128話
エルとアディが『婚約もどき』のようなことをした次の日。アルは砦の工房でオルヴァーが持ってきた支援騎を弄っている
「良かったですね。勉強会してもらって」
「ほんとだよ。これにも磨きがかかるってもんさ」
昨日まで
その勉強会では新たにマガツイカルガにしかない機能である
しかし、概念を説明しただけで実践させようとはエルも思っておらず、またそれを運ばれたばかりのエスクワイヤ・チックに取り付けるには未だ時期尚早だと
「いやー、最初はいきなり来たもんだから面食らったけど。流石は銀鳳騎士団だね。今までフワッとしか理解していないことを痛感させられたよ」
「兄さんがボキューズに行かなければ、あのまま正式に出向ということで一緒にニキチッチを組み立てられたんですけどね」
申し訳なさそうに呟くアルに出向組の
こうやって技術が進んでいく光景を見るのも悪くないと思いながら、アルの有給休暇が静かに過ぎ去って──。
「アルー! アルー! ニキチッチのこの部分なんですがー!」
「休暇中の業務強制で訴えるぞコノヤロウ。で、どの部分ですか」
前言撤回。全く休憩できずにアルの有給休暇は終わった。
なお、この時エルから提案された装備が後々にアルディラットカンバーやグゥエラリンデの正式装備となったのは当時のアルは知る由もなかった。
***
「カンカネンよ。私は帰って来たー!」
「君の故郷みたいに言うね。もう過ぎただろ?」
実家のような安心感を醸し出す王都の駐機場でアルは全身から訴えかける疲れを吐き出すかのごとく吼える。ただ、その吼え方にちょっと疑問を感じた試験監督官がツッコむが、アルは『それはこっちに置いといて』と無を余所へ放り投げるジャスチャーをしてやり過ごす。
すると、そこに鎧を着込んだ一団が姿を現す。カンカネンやシュレベール城に居る王族を守護する近衛騎士団だ。
「あぁ、アルフォンス副団長。よく来てくれた」
「騎士団長、お久しぶりです。って、お疲れのようですね」
近衛騎士団長との挨拶の最中、彼の顔が青白いを通り越して土気色をしていることをアルが指摘する。──が、近衛騎士団長は終始『問題ない』と明らかに問題ありそうな反応を返してくるので、アルは少々気後れしながら誘導されるがままにニキチッチの装備がきちんと模擬戦仕様であることを確認してから演習場へと移動させる。
演習場に入ると、眼前には既に3機のカルディトーレが並んでいた。
両手には剣、サブアームには
それら3種の前にはそれぞれ
「あれ、お三方。なんでこんな所に居るんです?」
アルの声にニキチッチの
「おぉ! これはまさに演劇でも語られていた新型機誕生編の模擬戦のようではないか!」
「ほんとに模擬戦やるみたいだが……3対1ってどれだけすごいんだよ。あの新型」
そんなやり取りの最中、唐突に演習場の周辺にある観客席に人がなだれ込んできた。そのほとんどが年若い者で、彼らはカルディトーレの姿や新しい
目の前に見知った3人が居るだけでも訳が分からないのに、現在進行形でおかしな事態に発展していっていることにアルはどうして良いのか分からなくなっていた。そんな時、演習場の正面にある王族や位の高い貴族達が演習を見学する席にアンブロシウスが近衛騎士団の兵を率いて姿を現した。
「これより新型機との模擬戦を執り行う。…………なにをしておる。ほれ、はよぅ準備をせんか」
拡声器を持ちながら威風堂々といった感じで模擬戦の開始を伝えるアンブロシウス。だが、何の説明もないので何のことがわからないまま突っ立っているエドガー達を見かね、速く機体に乗り込むように急かし出す。
その言葉にようやくエドガー達はアルが、アルはエドガー達が模擬戦の相手だと理解した。
