「うん、ありがとう。でも口にする気はないよ」
「今回のことは重ね重ね、申し訳ありません」
「あぁ、お互い不幸なことだった。では、情報をくれないかね?」
迎撃しようとしていた
近年の
ただ、順調かと思われた
初手でこれだ。複雑怪奇な浮遊大陸事情にディートリヒは心の中で頭を抱えるが、平静を装ってさらなる情報──他国について男に問うた。
「なるほどね、それは大変なことだ。それで? 君の所以外の国はどんなのが居るんだい?」
「そうですね」
若干和らいだ空気に充てられたか、男は多少饒舌に浮遊大陸での勢力図に対して語り出す。
まず、パーヴェルツィーク王国。かの国は現在、ガルラ越しにアルが見物しているドニカナックよりも高性能な
今回の迎撃もその小型
「大型の戦闘艦ねぇ……。それはおとぎ話の挿絵にもあった竜のようなものだったかい?」
「いえ、我々も噂程度しか知らされておらず。申し訳ありません」
再び謝罪モードに入ろうとする男を制してディートリヒは続きを促した。
男の口から次に語られたのは、国ではないが空賊の話である。文字通り空に舞台を移した海賊で、どこから手に入れたのか
どこかの国が飼っているのか、それとも単独犯なのかは男も分かっていないのだが『稀によくある』といった頻度で
「中には防衛のシルエットナイトが居る採掘施設に突撃をかましたスゴ腕も居るらしいです。なんでも、剣をたくさんつけている異様な奴だとか」
「うん、その話題は控えてくれたまえ。少々嫌な記憶が蘇るんだ」
『剣を沢山つけている』という妙な情報を前に、嫌な顔をしながらディートリヒは次の情報の催促する。そんなおざなりな反応に男は不思議に思ったが、彼にこれ以上気分を害されるのはまずいと続けてシュメフリーク王国の存在を語り出した。
ただ、『とある情報源』の話ではこの地の原住民と昔ながらの付き合いがあったらしく、いざとなれば──といった強行的思想が
「へぇ、原住民ね。興味はあるね、こんな所に人間なんて」
「人間ではございません。あやつらは魔獣でございます。……おい!」
ディートリヒの興味を引けたと、男は揉み手をしながら髭面の男に指示を送る。その指示に髭面の男は船倉の奥に隠された部屋から1人の少女を引っ張ってくる。
色の薄い肌に長く伸びた髪。見た目も相まってディートリヒの目からすれば少女のように思う彼女は、あろうことか手枷を付けられた上に足には金属球に繋がれた輪が嵌められていた。
「貴様ぁ、どこが魔獣だい! 人間じゃないか!」
「ま、待って! 待ってくださいませ、騎士様! おい、はやく飛んで見せろ!」
怒髪天を衝くとはこのことだろう。間に置かれた机を足で蹴り倒すディートリヒを抑えながら、男は必死で声を張り上げる。その慌てように髭面の男は即座に『変な気は起こすなよ』というドスの利いた声と共に少女の足に嵌められていた輪を外していく。
すると、やはり金属でできた錘は重かったのか。少女は数度ジャンプをすると腰のあたりまで伸ばした髪がひとりでに左右に分かれて持ち上がっていく。
そして──。
「なっ……飛ん……」
首から背中を支点としたそれらは、数度ほど力強く羽ばたくとそれに呼応するかのように少女の姿は宙に浮かび上がったのだ。
しかし、エルやアルの大冒険に身を投じてきた人間の1人というだけあってか。目の前で浮遊する少女を見ながらも『
「彼女をどうするつもりだい?」
「私らも
「なるほどなるほど、つまり君達は人間を拉致して見世物にするって言うんだね」
「ひぇ、誤解ですよ! こいつらは魔獣ですよ?」
怒気を抑えきれないのか、ディートリヒは
ただ、ディートリヒを含めたフレメヴィーラ王国の人間からすれば『
