銀鳳の副団長   作:マジックテープ財布

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24話

その日、工房が震撼した。

 

「だから! ここ弄ったら照準のパラメータ取得時の処理がめんどくさくなるでしょうがぁ!」

 

工房に怒号が響く。いつものダーヴィドとは違った高い声に工房中の目線が集中する。

 

「分かってないのは兄さんの方でしょ! この関数は無駄です! 別の所に似たような物があるでしょ!」

 

「それだと持って来た物を別の物に変換する必要があるから無駄が増えるんです!」

 

あっちがいえばこっちが反論するという光景にダーヴィド含めた高等部の面々はもちろん、長年の幼馴染であるオルター兄妹でさえも初めてのことだとばかりに黙ってその口論を眺めていた。

 

何故このようなことになったのか。それは本日の授業が終わり、楽しい楽しいロボ搭じょ……もとい、開発の時間まで巻き戻る。

 

 

***

 

「ロボットロボットらんらんらーん♪」

 

意味不明なことを口ずさみながらエチェバルリア兄弟は昨日に許可をもらった幻晶騎士(シルエットナイト)の前に辿り着く。

そこには幻晶騎士(シルエットナイト)の操作を説明する係として厳正なる審査(ジャンケン)の下、選出されたエドガーが立っていた。

 

「教官、今日はよろしくおねがいします!」

 

「うむ、それでは早速乗り込んでくれ」

 

エドガーの号令と共に幻晶騎士(シルエットナイト)の操縦席のさらに奥のスペースに2人は身体を滑り込ませる。

操縦席には1人分のスペースしかないため、2人に操作方法を教えるとなると必然的にこのような形になってしまうので、エドガーは2人に我慢してもらって自身は操縦席に座る。

 

「開閉ボタンはこれだ。次にエーテルリアクタに火を入れるのはここから順番にボタンを押して起動していく。……心配ないとは思うがフルコントロールとか手動で動かすんじゃないぞ?」

 

「「はーい」」

 

操作説明の傍らにちくりとエドガーに釘を差された2人だが、ここで動かせばどうなるかぐらいは十分にわかっているつもりなので片手間に返事をする。

やがてすべての説明が終わり、先ほどの動きを逆から行って前面装甲を開いたエドガーは幻晶騎士(シルエットナイト)の外に出る。

 

「じゃ、俺は訓練代わりに親方達の荷運びとか手伝いをしてるから何かあれば言うんだぞ」

 

「荷物運び、出来るようになったんですね」

 

『教師が良かったからな』と笑顔を浮かべながらエドガーは装甲を伝って幻晶騎士(シルエットナイト)から降りていく。

それを見送った2人はそれぞれ準備を始める。ここからはお楽しみの時間だ。

 

「じゃ、銀板くっつけますね」

 

エルが操縦席に改めて座りなおす間にアルが懐から掌ぐらいの銀板を数枚取り出した。それらにはそれぞれ異なる紋章術式(エンブレム・グラフ)が刻み込まれており、アルは銀板達を銀線神経(シルバーナーヴ)で繋ぎ、魔導演算機(マギウスエンジン)銀線神経(シルバーナーヴ)も引き出していつでも直結できるように待機する。

 

「兄さん、準備オッケーです」

 

「了解。安全弁開放、マナプールチェック、魔力供給チェック、マギウスエンジン動作開始、前面装甲閉鎖」

 

確認していくようにボタンを操作するエルによって魔力転換炉(エーテルリアクター)には火が入り、全身に張り巡らされた結晶筋肉(クリスタルティシュー)には魔力転換炉(エーテルリアクター)から供給された魔力が貯まり、操縦席に備え付けられている計器を彩る。

最後に前面装甲が徐々に閉まっていくと一瞬目の前が真っ暗になるが、じきに魔導演算機(マギウスエンジン)が魔力という代価を得ると行動を開始し、幻像投影機(ホロモニター)には眼球水晶から出力された景色が浮かび上がる。

 

「「出撃シーンいぇーい!」」

 

2人はハイタッチをしながら喜びを分かち合うと、アルは銀板をまとめた銀線神経(シルバーナーヴ)の端っこを魔導演算機(マギウスエンジン)から引き出した銀線神経(シルバーナーヴ)にくっつける。

すると景色の中心には○印……火器管制システム(ファイアコントロールシステム)で必要不可欠な照準が出力され、アルが手元で繋いでいる銀線神経(シルバーナーヴ)同士を離すと幻像投影機(ホロモニター)に出力されていた照準が消える。

