんでした」

 

 次の日、集合地点に集まったアルの目の下にはクマが出来ていた。それについて尋ねる試験監督官だが、アルは遠足前夜の小学生さながらの嘘をつく。

 なお、未だに赤ペ○先生を従えるボスからの課題は出来ていない。今夜も徹夜確定であった。

 

「じゃ、まずは軽いのからやってみようか。No.5から10はちょっと重いからNo.1とかで起動と稼動チェックやってから一気に11に飛んでって感じかな」

 

「了解です」

 

 試験の説明を受けたアルはスルスルとニキチッチの操縦席まで上り、あっという間に機体の起動を果たす。ここからは説明にもあったとおり、まずは肩部や腰部の魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)を起動しては終了といった反復試験から行っていくために彼は操縦桿に手をかけた。

 魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)特有の音が少々騒々しいことに気付いたアルは、不備かと思ってチラリと魔力貯蓄量(マナ・プール)を見る。先日の実験を経験したからか、起動と終了を連続して行っているだけにしては魔力の消費量が多い──気がした。

 

(4基ならこれぐらいかな? 音も改めて聞きなおしてみるとこのぐらいだった? 気がする)

 

「よーし、それじゃあ上下左右にスラスタ位置を変えてくれー」

 

 魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)の根幹や使用魔力といった詳細なデータは銀鳳騎士団の一部のみしか明るくない。当然、アルも知っているからこその違和感だったが、国立機操開発研究工房(シルエットナイト・ラボラトリ)の最新機なので不具合が出る前から無闇に口を出すのも悪いだろうという認識を抱いたアルは魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)に繋がっているサブアームを上下左右と順番に動かし始めた。

 

「よし、OK! ついでに速く変えてくれるかい? ……そうそう、それを何セットか! …………部品欠落なし!」

 

 もはや振り回すような速度で魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)の位置を変えていき、それだけ振り回したにも拘らず部品の欠落が一切無いという結果を確認した試験監督官は手元のチェックシートに『レ』というチェックを入れる。ここからさらに魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)を起動させた状態でサブアームを振り回すというテスト項目があるのだが、最初に説明があったように通常運用から確認を行うため、ニキチッチは開けた場所へと移動する。

 

「じゃ、No.11の走行中にスラスタを使った加速と急停止から」

 

「分かりました」

 

 本機の目玉である魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)を用いた基本行動の1つ。それを実践できるという旨の高鳴りと共にアルはニキチッチを動かした。

 それぞれの魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)から放たれる凄まじい推進力が走っていたニキチッチの速度をさらに上げる。通常の幻晶騎士(シルエットナイト)では到達しえない速度の実現に、アルも騎操鍛冶師(ナイトスミス)達も目を輝かせていた。

 だが、ここで問題が発生する。圧倒的な推進力を背負ったまま走ることは出来ず、ニキチッチの足は地面から離れて空を走り出したのだ。その様子を見ていた騎操鍛冶師(ナイトスミス)達は、『空中で足をばたばたさせて飛んでいた』と後に語っている。

 

「ぎゃ……逆! 逆噴射!」

 

 どんどん高度が上がっていくので、アルはすかさず腰部のサブアーム付き魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)を前方に展開すると逆噴射による機体の静止を敢行する。一瞬、凄まじいGでシートに強く押し付けられるが、アルは身体強化という力技で耐えながらGを逃がすために機体前方を今の進行方向と反対。進行方向に対して背中を向くように調整する。

 魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)の位置を後方に戻した後に何度か強く噴かしたことで速度が緩まっていき、重力に引かれて落ちていく間に足裏のスパイクを展開。強引にスパイクで地面を耕すことで、アルはなんとかニキチッチを地面へ戻すことに成功した。

 

「あー、焦った。ちょっと内部を確認…………。えぇ、これマギウスジェットスラスタの出力調整を忘れてませんか。不安になってきた」

 

「おーい、大丈夫かい?」

 

