「現状は?」
まるで
その言葉にまずはガルラの変形機構に興味を持ちつつも、イカルガのように土足で自身の聖域である空を穢したアルに激情していたオラシオは何も言い返さずに身を引く。
次に突然の失踪で中々円滑なコミュニケーションをとることが難しく、ようやく歯車が回り始めた時にのこのこ帰ってきたアルに対して嫌味の一つでも言ってやろうと突っかかってきた
そんな彼らに改めて『相性最悪のパーティですね』と毒を吐いては両者に睨まれたエルは、咳ばらいをしながら事情を説明し出した。なお、ここまでかかった時間は数十分。明らかな時間の無駄であった。
「まず、この天候ですが……藍鷹騎士団に調査は?」
「藍鷹騎士団は他のことを調査していただいています。おそらく、あの魔獣が活性化しているかと」
「先ほどから地鳴りが酷いですが、それもですか?」
「だと思います」
険しい表情のエルからもたらされた情報を整理すると、事態は最悪に向かいつつあった。青く澄み切っていた空は既に黒い雲に彩られ、時折来る地鳴りや浮遊感が嫌でも『落下』という2文字を脳裏に叩きつけてくる。
「なので、それを対策するためにこの3人で知恵を出し合いました」
「利害が一致しただけだ」
「君と知恵を出し合うなんて、反吐が出るがね」
またしても息を合わせようともしない面々に、アルの頭には『呉越同舟』という文字がデカデカと瞬いている。しかし、息を合わせることに対しては最悪の一言だが知識面は最高峰と言っても差し支えのない面々なので、とりあえず文句を飲み込んだアルはその対策に目を向けた。
「すみません、このエーテリックアームズというのは?」
「文字通り、エーテルを射出する装備です。現在は魔力をエーテルに変えて吹きかける"エーテルスプレー"と、エーテライトを刃にした手槍の"エーテライトスピア"があります」
「エーテライトを拳大ぐらいに砕いてスリングで投げた方がマシでは?」
「なるほど! そんな手もありますね!」
不明点やそれに付随した雑談を織り交ぜつつ、アルは対策を読み解いていく。
「兄さん、これは本気で?」
「はい」
「勝算は?」
「初めから負け戦と思っていない程度には」
「負ければ?」
「西方諸国の大半の国が無くなりますね。その後のことは、アルお得意のマイナス思考で考えてください」
淡々と。だが、エルの口から語られる最悪の未来を相槌にアルの決意は鍛錬される。余計な考えが叩かれるたびに追い出され、見る見るうちに決意は頑強な意思へと変貌を遂げた。
「やろう」
そう短く告げたアルがすっかり戦闘態勢に入ったことを感じたエルは、『結構』とエムリスなどの総指揮官にこの計画を説明する場に出席して欲しいと伝え、拠点の方へと足を向ける。
そんな彼を追いかけようとアルが足を踏み出したところで、ハルピュイアのことを忘れていたアルは慌ててその場から去ろうとする
「あ、オベロン。あなたはどうせ出席しないでしょうから報告です。こっちに戻ってくるまでにイレブンフラッグスの船からハルピュイアを保護してますので、魔王軍で保護してあげてください」
「君は本当に空気を読んだ方が良いよ。……けど、感謝はしておくよ」
「お互い様でしょ」
そう言い合った後、彼らはそのままこの場から去って行った。
***
「……なんだこれは。冗談しか書いていないように見えるが?」
「全て真剣に考え、全て実現できるギリギリを見据えて書いています」
拠点のとある一室でフリーグデントはエルから手渡された作戦立案書を前に眉間を解す。その行動に妙な既視感を感じたアルであったが、彼はフリーグデントのみならずエムリスや彼らとは少々離れた場所で仁王立ちしている『グスタフ』と紹介してもらった人物に視線を向け続けていた。