 

「これで僕の書いた全スクリプトは完了です」

 

「じゃ、次の工程に進みましょう! 今日で動くところまでいきますよ!」

 

エルの気合がこもった発言にアルも同意し、それぞれがあらかじめ決めていた役割に着手しだす。

 

「パラメータは出来てる……出力内容や操作内容を受け取る箱もできてる……バグもなし……流石ですね」

 

エルは、アルの魔法術式(スクリプト)の出来に顔を綻ばせる。例えるなら料理の下準備が最適の切り方や火の通し方で行われていて、さらに変な虫(バグ)が出やすい部分も整理整頓して次に作業をする人物(エル)が万全に作業を出来るような場の整い方であった。

 

(下準備も素材も万全。後は……シェフ()が腕を振るうだけですね)

 

後輩の成長にエルは自分の力を見せ付けるかのように作業に没頭した。

 

 

***

 

「兄さん、一通り確認しましたがバグないです」

 

「こっちも終わりました。これに書いておいたのでレビューお願いします」

 

時間にして30分で両者の作業が終わる。エルが先ほどの魔法術式(スクリプト)を写した紙をアルに手渡すと銀線神経(シルバーナーヴ)を握り、アルもその紙を見て間違いがないか確認する。

別に相手を信用していないわけではない。逆に相手の目と知識を当てにしているからこそ自分では気付かなかった所や不備を見つけるけるために批評(レビュー)やダブルチェックを行っているのだ。

 

だが、批評(レビュー)は必ずしも良い結果を生み出すわけではない。

 

「あれ、これおかしくないですか?」

 

エルの書いた紙を見ていたアルがとある事に気付いた。作業に集中していたエルも手を止めてアルの方を振り返る。

アルが示した部分を見てみると、照準を動かした際に使用する『照準の位置を取得する部品』だった。

 

「別におかしいところないと思うんですが」

 

「いや、この取得方法とは別ですが同じような物があるのでまとめるべきです」

 

アルが言っている事は『同じようなものがあるのだから纏めて後でその部品に合うように形を変えてあげる』という内容だった。

だが、エルは『そんなことをしたら余計な手間がかかるので嫌だ』と反論する。

 

2人の議論は中々納まらず、両者の語気も荒くなっていく。

普段は仲の良い2人だが、作成する物が物なので2人共前世の感覚に戻ってしまったのである。

 

「表に出ましょう」

 

「ええ、良いですよ。白黒はっきりつけましょう」

 

***

 

 

そして、今に至る。

エチェバルリア兄弟は幻晶騎士(シルエットナイト)を降りてからも相手に掴みかからんといった様子で口論していた。

 

「兄さんはそんなのだからgetKurataとかいう変な関数生み出すんですよ! あれ直したの僕なんですよ!」

 

「あー! そういうこといいますか! それならキャメルケースとスネークケースごっちゃにしてリーダーに怒られてたアルも人のこといえませんよ!」

 

「ええい! やかましい!」

 

前世のことまで引き合いに出した言い争いに、とうとうダーヴィドがキレた。

2人に対して肉体言語式の事情聴取を行い、工房の床に正座させる。

 

「まったく、クソ忙しいのに工房内でぎゃいぎゃい言いやがって……」

 

「「ごめんなさい」」

 

ダーヴィドの前で謝りながら2人は項垂れる。そんな様子に事情を聞いていたエドガー達が2人に向かってある提案をした。

 

「そんなに議論するならパーサーを連れてきたらどうだ?」

 

「そうね。どっちが正しいかなんて私達には判断できないし」

 

それを聴いた瞬間、正座をしていた2人は座りながら工房の外にかっとんで行った。

いきなり人が消えた事実に呆気に取られていたエドガーとヘルヴィだったが、数分後にエルが高等部、アルが中等部の構文学の教官を連れて戻ってきたことで正気を取り戻す。

 

「2人共……せめていきなり姿を消すのはやめてくれないか? 心臓に悪い」

 

「いやぁ、居てもたっても居られなかったので。申し訳ない」

 

なにが起こったのかよく分かってない様子の教官にアルは説明をし、エルは黒板を組み立てながらエドガーに謝罪する。

そして教官が納得したところで戦いのゴングがなった。

 

「それでは先ほどの通りに僕達のスクリプトについてご説明いたします」

 