「大丈夫ですけど、ちょっとお話がぁーッとぁ! ちょちょちょい、マナ・プールなんでこんなに減ってんの!?」

 

 慌てて走り寄ってくる騎操鍛冶師(ナイトスミス)達に文句の一つでも言いたかったアルだが、残魔力を示すメモリに気付いて叫び声を上げる。それもそのはず、試験項目に書かれた期待値を遥かに下回る消費量なのだ。

 当然、試験は中止。1人を使いに出してから全員は工房に戻ると、発生した問題の根本原因を探す『なぜなぜ分析』が始まった。

 

「えー、まずは1つ目の問題。マギウスジェットスラスタの出力調整が出来なかった。これについて調査を行いたいと思います」

 

「じゃあ、ナイトスミスは物理的に精査を パーサーは術式的に精査を始めてくれ」

 

 試験監督官の一言で全員は工房内に散らばる。騎操鍛冶師(ナイトスミス)達はニキチッチから魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)を切り離し、固定具に取り付けた後に魔法術式(スクリプト)と魔力を流して挙動を確認し出す。その一方で操縦桿と魔導演算機(マギウスエンジン)を取り外した構文師(パーサー)達は、操縦桿の動きや流し込む魔法術式(スクリプト)によって魔導演算機(マギウスエンジン)がどのような挙動をするか仕様書とにらめっこをしながら検証を行っていく。

 

「ごめん、遅れた! 今、どうなってる?」

 

「今回の不具合について物理的なのか、スクリプト的なのか切り分けを行っている最中です」

 

 そこにデシレア一行も混ざったことで調査の速度は加速していく。魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)を完全に分解して組み立て不備や紋章術式(エンブレム・グラフ)に致命的な傷が無いかの確認や、わざわざトゥエディアーネの魔導演算機(マギウスエンジン)を拝借して魔法術式(スクリプト)による起動や出力調整といった確認を行った結果、どうやらアルが最初に言っていたように出力制御を行う部分のみ魔法術式(スクリプト)が欠落しているのが分かった。

 いわば、起動したら100%。停止したら0%という極端な仕様だったことに、工房内の全員はそろって『なぜ?』という疑問が頭に浮かんだ。

 

「まずは欠落していたという事象に"なぜ? "ですが、作業は副数人で行いました。実施後もチェックも前の人間がやったからOKといったように短絡的に行っていません」

 

「そのチェックはマギウスジェットスラスタの仕様が分かる人でしたか? うちの騎士団でも仕様を完全に把握しているのは一握りなのですが」

 

「あっ」

 

 アルの言葉に根本の『何故』が確定した。彼らは魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)をコピーしただけで、具体的な原理や仕様を十全に把握していなかったのである。トゥエディアーネのように銀鳳騎士団から持ってきて量産されるものなら良いが、今回のように魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)を取り付けてからあれこれと細かい調整する必要があるのは、流石の国立機操開発研究工房(シルエットナイト・ラボラトリ)でも厳しかったらしい。

 その結果、うっかり出力調整の部分が半ば消えた状態になってしまったのだ。いくら魔法術式(スクリプト)が優秀でも、しっかり命令が通らなければそれは何の処理も行えないゴミに過ぎない。

 

「すみません、これは銀鳳騎士団側の連携不足です」

 

「いえ、こちらこそ申し訳ない。この問題は、ひとまずトゥエディアーネのものを見ながら再度チェック。後々銀鳳騎士団との合同講習を企画させてもらうということで解消したいのですが」

 

「はい、調整します。続けますが、2つ目の問題としてかなり魔力消費が高い気がします。この魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)って何を参考にされてます?」

 

 一つ目の問題の解決が見えたので、アルは続けて二つ目の課題である『魔力消費量』について騎操鍛冶師(ナイトスミス)に問う。すると、その問いに設計や製造の指揮を取っていたデシレアが『こいつがさっき言ってたけど、トゥエディアーネだよ』と答え、少し考えたアルが『グゥエラリンデの物を使わなかったので?』とさらなる質問を投げる。

