147話
お泊りイベントが発生したミシリエ訪問も特に語ることもなく終わり、そこからさらに数日が経過する。エムリスを探す旅に出たエルの方からは何も報告は来ておらず、アルは『まぁ、そんなすぐに見つかったら世話ないよな』と当たり前のようなことを考えながら毎日を忙しく過ごしていた。
そんなある日のこと。アルは王城の会議室にてコンペで優勝した開発物の仕様に関しての説明を行っていた。資料を貼り出しながら黒板にチョークを走らせ、
もしこの場にフレメヴィーラ王国の人間が居たとすれば、彼の外見も手伝ってか思わず
ただ──。
「この形態の目的は何でしょうか?」
「それは原案者のアウレスさんがご説明します」
「ひゃ、ひゃい!」
質問者から投げかけられる質問をアルは隣に居る痩せぎすの男にキラーパスをする。何を隠そう、彼こそが今回の開発物である
原案者なので、こうして説明するのは何らおかしくない。さらに言えば、詳しく説明できるのが彼しか居ない。──が、質問した人間が王族。しかもこの国の頂点に君臨するエレオノーラであると話は変わってくる。
一介の
しかし、その直後『じゃあ明後日にでもエレオノーラ様に説明するんで、詳しい仕様書をそれまでに作ってきてください』という悪魔のささやきが聞こえ、そのまま流れに流れてこの場で説明をしているわけである。
だが、アルも鬼ではない。危なかったら代わりに説明しようと思ったのだが、火事場の馬鹿力なのだろうか。彼は──弾けた。
「こちらはアテラリーやウィザードスタイルの仕様にそった法撃特化の装備です。大型の
「なるほど。ならば、こちらは? 一見するとただのレーヴァンティアだと思いますが」
「こちらはアルフォンス様の意見を取り入れた教導仕様となります。背部に別の操縦席を設け、そこに教導者が搭乗。いざという時の操縦権の割り込みなどが可能となっています。……ですよね?」
「合ってます。このように、彼の発案した物の利点はレーヴァンティアに装備を合体させることで様々な局面で運用できる点です。今までは役割によってカスタム機や新機体といった大掛かりな計画になっていたところですが、背部装備が出来てしまえばそれは必要ありません」
「あ、アルフォンス様。付け加えるならば、新型機も背部装備の仕様を加えれば開発速度の短縮も見込めます」
流石は発案者ともあって一度説明すると、波に乗り始める。アルの援護射撃どころか補足もやってのけたことで、エレオノーラは『そうですか』と満足げだ。
そのまま、彼女は手元にあった印章に朱肉を塗って計画書の隅に力強く押す。開発承認の証である。
「良かったですね。では、これから君はこのプロジェクトのリーダーです。あ、ついでに僕の考えた装備もお願いしますね」
「……は?」
唐突に降って湧いたアルの装備に
たしか、パッチワークにも装備されていたナンブだったか。そんなことを思っていた
「アルフォンス様、少々手加減してあげてくださいね?」
「分かってます。クシェペルカ王国流で手ごたえを確認していきますよ」
どうやらフレメヴィーラ王国ではこういったことが横行しているらしい。とてつもない国からとてつもない人間が来たものだと、当事者ながら
***
さて、クシェペルカ王国での初めての開発となったわけだが。クシェペルカ王国は戦時を体験したからか、はたまた救国の英雄の1人である人間が先頭に立っているからか分からないが、彼らの練度や士気は非常に高いものであった。
開発が始まって僅か2日で仕様を共有しながら机上での問題点やボトルネックになりそうな作業を洗い出し、そのネックとなる部分が人的なのか、それとも物資的なのかを分割。そして、『こんな人材が欲しい』や『こんな
当然、その要請にアルや
それらが出来た端から組み立てを担当している
