本年度も銀鳳の副団長をよろしくお願いします
対
すると、本体の防衛本能の一端なのであろう。既にほどけかけていた光の柱から夥しい数の
そんな多勢に無勢という言葉を表現したような現場だが、マガツイカルガニシキは
たしか、『
「んなろ!」
アルは気合を込めた声と共に
ならばどうするか。どうやったらこの状況から合流できるか。
──決まっている。
「最速で!」
「最短で!」
そうすると進行上の
早速フリーとなった両腕でサブアームから受け取った
「一直線に!」
周囲に破壊的な力をまき散らしながら暴力的な加速を続けるガルラは、一向に減速も曲がることもせずに暴走列車のごとく突き進む。
最後の障害となる
「アル君!?」
「アディ、状況は」
離脱したはずのアルがやってきたことに驚くアディだが、今は時間が惜しいとアルは状況を確認する。だが、今も刻一刻と状況が変わっており、彼女も彼女で
「アル、こっちです。接続の補助をお願いします」
「あぁ、黙ってたから気絶でもしたかと思ってました」
「僕はそんなに柔じゃないですよ。それよりも、説明するので黙っててください」
すると、エルの声と共にイカルガの
なんでも再び加速をかけて光の柱に居る巨大な
なので、今度はもう一つの核となった
ただ、問題が1つ存在する。それは
この
「アルにはリンドヴルム側に潜り、魔力の伝達が出来るように改造して欲しいんです」
「了解。この際、細かいことは気にしなくても?」
「良いです。結果が伴うならば、ちゃちゃっとやってください」
問題を解決するためにエルが指示を出し、アルはそれに対して全く疑うことなく実行に移す。すかさず
「道を開けましたよ」
「分かりました。ラーフフィストの誘導をお願いします」
報告を聞いたエルが操縦席の操作盤から
アルの方はエルの声と共に
「接続完了でーす」
「反応来ましたー! では、行きましょうか!」
「大きな腕が来るよ!」
「分かっています、こんなことがあろうかとぉ!」
「それが言いたかっただけでは?」
あらかじめ予想していたかのようにエルはイカルガの操縦席から
その命令とは
「一斉射!」
片側16連装の計32本もの
めった刺しになったことに加えて
「これで最後です! 後は……野となれ、山となれ!」
新たな命令によって
されど、
「アル、オラシオさんを回収してください。その後は銀鳳騎士団と共に撤退、クシェペルカ王国に現状を報告してからフレメヴィーラ王国に避難を持ちかけるように」
一歩──それも大きすぎる一歩が足りなかったと盛大なため息をついたエルは、今後のことをアルに話す。
未だ『最後のあがき』は残されてはいるが、このままでは浮遊大陸が西方諸国に落ちるのは確定だろう。地理的にも内部的にも同盟国であるパーヴェルツィーク王国は今からだと間に合わないだろうが、銀鳳騎士団と良い仲──それも副団長を連れて行ったばかりのクシェペルカ王国であるならば話を聞き、迅速に避難することが可能かもしれない。
だが、突如として周囲が闇に覆われたことで2人は会話を中断する。まるで再び黒雲が周囲を飲み込んだような変わりようだったが、バケツをひっくり返したような雨や姿勢制御にも難儀するほどの風の奔流は見られないことから
「うわっ」
「なんですか、あれ」
それぞれの期待の操縦席で警戒していた2人の
銀鳳騎士団にとって状況が目まぐるしく変わることなど日常茶飯事なのだが、ここまで規模が規格外で理解の範疇でない状況はかなり稀なことであった。
「多分ですが、間に合いませんね」
「……かもですね」
ただ、原理や理屈が一切分からなくともこれだけは分かる。
ここに居るのは危険で危ない。思わず同じ意味合いの単語を繋げてしまうほどの度合いであるということだ。
「アル、先に回収と撤退準備をお願いします。ただ、もし戻らなければ……あとは分かりますね?」
