銀鳳の副団長   作:マジックテープ財布

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これにて新型機開発編は終了となります。
・・・ナガカッタ


新機体開発編_カザドシュ砦の章
幕間(不穏な空気の到来/宴を開こう)


フレメヴーラ王国の王都、カンカネン。

その主城であるシュレベール城の玉座の間では国王であるアンブロシウス・タハヴォ・フレメヴィーラが玉座についていた。

 

「そうか。やはり居たか」

 

「はい、素行が怪しいものが数名……さらにそれらと繋がりのある商人や商会が数組見つかったとの報告がありました。現在、商人ギルドで来歴を確認させております」

 

玉座の間の床に片膝を付いて報告を行っているのは、これといった特徴がまったくない……それこそ街中に紛れてしまえばすぐに見失ってしまうような平凡な男であった。

 

男が報告を終わるともう一度深く礼をして退室していく。すると玉座の間の横の部屋に控えていたヨアキムとクヌートが礼をしながら玉座の間に入室してくる。

 

「2人共すまぬな。まだベヘモス事変のことで立て込んでいてな。さらには間者の対応をしていて遅くなった」

 

テレスターレの模擬戦が終わって1日後。ヨアキムはカンカネンに辿り着き、クヌートと合流を果たすが、アンブロシウスの都合が付かずに待ちぼうけを食らってしまう。そして本日、やっと謁見の機会を得られたのだった。

 

「いえ……。間者については隣の部屋で聞いておりました。……やはり王都で受け渡しは危険だと具申いたします」

 

「うむ。クヌート、学生が作った新型機の受け入れをおぬしの領のどこかでやってもらいたい。王都を危険に晒したくはない」

 

「承知いたしました。では朱兎騎士団が駐屯している『カザドシュ砦』にしましょう」

 

アンブロシウスの頼みにクヌートは即答で返事をする。アンブロシウスが言った『王都の危険』とは、『間者による破壊工作や王族または貴族の暗殺』を意味している。

 

先ほど報告を受けた素行が怪しい者全員がそうだとは言い切れないが、保険をかけておくに越した事が無い。アンブロシウスはフレメヴィーラで指折りの実力を持つ騎士団を保有しているクヌートの領で新型機の受け取りを頼んだのである。

 

「では完成の報告が入り次第、いきなり押しかけて移動させるように命じます」

 

クヌートのアイデアにアンブロシウスは頷く。仮に新型機を狙った賊が現れるとしたら輸送中が一番可能性が高い。だが、いきなり輸送させることによって輸送中に襲われるリスクを極限まで抑え、さらに新型機を受け入れた後は、砦を極力閉じてしまえばひとまずは安全に事が運べる。

後は周辺の騎士団合同で王都に輸送するなり、国立機操開発研究工房(シルエットナイトラボラトリ)に輸送するなりすればもう賊が入る余地はない。

 

「では次に新型機の性能についてヨアキム。まだ詳しく聞いていなかったが、アルフォンスから連絡が来たか?」

 

「はっ、実はここに来る前にライヒアラで新型機の模擬戦を見学いたしまして」

 

ヨアキムが模擬戦でのことを話し出す。背面武装(バックウェポン)綱型結晶筋肉(ストランド・クリスタルティシュー)といった新機能と演習機との模擬戦の様子にアンブロシウスは心なしかウキウキとした表情で聞いている。

やがて、護衛に聞いた魔力不足による敗北の話で締めくくると愉快そうな顔でアンブロシウスは口を開いた。

 

「大儀であった。やはりあの者達は見事作りおおせたか。……いかんな、今すぐライヒアラに「いけません陛下」」

 

昔の血が騒いだのか玉座から勢いよく立ち上がったアンブロシウスをクヌートは嗜める。『陛下は昔から本当に』と文句じみた忠言に耳を押さえて徹底抗戦の構えを取るアンブロシウスだが、その光景にあえて空気を読まずにヨアキムは口を開いた。

 

「また模擬戦より前の話になるのですが、アルフォンス・エチェバルリアからこのような設計図が送られまして」

 