 

「グゥエラリンデの方が良いのかい? トゥエディアーネの方が新しいと思ったんだけど」

 

「空を飛ぶために着けているトゥエディアーネと移動補助のために着けているグゥエラリンデ。多少、勝手が違いますよ」

 

「っあー! そっか!」

 

 自身のミスに気付いたデシレアや騎操鍛冶師(ナイトスミス)達は声をあげた。

 言われてみればそうである。主戦場である空から落ちないために吹かし続けるトゥエディアーネと、あくまでも短距離間の高速移動で戦闘を行いやすくするグゥエラリンデは、魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)の運用が当然異なる。

 そして、両者も内包する魔力転換炉(エーテルリアクタ)の数も異なるので、ニキチッチに最適なのはグゥエラリンデの肩部にある魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)の方だ。

 

「あと、4つだと出力ありすぎますね。急制動をかけた時、操縦しやすかったんで肩のは外して腰の2基のみにしません?」

 

「うーん、テストの結果見せてもらったけどマギウスジェットスラスタ以外は全部満点なんだよねぇ」

 

「いえいえ、満点以上ですよ。なので、先ほどのトゥエディアーネのスラスタを診るのは一旦中止にして、銀鳳騎士団から魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)についての資料とグゥエラリンデに搭載しているやつの仕様書送ってもらうんで、それらを見ながら調整でいかがでしょう?」

 

 魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)の試験は残念な結果に終わったが、逆を言えばそれ以外は全て満点以上というとてつもなく惜しいポテンシャルを持った機体だ。ならば、その惜しい点について銀鳳騎士団が協力するのはなんらおかしいことは無い。

 アルの提案にデシレアは少々思案するが、じきに納得して首を縦に振る。

 

「そうだね。合体機構の物にもマギウスジェットスラスタを取り付ける予定だし…………あ、そうだ。どうせならニキチッチと合体できるようにすれば良くないかい?」

 

 どうやらデシレアもただでは転ばない性格らしい。『どうせだから』という新たな概念の機体作りの気配に、アルもうっかりその話に飛びつく──前に工房の隅から覗いてくるノーラや藍鷹騎士団員の顔に『まずは機体の方でお願いします』と弱腰な回答を発した。

 

「そうかい。ま、私も正式に銀鳳騎士団として出向することになったから、あっちで暇になったら送ってもらうように言っておくよ」

 

「アー、ハイ。ソッスネー」

 

「なんだい、その気の抜ける返事は。嬉しくないのかい?」

 

「イエイエー シルエットナイトニ サワラセテ モラエナインジャ ナイカナー」

 

 巨人族(アストラガリ)の外行き用の鎧を作る人員を確保しなければならないので、当分は幻晶騎士(シルエットナイト)どころじゃないと思う忠告をしようとするが、仮にそれを知られて出向取り止めになったらエルに嫌味を言われると危惧したアルは歯切れの悪い片言でデシレアに忠告紛いなことを話す。

 だが、その片言に対してデシレアは『なんだい? いまさら入団試験でもあるのかい?』と待ったく別ベクトルの話をしだすので、なにかあった時はその時に解決する理論で『デシレアサン ナラ ダイジョブッス』と無理やり会話を終わらせた。

 なお、アルの本当に言いたかったことが分かるのはもう少し──ほんの数日後であった。

 

 結局、魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)については銀鳳騎士団から資料や仕様書を送ってもらい、ニキチッチは数日でアップデートが果たされた。

 腰部の2基のみとなった魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)に加え、グゥエラリンデや銀鳳騎士団や彼らと深い接点を持つカルディトーレにも搭載されている板状結晶筋肉(クリスタルプレート)が入るポーチを左右の腰に増設した新生ニキチッチは、銀鳳騎士団の拠点であるオルヴェシウス砦に向かうデシレア達の馬車を見送る形で魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)の試験を問題なくパスする。

