銀鳳の副団長   作:マジックテープ財布

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8話

「あー、結晶筋肉(クリスタルティシュー)の音ぉ!」

 

結晶筋肉(クリスタルティシュー)が伸縮する音と重厚な足音に馬車の後ろから顔を覗かせたアルが歓喜の声を上げる。

それを聞きながらアディを膝枕しながら教科書を読んでいたエルも馬車の外に顔を向けて口を開いた。

 

幻晶騎士(シルエットナイト)同士も良いですけど。大型の魔獣と戦ってる幻晶騎士(シルエットナイト)もお目にかかりたいですね」

 

「兄さん、縁起でもない事言わないで」

 

幻晶騎士(シルエットナイト)が出張る状況=人間ではどうしようもない状況なので、若干青い顔をしながらエルに突っ込む。

そんなアルの心情を無視するように馬車は音を立てながら進む。演習は始まったばかりなのだから。

 

 

***

 

「だめだぁ! 暇すぎる!」

 

馬車に揺られて半日、キッドは寝転びながら腐っていた。

 

「でしたらキッドも外の景色を眺めませんか? 見ていると飽きませんよ」

 

「兄さん、あの木の実美味しそうですね」

 

スヤスヤと寝息を立てているアディの頭を自分の膝からリュックにすばやく移したエルは、アルと一緒に外を眺めていた。

彼らは退屈せずにひたすら風景を眺めていたので暇とは無縁なのだろう。

 

「それはお前らだけだって。皆暇そうにしてるぜ?」

 

その光景を見たキッドは周りも暇でだらけている生徒を見ながら文句を言う。

改めて馬車を見ると寝ていたり、読書をしたり、馬車で読書をしたことで吐きそうになってる生徒などがひしめきあっていた。

このままだとバイオハザードになるのを危惧したアルは吐きそうになっている生徒を馬車の後ろに連れて行き、水を渡しながら背中をさする。

 

「僕の持ってきた本を読みますか? 暇つぶしにはなると思いますけれど」

 

「うーん、体動かしたいんだよなぁ。まぁ良いや、なんて本なんだ?」

 

「錬金術概論Ⅱ・上巻です」

 

「いや教科書だろ、それ」

 

「僕のは錬金術概論Ⅱ・下巻です」

 

「それも教科書だろ! しかも兄弟で同じ本の上下巻持ってくるなよ!」

 

ひとしきり突っ込んで気力を消耗したキッドはうなだれる。

気持ちよさそうに眠っているアディを見て寝るしかないと判断したキッドは、体を大の字にして寝転がるとふと何かを思いついたかのように提案する。

 

「馬車の屋根のぼらねぇ? ここよりマシだと思うぜ」

 

よく晴れた空、のどかな街道を進む馬車の屋根の上では風が身体を心地よく撫で、牧歌的な雰囲気が漂っている。

周囲には生徒達の荷物がくくりつけてあることで場所的に少し狭いが、多少暴れても問題がない程度なのでキッドは妥協する。

 

「ここからの方が視界が開けて一際景色が良いですね」

 

「あ、今後ろに居るのトランドオーケスだ」

 

エルは風景鑑賞に戻りつつあり、アルは後ろで歩いている幻晶騎士(シルエットナイト)に手をふる。

すると『トランドオーケス』と呼ばれた幻晶騎士(シルエットナイト)は手を小さく振り返してきた。

 

「狭い馬車よりは良いけど、ここに来ても暇なことに変わりないなぁ」

 

「あ、そういえばキッドはバトっさんからあれ受け取りました?」

 

「ああ、受け取ったぜ。流石に馬車でこれ出すのはアレだから荷物の中に……あった」

 

アルの疑問にキッドは自分の荷物をゴソゴソと探しながら目当てのものを引っ張り出す。

エルが中等部に上がる時にバトソンに追加で注文した銃杖(ガンライクロッド)ヴァーテックスが今日届いたのだ。

キッドが試しに鞘につけたままのヴァーテックスをエルの姿を思い出しながら構える。

重心が手元にあり、魔法の発射方向が即座に変更できることを実感するとキッドの表情が変化する。

 

