I・IS《イフ・インフィニット・ストラトス》 作:嘘つき魔神
「……っえ?」
ビンタされた。それを理解するのに数秒の時を要した。激しい痛みとラウラを見上げる構図。それが自分が吹っ飛ばされたことを物語っていた。そして、それを理解して、はいそうですかで終わる訳がない。誰だって、いきなり訳も分からず殴られれば腹が立つ。無論一夏も例外でない。
「……何しやがる?」
本当なら一発ぶん殴っておきたいが、それを抑え、怒気を声に滲ませる。
「ふん、教官の弟がこれか……期待はずれだな」
だが、ラウラは気にした風でもなく、一夏を煽る。
「いきなり人にビンタかましてくれた奴の台詞とは思えないな……?」
「フッ、惨めに吹っ飛んだというのに、虚勢だけは立派だな?」
互いに感情が高まり、イラつきが最高潮に達しそうになる。互いにピリッとした空気を放ち、睨み合う。周りが冷たい空気に包まれ……
「何をしている馬鹿者共!」
「「!」」
冷たい空気を晴らし、千冬が現れた。もう安心だ!
「織斑先生……邪魔しないでくださいよ」
「同感です、教官」
何と、2人は千冬に反論したのだが……スパンと小気味良い音が鳴り、2人はうずくまることになる。
「うおぉ……」
「くうぅ……」
「お前らの個人的な喧嘩に付き合うつもりはない、おとなしく席に着くんだな」
「「……はい」」
1組の鬼には敵わない、1組のパワーバランスが示された瞬間であった。
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「「「「「デュノア君!」」」」」
「さぁ、観念なさい!」
「織斑君×デュノア君……ディ・モールトベネッ!いい!すごくいい!」
「腐女子のプライド!漫画部の栄光!他の学校なぞに、やらせはせん!やらせはせん!やらせはせんぞぉ!」
1時間目の準備時間、一夏とシャルは女子の軍団に追われていた。
「ねぇ!?何この状況!?というか最後の人は何!?」
「知らん!とにかく走れ!捕まったら終わりだ!後最後の奴はド○ルだな!」
そんなことを言いながら逃げていく。だが……
「逃がしはせん!逃がしはせん!逃がしはせんぞぉ!」
「ほらほらスクラム組んでほらほら!」
「諦めろぉ!大人しくウス=異本の題材になれぇ!」
前からスクラムを組み、一夏達を捕らえんとする女子達の姿が!
「はぁ……しょうがない、シャルル?ちょっと許せ!」
「へ?ふにゃあ!?」
「「「「「きゃあぁぁぁぁ!お姫様だっこ!」」」」」
一夏はシャルを抱き上げ、走る。目指すは廊下に置かれたロッカー!
「待ぁぁぁぁぁてぇぇぇぇぇ!」
3……!
「うわぁぁぁぁぁ!?一夏ぁ!?」
2……!
「「「「「あんた達はもうおしまいよぉ!」」」」」
1……!
一夏はシャルを抱き上げたまま飛び、ロッカーを踏みつけた!壁を蹴り、迫る女子の壁を抜け、そのまま更衣室に走る!
「逃がしたぁ!?」
「し、しまった!?お、追えぇ!皆の衆!追えぇ!」
だが、既に一夏達は更衣室に鍵を掛けていた。ミッションコンプリート、一夏達の勝利だ!
「ふう、ごめんな、シャルル?大丈夫か?」
「……し、死ぬかと思った……お、織斑君、な、何してたのさ……」
「……悪いが話は後だ、早く着替えないと織斑先生に……」
「お、織斑先生に……?」
「……」
「ひ、ひえ!」
そう言いながらシャルはさっさと着替え始める。それを横目に一夏もさっさと着替える。着替えには1分も掛からず、さっさとグラウンドに向かうのだった……
あぁぁぁぁ!