ヨアキムから紙束を受け取った2人は、片方は再度ワクワクしたような笑みを浮かべ、もう片方が額に青筋を浮かべている。

 

「セラーティ侯爵、私は何も報告を受けていないが?」

 

「『報告書事件』でかなり無茶なお願いをした自覚があるので自粛しました」

 

ヨアキムの言葉にまるで昔の大変だった頃を思い出すかのような遠い目をしたクヌートを視界に納めながらアンブロシウスはヨアキムを呼ぶ。

 

「アルフォンスは何か言っておらなんだか?」

 

前回は一介の騎操士(ナイトランナー)に感謝状を渡す為にアルは技術提供をした。今回も自分自身ではなく、他人のために何かしようとしているのではないかという疑問を抱いたアンブロシウスだが、ヨアキムは首を振って答えた。

 

「いえ、これは先ほどの『報告書事件』の謝罪として受け取って欲しいとのことです」

 

「「……は?」」

 

アンブロシウスとクヌートは声をハモらせながら呆気に取られた表情を取る。……が、アンブロシウスは大声で笑い、クヌートがブチ切れ寸前といった対照的な表情に変わった。

 

「ふはっ……ふはははは! 謝罪のためにこのような新技術を……ふはは!」

 

「陛下! 笑っている場合ではありません! やはりこやつも何を考えているのかもう一度尋問を!」

 

「いえ……馬車で少し話したのですが、本当に謝罪の意味で送ったようです」

 

申し訳なさそうに追加の報告をするヨアキムにもう一度アンブロシウスは笑った。だが、クヌートは『信用できぬ!』と言うとアンブロシウスの前で膝を突いた。

 

「陛下、なにとぞエルネスティとアルフォンスをカザドシュ砦に召集する許可を……いま一度、彼らの真意を見極めさせていただきたい」

 

「……許可する。だが、拷問じみたことや脅迫じみたことは一切するな。破ればどうなるか……わかっておろうな」

 

アンブロシウスは威圧を込めてクヌートを睨むが、腹に力を入れながらクヌートは『御意!』と力強く答える。

 

(あの者達が本当に国に仇なさないか……見極めさせてもらう!)

 

クヌートの脳内には最初に出会った頃のエルとアルの表情が浮かび、胸中には彼らに対する疑いの心が渦を巻いていた。

 

***

 

 

「では、新型シルエットアームズとリーコンの開発は一旦中止。アルは僕と一緒にテレスターレの最終調整の作業を行ってもらいます」

 

「わかりました。……終わった後にちょっとだけ開発はダメ?」

 

「ダメ!」

 

『そんな~』と落ち込むアルにため息をつくエル。今回アルが開発した2つの装備、それを現在のテレスターレに組み込むのは比較的簡単に終わる。しかし、テストやそれによって浮き彫りになった問題の解決に多大な時間をかけてしまうので、エルは装備開発の中止をアルに言い渡した。

 

「テレスターレが終わったら次の機体に積み込みましょ?」

 

「あー、兄さんが書いてたあのケンタウロスですか」

 

アルは部屋の隅にうずたかく積まれている紙束を見る。そこはエルとアルの設計図集積場であった。異世界の知識をふんだんに使ったそれは、ある意味では宝の山、知らない者からすればゴミの山であった。

 

「1回ステファニア先輩に頼んで馬の観察とか死骸の解剖とかお願いしてみないと……」

 

「ウゲェ……そこまでやります?」

 

「何を言ってるんですか! かのレオナルド・ダ・ヴィンチもデッサンのために人体を解剖してますし、馬の走り方とか筋肉の配置とか知らないんでちゃんと見学しないと作れもしませんよ」

 

気持ち悪そうに舌を出すアルを見て万物の天才を引き合いに出しながら文句を言うエル。そのまま紙の山から『幻晶騎士(シルエットナイト)の胴体と馬の体が繋がっている異質な設計図』を引っ張り出してきた。

 