エムリスは長年エルの奇行ともいえる行動を見ているからここで強く否定することはないだろうが、パーヴェルツィーク王国にとってこの作戦は無茶に無茶を重ねた現実的ではない内容のオンパレードだ。仮に『敢行する』と言ってしまえば杖を抜かれることも視野に入れ、アルはここに来る前にポケットに隠した触媒結晶を握り込んだ。
すると、アルの想定外の事象が発生する。持ち前の『何だか知らんが、とにかく良し!』な気質で口を挟まないだろうと思っていたエムリスが声を上げたのだ。
「エルネスティ、いつの間にエーテライトを作れるようになったんだ?」
「それは机上の理論です。実験はこれから行います」
「は?」
(まぁ、そうなりますよね)
絶句する周囲を前にアルは彼らの反応に同意する。まさかエムリスが気づくとは思っていなかったが、エーテルから
絶句から立ち直った面々が口々に『エルネスティ = ごり押しの権化』のごとく非難しているが、当の本人はどこ吹く風で作戦内容を伝える。
しかし、どんなに取り繕っても旗艦を対価に伸るか反るかの大博打を執り行うという事実は変わりない。そんな破天荒な作戦──否、作戦というのも烏滸がましい世迷いごとに傍に控えていたグスタフがとうとう吼えた。
それに呼応するかのように自身の船──パーヴェルツィーク王国に至っては自国の威信にかけて建造した
ポケットの中で握っていた触媒結晶に身体強化の
「ではこの島が自国に落ちないことを祈り、その後のバトルロワイヤルで殺し合いますか?」
「なに?」
「貴殿は……エチェバルリア卿の弟と紹介があったな」
「元フレメヴィーラ王国、現クシェペルカ王国の騎士のアルフォンスと申します。先日はそちらの大勢の騎士をお借りしました」
殺し合う。国同士の会合に使用すべきではないほどの暴力的な言葉にグスタフの堪忍袋が限界寸前まで引き延ばされる。そんな一方で、フリーグデントはアルの自己紹介に先だっての
一見若く、それでいて絶賛隣で歯を強く噛むことで己を律しているグスタフよりも男っぽくない見た目。到底、あの嵐の中を器用に飛んではパーヴェルツィーク王国所属の
「本当に貴殿があの嵐の中を?」
「エムリス殿下を救助するついでにですね。あの時は我々もどのくらいの手出しが可能な同盟関係なのかは把握できていませんでした」
「そうか、世話になった。この場にて申し訳ないが、感謝させてもらう」
どうやら本当に助けてくれたらしいのだと理解したフリーグデントは頭を下げる。一国の王女がそこまでするほどの感謝の意に思わずアルも『ありがたく頂戴します』と騎士の礼を取る。
そこまでで済めばお互いにとってほっこりした階段で終わるのだろうが、そうは問屋が卸さなかった。
「貴様! 先ほどの言葉の意図を全く説明できていないぞ!」
「グスタフ!」
すっかり頭に血が上ってしまったグスタフがアルに詰め寄り、そんな当人にフリーグデントは叫ぶ。だが、
「そうですか。では、私が考えたこの島を放置した場合の最悪の最悪。それを語らせてもらっても?」
「エムリス。エチェバルリア騎士団長も。彼の話は信じられるのか?」
「あぁ、あり得るという話を考える才能ではあいつの右に出る物は中々居ないと思う。以前にその話をしてもらった時はあり得そうでつい手が出てしまった」
「うちの騎士団では彼よりも深刻に話を考える人間は居ませんでしたよ。ですから、僕の作戦や案によく対抗策として献策してもらってました。……もう元ですがね」
アルとしてはあんまり褒められて欲しくはない技能だが、どうやらエムリス達はそうでないらしい。そんな彼らの発言にフリーグデントはグスタフを強く睨み付けつつ、改めてアルの考える『ここで逃げた場合の最悪』を説明するよう促す。
「承知いたしました。まず、この同盟には魔王軍も入っています。当然ながらこの策には魔王軍の総帥であるオベロンも参加しているため、ここで臆病風に吹かれて撤退したとなれば彼は西方人を本格的に信用しなくなる。ここまでは良いですか?」
「ふん、ハルピュイアごときが何匹居ようと──」