そんな一触即発の空気の中。ガルラ──厳密にいえばアルが口を挟みだす。
「では、購入させてもらったらいかがでしょう?」
「っ! ふー……すまないね。ちょっと誤作動かもしれないから調べてみるよ」
突然の声に驚いた男や船員達の隙を突くかのようにさっさとガルラに戻ったディートリヒは、胸部装甲を閉じずに小さく口を開いた。
「それっぽいことを言って時間を稼ぐ。言いたいことを言ってくれ」
「アイサー」
アルのか細い返事の後、ディートリヒは『騎士なのに
「あの方は商品です。なので、買い取れば彼らとは何の遺恨もないはずです。それに、彼らよりも正確な情報源になりますし、拉致された被害者を親元に返せば一定の信頼を得ることが出来ます」
相変わらず『建前で塗り固めた善意』が得意だとディートリヒは嘲笑するが、購入するとなると資金が必要となる。生憎だが彼の持ち合わせは騎士としてはある方だが、人間1人──もしくは数人を購入するほど持っていない。
そして、『持ち合わせがないからちょっと取りに行ってくる』と言ってしまえば、彼らは持てる全てでこの場からの撤退を選ぶだろう。その疑問をアルに投げかけるべく、ディートリヒは『あー、もう! いっそここで不具合治してもらおうかな、いやーでも金がないねぇ!』とわざとらしく叫ぶ。
「パーサーは居ませんが、依頼ならば喜んでー!」
「大丈夫です、かなりの型落ち品でもあちらの国では喉から手が出る物を売り物にします」
密談をする2人に『やった、
「重ねて失礼だが、そこの彼女はいくらするのかね?」
「は?」
「見世物小屋で一儲けするのだろう? それならば、我々も浮遊大陸に赴くので案内人として買おうと思ってね。で、いくらだい?」
「失礼ですが、お手持ちは?」
「ない! ……が、技術で代用しよう!」
強気どころか無鉄砲な発言をするディートリヒ。しかし、この交渉はいくら脅されている前提があろうがそれはそれ、これはこれと言える。
金がない以上はお話にならないと半ば諦めさせようと口を開く男だが、その前にディートリヒが後ろのガルラに声をかけた。
「アル、私の権限で彼らに譲渡できるシルエットナイトの技術はあるかい?」
「そうですね、先ほどの戦闘から意見を頂けるのならば……
「なんだと!?」
提示された内容に男は椅子から思いっきり立ち上がる。
彼の行動を擁護するわけではないが、それほどまでにドニカナックという機体は『産廃』なのだ。強くするためという建前もあるが、その技術を売り込めば魔獣以上の儲けにも成り得る。
そう結論付けた男は、眼前に吊るされたニンジンを追いかける勢いで承諾しようとして──ふと頭に『詐欺』の二文字が過ぎった。
「ガルラ……と言いましたな。その改良はこの場で出来るのか?」
「出来ます、実際に1機お貸しいただければそれにスクリプトを実際に転写しましょう。後はそれを研究するなり、量産するなりどうぞ」
さらっと他機の
それゆえだろうか。使用感は実際に
商談成立とばかりにドニカナックに近づくガルラだが、その前にディートリヒはストップをかける。
「その前に一つ。彼女のような種族を他に捕まえていないかい? この際だから全部引き取りたい、もちろんその分の技術も用意しよう」
「あぁ、こいつだけです。……いや? たしか、こいつと共に捕まえた正真正銘の魔獣が居ります。しかし、こちらの命令をまったく聞きませんよ?」
言う事を聞かない正真正銘の魔獣と念押しされた際にディートリヒは一瞬迷ったが、彼女の強い視線を察してか『そいつも欲しい』と注文。すると、鷲に似た頭部を持ったかなり巨大な生物が鎖で雁字搦めになった状態でドニカナックに引き摺られてきた。