「まだ構想段階ですが、この馬型の物は作る時のために複製しておきましょう。テレスターレは土台としては上出来ですが、陛下に見せるにはインパクトが弱いですからね」

 

ヨアキム達が聞いたら頭の血管が数本キレて憤死しそうな言葉を言いながら綺麗な紙に設計図を写していくエル。するとテレスターレという言葉にラッセからの忠告を思い出したアルは思い切ってエルにとあることを聞いてみた。

 

「あ、そうだ。兄さん。結構アニメとかで機体が強奪されるとかあるじゃないですか」

 

「あー、ありますね。……これも奪われると?」

 

「はい……」

 

本来の製作元から別の組織の者に奪取される展開。某ロボ物アニメでは様式美になり、『ガン○ムは盗むもの』とネタになっていたりもする。先日のラッセとの会話で情報漏えいを思い出したアルは、『テレスターレも盗まれるのではないか』という不安がよぎった。

 

「まずは前提条件が違いますね。あれらアニメでは敵側の残党という『どこにでも現れる都合の良い敵』や、『両国の関係が火薬庫に着火寸前の状態の敵』が居ます。ですが、僕たちのいう敵とは誰ですか?」

 

エルは本棚から地図を取り出してフレメヴィーラから近い国を指差していく。『クシェペルカ王国』、『ロカール諸国連合』、少し遠いが『ジャロウデク王国』。

 

「近い中ではこれらでしょうが、どこの国もフレメヴィーラと戦争状態になるような関係ではありません。そもそも防諜を気にするのだったら開発する前に気にすることですよ」

 

『今から対応するのは遅過ぎます』と締めくくるエルだが、それでも腑に落ちないアルの様子を見てため息を付くと『いいですか?』と人差し指を上に向けて指した。

 

「仮に何かしらの鍵を付けるのなら当然テストや修正、さらには物理的な調整も必要です。そしてその分、工数が伸びます。やる事がべらぼうに増えた時の絶望感は……アルも分かっているはずですが?」

 

「はい、あれはしんどいです」

 

「よろしい。次に鍵の解除手順やパスワードの類は使いまわしになります。……漏れますよね?」

 

「はい」

 

パスワードとは扱う人物が増えるたびに漏洩する確率は爆発的に上がっていく。手順も使いまわされることで漏洩する確率が上がり、それを防ぐためにまた別の解除方法やパスワードを作成しなおすとコストや工数がかかるので、情報守秘に関係する作業は結構手間だったりする。

 

「ならば物理的に鎖とかで止めるとか……」

 

「これがありますよ?」

 

エルはヴィンチェスターを取り出して真空斬撃(ソニックブレード)を展開する。魔法を使えば鎖ごときあっという間に破砕できるので、強奪に対して有効打にすらなりえないのだ。

 

「とりあえずその線は諦めましょ。どうがんばっても現状盗まれるときは盗まれますから……」

 

そう言いながら話は終わりとばかりにエルは設計図の複製に集中する。

 

(とは言ったものの……いけないですね)

 

エルは書いている手を止めて意見が却下されて落ち込んでいるアルをちらりと見る。

 

(不謹慎ですが、『もし強奪してくれたら』自分達で作った機体と戦えるという()()()()()()()()があるんですよね』)

 

自身が不謹慎なことを言っている自覚があるのだが、エルの口角はどんどん上がっていく。

自分達の考えが基になって生まれたロボット。『乗りたい』、『動かしたい』、そしてなにより……『戦ってみたい』。そんな考えがエルの表情をにやけさせる。

 

(……流石に『早く戦争にな~れ☆』は言えないですが、奪われた時の事を考えておいた方がよさそうですね)

 

エルは、アルに聞かせたら間違いなく狂人扱いされそうな考えを頭の中に巡らせながら設計図を複製する作業に戻っていった。

 

「アル、この馬型に名前付けるとしたらなんてつけます?」

 

「ケイローン先生かタウル」

 

「相変わらず変なセンスですねぇ」

 

「うるさいですよ。クラスバーサーカー」

 