「良いなぁ、これ。早く試してぇなぁ」

 

「そんなこといって怪我しても知りませんよー」

 

「あ、それアディにさっき言われた」

 

「え~る~く~ん」

 

呆れ顔のアルにキッドは頭を掻いて答える。そうすると『呼んだ?』とばかりにアディが屋根に登ってくる。

少しご機嫌斜めだったのは、先ほどの膝枕が半日で終わったからだろうか。

珍しく慌てるエルが必死にアイコンタクトをアルに送る。普段なら喜んで生贄に差し出すアルだが、今回は機嫌が良いので貸し1ということで助け舟を出す。

 

「あ、アディ良い所に。キッドが暇と言っていたのでこの機会に銃杖(ガンライクロッド)の習熟訓練しようって場所確保しておきましたよ」

 

「え? あれ?」

 

「アディは最近兄さんと特訓してなかったでしょ? ヤントゥネンに着くまでですが練習とかどうです?」

 

畳み掛けるように提案するアルにアディは少し混乱する。

周囲を見ると指導しているエルと構え方を修正するキッドが居たので先ほど言ったのは本当だろう。

それに最近エルと関わっていなかった為、少しばかり不満だったこともあったので喜んでその提案に乗る。

 

「そっか、ありがとね。エル君、アル君」

 

「親友なんですから当たり前ですよ。兄さん、アディ追加はいりまーす」

 

4人だと馬車の屋根は少し手狭だが、彼らは文句一つ言うことなく習熟訓練に精を出す。

ヤントゥネンまでの道中、寝食以外の時間は馬車の屋根で過ごすことになるのだが、ヤントゥネンに着いた時の他の生徒に比べて彼らの顔は随分晴れやかだった。

 

 

***

 

ヤントゥネンから物資の補給を行って一日、生徒達はクロケの森へと到着した。

停止した馬車から長時間の馬車生活で亡者のような有様の生徒が這い出しては森の新鮮な空気を吸って復活していく。

ある程度落ち着いたところで教師の号令で一年生はテントの設営を開始する。

 

「この棒はあっちに通して……」

 

「エルー、持っておくからテント固定してくれー」

 

「ありがとうございます。固定しますよー」

 

「アディ、水汲みするんで手伝ってください」

 

「はーい」

 

エル達はキッドとアディという体格的にも体力的にも恵まれた親友の力と手順についてある程度の予備知識があったので、他の班より比較的早く野営の準備が整う。

夕食は一年生のテントがある程度建ってからにするというエルの鶴の一声でキッドとアディは他の班の応援に、エルとアルは野営地のはずれへと歩を進める。

 

「これってサボりでは?」

 

「ノルマこなしてるからサボりじゃないです! 自主学習です!」

 

あくまで勉強のためと熱弁するエルに付いて行くと高等部の騎操士(ナイトランナー)達と彼らの幻晶騎士(シルエットナイト)の駐屯地に着く。

駐屯地では、篝火に照らされた幻晶騎士(シルエットナイト)が片膝をついて主が乗り込むその時まで巨体を休めている。

 

「巨大ロボットはやっぱり良いですねぇ。一家に一台は必須だと思いますよ」

 

「いや、一家に3機と指令車両が必要ですね」

 

「良いですねぇ。一機はやはり援護仕様ですね」

 

どこの世界に一家でどこかの小隊規模の戦力を持つ家庭があるのか甚だ疑問ではあるが、彼らは恐ろしいご家庭を想像して満面の笑みを浮かべている。

 

「誰か居るのか? ……銀髪? エルネスティか」

 

彼らが小隊談義をしていると不意に後ろから声をかけられる。

エルが振り返ると、そこにはアールカンバーの専属騎操士(ナイトランナー)であるエドガーが居た。

 

「先輩、お邪魔してまーす」

 

「お、アルフォンスも居たのか」

 

エルの影からひょっこり出てきたアルにエドガーが片手を上げながら近づく。

 