魔獣が闊歩するフレメヴィーラ王国でも見たことのない種類に世界の広さを思い知りながらも、ディートリヒはカマをかけることにする。
「へぇ、そちらでもこんな魔獣が居るのかい。こちらでも山の方に居るよ」
「騎士様はフレメヴィーラ王国の方でしたよね、そちらでもこのような魔獣が!?」
「私が率いている騎士団の立場的に助っ人に行くこともあるんだけど、山間部や森の中でたまに見かけるね。だからこそこういった空を飛ぶシルエットナイトが必要となってくるんだよ」
次から次へと出まかせを言うディートリヒだが、もちろん彼は目の前の魔獣は初である。だが、これ以上吹っ掛けられるのも癪なので、『フレメヴィーラ王国では結構見るから珍しくない』という偽情報で男の興味を失わせようと思ったのだ。
話したのはガルラではなく、飛行能力を持つ
結局のところ、最初に提案した
「では、さっそく取り掛かります。そちらの1機のスクリプトを書き換えさせていただくので、サブアームを拝借」
そう言ってガルラはサブアームの
(どっかの辺境伯が用意してた物も大概でしたが、こっちは生産された時点がダメダメですねぇ)
しかし、そこで厄介なのがその部品が手に負えない状態であった場合だ。
このドニカナックもそういった経緯で生まれ、そしてエルやアルのような技術者が居ないために他国のコピーを劣化させながらもやったことが伺える。
しかし、それは今の自国や故郷の国とは一切関係ない。そのため、アルの脳内は既にどんな
(サブアームの制御に限定すればテレスターレよりも酷いですよ、これ)
原初の東方仕様(イースタンスタイル)であるテレスターレを引き合いに出しながらも、アルの脳内では数多の仕様を思い返していく。
最も新しいのはクシェペルカ王国で作ったウィザードパッケージの
他にもエクスワイヤ・チックといった支援騎への接続内容や上書き内容も加えたニキチッチ仕様、
どれも転写するのは簡単だ。イカルガの
だが、敵国にもなり得そうな他国。しかも、見た目人間のそれなのに『魔獣』と称して拉致して見世物小屋に売り払うようなモラルの運送屋を抱えている国だ。
いくら売買契約をしているとはいえ、技術の価値も分かっていないやつらに最新型をアップデートする必要があるのだろうか。──いや、ない。
ならば、どうするか。決まっている、かなりダウングレードした
(テレスターレの物にしよ。これでも結構な戦力アップになるでしょ)
もはや迷いはなかった。サービスとして通常動作での穴抜けや誤記の修正も並行で行って数十分と
「完了しました」
「も、もう終わったのか!?」
「はい、確認してもらいたいのでそちらの機体を上げてください」
サブアームから手を放したガルラは指を上に向ける。それを合図に男は髭面の男を自身に割り当てられた
周囲が慌ただしくなる中、ディートリヒはアルから詳しい事情を聞くためにガルラの操縦席に飛び込んで雑談に興じていた。
「上が騒がしいけど、なんのスクリプトを入れたんだい?」
「テレスターレの物ですよ。一番ふっるいやつ」
「えぇ、それであの興奮ってあの機体どれだけヤバいんだい?」
「仮に親方や兄さんに見せたら製作者殴り殺すか、"エチェバルリア化"させた後に1から作り直すぐらいですね」
昇降機の隙間から『動かしやすい!』や『次変われ!』と興奮した声が聞こえ続けること、これまた数十分。ようやく降りてきたドニカナックや
検証が済んだのだろうとガルラから降りたディートリヒの手をいきなり男が手に取った。
「えっと、ディートリヒ様と仰いましたかな?」
「そ、そうだが?」
「ほ、本当にこれを我々が使用しても!?」
