クシェペルカ王国。否、ジャロウデク王国との国境の境に存在する関所に常駐する騎士達は自身の目を強くこすりながら目の前の事態を飲み込もうと必死だった。なにしろ、少し前まで『この道の向こうにある国はフランベルジュと似たような名前で、魔獣という伝説の存在相手に狩ったり狩られたりを繰り返すこの世の果て』と同僚と語らっていたので、心の中では大したことない国という認識があった。
それがどうだ。4本の足で駆ける異形の
「シルエットナイトが……飛んでる!? ……ありえねぇ!」
あまりの情報量の多さに思わず棒立ちで叫ぶ
蒼い騎士は背中から噴き出る紅蓮の炎の位置を細かに動かしながら地面に急降下する。そのまま両手の肉厚の大剣を振り下ろし、ジャロウデク王国の
「ひとぉーつ」
地面に向かって突撃しながらの勢いで大剣を振り下ろしたせいで土煙がもうもうと立ち込める中、爆音轟く戦場に不似合いな鈴を転がしたような声が聞こえる。近くの僚機と合流していた
***
ジャロウデク王国の
「みぃーっつ!」
「やばい、あの人絶対メカの頭してる! 皆さん、逃げ出しそうな機体に取り付きますよ!」
そんな中、アルの耳に上機嫌なエルの声が届いた。あきらかに倒した
「ノーラさん!」
「承知しました」
イカルガの専用装備、『
「ん? サブアームがある。ちょうど良いですからあそこにしましょうか」
「ひぃぃ!」
中の
(なーんでサブアームを動かすスクリプトがテレスターレと同じなんでしょうかね)
とりあえずフレメヴィーラ製と同じ機構であるサブアームの
「ひとまず……どこかの部隊と合流しなければ……あんな化け物勝てるわけがない」
「あ……おい!」
自身が操作した覚えがないのに開く操縦席に思わず
「マギウスエンジンの紋章が違うことを除けば操縦席はカルディトーレと変わりませんね。……このボタンも」
しかし、操縦席に乗ったままじっとしていたアルを不思議に思ったのか、シャドウラートが声をかけてきたのでアルは慌ててフルコントロールを用いて
「誰か!」
「おっす! おらエチェバルリア! ジャロウデク王国は見慣れたシルエットナイトつくってんなぁ。おら怒りでスーパーエチェバルリアになっぞ!」
先ほど逃げた
「あ、アル。お帰りなさい」
「スクリプトを見ましたがテレスターレのままでしたね。ここまで侵攻出来た強さの一端が見えましたね」
帰ってきたことが分かるや否やエルが
ただ、姿形を変える余裕はあるのに根本の
「とりあえず、殿下じゃなかった。若旦那と話し合いですかね」
「そうですね。完品が増えたらちょっと分けてもらって分解調査しましょうよ」
「フヒヒ、良いですね。どこまでテレスターレと同じか見比べてみましょうか」
エルの提案を聞いた途端に悪い顔をしたアルが
「ですが、推察は出来ますよ?」
「本当か!? 教えろアルフォンス! 伯母上達は無事なのか!」
アルの突然の一言にエムリスはアルをガクガクを揺さぶりながら縋り付く様に懇願するが、当の本人は三半規管をやられて顔が真っ青になっていた。その後、解放されてなんとか持ち直したアルは『このまま西方諸国を統一するなら占領国に余計な兵は割けないはず』という仮定をエムリスに説明する。もちろん寝返ったその国の貴族を監視に置くといった例外もあるが、占領国が増えるごとに実働部隊の兵士が減るのは当たり前のことだ。
「で、占領した国が行う統治として僕が考えるに2パターンあります。1つは過去の統治者……クシェペルカ王家を全員亡きも"の"ッ」
過程の後に本題を言おうとしたアルの顔面に衝撃が走り、身体がふわりと宙に舞う。突然吹き飛ばされたアルに、エルは慌ててエムリスの方を向くと拳を固く握りこんで振りぬいたエムリスが見え、エムリスがアルを思いっきり殴ったのだと頭が認識した途端、エルはアルを守るようにエムリスに立ちはだかった。
「伯母上達が死んだってのかぁ!」
激昂しながら吹き飛ばされたアルに近づこうとするエムリスをエルとディートリヒ、エドガーがなんとか抑える。突然殴りかかってきたことに『説明は終わってません』とエムリスに向かって殴られた箇所を手で抑えながらアルが怒りながら反論するが、親族の身を案じてこの戦いに首を突っ込んだエムリスに話す内容ではないことをエルはエムリスを押さえつけながら嗜めた。