「何でこんなところに…って愚問だな」

 

「癒しを!」

 

「求めにきました!」

 

エドガーは2人がこんなところに居る理由を一応聞くが、すぐに幻晶騎士(シルエットナイト)に癒しを求めるというよく分からないことを返してきて苦笑いを浮かべる。

 

「エドガー先輩は待機の担当ですか?」

 

「ああ、そのことでディーと少しもめてな…」

 

「ディートリヒ先輩のことだから『グゥエールの慣らしで疲れたから面倒だ。エドガー、変わってくれ』とか仰ったのでは?」

 

前髪をばさっと掻き揚げて精一杯のポーズを取りながら似ていない演技をするアルにエドガーは噴出す。

 

「それ、ディーのマネか? まぁ、そんなところだよ。それでつい先日のことを言ってしまってな」

 

「その件についてはすみませんでした」

 

先日、エドガーの操るアールカンバーとディートリヒ操るグゥエールの模擬戦闘があったが、グゥエールは敗北していた。

その原因に片腕の結晶筋肉(クリスタルティシュー)が十分稼働していないことを指摘したエルだったが、ディートリヒがそれを整備班に当り散らしていた事件があったのだ。

 

「気にすることはない。エルネスティの観察眼にはいつも整備や調整で助けてもらってる。もちろん、アルフォンスもな」

 

「では、今後も問題点を多く見つけれるように精進します」

 

エドガーはふんすと鼻息を荒くするエルから視点を自分の愛機であるアールカンバーに向ける。

 

純白の鎧を纏う幻晶騎士(シルエットナイト)『アールカンバー』

突出した点はないが入念な調整をされた故に素直な性能をもっており、堅実な守りと僅かな隙でも攻撃に転じていけるエドガーという騎操士(ナイトランナー)が乗ると騎操士学科内では手が付けられない程の堅牢さを持つコンビである。

 

「エルネスティ達が言う癒しではないが、少し荒んでいたからな。気分転換がてらにこいつを見に来たんだ」

 

「先輩も幻晶騎士(シルエットナイト)がお好きなのですか?」

 

「好き……では表現できないな。相棒のようなものだからな。共にあれば気が落ち着くんだよ」

 

『恥ずかしいなこれは』とエドガーは顔を赤くしながら頭を掻く。

だが、その一言がエルとアルの心を虜にした。

 

「いいえ、相棒が居るということはすばらしいことだと思いますよ」

 

「兄さんも僕というすばらしい相棒が居るじゃないですか」

 

「……ハッ」

 

指を自分に指しながら必死にアピールするアルを数秒真顔で見たエルは、心底馬鹿にしたように鼻を鳴らす。

ぎゃーぎゃーわーわーと本気ではないが取っ組み合いをする2人を見ながらエドガーは少し考える。

 

「少しアールカンバーに乗ってみるか?」

 

「「え?」」

 

取っ組み合っていた2人の動きは止まる。『この先輩は今何を仰ったのか』『乗る?』『何に?』といった疑問が浮かんではすぐ消えていく。

 

「無論、動かすわけにはいかないが乗り込むだけなら構わないぞ」

 

その言葉にエルは飛びつきそうになるが少し目をそらした後、苦虫を100匹は噛み潰した顔に変貌する。

 

「と……とても嬉しい申し出ですが……初めて乗るときは……初めて動かすときでありたいので」

 

「そ、そうか。アルフォンスはどうだ?」

 

「あ、乗らせていただきます」

 

即答である。

エドガーの背中付近でエルが目を見開いて怨が付く様な念を送っているがアルはどこ吹く風でエドガーについていく。

エドガーが軽い操作をすると圧縮空気が抜ける軽い音と共に白い装甲が上に跳ね上がる。

 

「足元に気をつけるんだぞ」

 

エドガーは、夢にまで見たコクピットの内装に呆けていたアルの手を引いてシートに座らせる。

 

「操縦桿にぎって良いですか?」

 