「まずは私が先陣を切ろう。エドガーとヘルヴィはそっちで動いてくれたまえ」
「ヘルヴィは法撃で足を鈍らせてくれ、ディートリヒが突破されたら俺が受け持つ」
「了解」
長年やってきたからか、すんなりと作戦が決まってそれぞれが配置につきだす。長年共に戦場を駆け巡った連携の経験値や数の差といったアドバンテージがあるが、彼らの目の前の機体の
ならば、一撃。超短期決戦でしか勝機は見出せない。ディートリヒは興奮冷めやらぬ調子で騒ぐ自身が率いる『紅隼騎士団』の合格者を含めた騎士団員を
「紅隼騎士団、騎士団長! ディートリヒ・クーニッツ、推して参る!」
その決意の言葉に演習場のボルテージは一気に高まる。演習場を支配する熱気にアンブロシウスは『口ではあぁ言っておったが、ノっておるではないか』と口角を上げると、肘掛に置いていた右手を上げる。その合図で銅鑼とラッパが鳴り、演習を告げる法弾が上空に撃ち放たれた。
「おおぉぉ!」
ディートリヒの雄叫びと共に両手に剣を装備したカルディトーレが走る。その力強い走りは後に続く戦闘のことを一切加味しない動きであった。
初動からそんな突進を目の当たりにすると、彼のことを良く知っていない
「そこ!」
ニキチッチは両腕に装備したナンブ改を正面から向かってくるカルディトーレとは別の方向に撃ち放つ。真っ直ぐに演習場を駆ける法弾。その先には片膝を立て、サブアームでの精密射撃を行おうとしているヘルヴィ機と、
「ぐぬぅっ! やはり見破っていたか!」
飛んでくる法弾を
だが、彼らにかまけている間にもディートリヒ機は前進を続けている。
「では、この陽動を本命にするまで!」
不意打ちが失敗したと見るや、ディートリヒ機はさらに増速。この攻撃が失敗すれば、一時的に魔力の回復に当てなければならないほどの速度でニキチッチに肉薄する。速度を維持したまま、ディートリヒは左右の剣を交差させながら斬撃を放つ。
何度も反復練習をしてきた渾身の剣の冴え。撃墜判定とはいかなくとも片腕をもぎ取って中破判定に持ち込めるだろうと彼は期待していた。
──が。
「やはり、ディーさん達の連携は凄まじいですね。判断があと少し遅れていたら何も出来ずに終わっていました」
「無傷で……それも前転で避けておいてその言葉は皮肉にしか聞こえないよ」
いつの間にか後ろに居るニキチッチから声がかけられ、攻撃が外れたことにすっかり意気消沈したディートリヒはため息をつく。
まさか、攻撃が当たる瀬戸際で機体を丸めながら斜めに転がる回避手段。いわゆる前転を行うとは彼も思わなかった。
ただ、この回避。帝都を守る召喚師のようにどのような攻撃も避けれるわけでも、身の丈以上の武器を担いで決闘級魔獣以上の災害と戦う狩人のようにフレーム単位で無敵時間が付与されるわけでは断じて無い。
先ほどの攻撃のタイミングを良く知っていたからこその成功。言葉にしてみれば、剣が通り過ぎる前に機体を飛び込ませたに過ぎなかった。
「はぁ、名乗りを上げたにしては呆気無い。……ヤりたまえよ」
「まーた悪い癖が出てますね。騎士団はチームワークですよっとぉあ!? まだ話してる最中でしょう!」
「今は模擬戦の相手でしょ! ディー、なに終わったみたいな雰囲気出してんの! 歩いて後方で魔力回復! エドガーは前線!」
ニキチッチ目掛けて何発か法弾を放ったヘルヴィは、エドガーとディートリヒに指揮を降しつつエドガー機の手に持った
「あー、もう! ちょっと、それ卑怯じゃない?」
カルディトーレを座らせていた分の魔力を全て法撃に回すつもりで撃っていたヘルヴィが、ニキチッチの常軌を逸した回避方法に文句を垂れる。