もはや手の平返しの範疇ではない対応。しかも男に手を握られて情熱的な視線を向けられているので、心底気色悪そうな表情でディートリヒはガルラを見やる。すると、拡声器から『ディートリヒ団長の権限ギリギリ……いや、若干飛び出ていますが団長が一言だけ陛下に謝ったら済むかと』と、アルがとんでもないことを言いだした。
ただ、数か月前まで同じ銀鳳騎士団で馬鹿をやっていた者同士。アルのいたずら心を見透かしたディートリヒは。すかさず男から手を無理やり引き剥がすと、ガルラの脚部装甲をガンガンと叩きながら軽口を言い始めた。
「君は僕の乗騎だろう、主にそんなポンポン頭を下げさせないで欲しいなぁ」
「いえ、団長。彼らは謝罪の気持ちも含めて彼女や魔獣を手放してくれました。ならば、最大限の感謝として最大限の技術を提供するのもやぶさかではないでしょう。それよりやめてください、私の外部装甲が陥没します」
「教育的指導と覚えておきたまえ。……そういう訳だ、僕の謝罪で済む話だから遠慮なく持って行ってくれたまえ。技術の伝え方は……商人である君達にそれを無償でというのは無粋か。精々、上手くやって稼いでくれたまえ」
商人の矜持を知ったような口でキザったらしく背を向けたディートリヒは、『君にはこれはもう必要ないね』と、これまたキザったらしく少女の手枷や足の輪を
その反応に困ってしまったディートリヒだが、傍らに居た少女がまるで日常的に接しているかのように魔獣の頬を撫でて話しかけだした。
「シーズ、大人しくして」
するとどうだろうか、少女の指示に従うかのように魔獣は一気に大人しくなった。これ幸いとディートリヒは手早く魔獣の拘束を解くと、少女に『魔獣はどうするんだい?』と問いかける。
「私は買われたはず。ならば、あなたについていく」
「そうしてくれるとありがたいが……もう少し言い方をだね」
「やはり、憲兵に突き出した方が世のためでは?」
「やっぱり後で親方に見てもらわないと駄目だと思うよ、君は」
あらぬ疑いによって船内は一気に騒がしくなる。しかし、
そんな気配をディートリヒも感じていたので、魔獣を暴れさせないように少女に向かって念押しするとガルラに乗り込んだ。
ガルラを一気に飛行形態へと変形させたことで船内が再び騒がしくなるが、ディートリヒは先に少女や魔獣を
「さて、君。たしかに君を買ったわけだが、その所有権を捨てるよ。だから仲間の所へ帰ってくれないかな」
「君じゃない、私はローカ」
十分に
どうあっても災いが身に降りかかるのであれば、元々なかったことにする。それが彼の決めた結論であった。
しかし、ローカにとっては破格の提案と思えたが
「私の暮らしてた巣はもう……無い……」
「あっ……すまない」
恐らく、
もちろん、案内役や
「君と同種族の村が見つかって、そのまま住みつけるまでは面倒を見よう」
「本当?」
「あぁ、その代わりだが「なんでもする!」……何でもはいらないかなぁ」
食い気味の『何でもする発言』にディートリヒは頭を搔きながら否定。後ろで『うわぁ、少女になんでもさせるとか引くわぁ』と発言するアルの頭を小突きながら、彼は自身の船団まで戻るよう檄を飛ばした。
***
見張り台からガルラ帰還の報告が艦橋内に届き、『やっと戻ってきたか』とダーヴィドがまるで心配していないような呟く。その声に艦橋内に詰めていた
「ま、魔獣だ! ガルラが魔獣に追われ……いや、並走!? ちょ、ちょっと待ってくれ!」
「おい、見張り台! なにがあった! 魔獣!?」
突然の『魔獣宣言』に
ただ、そんな騒動も長くは続かなかった。伝声菅から突如としてその場に居ないはずの人間の声が聞こえたのである。
「こちら、アルフォンス。魔獣は客人なので迎撃しないでください。あ、負傷者の受け入れ準備もしといてもらえると助かります」