 

 この結果をカンカネンに送った彼らは、『量産のしやすさ』もテストしようとデシレア達が居ない中でニキチッチの予備機を作っていく。

 こうなってしまえば、もはやテストは必要ないだろう。アルもそう考え、テストが終わったからお役御免とオルヴァーの下に騎操鍛冶師(ナイトスミス)達を招集して報告しを行ったのだが──。

 

「え、副団長殿が抜けたら誰が量産機が1号機と同じ性能って証明するんです? それに、まだ機体性能の保証がされただけで、実際に戦闘に耐えれるかの試験はしていませんよ」

 

「デシレア君が作りかけてる空飛ぶ追加装備も君の管轄じゃないのかい?」

 

「アルフォンス様。先王陛下からの頼まれ事、お忘れではないでしょうね?」

 

 デシレアが居ない中で1号機の性能に近づけているかや実践を交えた試験を行いたい騎操鍛冶師(ナイトスミス)や、彼女が作りかけの陸上機を空に飛ばす支援騎の監督を頼むオルヴァー、そしてアンブロシウスからの宿題が未だ出来ていないということで後ろからアルの肩を掴む○ペン先生──もといノーラによってアルの帰還はまだ当分先のこととなった。

 

 そして、どうせならとアル本人もそれらの仕事とは別に新人を拉致して試作装備を作り出している間、どうやら銀鳳騎士団側にもかなりの動きがあったらしい。毎日送られてくる報告書という名の手紙を流し読むには──。

 曰く、巨人を引き連れた銀鳳騎士団が各地を観光した。曰く、観光時にアンブロシウスが混じって問いを行っていた。曰く、デシレアから『巨人の鎧を仕立てるとか聞いてない! あの時にはっきり言ってほしかった!』という文句。曰く、『エドガーの騎士団に入ることになったと』ヘルヴィからの惚気。曰く……曰く……曰く。

 

 そんな感じの内容バンバン届いていたある日のこと。

 

「アディから?」

 

 珍しく銀鳳騎士団からの外面だけきっちりした封筒ではなく、友達に送るような私的な封筒の存在に奇異な目でアルは封筒を開ける。中に入っていた手紙を一読した彼は、その内容に少々わざとらしいため息を吐いた。

 

「未来の義姉……妹? のために頑張るかぁ」

 

 まずは有給休暇の取得からだろうか。アルは取得理由について考えながらオルヴァーの執務室へと足を運んだ。

 

***

 

 時を同じくし、シュレベール城の謁見の間では血相を変えて城に飛び込んできたとある騎士団の団長と雇い主である貴族の対応が行われていた。

 

「それは真か?」

 

「ハッ! 確かにこの目で見ました」

 

 騎士団長から語られる言葉の数々は一見信じがたいことだが、同時に本当ならばこのまま何もせずに居ると国の大部分が麻痺するような大事件であった。

 殻獣(シェルケース)。数年前に銀鳳騎士団の手で人知れず討伐されたのと同種族の魔獣が人里からかなり離れた場所とはいえ、群れを形成して移動しているところを飛空船(レビテートシップ)で輸送任務中の騎士団が発見。その進路的にゆくゆくはカンカネンに迫る可能性が高いと算出され、1人では手に負えないと判断した貴族はこうしてカンカネンにて報告を行っている。

 飛空船(レビテートシップ)が偶然通りがかった僥倖を噛み締めながらも、ひとまず貴族や騎士団長を帰したリオタムスは今後の対策を行うためにカンカネンに滞在している有力貴族達を招集し、正確な進路予測と大規模作戦の準備を始めた。




 やはり、開発パートは良い。他にもご当地シルエットナイトや新しい機能も色々考えております。
 ジャンプユニットでピョンピョンしたい・・・。リフティングウインチで壁登りしたい・・・。
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