さらに、一方向に法撃を引きつけてから急激に逆方向に切り返して相手の視線を切る動作やヘルヴィ機への反撃も織り交ぜて弾幕の中を掻い潜っていくニキチッチだが、それでも物量と言う覆しがたい力の前に左手に持ったナンブ改が被弾。さらに機体への被弾も多少許してしまう。
「つ"かえるっ もの"を 使ってるんです!」
装甲に小破判定すら付かないほどの焦げ目を増やしながらも、左手のナンブ改を陽動のために上空へ放り投げたニキチッチ。しかし、ヘルヴィ機はそんな陽動には目もくれずに法撃を続ける。
絶え間なく変化する状況の対処に瞬きすらも許されない状況がアルの精神にダメージを蓄積させ、切り替えしや空中への退避といった急激な機動で生じたGが元々かけていた彼の身体強化の出力を上回り始めていく。
それもこれも、ヘルヴィが
「ラーフフィスト!」
「あれはイカルガのじゃないか!?」
炎の尾とワイヤーを引き連れた手がヘルヴィ機へと襲い掛かる。イカルガの装備すら量産機に取り込んだという事実に僅かながらカルディトーレ達の動きが鈍り、その隙にアルはヘルヴィ機の左手に持つ
続けて右手の
「崩せませんね」
「お互いな」
戦闘を開始して5分。
そのため、かなりの長期戦に縺れ込むことをアンブロシウスは確信するが、その一方で
まず、アルとヘルヴィは言わずもがなである。思考しながらの法撃やそれらを掻い潜るために2人は常に神経をすり減らしている。その一方で動いていないように見えるエドガーも、時折反撃してくるニキチッチの法撃からヘルヴィ機を守るため、高速で移動するニキチッチの動きに合わせて
だが、そこに今まで休んでいた『3機目』がエドガー機の隣に歩いてくる。
「ならば、選手交代だ。エドガー、君はまだ余裕があるだろう? 私の心強い盾になってもらうよ」
「あぁ、任せておけ」
剣を左右で構えながらエドガー機を見るカルディトーレ。中身の
攻撃と防御のプロフェッショナルらを前にアルは『えぇ……、こっちが悪者っぽい』と若干引きつつも、勝ち筋を模索する。カルディトーレの機動力と膂力を元に長年の訓練で把握しているエドガーやディートリヒが良く使用していたと思われる行動を照らし合わす──が、アルはそんなデータに重点を置いたキャラというわけでもないので詳しいことはよく分からなかった。
「若旦那が言いました。答えは剣の中にあるって!」
「たまに思うけど、副団長閣下はたまに考えを放棄して馬鹿になるわよね」
「だからこそ予想できないんだ。だが、エルネスティとイカルガよりもマシだ」
意を決したようにアルはニキチッチの右手に装備したナンブ改を地面に放り投げると、空になった右手でサブアームに保持している
その姿にそれぞれ剣と盾を構えた2人は口では軽口やそれよりも強大な相手を知っているかのように振舞うが、それらの言動は決して手を抜いているからでは無い。
むしろその逆、自身の精神を平常に保たせるための小細工に過ぎなかった。
『そうだー、副団長ー! ダンチョをやっちまえー!』
「君達、黙ってくれるかねぇ!?」
「ディーッ、来るぞ!」
団員になっても一切変わる気がなさそうな古株を一喝した瞬間。
今までの回避や反撃のみに徹していたのが準備運動だったかのように鋭くも力強い間合いの詰め方。自身のグゥエラリンデにああいった機動が出来るかと疑問を持つほどの機動性を目の当たりにしつつも、ディートリヒは素早く意識を切り替えて迎撃に出る。
「エドガー!」
「分かった!」
詳細な言葉もなしに交わされる作戦。伝達不足を不安がる兆しは一切無く、ディートリヒはニキチッチが振ってくるであろう剣の軌道と反対側に剣を振るう。すると、今までサブアームによってその場で吹かすのみだった