「アル、一番最悪を話すのは僕だけにしてください。要件だけ……生きてるんですか? 死んでるんですか?」
エルの注意にアルは黙って頷く。分かりやすく順序立てて説明するせいか、アルには『最悪の可能性』を説明の中に忍ばせる癖がある。
だが、これは裏を返せば『最悪を想定できるまで調査や精査をして分かった結果』なので、その最悪を想定した説明によって余計な落とし穴にはまらずに済んだ前世のエルはアルの癖を矯正はしなかったのだが、今回はそれが裏目に出たのだ。
「……王以外は生きている可能性が高いです。全員皆殺しにしたら余計な軋轢を生みます。ジャロウデクにそれを鎮圧する余裕もないはずです」
占領国が行う統治の1つに『属国』という物がある。文字通り国家に従属する国家のことで、この場合を考えると王族を人質にして貴族達を従わせている可能性が大いにあり得る。
他にも植民地といった統治方法があるが、そこら辺については門外漢なアルはとりあえず『王族は生きている可能性が高い』という返答をすると、エムリスは頭が冷えたのか『すまん』と謝ると岩の上にどっかりと腰を落ち着け、アルを手招きすると乱雑にアルの手当てをする。
「すみません。不躾でした」
「いや、良い。生きている可能性があることだけでも分かった。だが、行方を調べている間はずっと待っているのも性に合わんな」
「ならば、その間に僕達は商品を仕入れておきましょう」
一応『商会』という建前で潜入している銀鳳騎士団だが、『ツェンドリンブルを使い、平然と占領国の
「で、商品というのはまさかそこに転がっているジャロウデクのシルエットナイトかい?」
「はい。完品は良い値段で売れますよ」
脳内が商人になっているアルの横を第3中隊の
「む、エドガーさんがシルエットナイトの話してる! いきますよ!」
「兄さん、シルエットナイトの話に節操なく飛びつくのやめようよー」
ひとまず残骸の片付けを行おうと今日中に行う予定を組み立てている最中、エルは唐突にアルが奪ってきた
「ああ、副団長君。君もあれをどう思う?」
「どう思うも何もいかついお洋服着たテレスターレでしょ。ちらっとスクリプト見ましたけど書き方の癖まで一緒でしたよ。おそらくダーシュと同じでコピーしたんでしょうね」
あっけらかんと言うアルだがその言葉の中に小さな棘が見え隠れしている。それを聞いたエドガーはテレスターレが奪われた事件でアルは大けがを負ったことを思い返しながら自身の手を強く握りこんで動揺を隠せずにいた。結果がどうあれ、あの時のテレスターレ──ヘルヴィの乗機がこの戦の引き金になったことに、エドガーは苛立たしげに
「こら、中隊長が簡単に動揺しちゃ駄目でしょ」
「ああ、すまない。約束した相手に諭されるとは……俺もまだまだだな」
気分が落ち着いたのか頭を掻きながらヘルヴィに礼をいうエドガー。すると、ヘルヴィは『テレスターレを想ってくれたのは嬉しかった』と逆に礼を言いながらエドガーの頬に自らの唇を軽く押し付けた。鳥のさえずりのような小さなリップ音によって周囲が無音になる中、流石に恥ずかしかったのかヘルヴィは第3中隊の……主に女性団員が固まっている付近に小走りで向かう。
「おやおや、おやおやおやおや」
「号外! 号外!」
「なん……だと……」
突然の不意打ちにエドガーは石のように固まってしまい、その光景を見た第1中隊と第2中隊の団員がスクラムを組みながら指笛を吹いたり『ヒューヒュー』と野太い野次を飛ばしたり、いつの間にか第2中隊員の肩にパイ○ダーオンしていたアルが『なんか熱いですねぇ』と服をパタパタと仰ぎながら遠回しの野次をエドガーに送ったりしていた。
「お前ら! 今日こそは許さんぞ!」
しかし、あまりにも大きな野次に流石のエドガーも硬直から即座に再起動を果たして団員達を教育すべく追いかけっこを始めた。だが、エドガーが怒り出す前にちゃっかり第2中隊員の肩から脱出を果たしていたアルは何食わぬ顔でエル達の所へ帰って満足そうな笑みでその光景を眺めていた。
「ふー、人の恋路を茶化すのは気持ち良いZOY」