アルの声にダーヴィドが横を向けば
十中八九、操縦を代行しているのだろう。しかし、ガルラの操縦は
「あぁ、良いから戻ってやれ。泣いてんぞ」
「えー、ちゃんとその姿勢とスクリプト維持すれば即座に墜落しないって言ったのにー」
ぶつくさ言いながらも圧縮空気が放たれる音を残してアルはガルラへと戻っていく。残された面々は初見の全く性質が異なる
やがて、全ての指示を出し終えたダーヴィドはふんぞり返っていた船長席から降りると、艦橋に居る全員に聞こえるように声を張り上げた。
「俺は船倉に行ってくる。見張り、エドガーとヘルヴィの招集を頼んだ」
「合点!」
そう言いながらダーヴィドは船倉目指して早歩きで通路を歩いていく。面倒事の気配をビンビンに感じながらも、イズモという移動する銀鳳騎士団と言わざるを得ない巨大船の船長という役職に就いている以上は仕事をしないわけにもいかない。
多分、アルが何かしらで魔獣が関わるトラブルでも起こしたのだろうとため息交じりで船倉に向かう最中──。
「ちょっとディー! あんた、まさか……そんな人間とは思わなかった!」
「ディー、お前ってやつは……。このような少女を……恥を知れ!」
「ちょっと待ってくれたまえ! 私はこの子を助けたんだよ!?」
ダーヴィドの足が止まった。扉越しに聞こえてくる会話──いや、暴言に近い言葉の数々や弁解の言葉から察するに自身の手に負えないと自覚したダーヴィドはそのまま何事もなかったかのように艦橋へ戻りたかった。
ただ、フレメヴィーラ王国で指折りの精鋭である銀鳳騎士団。その
「なにしてんだお前ら!」
「あ、親方」
「おやかた?」
「この船で一番偉い人ですよ」
「ふーん、この巣で一番偉い人? "カザキリ"とどっちが偉い?」
ダーヴィドは扉の近くに居たアルの傍にくっついて銀鳳騎士団に在籍している医者に健康診断のようなものを受けている見たこともない風貌の少女をちらりと見るが、それは『ワケアリ』だと一旦置いておくことにした彼はそのまま船倉のど真ん中で突っ立ってダーヴィドを見ていたエドガー達に近づいていく。
いくら元々は同じ銀鳳騎士団出身である3人だが、今は別の騎士団かつエドガーとディートリヒは騎士団長である。自身の率いている騎士団のパワーバランスについて物申したい気持ちを爆発させたダーヴィドは3人の前に立つや否や叫んだ。
「お前ら、もう別々の騎士団だろうが! それぐらいにしろ」
「親方、すまない。ディーがいきなり魔獣やあの少女を連れ帰ってきてな」
「後、あの子がディーに買われたって言ったから……」
「はぁ!?」
「だから言ってるだろう! 買ったのは事実だgぶぇぇ!」
言い終わる前にダーヴィドの鉄拳がディートリヒに炸裂し、再びリンチが開始される。理由はどうあれ『見るからに人間──しかも、女の子を買う』という役満な現場。どうあっても覆しようがないと諦めていた彼だったが、そこに今まで会話に参加していなかったアルが『はい』と手を上げた。
「ちゃんと言葉のキャッチボールしましょうね。……というわけで、質問どうぞ」
「あ、そういえばアル君も居たんだっけ。なんであんな酷いことさせたの!」
「その質問の答えは向こうが売り物にしてたからです」
「では、なぜ買った! それだと向こうがつけあがるだけじゃないか!」
「それやったら僕ら、空賊になっちゃいます。なので、買いました」
「つまり、ディーは人助けとしてこっちの嬢ちゃんを購入と言う名の保護をしたわけだな」
「あっちでずっとこちらを見ている魔獣と一緒にです。どうやら、あの子の相棒のようで」
「なんで俺達を放置した。誤解があれば解けば良いだろう」