「分かってます」
「今までありがとう、助かりました。アディも出来れば逃げてくれると 「エル君を置いていけないのでなーし」 あ、はい。分かってました」
アディの言葉が挟まったが、先ほどと同じ指示。されど、ここに『戻らなかったら』というIFが付けられる。それほどの相手なのだとアルは納得し、ガルラは
しかし、その胸中は後悔が一杯であった。
もっと戦えるように訓練していれば。咄嗟に何かを閃く頭脳があれば。様々なたらればを夢想しては頭の奥底へ封印していくアルだが、『もし、あの人と婚約しなければ最後まで残って戦えたかもしれない』と言い出しそうになった瞬間に己の顔を全力でぶん殴る。
「何言ってるんだ、僕は。あの人は関係ないだろ」
仮に価値しか見えていない人物が見れば、文字通り目の色を変えて捕獲に臨むだろう。
「もう禁忌モンスターじゃん」
ゲームや漫画の世界には存在そのものが厄災とされる存在が度々登場するが、あの類はまさしくそれであろう。人知を超えた魔法を使い、セッテルンド大陸史上最優とはいかずとも『天災』ばかりを集めてもなお届かない。
さらにはその中で演算に秀でた者でようやく漕ぎつけた技術を容易く模倣する存在が平気で外をうろつかれては敵わない。そう結論付けたアルは内心で彼らの企画した封印案が正しかったことを悟りつつも、オラシオが脱出に用いた小さな
そんな折、周囲を飛んでいた魔王がガルラに近づいてきた。その手には
「アルフォンス。エルネスティはどうしたんだい?」
ガルラの周囲を見た
しかし、残念ながら事態はそのようなどうでも良いことを考えていられるかのような安穏とした状況ではなかった。既にエムリス達が作戦失敗を察しているのか宙に浮かぶ
「あの中です」
「あぁ、くそっ! やっぱりか! せっかく殺す機会に恵まれたというのに!」
「お、おい! やめろ! 揺らすな!」
「アルフォンスの見立てではどのくらいだい?」
「4対6。死亡の方が高いですね」
「あぁ、そのぐらいだよな。むしろ、それより下がりそうだ」
『なにが』とは聞かずにアルは巨大
某Zな戦士のように最初は新たなる脅威に『あ……あ……』と言いながら敗北し、修行の末に新たなる力を目覚めさせて見事に勝利するような展開ならば別に良いが、今回はただ相手が悪ければ修行時間もない。そして、敗北した後の傷跡は尋常ではない。
そのためアルは、エルが初めに言ったように『後のこと』を
「オベロンはどうします? 個人的にもっと遠くの場所なら浮遊していられるかと」
「そうだね、君は確か船を奪っていただろう。あれをもらいたいね。魔王軍が君達を襲わないという言質があれば君達の事情的に十分な取引だろ?」
「こいつも連れていくんじゃないのかい? お前達の仲間だろう」
「僕個人のなんやかんやは別として、同盟相手の技術者なだけですよ。だけどこの人、前の働いていたところを夜逃げ同然で出て行ったみたいなんですよ。だから、引継ぎやら挨拶やら全然してないっぽいんです。オベロンならそういった人、どうします?」
「お、俺はただの雇われだぞ! 国と心中するなんてまっぴらだ!」
「あぁ、そりゃ酷いな。論外だ。そうだな、不義理なのに違いはないね。ほんっと、これだから徒人は」
芝居がかった動きの魔王から聞こえてくる、これまた操縦席での表情が透けて見えるぐらいに呆れきった声。ジャロウデク王国生まれではなくて別の国から仕官してきたオラシオとしては色々言いたいことはあったらしいが、それらは聞き届けられることはなく最後に『アルフォンスがそういうんだったら準備は出来ているのだろう、連れて行きたまえ』と拠点へ向けて降下していく。
それを見届けたアルは、未だギャイギャイ騒ぐオラシオを乗せた小型
「おっ? 本っ当に来やがった」
「そりゃ約束は守りますよ。どっかの夜逃げ技術者とは違ってね」