「君、楽しそうだね。君達が設計したシルエットナイトがこうして敵になっているのに」
ディートリヒの言葉にアルは数秒間その場で悩むが、じきに『興味はあるんですよね』と返事をする。エルもその返事に同調するように首を上下に振りながら『人によって考え方が違いますからね』と付け加える。
テレスターレは言うならば『原石』だ。研磨方法やカットの仕方によってその原石は様々な色をもたらすだろう。カルディトーレはエルとアルがラボと協力することで『膂力の上がり具合は抑え目だが、どのような状況でも魔獣と戦える優秀な汎用機』になった。
だが、他の国はどうだろうか? どのような対応を施し、どのような工夫をしたのか。それがエルとアルの好奇心を激しくくすぐったのである。
「ですが、スクリプトはあんまり期待しない方が良さそうですね。一応調べますが」
「サブアームは見た目的にも分かりやすいのでコピーに留めただけかもしれませんし、全部見てから判断しましょう」
「その全部は……解体するのかい!? 完品なんて貴重品じゃないか」
ディートリヒの狼狽える声にエル達はさも当然のように『俺の物は俺の物。僕達の技術を使っているジャロウデクの物は俺の物です』とオレンジ色のシャツが似合うガキ大将の言葉を引っ張り出して反論する。
その後も『たくさん完品を仕入れて各部材の質の検証もしたいですね』や、『装甲板の強度を調べるための的役でも良さそうですね』と完品を手に入れた時の構想を練っている2人にディートリヒは『彼らには残念だが、騎士団長閣下達の生贄になってもらおう』と、あえて先ほどの暴論に対する反論を心の奥底にしまい込んだ。
この日から、元クシェペルカ王国東部の天気に『時々死神』が付け加えられることになるのだが、大半のジャロウデク軍所属の兵士は『クシェペルカ残党のこけおどしだろう』と高をくくり、上層部がその鬼神の存在に気付くのは、もう少し時間がかかるのだった。
***
未だ頑なに商人を名乗る不穏分子、設定的には商人なので『銀鳳商騎士団』と自認する輩が関所を破って早1週間。元クシェペルカ東部に進駐していたジャロウデク軍の間では『死神』という噂で持ち切りだった。曰く、『見た物は全て死神に魅入られて身体ごとあの世へ行く』。曰く、『正確にこちらの部隊。しかも孤立気味の部隊を狙っていることから千里眼を持った化け物』と様々な憶測が飛び交っているが、残念なことに噂は半分ほど間違っている。
──というのも。
「はぁ~い、良い機体乗ってますね」
「ヒエ!? で、でtグボフゥッ!」
アルが排水溝に住み、サブカルチャーをひたすら勧めてくるピエロのような声を出しながら、一切の損傷を負っていないジャロウデク軍の
「フヒヒ……これで8体目ですよ。これで色々検証がはかどりますね」
「グヘヘ……おぬしも悪よのぉ」
「いえいえ、エルネスティ様ほどでは」
完品が手に入ったテンションで寸劇をやっている最中、砂煙を上げながら現場に到着した第3中隊と同乗している第1、第2中隊から抽出した
こうして大きな戦闘跡のみが現場に残り、いつまで経っても帰ってこない部隊を探しに来たジャロウデク軍によって『死神』の名前が一層兵士たちの間に恐怖を植え付けていくのだった。
「しかし、リーコン便利ですねぇ」
ただ、小さくなった分耐久性が低下しており、騎馬兵といった人間の目からは『なんだあれ』ぐらいのレベルで見えるという欠点も存在しているのだが、その場合はすぐ近くで待機している藍鷹騎士団の1個小隊の活躍によってこの『仕入れ作業』もさして大きな問題なく続けられていた。
そんなこんなでエル達は本隊と合流すると、銀鳳商騎士団はエムリスとの縁を頼って元クシェペルカ王国の貴族である『モデスト・レトンマキ男爵』の下へ『商談』へ向かった。この商談の主な理由は『ティラントーを倒せる武力と引き換えにジャロウデクに反旗を翻す誘い』である。
だが……
「駄目だ! いくら雑魚を蹴散らしても意味がねぇ!」
エムリスが苛立たしげに壊れたティラントーの残骸を殴りつけながら獅子のような唸り声をあげる。