「さっきまでそんな簡単に信じる空気じゃなかったのは、ここに居る皆が分かっているかと」
大きな魔獣を指差したり、周囲の
そんな男子中学生的やり取りの後、攻撃をしてきた船が
「複数の国に無法者か」
「なんでも、そこら辺の石までもエーテライトらしいですよ」
「飛びつくのは無理もない話ね」
「ハハハハっ。し、しかし。い、今更テレスターレの技術でって……。ヒヒヒッ、有難がるたぁおかしな連中だぜ!」
詐欺ではないが不平等極まりない条件でローカを手に入れたことに対して笑い転げるダーヴィドはさておき、
さらには少々人間とは異なる種族に西方では絶えたとされる魔獣。どうあっても浮遊大陸は金とは切っても切れない縁で結ばれているとしか言えない状況ともいえる。
「ねぇ、私はどうすればいい? 船の飾りでも、なんでもやるよ?」
「だからそんな軽々し……待て、ローカ。君は向こうで何をされた?」
「私じゃないよ、他の巣の子も一緒に変なところに入れられてた時があったの。そのうちの何人かがいつも騒いだり、そこら中を蹴って暴れてたから巣の先っぽとか硬い所に縛られて飾られてた。地の此は巣の飾りつけに私達を使うんじゃないの?」
知らぬということは幸せなのだろうか。どこまでも純粋な眼差しで疑問を口にするローカだが、それを聞いた全員は一瞬のうちに感情を失くした能面のような表情を浮かべている。
理由を考えるのもそれを実行した人間に寄り添った気がして非常に不愉快なのだが、おそらくはローカと同種族の者に
やりたいことは分かる。自軍の損害を防ぐためになりふり構わない姿勢も分かる。
だが、
「んー、まさか折檻以外で吊るす人が居るとは思いませんでした」
「……あたし達の部隊はちょっと急用思い出したわ」
「ヘルヴィ、俺達も乗せていってくれ。どうせ同じ目的だろう」
「おかしなこと言った? あ、もしかして"はくせい"っていうのをするの? 何かは分からないけど、別に良いよ。強者は大風のようなものだから、安易に羽根を逆立てると飛ばされるってお父さんも言っていたし」
「君はもう喋らないでくれ。頼むから……」
火に油どころではない話を追加で聞かされたが、なんとかエドガーとヘルヴィは平静を取り戻したらしい。『冗談だ』と2人は近くの椅子に座り直すが、目の笑っていないのは多分気のせいだろうとそのままローカについての処遇が話し合われる。
その結果、ローカは案内役兼彼女の種族であるハルピュイアの文化を学ぶための教師役として無事にイズモに迎え入れられることとなった。
なお、あんなに言われたのにもかかわらずローカは『買われたから』とディートリヒの後ろをちょこちょこついて回っており、それを見かけた全員が漏れなく生暖かい目で見ていたのだが、本人としてはとてつもなく居心地が悪かったのだとか。
ローカ
本作のオリジナルキャラで、原作のとあるキュマイラライダーの娘。好奇心旺盛で大人しい性格なので盾になることも剥製(こちらはとある議員が言っていただけだが)になることもなく本国に輸送される途中でディートリヒに救われる。
最初こそアルが本当にガルラの中の人だと信じ込んでいたが、隅で隠れていた事実にちょっと残念そうだったとか。
なお、アルも助けた内に入るのだろうが、実際に枷を外してくれたり交渉してくれたのはディートリヒ。そんな図式が組み上がっており、事あるごとに『この巣で一番大事にしている情報を対価にディートリヒから買われた』とイズモ内で吹聴している。
シーズ
ローカのパートナーであるグリフォン。基本的にローカの言う事しかきかないが、イレブンフラッグスの船とは打って変わって食糧や寝床といった客人の対応を受けてちょっと困惑気味。