「彼は魔法に精通した別の種族です。ゆえにナイトランナーの動きを抑制する特殊能力も持ち合わせています。さらに言えばいくら兄さんが弱らせたといっても魔王という特級戦力もあり、彼はこの同盟が無ければそもそも浮遊大陸の西方人を駆逐する派閥の方です。仮にここで逃げだしたら……追ってきますよ?」
「だが、それは貴様の感想であろう」
まるでどこかの掲示板開設者のような返しをしてくるグスタフだが、これがアル個人の行き過ぎた思惑だったらどれほど良いことか。
あの西方人どころか徒人に対する嫌がりようや同盟に対してのかなりの葛藤。そしてなによりエルへの固執も合わさると、『逃げている尻に食らいついて来ない』という確率は限りなく0となる。
ただ、最後のエルについては説明をすると『こいつを囮にすれば良いじゃん』と言われてしまうため、最期まで一蓮托生を貫せてもらうようあえて説明はしない。アルだって聖人君子ではないのだ。
「そこまでか」
「はい、そこまでです。んで、犠牲多く撤退しても浮遊大陸の落下が待っています。ぶっちゃけどこに落ちるかも分からないので、ここは運頼みになります」
「僕らはフレメヴィーラ王国なんでそのまま帰りますがね」
「クシェペルカ王国もフレメヴィーラ王国の友邦国なので、色々避難がはかどりますね」
まるで『そっちは大変ですねぇ』とばかりにケラケラ笑う2人に再びグスタフの怒りが貯まるが、『落ちてこない』という反論が出来るほどの状況ではないことを察して何も言い返してこない。
確かにこの状況を放り出した場合、浮遊大陸が西方諸国に落ちてくることは必然である。仮にパーヴェルツィーク王国に落ちてきた場合は祖国は間違いなく全滅するだろうし、周辺に落ちてきても余波でどれほどの被害が起こるか分からない。
「やはり、この作戦に賭けるしかないのか」
「え? まだ言っていないことがありますよ?」
アルの言葉にエル以外の全員が目を丸くする。──そう、ここまでが『序章』である。彼の考える最悪とは、この未曽有の大災害の後に巻き起こる惨劇のことだ。
大前提だが、浮遊大陸とは巨大な
ただし、この被害は対極分けて二分化される。即ち、『直撃した国』と『余波で済んだ国』である。
直撃を食らった国は
さて、ここで大前提を振り返ってもらいたい。浮遊大陸とは、『
ここまで言えば分かるだろう。『スーパー火事場泥棒大戦』の始まりである。
浮遊大陸の残骸を賭けた奪い合いを行う傍らで、あわよくば他国の領土をちょろまかす。直撃した国はというと防衛の
もしこれが実際に起こった場合、『醜悪な争い』と未来の歴史家が評しても文句が言えないかもしれない。
そこまでアルが説明したところでようやく頭の理解が追い付いて来たのか、フリーグデントは震え声でアルを呼ぶ。
「それは貴殿の言っている"最悪"だろう? 援助を行う国があるだろう」
「パーヴェルツィーク王国は援助を行うと?」
「む、無論だ。我が国はそのような破廉恥な──」
『国ではない』と言い終わる前にアルの顔が心底馬鹿にしたような表情に変わる。一目見るだけで見た人間の神経を逆撫でするような表情に、ついにグスタフがキレた。
胸ぐらを掴み、『何を考えている』や『無礼だろう』と口角泡を飛ばすが掴みあげられたアルは少々ムッとしながらも嘲笑の笑みは止めなかった。
「グスタフ卿、その辺にしてくれないか。言いたいことは分かるが、俺もこいつと同意見だ。ただ、やってることは気に食わんがな」
「ほう、エムリスよ。では聞かせてもらえるか?」
「まず、フリーグデントよ。お前、王女が王が決めた軍事行動に口を出せるのか?」
宙吊りにされたアルの頭部をペシペシ叩きながらエムリスは語る。
フリーグデントはパーヴェルツィーク王国の王女だが、『女王』ではない。つまり、親である王が『是』と言えば素直に従わなければならないのだ。ただ、そこまでになんとか王に事態を説明して方針を変えさせることも可能ではあるが、それでも高序列の王女1人の意見など数で押してしまえばそれまでだ。