片や射手座になったケンタウロスの賢者、片や人の上半身になにかの下半身という物の俗称をつけるアルの妙なセンスにエルは引きつりながら頭の片隅に記憶しながらアルの頬を引っ張って制裁を加えた。

 

***

 

「つーわけでこんなでかい仕事が終わったんだ! お前ら分かってんだろうなぁ!」

 

数日後、工房では相変わらずダーヴィドの叫び声が聞こえる。しかし、今回は少し趣が違う。

テレスターレの開発に参加したメンバーが騎士科・鍛冶科問わずに整列しており、彼らの視線は目の前で叫んでいるダーヴィド……の後ろにある数機のテレスターレに注目していた。

『現時点で出来る限りの』という枕詞が着くが、彼らは新型機『テレスターレ』を完成させたのだ。

 

未だに不満が残っている部分を指摘する声や、やっと設計や制作から解放されると安堵の声が聞こえるが、ダーヴィドを場を沈めるために大きく手を叩く。

 

「もう一度言うぞ! でかい仕事が終わった! 後はやるこたァ決まってんだろ? なぁっ!」

 

その言葉に全員がそれぞれ近くに居る者の顔を見る。全員にやついており、言う言葉を誰が言うか決めあぐねている様子だった。しかし、誰かの『いっせーの』と声と共に全員考えていた声を発する。

 

『打ち上げだああああ!』

 

その声と共にアルが食堂のオバちゃんを伴って大量の料理を運んでくる。新鮮なサラダを始め、串焼きやパン、腸詰と様々なつまみがテーブルの上に置かれる。

 

突然のことに何のことかと不思議に思った学生はアルを見るが、アルの言葉を代弁するかのようにダーヴィドが口を大きく開ける。

 

「今日は高等部騎士科の奢りだ! お前ら鍛冶師は頑張りすぎたからな! ありがたく食いやがれ!」

 

「経費削減に調理は僕とオバちゃん達で行いました。味付けはサーセン」

 

ダーヴィドの音頭にもう一度工房中が震える。

 

その後、いつの間にか各メンバーの手の中に酒が入ったコップが提供され、時間がたつにつれて酒瓶の数が増えていく。それに伴って意識が飛ぶ者や、ダーヴィドの手によって物理的に飛んでいく者まで出てくるある種の『カオス空間』が形成されていった。

 

「はい、追加の料理です」

 

「ほら、水飲んでください」

 

「ディー先輩! 傷は深いですよ! しっかりしてください!」

 

そんな中、アルは料理の追加をしたり、ぐでんぐでんになった生徒を介抱したり、お空の星になり損ねたディートリヒの救助などを行っていた。

その様子を見ていた幼馴染ーズは、『おかん……』と口には出さないが、共通の言葉を心の中で呟いていた。

 

「アルや」

 

「お祖父……学園長。すみません、騒がしくして」

 

水を汲み直していた際にアルは学園長であるラウリに声をかけられる。その表情は少し不安そうなものだったので思わずアルは身構える。

 

「アル、ついにやりおったな」

 

「いいえ、兄さんが発案して鍛冶科や騎士科の先輩達ががんばったおかげです。僕は中途半端に参加しただけなので……」

 

いつもどおりのアルの謙虚過ぎる物言いに呆れるラウリだが、あまりそのことをいうのも悪いと思ったのか本題を切り出す。

 

「これはもう改良の範疇ではないと思うが……」

 

「僕らは改良だと思っていますがダーヴィド親方が新型機って言ってたので一応セラーティ侯爵には新型機とすでに報告済みです。設計書や製造工程の図解は半分ぐらいまで作成しています」

 

相変わらず早い対応と報告にラウリは舌を巻く。その一方でエルがダーヴィド達に『トランドオーケスは土台。陛下には別のものを作って驚かせる』と宣言して場を混乱させていた。

 

「ならわしからなにも言うことはない。あまり遅くならんようにな」

 

「はい、では失礼します」

 

去っていくアルの姿を見ていたが、ふとラウリは妙な胸騒ぎを覚えた。だが、気のせいと思いながらそのまま学長室へと戻っていった。

 