「速度は良いが、軌道が見え見えなんだよ!」
ニキチッチの
「なんて硬さなんだい! こっちは片手を犠牲にしているんだよ!」
ただ、両者の状態はとても痛み分けとはいえなかった。
ただ、その痛すぎる代償に対してニキチッチの手は未だ原形を保って腕にくっついているので、その頑強さに彼は思わず叫んだ。
しかし、ディートリヒの視界の端にはニキチッチの横合いから剣を振り下ろすエドガー機が映っていた。──そう、これは意識を自身に向けるための作戦。ニキチッチの性能に対して100%の不満を言ったわけでは(多分)ない。
「だまし討ちのようで気が引けるが……。もらったぞ!」
「っ! 見えなかった!」
ニキチッチは近衛騎士団機のように視界改善の改修を取り込めていないので、ディートリヒの(半分ほど)演技にすっかり騙されたアルはようやくエドガー機の接近に気付く。ただし、その時には既にエドガーは片手の剣を振り上げていた。
いかにニキチッチが頑丈でもまともに食らえば中破は免れない。やけにゆっくりとした時の中、アルは一か八かの足掻きとして壊れた
「こんのっ!」
「なっ……にぃ!」
「今のうちに」
不意打ちを外したことにより、一瞬呆気に取られたエドガーとディートリヒ。その隙にアルは一旦距離をおこうとニキチッチを小さくジャンプさせながら腰部のサブアームを前面に展開する。
空高く飛び上がっている最中に法撃の集中砲火を喰らう恐れから
時間にして数秒の行動だが、そのあたりでエドガーとディートリヒはようやく正気に戻ってくる。せっかくのチャンスが潰れたことで2~3単語話して彼らだが、再びニキチッチに攻撃を加えるべく突進を開始した。
「ヘルヴィさんはまだ何手かお休み。ならば、ここでどちらかを落としましょうか」
ヘルヴィ機が未だ動かないことを確認したアルは、ニキチッチの左手にサブアームで固定されたもう1本の
「答えは剣の中にありぃ!」
「若旦那の生霊でも取り付いてらっしゃるのかね?」
「知らんが、少々……いやかなり速いな」
現に振り下ろされた
「ディー!」
「任された!」
エドガーの一声にディートリヒ機は前に躍り出る。先ほどの攻防によって片手は喪失している状況ではあるが、もう片腕にはまだ剣が握られている。つまり、まだ戦えるのだ。
しかし、ニキチッチもバランスが崩れた状態からなんとか立て直すと
「重っ!」
ただ、その剣戟は先ほどに比べてとてつもなく重い。反動で再び転倒しそうになるところを
やたら全身を大きく躍動させた剣戟。片手で握った剣をまるで振り回すかのように扱い、されどぶん回し特有の狙いの甘さは一切無い剣はニキチッチの腕や足の関節といった駆動系をやたら突いて来る。
剣をぶつけ合うごとにディートリヒ機の機体の関節部や装甲の間から火花が生じている。それほどまでに過負荷が生じる戦い方なのだが、ディートリヒはお構いなく荒々しい戦い方を続けていた。
「全身を使って威力を上げているんですね!」
「ご名答! 訓練の時に見つけてね、こうした方が魔獣の外殻を砕きやすいのさ」
やたらと全体を動かしながら攻撃してくるカルディトーレにようやくアルはその攻撃の特性に気付く。全身の
攻撃の秘密が知られてもなお、『だからどうした』と言わんばかりにディートリヒは平然と攻撃の密度を上げてくるが、アルの脳内に貯められた『ロボット関係のフォルダ』がこの攻撃の弱点を見つけ出した。
その瞬間、上段から切りかかってくるディートリヒ機に対し、ニキチッチはその場から逃げるわけでもなく
「切り返しを狙えば!」