恐らく自身が身に置いている境遇の良さから来る発言だったのだろうが、彼女が反省する前にアルの言葉がさらにぶつけられる。
「先ほど僕の言ったことを"考えすぎ"みたいなこと言いましたが、ウエスタン・グランドストームに負けたジャロウデク王国を切り取ろうと頑張っている国が一杯ありますよ? そんな状況で我先に国が動かない保証とかあります?」
「ほう、誰がそんな情報を言ってたんだ?」
「ジャロウデク王国の騎士ですよ。グスターボって人です」
「あぁ、狂剣の人ですか!」
噂の仕入れ先のトンチキさに『仲良くなる人間選べ』と怒られる横でエルが声を上げる。どうやら本当に知り合いだったようだ。
それはともかくとして、絶賛周囲から切り取られ中の国があるのは事実である。価値が高そうな物が降って湧き、自分の国が兵を派遣する余裕を持っていた場合など想像に難くない。
特に
「それらの被害にあった国を守れるんですか? 防げるんですか? この船1隻では到底足りませんよ」
「この船を知らぬ貴殿に何が分かると?」
「分かりますよ。コデルリエ平原に到着するまでかなり遅れていたような船ですよ? それよりも広い西方諸国を1隻で賄えるはずがない」
「……貴殿もエチェバルリア卿の騎士団に?」
「ご想像の通りかと。当時は銀鳳商騎士団の副団長を拝命しておりました」
竜殺しの一端ということで性能が把握されていることに合点がいったフリーグデント。ここまで来ると、もはや逃げ出す方が大風呂敷を広げなければならないような気がしたため、両手を挙げて降参の意思を示した。
「あぁ、もう逃げ出すのは止めだ。貴殿らの考えた作戦に乗ろう」
「殿下!?」
「おや、ここからもう少し面白い話になるんですが」
「止めてくれ。どうせ、我がパーヴェルツィーク王国に落ちた場合のことも考えたんだろう。これ以上は心身共に疲弊したくないゆえ、速やかにその口を閉じて欲しい」
もはやお腹一杯という様子のフリーグデントに。アルは少々つまらなさそうに礼をしながらエルの傍で待機する。草むらから蛇どころか竜が出た騒ぎだったが、何とか作戦決行が可決されることとなった。
途中、搭乗員の割り振りなどといった内容も話題に出るが、あらかじめ決められていた通りにエルやオラシオが名乗りを上げる。ただ、結論の速さに事前に決めていたことを看破されつつも、他に戦力になりそうな騎士が居ないことを悟ったフリーグデントが項垂れるという一幕はあったが、後に『やるからには徹底的に』と号令が彼女から為される。
***
無事に作戦の承認をもらったところで拠点から出たエルとアル。そこにノーラが小走りで近づいてきた。
「騎士団長閣下!」
「おや、ノーラさん。頼んでいた物の調査は?」
「滞りなく完了しました。その件につきまして報告させていただきます」
「それって僕も理解できますかね?」
どうやら頼んでいた調査が終わったらしいが、アルとしては作戦の概要を知ったばかりで藍鷹騎士団からもたらされるであろう情報を理解できるか心配だった。その問いにエルも『たしかに』と同意するが、逆に何をアルにしてもらうのが良いのか決めあぐねていた。
そんなところにダーヴィドを伴った銀鳳騎士団の
「おう、銀色坊主。クシェペルカへの言い訳を考えてたが、銀色小僧も帰ってきたところでなによりだ」
「あれ、親方。作業ですか?」
「あぁ、今から殴り込みに行くんだよ」
そのまま会話を打ち切って再び作業場へと歩き出そうとするダーヴィド一行だったが、エルの呼びかけで立ち止まった。
「なんだ? なんか注文か?」
「いえ、エーテリックアームズのことなんですがね。シルエットナイトでも使用できるものはやっぱり必要じゃないかなと」