先手のエルは前世に培われてきたプレゼン能力を遺憾なく発揮し、自身が書いた魔法術式(スクリプト)の有用性、応用性、内容を取得する容易さなどを噛み砕きながら説明する。

時折出てくる教官からの質問もなんなく答えることで、教官もそのプレゼンに満足している様子だった。

 

「……以上です」

 

十数分の説明の後、エルの手番が終わる。エルはちらりとアルの方を見ると覚悟を決めた表情をしたアルが先ほどエルが居た位置まで歩を進めた。

 

「それでは次は私、アルフォンス・エチェバルリアのスクリプトの説明をさせていただきます」

 

『よろしくおねがいします』とアルは一礼し、プレゼンを開始する。……だが、その説明は先ほどのエルと比べたら少し物足りない物だった。

言葉に詰まってしまうことが数度、さらに少し前に自分がエルに指摘した前世の専門用語を使ってしまった箇所もあった。

 

(相手の目を見て発表する! ミスっても動揺するな! 物事を噛み砕く!)

 

しかし、アルはそれでも諦めずに教官の後ろで拝聴の構えを取っている兄から昔に教えてもらったことを脳内で反復しながら堂々とした振る舞いで言葉を紡ぐ。

 

「……以上です。御静聴ありがとうございました」

 

まばらに聞こえる拍手の後、教官2人が議論を交わす。

しかし、数分たっても議論が終わる気配がなく、それに従って両者の語気も段々荒くなってくる。

 

「だから! エルネスティ君の方が分かりやすいでしょうが!」

 

「いいえ! アルフォンス君の方が書き込みの量が少ないです! そこに別の物も入れれるので使い勝手がいいはずです!」

 

「ねぇ、これと同じ光景見たことがあるんだけど」

 

「ヘルヴィ、俺もだ」

 

エドガーは提案した側としてどうしたものかと思案するが何も思いつかぬまま時間のみがすぎ、議論を続けていた教官も『続きは校舎裏で!』とそろって工房を出て行く。

次の手をエドガーやダーヴィドが考えていると、アルはエルの方に近づいて拳を掲げる。

 

「兄さん、決闘しましょう」

 

決闘、小等部にキッドとバルトサールが行った揉め事を私闘で解決するシステムである。

それを聞いてため息をついたエルは少し考えてから工房の外を指差す。

 

「良いでしょう。ついでに危なくて後回しにしていたシルエットギアの耐久テストをしましょう」

 

「良いですね。バトっさーん!」

 

「ああ、2人のなら点検終わってるから使っていいよー」

 

ちょうど工房にいたバトソンに声をかけると快活な返事が返ってきたので、2人は揃って工房を出て行く。

道中、ふと疑問に思ったエルがアルに話しかける。

 

「ところでなんで決闘なんて真似を?」

 

「…………」

 

急に無言になったアルを不審に思いながらそれ以上の会話が続かずに2人共黙って幻晶甲冑(シルエットギア)を纏い、そのまま何も喋らずに訓練場に向かって足を進めた。

 

***

 

普段は幻晶騎士(シルエットナイト)の演習で使用するライヒアラの訓練場。

広い円形の広場の中心で幻晶騎士(シルエットナイト)と比べるとかなり小さい鎧姿の騎士が対峙する。

片方は厚手の木剣を2本構えた青色の塗装が施され、頭部が露出したデザインの兜からはエルが真剣な表情で相手を睨む。

対するもう片方は木製の槍と同じく木製の大型シールドを構えた基本に忠実な装備をした白い塗装が施された鎧。頭部は面覆い(バイザー)と金属で構成された兜に覆われ、搭乗者のアルの表情は見えないが兜の視線は相手であるエルの方を向いている。

 

「安全性を考えて武器は木製だがちゃんと判定には従うこと!」

 

「後、魔法で攻撃する時はコモンスペルのみ使って良し! ちゃんと手加減するんだぞ! 振りじゃないからなー!」

 

審判役のダーヴィドとエドガーの声に騎士達は相手を見ながら頷く。

 

「こうしてみると小さいアールカンバーとグゥエールの戦闘っぽいわね」

 

「それならエルネスティのシルエットギアを赤く塗らないとね。今度塗らないか聞いてみないと」

 

「ディー……」

 

「ハハッ、冗談だよ」

 

エドガー達が話している間にアーキッド兄妹が銅鑼を鳴らす。

その音が響いた瞬間、アルはカンカンと槍で盾を叩いてエルを挑発した。

 