剣同士がかち合う瞬間、今まで力強く剣を握っていたニキチッチの手から途端に力が抜ける。それに伴ってディートリヒ機は大きくバランスを崩した。全身を躍動させながら攻撃していた分、即座にバランスを修正するのはいかにディートリヒでも厳しかった。
ただ、ここで忘れてはいけない。先ほどアルが行った『相手の攻撃をいなした後の切り返し速度で勝負をつける』やり方は、原作では1対1で行われていた。
──つまり。
「"盾"の存在を忘れているぞ」
切り返しを早めるために
それでもアルは諦めずに目の前の
***
「あ"~、ま"けたぁ~」
「いやいや、3人で相手して仕留めきれてないからそっちの勝ちでしょ」
模擬戦が終わった後、『話がある』というアンブロシウスからの指示で速やかにシュレベール城の会議室へと移動していたアル達4人。指示を出したアンブロシウスがまだこないということで、暇を持て余していた彼らが先ほどの模擬戦の感想を言い合うのはなんら不思議なことではなかった。
3機のカルディトーレに対して1機のニキチッチで戦い抜いたという観点からヘルヴィは自分達の負けをアルに伝えたが、彼は一向に負けを主張している。
カルディトーレよりも良い改良。素体を含めて良い部材で構成されたニキチッチなので、アルの言いたいことは十分ヘルヴィも理解しているのだが、
「そうだよ、そもそもなんだい。この馬鹿げた耐久性は」
「俺達のは魔力が回復してなかったりと諸々の関係で台車で運ばれていったが、アルフォンスのは自分の足で歩いていったからな」
それでも不服そうな様子のアルに、エドガーとディートリヒは読んでいた紙束を机の上に投げながらニキチッチへの感想を言う。それらの紙は近衛騎士団からもたらされた物で、内容は先ほどの模擬戦の様子や終了後に検査した各機損害状況が纏められていた。
各関節部の磨耗や
それどころか、あの激闘を後なのに工房まで無事にたどり着いていたと機体の強固さについて太鼓判を押されるまでの内容が纏められていた。
「マナ・プールもアレだけ動いていたのに残り3割って……。どういう構造してるのよ」
「フルコントロールで魔力節約を心がけてたので。心がけてただけですが」
カルディトーレは一足先に休んでいたヘルヴィ機を除いて軒並み
すると、アルは
一般的な操縦法では小さい動きをする場合でも魔力は脚部全体分と決められた量が配分されてしまうが、
ただ、その制御は意外と難しい。いうなればその都度、魔力を流す場所を配置しなおさなくてはならないので集中力が必須な技である。
そのため、実際は省エネと謳っておきながらその恩恵は1割に届かないぐらいと対して役立っていなかった。
そんな話をしているとノックの音が部屋に響く。そのままアル達が返事をする前に後に扉が開かれ、外からアンブロシウスと1人の男が入ってくる。アンブロシウスは礼をするアル達に手で座るように示しながら自らも椅子に座って一息つく。
「まずは先の模擬戦。大儀であった」
「いえ、我々も驚きましたが結果的に良い経験を得たと思っております」
定型文のようなやり取りが行われた後、アンブロシウスは難しい顔をしながら『当事者のおぬしらに伝えるのも酷な話だが』という不穏すぎる前置きを話した後に本題を言い出した。
「おぬしらに集まってもらったのは他でも無い。シェルケースが再び動き出した」
「えっ? 巣分けの個体は数年前に討伐したと記憶していますが」
何故そうなったかは分からない。ただ、実際に
その進路も変わらずカンカネンの方向を指しており、少しでも方向がずれればカンカネンに真っ直ぐ突っ込むような危険な状況だ。
「では、銀鳳騎士団に出撃を?」
「はい。ニキチッチ護衛の連絡網を使用させていただき、既に我ら藍鷹騎士団がエルネスティ騎士団長やデュフォールの鍛冶師達に協力を仰ぐため、報告を行いました」