そんな数々の対応の早さに、アルはすっかり鍛冶師の仕事ぶりに惚れてしまった。思わずエレオノーラに『欲しい』と直談判してしまうが、彼女は『近衛の方々なので持っていけても数名』と全員の引き抜きを拒否。その返事に『じゃあ数人は良いんですね!』と思わぬ返しをしたところで攻防に戻っていくという一幕があったとか、なかったとか。
そんな一幕の数日後、一番簡単そうといった理由で制作が開始された
「よーし、ゆっくり動かすぞー」
「テストランナーは上書きの準備に入れ!」
レーヴァンティアの背部にサブアームが4本ついた大きな箱型の背部装備がクレーンによってぴったりとはめ込まれる。ただ、これではすぐにずり落ちてしまうため、
「ふむ、流石にフレメヴィーラ式はまずいと思って新たな固定方式をやってもらったわけですが、こっちの方が安定しますね」
「フレメヴィーラ方式はサブアームでしたっけ?」
「えぇ、あれだと被弾した時に外れたりと思わぬ脱落があったものでして」
アウレスの疑問にアルが思い出すのは
今回はその反省を踏まえて金属製の留め具を上下左右という4か所に用意することで、完全に固定するようにした。将来的には留め具の他に凹凸をつけたはめ込み式も試したいところだが、緊急時の着脱のこともあるので新型機設計の際に紛れ込ませることにしようとアルは笑みを浮かべる。
「上書き完了、周囲確認始め!」
「部品の脱落無し!」
「留め具の破損、見当たりません!」
次々と交わされる報告。そのどれもが良好──つまり、アウレスの考えた仕様が花開いた瞬間である。自身の考えた物が現実に拝めるという得も知れない高揚感が彼を駆け巡るが、未だ作業完了には程遠い。これから試験という果てしなくダルくて修正に四苦八苦する作業が待っているのだ。
だが、恐らく初めて夢想した内容が形になったのだろう。銀鳳騎士団の
その後は試験なのだが、最初は主な変更点である背部の動きから一向は確認していく。
「サブアーム、動かします」
「チェック良し、No23完了!」
「続いて左上部分のサブアーム、No.46を確認しろー!」
まるでウォールローブを着込んだレスヴァント・ヴィードのような4本のサブアームが地上の
そのため、それぞれのサブアームのきめ細やかな動きが必要となってくるわけだが、ここでアルのもらえる物はもらっとかないとの精神が発動する。彼はちゃっかりソードマンに備わっていたサブアーム制御の
「すごいですね。狙いをつけるまでの速さや各法撃精度が上がってますよ」
「その分だけ操縦もちょっと難しくなっていますが、戦力の増強のために騎士には訓練に励んでもらいましょう」
的に対してサブアームを集中させた法撃で大胆に破壊したかと思えば、即座に別方向に立てかけられた4つの的に対してそれぞれ1本ずつサブアームを動かして法撃という緻密な操縦を要求する繊細な動きで破壊していく。
確かに操作難易度が高そうな動き方で、こんな動きを一般の騎士に出来るのかと問われたら現状では無理そうなのだが、逆説的に腕がたつ騎士ならば出来るという確証が得られたのでアウレスとアルはこの結果に満足していた。
そのまま試験は2日かけて行われ、少々の修正をもって第1陣の装備が完成した。
「結局、"試作装備"のままでしたね。なにか良い命名はあります?」
「うーん、実は決まってないんですよね。開発が楽しくて名前なんて気にしてなかったんで」
「あー、分かります。名前とか別に付けなくても良いですよね」
今まで名もつけなかった開発物は数知れず。思わぬところで似たような思考を持つ同士に巡り合ったことで、そのままなし崩し的に『名無し』になるかと思いきや、そこで近衛騎士団長がストップをかける。
曰く、『運用とか帳簿に付けるときに面倒だから絶対ダメ! 公募でもやれ!』とのことだったので、それよりも次の開発を行いたい系男子のアウレスとアルは素直に名前に付いて募集することにした。