「モーロン・ラベ!」

 

「貴方はどこの王様ですかっ!」

 

エルがアルの言葉にツッコミながら剣を振りかぶってアルに肉薄する。

だが、その攻撃をアルは盾をやや傾けて突き出すことで上手くいなし、盾の影から槍をエルに向かって突き込む。

攻撃が逸らされたことによってたたらを踏みそうになったエルは、その攻撃を見て肝を冷やしながら足元を強く踏み込むことで体勢を安定させる。

 

「なん……とぉ!」

 

エルはそのままもう片方の木剣を逆袈裟に振るうことで槍の刺突からなんとか免れた。

 

「ちぇ、決まったと思ったのに」

 

「まだまだ弟に先を歩かせませんよっ!」

 

エルがそう言い終わると同時に出力を上げた幻晶甲冑(シルエットギア)の足でアルの盾を蹴る。

その衝撃にアルの手元から盾が離れ、アル自身も体勢が大きく崩される。

 

「いただきです!」

 

その隙に再度エルが2つの剣をアルに向かって振り下ろすが、その木剣は空を切ることになる。

アルの姿が一瞬にして消えたのだ。

 

「どこに……」

 

「ここですよ」

 

突如後ろからアルの声が聞こえたのでエルが振り返ると槍の穂先が迫っていた。

咄嗟に首を傾けて難を逃れたエルだったが、そのまま素早く槍を手元に戻したアルは連続攻撃に移行する。

斬る、突く、薙ぐといった動作に加えて槍を支点にした蹴り技などを繰り出すアルの攻撃を剣の腹で受け止めるエル。

 

有効打になりえない攻撃に一旦アルは距離を取った。

 

「一体どんな手品を使ったんですか?」

 

「簡単に種を割るわけないでしょ。でも自慢したいのでします!」

 

『するのかよ……』という周囲の空気を無視してアルは魔法術式(スクリプト)を動かす。

 

「こう……エアバレットではなくてエアロダムドを推進力にして……」

 

風衝弾(エアロダムド)によってアルの幻晶甲冑(シルエットギア)がものすごい速さでエルの横を通り過ぎていく。

ちなみにミドルスペルである風衝弾(エアロダムド)を使っているが、『自身に』使っているのでエドガーは何も言わない。

 

「さらに方向転換にエアロダムド!」

 

訓練場の端に到達しそうになる距離でアルは自身の幻晶甲冑(シルエットギア)の肩に風衝弾(エアロダムド)を放つとその衝撃で幻晶甲冑(シルエットギア)の向きが変わる。

彼が行ったことはいつもやっている大気圧縮推進(エアロ・スラスト)の強化版である。しかし、空気弾丸(エア・バレット)でやっていたことをミドルスペルの風衝弾(エアロダムド)に変えたことで自身にかかる負荷が急激に上がった為、アルはこの移動方法を封印していた。

 

「シルエットギアと身体の間に隙間を空けたのはその為ですか」

 

「いえ、汎用性を持たせるのが主ですよ。これは副産物です」

 

風衝弾(エアロダムド)によってぼこぼこになった幻晶甲冑(シルエットギア)を見ながらエルは考察を述べるが、アルはあっさり否定した。というのもこの方法を思い出したのはつい先ほどでなので、この運用は所謂『ぶっつけ本番』であった。

さらにボコボコになった幻晶甲冑(シルエットギア)を見てバトソンが半狂乱になっているのだが、アルはそんなことはお構いなしに自慢げに胸を張る。

 

「名付けて! ドリフトターン!」

 

「はいはいネク○トネ○スト」

 

「さーらーにー」

 

某ロボゲーの操作テクニックを披露したアルはさらに槍を構える。攻撃がくることを予想したエルもいつ攻撃が来てもいいように身構え、場が数秒ほど静まり返った。

 

「槍は……」

 

アルはポツリと一言言い放つと突然槍を手放す。重力に従って落ちていく槍に訓練場の全員の視線が集まるが、アルはさらに行動を続けた。

 

「友達ぃ!」

 

そう言い放つと共にアルは槍の石突の部分を強く蹴り抜く。──とんだキャプテンが居たものである。

 

「今度はケルトの大英雄ですか!」

 

叫びながらエルは手元の剣を盾にする。バアァンという木製がたてていい音ではない轟音を撒き散らしながら矢のような速さでエルに迫っていた槍とそれをまともに受けた剣はバラバラに砕け散る。