念のために炉に火が入っていないことを確認したエドガーが許可するとアルは恐る恐ると操縦桿に手を伸ばす。

操縦桿の硬さ、シートの座り心地を堪能していると、アルはふと足元が気になった。

 

「ふんっ! ふんっ!!」

 

鐙に足をつけようと躍起になるが、エルより多少背が小さいアルには当然脚が届くはずもなく。

しばらく頑張ってみたが、足を伸ばし疲れたアルはシートにもたれかかって脱力した。

 

「やはりまだ脚が届かないか。おっと、そろそろ一年生のテントも建ってきたぞ。遅くなる前に戻っておけ」

 

その光景にエドガーは笑いながらアルを引っ張り出す。

未だに念を送っているエルと合流し、エドガーと軽い挨拶を交わした2人は元来た道を戻る。

 

 

***

 

テントの前に戻ってくるとアルは手早く汲んだ水で湯を沸かし、その一部を使って湯冷ましを作る。

 

「セラーティ印の小麦粉ぉ」

 

猫型ロボットのような紹介で白い粉が入った瓶詰めを掲げる。

そこに他の班を手伝っていたキッドとアディが帰ってきた。

 

「お、これから飯か?」

 

「ええ、これを使って美味しいの作りますよ」

 

先ほどの瓶を見せるとキッドが瓶の中身をしげしげと見物する。

その間にアルは湯冷ましと配られた材料と調味料を手元に置いて調理に入れるように準備をする。

 

「これ、小麦粉か?」

 

「はい、白い粉です」

 

「いや、これ小麦「白い粉です」」

 

頑なに『白い粉』と言い張るアルに、キッドは『もう良いや』と調理の様子を見守る体勢をとった。

アルは干し肉と干し野菜を鍋に入れて煮込み始める。しばらくたつと肉や野菜の交じり合った良い匂いが鍋から漂ってきた。

 

「そういえばその粉をつかった料理と水を与えた後、2日ぐらい水のみ与えたら白い粉の料理を欲するってぐらい中毒性があるんですよね」

 

「中毒性!?」

 

「暴力的犯罪の90%はこの白い粉の料理を食べてから24時間以内に起きているって言いますよね」

 

「暴力的犯罪!?」

 

例の白い粉に湯冷ましを少しずつ加えながらさらっと怖いことをいうエルとアルに、アディは本当に小麦粉なのだろうか不安になる。

 

「ね、ねぇ。これ本当に小麦粉?」

 

「ええ、白い粉です」

 

「だからぁ!」

 

アディの泣きそうな顔に生地を耳たぶ程度まで捏ね上げたアルはくみ上げた水で手を洗いながら耐え切れずに笑う。

 

「ええ、正真正銘セラーティ領の小麦粉ですよ」

 

「え、だってさっき犯罪がどうとかって」

 

「ジョークですよジョーク」

 

生地を暗所で寝かせている間、鍋の中の灰汁を丁寧に取り除きながらジョークの解説をする。

先ほどの白い粉の料理をパンやパスタ等に変えたらどうなるか。

それを聞いて今までの話を思い返してみるとアディは『あー』と声をあげながら手を叩く。

 

「皆パン食べるんだから当たり前じゃない!」

 

「はい」

 

「中毒性だけに気を曳かれたけど、最初のやつって腹減ってるだけじゃないのか?」

 

「大当たりです」

 

鍋をかき混ぜながら味見を行い、干し肉を鍋から引き上げて細かく刻むアルは満足げに頷く。

調理が進むに従って周囲には良い匂いが漂い、眠っていたキッドの腹の虫が呼び起こされる。

それを聞いたアルは、『もう少しですよ』と微笑みながら先ほどまで寝かせていた生地を取り出して一口大にちぎる。

ちぎった生地の中に先ほどの干し肉を包んで団子状に丸めるとそれをスープの中に泳がせる。

 

「ほい、完成」

 

団子が浮いてきたのを確認すると、アルは各自が持ってきた木のお椀にスープと団子を注いで全員に配っていく。

 

「わー、美味しそう! いただきまーす」

 