商談の結果は敗北。──とはいっても銀鳳商騎士団への補給といった支援は取り付けることに成功したが、それ以上の行動には一切レトンマキ男爵や今まで接触したどの貴族も、首を縦に振らなかった。そのことと共にいまだ行方が分からない王族にエムリスは日増しに鬱屈した感情を貯めていく。そんなエムリスの悩ましい日々を他所にエルとアルがどうしていたかというと、レトンマキ男爵の居城にある工房を見学していた。
「ふつくしい……シルエットナイトというよりは精巧な彫刻のような……ふつくしい!」
「生産性やメンテナンス性も高そうですが、やはりフレメヴィーラのと比べると頼りない感じがしますね」
クシェペルカ製の
「今回も駄目そうだな。ほんと、嫌がらせしかやることがないのは歯がゆいぜ」
「捕虜は受け取ってくれましたが、残骸は受け取ってくれませんでしたからね。残骸の置き場所が増えますよ」
普段ならエルと共謀してなんとかレスヴァントの性能を嘗め回そうとするアルだが、今は奪ったティラントーの置き場が仮拠点にもうないのでどうしようかと頭を悩ませていた。捕虜なら人間なので地下牢にでも放り込んでしまえばすぐに露呈することは少ないので、後は問題の先延ばしになるのだが頃合いを見て解放するなどといった措置が取れる。
だが、
「説得する材料が不足してるんだよな?」
「そうですね。反旗を翻しても怖くない武力が第1条件ですね。僕達は根無し草みたいなものなので領地に赴いて防衛をするには機動力不足です」
キッドの疑問にアルは悩ましげに答える。
クシェペルカ王国は広く、ツェンドリンブルやティラントーと同じような技術を使っているカルディトーレをもってしても各領地が断続的、もしくは一斉に襲われたときの対処は厳しい。なので、クシェペルカのレスヴァントをどうにかティラントーと同じ性能に引き上げることが出来ないかということもあって工房に来たのだが、この機体をどう改修するかは頭にあっても肝心の開発時間や人員をどうするか。そんな途方もない考えにアルの頭はグルングルンと回っていた。
「それならどこかの拠点奪っちゃえば? この辺りって仕入れで敵も減ってるし」
「そうですね。シルエットナイトの生産設備のある……なくても十分なスペースが取れる町があれば占領して拠点化するのも悪くないですね」
「俺達、騎士だよな? 野盗じゃないよな?」
「え、騎士君って呼んでほしいんですか? ヴウ"ンッ騎士君……違うな。あ"-! ……騎士クン!」
「やめぃ!」
ひとしきり見学を終えたエル達はキッドを『騎士君』呼びでからかいつつエムリスの下へ向かうと、エムリスから先ほどエル達が相談していたことを共有するが、『拠点でも貴族を説得するには力不足だろうな』と諦めたような空気を出す。しかし、現状の仮拠点では補修も満足に行えないため、クシェペルカの地理に詳しいエムリスから関所から近い『ミシリエ』という宿場町はどうかと提案がされた。
「ノーラさん……は居ないんでしたね。では、ミシリエの偵察をお願いします」
「承知しました。若旦那、詳細な位置を確認したく」
そのままミシリエへ偵察に向かう藍鷹騎士団の小隊を見送ったエル達はそのまま関所まで帰っていくのだが、エムリスも団員達も元クシェペルカ貴族の応対に心が折れかけているのか、表情は暗かった。
「せめて、貴族が纏まるだけの御旗があれば」
「流石に若旦那が大手を振ってクシェペルカの再興の旗印になるのは違いますもんね」
一応フレメヴィーラとは関係のない体で潜入しているので、それが露呈するのは良くないことだとアルも分かっている。だが、こうも八方塞がりだと打開策の強硬手段を考えるのも仕方のないことだった。
そんなアルの意見の意図を察したエムリスはアルの頭を乱雑に撫で、仮拠点に帰った瞬間に『伯母上達のことは後で考える』と自分に言い聞かせるように吠えると続けて『俺達や伯母上達を保護する拠点をジャロウデクのやつらから巻き上げるぞ!』と力強く宣言した。
「皆さんは会議の準備を 親方は実働部隊の整備をお願いします」
その宣言を聞いたエルは素早く周囲の地図の準備や全力出撃の用意をダーヴィドに指示する。全力出撃、つまり3個中隊の戦力に加え、つい先ほど小隊のほとんどを鎧袖一触で薙ぎ払ったイカルガが加わった文字通り銀鳳商騎士団の全軍である。帰ってきて早々大仕事を押し付けてくるエルにダーヴィドは何か言いたそうにしたが、会議の物々しい様子からただ事ではない空気を感じ取って整備をするために駐機場へ向かった。