「おいおいおい、別に俺はお前に何かしたわけじゃないだろ。そんな風に言われる筋合いはないと思うぞ」
「あ"?」
そこら辺の岩場に座っていたグスターボに、アルはチクチクと嫌味を言いながらオラシオを差し出す。ただ、その嫌味がお気に召さなかったのだろう、彼が『お前とは無関係だ』とアルに強く言ってしまった。
──それが彼の喉に新しく生えてきた逆鱗だとも知らずに。
たしかに
だが、実際にクシェペルカ王国に派遣され、あちこちを忙しなく戦いながら移動し、とある女性と出会い、とある思いに気づいてからは決して他人事とは言えなくなってしまった。
オラシオにとっても雇われたからには成果が必要だったのであろうが、流石にクシェペルカ王国を一度滅ぼした技術を生み出した技術者が『お前には関係ない』と言われると図星であろうともムッとしてしまう。
『人間の側が間違いを起こさなけりゃ機械も決して悪さはしない』というとあるアニメの名言。それもロボやメカに対する至言ともいえる言葉がある通り、悪いのはジャロウデク王国の上層部ではある。
ただ、そこまで人間が出来ていないアルからすれば、『そもそもこいつが
そこからさらに付け加えれば、雇われ技術者として仕官した身でありながら戦況がまずくなったら挨拶も引き継ぎもせずに、いきなり消え失せるという社会人にあるまじき行為に憤慨するのも仕方がないわけで──。
つまり、なにが言いたいかというとアルは珍しく八つ当たりかつガチギレの状態であった。
「安心しなァ、殺しはしねェよ。あっちの国とはまだ大きくやり合う気はねェからな」
「僕はクシェペルカ王国に影響なければどうでも良いです。あ、エーテライトですがこの浮遊大陸が西方諸国に落ちる可能性が高……。あ、やっぱ落ちないです」
『どっちだよ』とグスターボがアルに問いかけるが、その声はもはやアルの耳には届いていなかった。目線の先には先ほどまで煌々と照らされていた光の柱が徐々にその輝きを失い始め、それと同時に天から降ってきた薄い光の帯が何の前兆もなしに消え失せた。
光の帯が消えた途端に急激な大地の揺れが生じ、その揺れが収まったと思えばズゥンという非常に重々しい音がアル達の耳に届く。
「やっぱり落ちないですね。兄さんがやってくれました」
「エルネスティがやりやがったか」
アルとグスターボが揃って光の柱の方角を見やる。光の柱が暴れていた場所には、
だが、何事もいざという時がある。『とりあえずケジメつけてくらぁ』とオラシオを引き摺りながら奥の方へと消えたグスターボを余所に、アルは残された船員の1人──パヴァンにこれからの浮遊大陸についてを伝えた。
「これから浮遊大陸に国が興ると思うので、秘密裏に採掘は難しいと思いますよ」
「そうなんですか。……仮に見つかった場合はどうなるので?」
「仮に見つかったら、ハルピュイアの軍勢とか兄さんと同等の強さの機体。後は多分同盟関係で僕も出張るかと」
──そう。エルが
本来はそこで話を終了しても良いのだが、グスターボにも色々世話になっている返礼のためにアルは『王国を築く際の保証国として名乗りを上げてみては?』と提案するが、パヴァンの顔色は一向に良くならなかった。
「無理ですね。現在の我が国は先の大戦で生じた傷も満足に癒せないので」
「まぁー、そこは自業自得と思いますよ」
「仰る通りです。その中で新たな国を認めると宣言するよう進言するのも厳しいのですよ」
「そんとーり。いくら良い結果になろうが、親父が居ない以上は俺っちがそこまで上に物申すことはできねェよ」
『我々も少数の外回りですから』とパヴァンが自分達の存在を卑下していると、なにやら拳に赤い液体を付着させたグスターボが帰ってくる。その満面の笑みから察するにきっちりケジメはつけたらしく、『ボロ雑巾』の位置を地図に書いてくれた。