 

(やった……はフラグですね)

 

砕け散った木の破片の中心で微動だにしないエルを確認したアルは、遠くに飛んでいった盾を回収しながら慎重に相手の出方を観察する。

 

空気弾丸 単発拡散(エア・バレット キャニスタショット)

 

木片が全て地面に落ちたと同時にエルが動き出し、アルに向かって魔法を散弾のように打ち出した。

アルは早速回収した盾で難なく受け止めるが、視界を自らさえぎった事を次の瞬間に悔やむことになる。

 

「それは悪手ですよ!」

 

そう叫ぶのは2本の内、残った1本を振りかぶりながら大気圧縮推進(エアロ・スラスト)で距離を詰めるエル。

大気の推進力をその身に受け、アルとの距離をグングン縮める。

アルが盾から顔を覗かせた時、両者の間合いはちょうど剣が届く距離だった。

 

「これでっ!」

 

大気圧縮推進(エアロ・スラスト)を維持しつつアルの盾に体当たりし、体勢を崩すことに成功したエルは追い討ちを仕掛ける。

 

王手(チェックメイト)です!」

 

安全性を考え、エルは剣の腹の部分で幻晶甲冑(シルエットギア)に打撃を行おうとした。

──その時。

アルの幻晶甲冑(シルエットギア)から放たれた風がエルを襲う。

 

「ぐぅっ!」

 

その風圧にエルは吹き飛ばされはしないもののわずかに後ずさってしまう。

その風の中心で体勢を立て直したアルが仁王立ちでエルを見据える。

 

「ふふ、幼少の頃に作った魔法が役に立つとは思いませんでした」

 

「それってまさかプライ○アーマー?」

 

そう、これは幼少期に開発した自身の周囲に大気の壁を作る『プライ○アーマー』。

その答えにアルは返答として渾身のドヤ顔する。

それにちょっとイラッときたエルは火炎弾丸(ファイアトーチ)を数発ほど放つが全て大気の壁に阻まれて霧散する。

 

「ふふふ、まずはプライ○アーマーを減衰させないと駄目ですよー」

 

その結果に気を良くしたのか大気の壁の中心で屈伸運動をするアルを見てエルはふと疑問を口にする。

 

「もしかして……動けません?」

 

その疑問にアルはぴたりと動きを止め、暫く黙った後に小さく「うん……」と答える。

 

「範囲大まかに設定したから……書き換えないと動けない……」

 

「アホですか貴方は」

 

率直な感想がアルを襲う。だがアルはへこたれなかった。

 

「ふふふ、僕の魔法がこのままで終わるわけないじゃないですか。この大気の壁を兄さんに向けてぶつけてあげますよ!」

 

ちょっと涙声で宣誓しながらエルに手を伸ばすアルにすかさず距離を取るがアルの行動は止まらない。

 

「いきますよー! 即興アサル○アーマ”ッ!!」

 

何かが殴られたような音の後、アルの幻晶甲冑(シルエットギア)が宙を舞う。

エルがぽかんとしている間にズガンッという衝撃音と共に地面に叩きつけられた幻晶甲冑(シルエットギア)からアルがのっそり這い出してきた。

 

「アル! 大丈夫ですか!」

 

そこで我に返ったエルが幻晶甲冑(シルエットギア)から飛び降りると、そのまま駆け寄ってアルの体を支える。

 

「か、風の壁を飛ばす方向をミスりまし……」

 

言葉半ばで気絶するアル。どうやら外側に飛ばす予定の衝撃が演算を間違えて内側に行ってしまったらしい。

 

その後、力尽きたアルを医療室にシュートしたエルは、その足で工房に向かうと、アルの書いた紙に大きく『不採用』と書いて自分の紙には小さく『採用』と記載した。

 

「……楽しかったのになぁ」

 

エルのぼやきは当然誰も聞くことなく霧散する。

なお、即興で危険な魔法を使ったアルはしばらく自宅療養を命じられ、療養中にお見舞いに来たダーヴィド含む上級生と事情を聞いた家族にこっぴどく叱られた。残当である。




やっとあらすじに書いていたやり取りを書くことが出来ました。満足ですじゃ。

ちなみにgetKurataはアニメ1話に実際に書かれているコードです。(テキスト化されているサイト様もあるので興味を持った方は検索をどうぞ)
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