「それでは、ミシリエ攻略の会議を始めます。若旦那、ミシリエはどんな街なんですか?」
「一言でいやぁ宿場町だ。この関所を除けばクシェペルカの最東端だな。俺が留学から帰る時には護衛の騎士がそこでシルエットナイトの点検をしていたから工房は存在する……はずだ」
「ですが、ここら一帯の地形的に大人数での行軍は厳しいですよね」
エムリスが街の概要を話ながら法撃によって粉々になった門を指差す。元クシェペルカ王国は王都の『デルヴァンクール』を中央とし、東西南北と4領に分かれている。その中でもフレメヴィーラと近い東領は魔獣こそ存在していないが、地形が険しい箇所が所々にあカルディトーレやツェンドリンブルでも移動に苦労した個所が存在する。
そこら辺の感情をすり合わせながら正攻法で攻略できるかと頭を悩ませていた一同に、エルが『僕がミシリエを守るティラントーを全部撃破すればどうですか?』と、また頭イカルガの発想で提案しだした。
「ステイ! イカルガを動かしたいだけでしょ! ステイ!」
「くぅん」
犬のような鳴き真似で上目遣いで抗議してくるエルを無視してアルは制圧方法を模索する。ただ1人、その仕草に目をやられて会議中ずっと滅びの呪文を真っ向から見た某大佐の様に手で目を覆っていたのだが、隣に居たキッドはそっとしておくことにした。
「んー、個人的に搦め手の方が良い気がするんですが……。制圧後、民間人に偽装した兵に攻撃されたら痛いですね」
「アルフォンス。それを考慮に入れると疑わしい物は全員捕虜にするしかないぞ。その時に対処しよう」
前世では便衣兵と呼ばれる民間人に偽装して攻撃を行う兵士のことを懸念して悩みだしたアルに、エドガーは『その時はその時だ』とフレメヴィーラ魂を爆発させながら異議を唱えた。ちなみにセッテルンド大陸では知らないが、便衣兵は国際法違反なのでサバイバルゲームなどでそういうことをするのは面倒くさいことになるのでお勧めはできない。
閑話休題
その後も誰かが案を出したが誰かが異議を唱えるという話し合いを行うが、良さげな方法が出ないので一旦小休止を挟もうかといった空気が流れる中、アルはおずおずと手を挙げて一言『やっぱりミシリエを守るティラントー引っ張り出してイカルガで殲滅した方が逃げてくれるんじゃないですか?』と先ほど却下した案を再度会議の場に出した。
「まぁ、死神様が出たら逃げるしかないね」
「俺達が町を包囲すればより威圧感はあるだろうな」
捕虜からたびたび聞かされる『死神』という言葉にイカルガがジャロウデク側から恐れられていることを知っているディートリヒは笑いながら賛成し、イカルガがティラントーを倒した後のことを考えた中隊の動きを考えていたエドガーも賛成する。その賛成の声が上がるごとにエルの目が徐々にキラキラと輝いていった。
「それじゃあ、威圧感を増すためにもう一工夫しましょうよ」
イカルガが主役になる作戦にアルに向けて熱視線を送るエルを視界の外に追いやり、アルは仮拠点の片隅に立たせてあるティラントーを見つめながら作戦で行う『もう一工夫』の概要を説明した。
「深夜にイカルガをミシリエの中心に着地させる寝起きイカルガ作戦とか、忍び込んで寝込みを襲って戦力が低下した時に本隊が襲うとか色々あるんですが」
「いや、それはなんというか……騎士の戦い方ではないだろう?」
エドガーの反論に『何を申す! 長剣では出来ないことを短剣でやるんですよ』と反論したアルだったが、長く
その宣言を聞いたエドガー達からは『長く
そして、数日後。ミシリエの街から一番近い森林地帯でアルはティラントーに繋がっている
姫救出後にいつの間にかミシリエが取り戻されているので、ミシリエ奪還を入れようかと思いました。
??「騎士様の戦い方じゃない」
***
先日パッチワーク2世のイラストを書いてくださった有志の方から、狙撃型の魔導兵装をもったカラーイラストを頂きました。(本当は線画もあったのですが、カラーをご紹介させていただきます。毎度毎度ありがとうございます
【挿絵表示】