ただ、いつまでも駄弁っているのは彼らの出発が遅れて迷惑がかかると思ったアルは早々に話を区切ってガルラへ乗り込んでいく。
「では、また機会があれば」
「おうっ! 機会があれば斬り合おうぜ!」
まるで散歩の約束を取り付けるように殺し合いを提案するグスターボに内心、『二度と出会うか』と吐き捨てたアルは聞こえなかった振りをしてそそくさとガルラを飛び立たせた。
アルが『オラシオがこの辺りで見失いました』と地図を片手に報告を入れて少し経った後、顔面がボコボコになったオラシオをパーヴェルツィーク王国の
***
臨時拠点となったイズモの中央船倉では、エルやダーヴィドを中心とした銀鳳騎士団の中核が勢揃いで国元へ送る報告書を書き記している。
毎度のことながら『無理 無茶 無謀』という三銃士を引き連れた作戦を思い返すのは非常に頭が痛くなるが、仮に報告書を出さずに口答で報告となると自身の正気が耐えられるか分からないために今もこうして無心で紙に内容を書き連ねていた。
他の陣営とか協力を始め、未知の敵となった
「なんで僕まで混ざってるんですかね」
「銀色坊主の代わりだ。言っただろうが」
アルだ。エルではなく──アルだ。何故、一応銀鳳騎士団から脱退したはずの彼がこうして報告書を作っているのか。理由は簡単、エルとアディの代役としてダーヴィドが彼を引き摺ってきたのだ。
名目上は『キッドへのメッセンジャー』としてアルは銀鳳騎士団に同行していたため、こういった報告は銀鳳騎士団に丸投げしても良かったのだが、端的に原因を述べるなら『アディが限界を迎えた』と言えばわかるだろうか。少なくともそれを聞いたアルは『あっ……』となにかを察したようで、為すがまま引き摺られてイズモへとやってきた。
「おーい、アルフォンスー。手伝って……なにやってんだ?」
「資料作成を手伝ってます。なぜか銀鳳騎士団側の」
「だからそれはわりぃと思ってるよ」
微妙にダーヴィドへの当たりが強いアルが瞬く間に資料を量産している姿に、エムリスは先ほど見かけた凄まじく凶暴な魔獣も尻尾を撒いて逃げだすほどの圧を放っていたアディとその片腕に運ばれたエルのことを思いだす。
『あ、こいつも被害者なんだ』と妙な親近感が沸いたが、それはそれといった具合に『クシェペルカ王国のやんごとない身分』という最強の剣で見事にアルを奪取したエムリスは、意気揚々とキッドが待つ部屋まで帰っていく。
「リース兄、こんな優秀な資料作成機をなんでクシェペルカに渡したんですか? 一旦余所渡した人材を元の業務に携わらせないでくださいよ」
「その呼び方で呼ぶな。仕方ないだろう、お前が散々やらかしたんだ。それに、お前を渡さなかったらどうなるか……考えるだけで恐ろしいわ」
「仲良くなれって言ったのは殿下でしょうが!」
「俺だってこうなるとは思ってなかったぞ! 文通はまだ良いが、なんでそこに贈り物とか形見分けみたいな髪の毛が入るんだよ!」
「髪の毛は知りませんよ! その時、不思議な事でも起こったんじゃないですか!?」
凄まじい言い合いが廊下に響くが、内容が内容だけにそれらを聞いた人間は即座に口を固く閉ざしながら方々へと逃げていく。流石はフレメヴィーラ王国屈指の銀鳳騎士団。危機察知の類はお手の物であった。
その後、アルの参戦が追い風となったエムリスとキッドは割と余裕な顔つきで部屋を退出。部屋には『もうフレメヴィーラ王国の事務作業はやらん』と呟くアルだけが遺された。
ボツ案供養
ウルトラキシングレート上昇中にマンティコーラの群れが来襲。迎撃のために防空で拠点に残された全トゥエディアーネとドラッヒェンカバレリをエーテライト製の鎖で繋いで一網打尽にするといういわゆる連環馬作戦。
『そんなにあるならウルトラキシングレートのブースターに使うよな』という脳内に住む編集の意見で没。なにもかもあの認証欲求が鬼強いなぜかTSした混ざり物が悪い