「こればかりはジャロウデクに感謝せねばならんの」
防諜対策が思わぬ方向に転んだことに満足げに頷きつつアンブロシウスは話を続ける。
どうやら話が回ってきたことで事態を把握したエル達は、防衛戦に参加すべく準備を開始しているらしい。
ただ、イズモとアサマを動かそうにもボキューズからの帰りで砦内の
「それまではそなたらに新型機の完熟訓練を行ってもらう」
「あの、私共には既に専用機があるのですが……」
「レビテートシップの操縦に3中隊規模のシルエットナイトの整備。後は補給作業といった細々とした雑用も考えれば近衛やラボの鍛冶師を回しても到底手が足りぬわ」
たしかに現在の銀鳳騎士団における
ただ、いきなり新型という話なので3人が若干動揺していると、アンブロシウスは快活に笑う。
「安心せい、例のニキチッチに関しては試験ということでラボから鍛冶師を何人も大量に連れてきておる。物資に関しても近衛騎士団から流用するゆえ、訓練に励むが良い」
「は、はぁ……。了解です」
なにやら丸め込まれた気がするが、既に話が通っている以上は従うしかない。
こうして予備のニキチッチにはエドガー達が乗ることになり、エル達が
なお──。
「のぅ、アルフォンス」
「ダメです」
「ジルバティーガ……」
「ダメです」
演習場で彼らが完熟訓練を行っている最中、時たまアンブロシウスがその様子を見に来ていた。その頻度も1時間おきに1回かつ、滞在時間も業を煮やしたリオタムスや近衛騎士団が迎えに来るぐらいとまちまちだが妙に面倒くさい。
ちなみに先ほどの掛け合いも今日に入って5回。内容も定型文のように、『のぅ、アルフォンス(ワシもあれに乗せて欲しいのだが)』、『ジルバティーガ(にも、あの装備らをつけて欲しいのじゃが)』といった具合だ。
数分後、気分転換ついでに迎えに来たリオタムスが演習場に目をやる。徐々に動きが良くなってきている中隊長らを一頻り見た彼は、『やはり騎士団を率いさせて良かった』と満足げに頷くのだが、一瞬で徹夜明けの仕事人のような修羅の顔に変貌するとアンブロシウスを伴って戻ってしまった。
「アルフォンスよ。この防衛戦が終わったら少々……少々時間をくれ。おぬしの今後について話しておかねばならん。──別に拒否しても良いが、そうなるとこちらも実力行使に出るゆえ、そのつもりで頼む」
「あい……」
去り際にリオタムスから伝えられた連絡事項にアルは恐怖する。『拒否しても良い』という一見優しい命令だが、その後の『実力行使』の存在が恐怖心を増長させている。恐らくだが、部屋に引き篭もっていたのに気がついたらフレメヴィーラ王国領から出荷され、馬車の上で揺られていた。──なんてことも有り得ない話ではないと考えたアルは脳内のスケジュール帳に目立つよう赤い花丸をつけつつも目の前の完熟訓練を見ていた。
グゥエラリンデという
続いてヘルヴィだが、初見で『結構じゃじゃ馬だけど、テレスターレを思い出すわね!』と通常機動をなんなくやってのけていた。続いて、
ただ、やはり
最後にエドガーだが、やはり
それでなのか、エドガーはディートリヒに頼んで模擬戦の相手をしてもらっているが、カルディトーレやアルディラットカンバーの操作感に引っ張られているためかあまり
ただ、模擬戦を何度もしているからかその都度使おうとする気概が感じられるので、後は慣れだろうとアルは積極的に関わろうとはしなかった。
こうして完熟訓練を行ってから2日後、カンカネンの上空に現れた2隻の
トイボックス、三式装備。プラモ化!
置き場所無いから作らないとなぁ!47cmかぁ・・・