歓喜の声を上げるアディが早速スープに口をつける。

干し肉の塩分がスープ全体にいきわたり、やや濃い味付けだが肉体労働の後ということもあり、十分に美味しく食べれるものだった。

その様子を見たキッドは、先ほどアルが練っていた小麦粉で作った団子を頬張る。

噛むともちっとしたした食感の後に中身の干し肉からパンチの効いた香辛料と肉本来の野性味溢れる旨味が飛び出してきて思わず顔が緩んだ。

 

「すいとんですか」

 

「こっちでも似たようなのあったんで真似してみたんです」

 

アルはひそひそと今回の料理の説明をする。

すいとん、戦後の日本で主食の代用として良く作られた食べ物で、本来は片栗粉や出汁の粉末を使うことでより美味しくなるのだが、ない袖は振れないので今回は干し肉をつめることでボリューム感を出した。

 

行軍中は携帯食しか食べていなかったからなのだろうか。久しぶりの暖かい食事に4人はその後は無言で食事をし、気づいた時には鍋は空になっていた。

食事の時間が遅かったこともあり、辺りを見渡せば野営地の外はすっかり闇に一色に染まっていた。

一年生は夜間にやることがないので、のそのそとテントに入ると慣れない行軍と野営といった疲れからか段々まどろんでくる。

 

その時だった。

森から獣の遠吠えが聞こえ、眠気から一気に覚醒した一年生がテントから顔を出す。

歩哨に立つ上級生も森のほうを警戒し、異常がないことを確認する。

やがて遠吠えも収まり上級生が後ろを向くと、未だ異常がないかテントから顔を突き出して周囲を見回している一年生の集団が見えた。

 

「なっつかしいなぁ」

 

「お前だってキョロキョロして寝付けてなかったじゃねぇか」

 

「ばっ! 俺はよゆーだったし!」

 

懐かしいものを見たような顔で眺めていた上級生が同じく歩哨をしていた他の生徒に茶化されたり、それに反論して教官に怒られる声に彩られた野営地で再び一年生はテントに戻って毛布に包まる。

だが、安全な町でもすぐに逃げ出せる馬車内でもない状況が脳裏にこびりつき、目が冴えてしまったキッドは隣で寝ているエルに小声で話しかける。

 

「なぁ、エル。ちょっと良いか……って寝てる」

 

「兄さんは確実に休めるときは全力で休む人なんで多分起きませんよ」

 

その声にキッドがテントの入り口を見るとサンパチを片手にアルがもそもそとテントに入ってくる。

 

「あれ、アルどこいってたんだ?」

 

「いやぁ、抱き枕忘れたんでこれで代用しようかと」

 

物騒な抱き枕を抱え込み、キッドの横に寝転がる。

 

「……寝ぼけて魔法とかつかうなよ? 特に火と雷」

 

「善処はします」

 

「アル君! じゃあ私を抱き枕に!」

 

「お断りします」

 

途中でキッドと同じく寝付けずにいたアディが起き上がって両腕を広げてくるが今のアディの身長だと自分が苦しいだけなのでお断り拳で一刀両断する。

そしてアルがサンパチを抱きながらエルの隣で目を閉じて一分、彼もプログラマーのパッシブスキル『眠れるときに眠る』により夢の中へ旅立つ。

 

(こいつら神経太いよなぁ)

 

アルの眠るまでの速度にキッドが感心していると、アディが『ずるい』と言ってエルとアルの間にもそもそと移動し、エルを抱え込む。

前門のエルに後門のアルという夢のような光景に、アディは『うぇひひ』という少し気味が悪い声を出していたが、やがて寝息を立てはじめてしまった。

その様子に自分だけ緊張しているのが馬鹿らしくなったのか余計な緊張が抜けたキッドもそのまま寝転び、やがて眠りの中へ落ちていく。

こうして一年生達の忙しくもあったが比較的楽しい演習は終わりを告げる。

 

 

そう、終わってしまったのだ。




すいとんは顆粒の出汁の素をぬるま湯に溶いて入れると美味しいです。

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