なお、この募集。アルの『どうせだったら』という巻き込み思考によってエレオノーラやイサドラといった王族にも参加を呼び掛けていたりするのだが、匿名なこともあってか発案者のアルでさえも彼女達が参加したことは分かっても『どんな名前にしたのか』は把握できなかった。
そして、そこからさらに数日後。開発熱が冷めきらない
「厳正なる審査の結果、この背負い物の装備群を"パッケージシステム"と呼称。よって、このウィザードスタイルのような背負い物装備は"ウィザードパッケージ"と呼称します」
兵装名が発表された途端、見事装備名の発案者となった幸運な者を探し当てた全員がその人物に対して胴上げを行うという騒ぎが工房内で巻き起こった。
なお、決め手はフレメヴィーラ王国の共通土木パッケージがあるのでイメージしやすいだろうということで、特別で招集したエレオノーラも『私の命名よりも良いですね』と太鼓判を押した。なお、彼女の考えていた名前は非常に言いにくいものだったらしく、その詳細は本人のみしか知りようがなかった。
「では、続けて新たなパッケージシステムの案出しを始めますよー!」
『ういーっす!』
もはや『アルの工房』と命名できそうなほどの訓練度合だが、間違わないで欲しい。ここは近衛騎士団の工房である。
ただ、エレオノーラからは『エムリス捜索の増援としてアルを参加させる予定なので、旅立つまでは好きにして良い』というお達しが出ているらしく、近衛騎士団長は『一般業務の合間でやれよ』と釘を刺すだけに留めた。
そんな近衛騎士団長の言葉だが、まさかの杞憂に終わった。彼らも一端の大人ゆえに分別は付いていたらしく、一般業務をする傍らで同じタイミングで休憩していた
「うちの鍛冶師がこんなに頼りになる奴らだとは知りませんでした」
「修理や整備が主な一般業務と計算や話し合いが主な開発業務。異なる点は多いですからね。願わくば、これで開発専門になる人が居たら良いんですが」
いつも以上の賑わいを見せる工房内を見た近衛騎士団長の一言にアルはしみじみと返答する。
自分の意見のみでは、何時かは限界が来る。そのための種は先だってのウィザードパッケージによって彼らに打ち込んだ。
後は増えてくれるかだが、この様子を見るに収穫は期待できそうだった。
***
そんな感じで始まったパッケージシステムの次なる開発だが、早々に煮詰まっていた。──というのも、
フレメヴィーラ王国の共通土木パッケージに着想を得、ウィンチや掘削機や荷運び用のラックを備えたワーカーパッケージ。
各所に魔力補充用の
大型の
他にも様々な装備案が上がったが、一番多かった系統が『
そこからさらに騎士が介入してきて、やれ『槍が良い』だの『剣こそが全て』だの『槌が良い』だのとどこかの金髪男が長の騎士団が乱入してきたような話し合いが開催される。ロマンがあるのは素晴らしいことだが、いかんせん冒険しすぎ感が否めない。話し合いの内容を右から左に流しつつも、アルはよく検討しないといけないような気がしていた。
「ひとまず、サブアームと武装の保持が出来る状態にしましょうか」
「賛成」
手を大きく叩いて皆を注目させたアルは、『暫定』として
「この状態だと、抜きづらくないですか?」
「では、通常時は縦で保持。抜く時はスクリプトで角度を変えて抜きやすくします?」
「そうなると、鞘の形でなくても良い気がしますね。鞘よりも箱型にした方が安心感がありますね」
そう言って騎士の1人が紙に小さな箱を描き出した。彼は近衛騎士団の補給官的役割を任ぜられており、彼のイメージでは剣 = 鞘ではなく、剣 = たくさん入った箱のイメージを持っていたのだそうだ。
ただ、今回は補給仕様ではないために『それは別の仕様にするべきだ』という反論が出て謝罪していたのだが、ただ1人──アルだけはその考えに新たなイメージが湧き上がってくる。