「そりゃそうだな。だが、手が足りてないんじゃ……。あぁ、そうか」
「なんで無言で人に指差すんですか? せめて何か言ってくださいよ、指をへし折りますよ?」
ただ、そんな現状は
「バト坊、銀色小僧についていけ。他に何人か見繕ってからな」
「了解。じゃあ、久しぶりに中等部組で集まろうか」
「りょうか~い」
「ひっさしぶりだなぁ」
バトソンの呼びかけに元ライヒアラ騎操士学園鍛冶科の中等部から卒業して銀鳳騎士団入りした面々が手を上げて彼について行く。
既に卒業してから何年も経っているため、彼らも立派な青年や乙女となっているがその腕は長く
「副団長は相変わらず小っちゃいなぁ」
「元でしょー。あ、結婚するんだって? 良いな~」
「あー、こいつと一緒に仕事するのも最後かー」
「やめ……やめろぉ!」
やけにフランクに接する彼らに
「では、皆。僕は藍鷹騎士団の報告を聞いてくるんで、後で見学に行きます」
『うぇ~い』
まるで指示したかのような返事に苦笑しつつもノーラと共にイズモの中に消えていくエル。それを見送ったアル達は、バトソン達の案内で元来た道を戻ってフレメヴィーラ王国が使用している工房の中へと入って行く。
工房の中は白鷺騎士団や紅隼騎士団が使用している
「いや、俺達は別の作業に入るんだ。エーテライトとかエーテリックアームズの保管場所ってここだよね?」
「はい。あっちの区画です」
「ありがと」
そんな年寄り臭い成人したての異常者の感慨深さはともかく、
「気密ヨシ」
「ヨシ」
「じゃあ、エーテライトの箱を2箱。エーテリックアームズはそれぞれ2つずつ取り出そう。運び込む先は外……いや、整備の邪魔になるな。アルはそっちの部屋の扉や窓を全開にして、雨が入り込んでもお構いなしで」
「了解」
バトソンの指示の下、
数分後には部屋の中には木箱と
「さて、元副団長。どうします?」
「ちょっと、俺が一応の隊長だよ?」
「ひとまず、エーテライトの再調査からしましょう」
「そんな悠長なことしてて良いの?」
アルの言葉に全員が首を傾げる。
これ以上に調査するところなどないのではないだろうと1人の
「僕らが調べたのは燃料としての
「あ、そっか。たしかにそれは調べないとまずいな。よし、やるか」
「じゃあ、2人ずつで班に分けよう。1班は硬度を調査、2班は欠片の大きさごとに無くなる時間を調べよう。時間を調べる時は水に漬けながら細かくしてね」
「僕はバトソンと有用な武器のイメージを固めておきます」
アルが武器の刃先としての
硬度を調べる班はハンマーやら
一方で揮発時間の調査を担当している班は、最初から水に沈められている
「調査とか言ってたけど、そんなので新しい物とか作れるの?」
「一定時間の存在を確約できる大きさなら、原始的ですがスリングという手もあります」
そんな調査風景の横でバトソンとアルが話し合いをしていた。
外気に触れている間はエーテルを周囲に発し続け、ついには無くなってしまうという不思議物質。ただ、逆を言えば揮発し続けようと問題ないかつ、相手にダメージを与えることが出来る大きさにしてしまえばモーマンタイである。
そうなると打てる手も自然と増えていく。とある事情で『検証したばかり』のスリングもそうだし、いざとなればどこかの島の妙に戦闘能力の高かった量産型の一つ目巨人みたいに岩投げも視野に入る。
ただ、それだけでは手数が足りない。せめて銃みたいに安易にリロード出来る物はないかと思っていたアルが開け放たれた扉の方に視線を向ける。
「あれ、シナツヒコってここで整備されてたんですね」
「いや、どこに置くか迷った挙句にここに放置されてるだけだよ。肝心の持ち主が失踪してたから」
何やら言葉の節々で毒を感じるが、アルの視界に彼自身が作り出した大気を圧縮した物を打ち出す
「バトソン、こういうの作ってもらえます?」
「またガンライクロッド?」
雨に当たらないところで