***

 

 

「あ、アル君発見」

 

水を机に置いたアルが背後から人の気配を感じたと同時に宙に浮かんだ。別に魔法を使用しているわけではない。後ろを向くとヘルヴィがアルを抱き抱えていたのだ。

 

「先輩、どうしたんですか?」

 

「あのマークのお礼言ってなかったから言おうと思って」

 

そう言いながらヘルヴィは、アルを抱き抱えたまま工房のテレスターレが並んでいる場所まで足を運ぶ。

そこにはテレスターレ・シリーズが、数時間前と同じように並んでいた。

 

一目見ただけではどれも同じテレスターレ型なので見分けがつかないが、1つだけ肩にへたくそなエンブレムが書かれている物がある。

 

盾に剣と杖がクロスされているエンブレム、テレスターレの特徴を掴んでいるエンブレムだが、エンブレムは他のテレスターレにはついていない。

 

【挿絵表示】

 

「親方に聞いたけど、1号機が分かるように塗ってくれたんでしょ?」

 

「……1号機には色んなことを教わりましたし。贔屓にしてもバチは当たらないと思って塗りました。それだけです」

 

そのままテレスターレ1号機の前に歩いていくアルに、ヘルヴィは『素直じゃないなぁ』とこぼしながら宴会に戻ろうとすると後ろから呼び止められる。

 

「近い将来、このテレスターレが改良されれば……騎士が命を落とすことって少なくなるんですかね?」

 

「うん、きっと減ると思う」

 

ヘルヴィの言葉を聞いたアルが一瞬微笑むが、すぐに浮かない表情に戻ると『だけど』と続ける。

 

「僕達……いや、僕は騎士の人やこれから騎士になる人に満足いくシステムが作れたのか気になってしまって」

 

それはエンジニアだけでなくモノ作りに携わる者が悩む永遠の課題だった。

テレスターレは間違いなく改良され、各騎士団に配備されるポテンシャルを持った機体である。しかし当然だが、アルには現場の声など聞こえてこない。

 

そう考えていくと、現在自分が行っている開発行為がただの自己満足になっているのではないかという結論に至ってしまう。

 

「まーた、しちめんどくさいこと考えてるな。銀色小僧」

 

完成後特有のナーバスな気分になっていたアルの耳に1つの足音が聞こえてくる。

 

「俺達ぁ鍛冶師だ。なら自分の槌に自信を持ちやがれ! ……っておめぇはドワーフじゃねぇよなぁ」

 

同胞に叱るように言ってしまったダーヴィドは、恥ずかしさを隠す為か大きな動作でジョッキの中身を飲み干す。ジョッキから口を離し、顎鬚をもみながら考えているダーヴィドだが、突然何かを思いついたような顔をするとアルの目を見ながら口を開いた。

 

「じゃあお前がこいつを作っている時、何を思った?」

 

そういわれたアルは目を閉じて思案の姿勢をとる。『楽しかった』、『面白かった』、『もっと作りたい』という様々な喜の感情を伴った感想が頭の中に浮かぶが、1つだけ異なった物が浮かぶ。

 

「これに乗った騎士が生きて帰ってきて欲しいです」

 

「じゃあその思いを信じろ。『騎士を生き残らせる為にがんばった』ってな。自信はつけるもんじゃねぇ。自分のやったことを信じるもんだ」

 

『文字通りな!』と笑いながら宴会に戻っていくダーヴィド。『誰かの受け売り?』と茶化しながらヘルヴィもそれに続き、テレスターレ達の前に立つ人間はアルのみとなった。

 

もう一度アルはテレスターレ1号機に触れる。金属で冷たいはずだが、今はその冷たさが心地よく感じた。アルは憑き物が落ちたような笑みでテレスターレの面覆い(バイザー)を見つめる。

 

「完成おめでとう。テレスターレ」

 

月明かりがテレスターレの面覆い(バイザー)に当たり、キラリと反射する。それはまるでテレスターレが意思を持っているかのようなタイミングだった。

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