「そうか、鞘って剣を保持する印象に引っ張られ過ぎてた! こうして……別の要素も加えれば!」
そう言って近接装備を固定するアタッチメントを固定だけする簡素な物から、剣が刺さった長方形の箱へと変更するアル。その見た目に奇怪な物を見る目の騎士達をさておき、彼はその箱の下部に『
「これ、操縦できるんですか?」
「練習すれば? ……多分」
ただ、鞘に
仕様を固め、模型を作り、製造に入る。たった3工程かつ暫定的に決まった俗にいう『青写真』のような物を作っていたわけだが、それでも
その間もエレオノーラとの訓練は当然として、イサドラとのミシリエ視察の任務も入っていたのでアルは身体的にも精神的にも疲れがたまっていた。
それを見かねたエレオノーラが彼を休ませたのだが、『あいつ、朝起きたら居なくなってたの。で、探したら工房の隅っこに隠れて作業していたわ』とイサドラ談。
そのことからエレオノーラはついにアルの扱い方を魂で理解する。国で一番強制力の高い『勅令』を持ち出してきてまで休息をとらせた個人は、前クシェペルカ王国の歴史も纏めて紐解いてもアル、それとついでに巻き込まれたアウレスしかいないだろう。
***
そんなこんなで優に十数日が経過した。デルヴァンクールの周囲にはかなりの数の
そんな『どこへ戦争に行くの?』と疑いたくなるような物々しい飛行場の様子と似たような喧騒が別の区画で巻き起こっていた。──そう、最近では『悪魔の住処』と
「いやー、一応形になりましたね」
「勅令はもう勘弁ですけどね」
「こっちの身にもなってくださいよぉ!」
「本当にっ! ほんっっとーに! うちの元副団長が多大なご迷惑を!」
「ディーダンチョ、うちにもあんなの欲しいっすね!」
「そうだね、アルフォンスに掛け合ってみようか! なぁに、規格は親方に任せれば良いだろう」
「やめなさいよ、この馬鹿共!」
なお、親方は各
「……ところで、なんで皆さんが居るんです?」
「お前は本当に……」
「ここからはわしが話そう」
そう言って工房の扉からアンブロシウスが藍鷹騎士団の一小隊と共に現れる。相変わらずのフットワークの軽さだが、もはや驚くのも疲れたアルが拝聴の構えを取った。
アンブロシウスの言うことを簡潔に言えば、『各国が浮遊大陸に乗り込んでいるので、現地の勢力と協力してエムリスやエルを連れて帰ってこい』だった。
なんでも、戻ってきた藍鷹騎士団の話では既にかなりの国が浮遊大陸に眠る
このままではエムリスの身も危なく、エルがきっととんでもないことを仕出かすに決まっている。──ということで、お目付け役の白鷺騎士団と紅隼騎士団に話を通したわけなのだが。
「で、なんでイズモとかが居るんです?」
「親方がイズモとアサマでカンカネンに乗り込んで、一枚噛ませてくれと頼んできた」
「本人曰く、"銀色坊主が居るならイカルガは必要だ! それを整備するのが俺達、銀鳳騎士団のナイトスミス隊の任務だ! ……です! "だそうじゃぞ」
アンブロシウスの口からダーヴィドの言葉が再生し終わったところでエドガーが頭を抱える。既に銀鳳騎士団から離れているのだが、彼のその行動にアルは『苦労してるなぁ』と憐れんだのは内緒である。
ともかくとして、銀鳳騎士団の本隊も動いているのは分かった。だが、ここにアンブロシウスが居るのはなぜだろう。そう問うと、アンブロシウスはニカリと笑いながら元気に答えた。
「そりゃぁ、浮遊大陸じゃろう! わしも!」
「駄目です」
「おぬしはもはやクシェペルカ王国の人間であろう!」
「駄目です」
「ご自重ください」
「私達が対処しますので」
アルの拒否の言葉に反論するが、エドガー、ディートリヒ、ヘルヴィが間髪入れずに拒否したことでアンブロシウスが肩を落とす。『ならば、そもそも連れて行くなよ』と似たようなことをツッコんだアルだが、彼ら曰く『気づいたら着いて来ていた』のだそう。もはや、妖怪の類だ。
「仕方ない。では、久方ぶりの家族の団欒や政治のことを話し合った後に国へ帰るか」
一頻り残念そうにしながらも、アンブロシウスは後ろを振り向くと工房の扉へと歩いていく。その様子につい『元陛下に勝った』と思ってしまったアルがニヤリと笑うと彼に向かって煽り文句を一つ。
しかし、それがいけなかった。
「そうしてください。お義祖父様」
……足が止まった。そして、ゆっくりとアルの方を振り向いたアンブロシウスが一言。
「もう一度」
(あ、これ面倒臭い奴だ)
即座に危険性を把握するが、もう遅い。ジリジリと耳に手を当てて近づいてくるアンブロシウスに、とうとう観念したアルは再び『お義祖父様』と言い放つ。
「ふむ、良いのぉ。エムリスともウーゼルとも違う響きじゃ」
「あぁ、そういえばアルフォンスはイサドラ様と……」
「えぇ、決闘の末にイサドラ様と婚約いたしました。式はまだですがね」
「なにそれ! 詳しく! 詳しくお願いします!」
甘美な響きに身を震わせながら遠いライヒアラの方向を向き、『ラウリー! これでわしらは親戚じゃぞー』と吠えるアンブロシウス。その横では近衛騎士団長から語られる決闘事件のことを聞いては年頃の乙女らしくキャーキャーと反応するヘルヴィ。そして、失言1つでここまでの混沌を生み出しつつも置いてけぼりを食らっているアルの両肩をエドガーとディートリヒが優しく叩く。
正直なところ、今すぐにでも近衛騎士団長とヘルヴィを引き剝がしたかったが、大船団の物資がそう簡単に補給できるわけもなく──。
結局、数日かけて語られたことが銀鳳騎士団の情報網を経由して白鷺、紅隼両騎士団に拡散。アルがクシェペルカ王国で仕出かしたことが包み隠さず伝えられることとなった。
***
数日後。物資が満載になった船団が宙で陣を組み、主要な騎士達がエレオノーラの前で整列する。その中心にはアルが居り、一通りの出陣式の挨拶が終わった彼女は彼に向かって話しかけた。
「では、よろしくお願いします」
「お任せください。必ずエムリス殿下や共に出ていった者達を連れて帰ります」
「あ、そちらよりも……お願いしますね?」
「あ、はい。承知しております」
すっかり身内の対応となってしまったエレオノーラから暗にだが、『そっちは良いからキッドの件を頼む』と念を押される。一国の王子よりもその側近の心配するのは大丈夫なのかと問いたかったが、今のエレオノーラにそれを言っても暖簾に腕押しだろう。
「アルフォンス卿、こちらのトランクには陛下の服が。こちらには日頃、陛下が使用している化粧品の一部が入っています。詳しくは同行する密偵に任せておきなさい」
「お義母様、僕はメッセンジャーであって成りすます気は……あ、はい。必ず然るべき対応で彼に伝えます」
嫁ぎ先の圧に屈したアルは『これが婿イビリかぁ』と見当違いの考えを巡らせる。なんてことはない、ただエレオノーラの早まりすぎた気持ちが命令という形で反映されただけだ。
ただ、アルも口では嫌そうに言ったが内心では『ま、やったるかぁ』と結構軽かった。話を聞くにどうやらキッドの周囲はうらやまけしからん状況になっているらしいので、個人的には物申したいところだった。
ゆえにアルは貸していただいた物品をフル活用し、必ずやキッドを恐怖のどん底へ叩き落そうと脳裏でエレオノーラから覚えこまされた言葉の数々を反芻させていた。
「アル、必ず戻ってきなさいよ」
「そりゃ当然。パッケージシステムもまだまだ作りますからね、そう簡単にくたばりませんよ」
寝ても覚めても
すると、イサドラの唇に柔らかい感触が当たる。その感触の正体を察する前に目の前の彼は『行って来ます』と言い残して踵を返してイズモへと乗り込んでいく。
こうして、自国の──アルにとっては友邦国の王子を救助するための本隊が出発したのであった。
浮遊大陸編(寄り道あり)はじまります。