「ここのコースター超スゲーって有名らしいぜ」
今、僕たちは広くん達と一緒にぬ~べ~に遊園地のパスポート券を驕ってもらい遊園地に来ている。
リツコ先生も一緒だ。
と言うよりも広くんがリツコ先生を連れてくるからと言う交渉に応じたと言った方が正しいだろう。
(広達にパスポート券を驕らされたけどリツコ先生を連れてきてくれたんだから安いもんだ……ぐへへへ、子供はお遊び、大人はデート! ジェットコースターにリツコ先生と一緒に乗れば!)
(……何を考えているのか丸分かりだな~)
だらしない顔になっている。
ただでさえぬ~べ~は貧乏だから驕ってもらうのに罪悪感を抱いて少し出そうかと申し出たけどカッコつけて断られた。
しょうがないので少しぬ~べ~を小突く。
「ぬ~べ~、進んでますよ」
「おっ、悪い悪い」
てか、来ているのは僕に広くん、郷子ちゃん、栗田くんに細川さん、リツコ先生にぬ~べ~の七人。
「って、あっ!」
「ん? ああ……」
だけど、リツコ先生は郷子ちゃんと一緒に座ってしまっていた。
正直、こうなると思っていました。
「く、くそう」
「はい。残念でした」
「うっ……ううぅ」
「(変な妄想をしてるから……)まあ、ここでボケッとしてると迷惑だから早く乗りましょうよ」
そして、ぬ~べ~はしぶしぶ僕と一緒に座った。
ただ、早く乗らないと恐らくぬ~べ~は後ろの大きいおばさんと一緒に乗る羽目になる。
それと比べたら大分、マシだろう。
(そんなに残念だったのか……そっとしておいて僕は僕でジェットコースターを楽しむか)
ジェットコースターは怖くはない。
だが、空気圧で悲鳴を出さないと少し苦しいので思い切り声を出した。
それでも楽しかった。
遊園地で遊ぶなんて昔はあまりできなかったことだからな。
だから、思う存分遊ぶことにした。
これでも僕は小学生ですから。
「未体験ゾーンか……よし、ここに入ろうぜ」
「僕、怖いよ」
「童守小学校の生徒がこんなとこで怖がってどうするのよ。うちの学校の方がよっぽど怖いでしょ?」
「だな……千鬼姫とか……ってこれは人体模型の時に言ったな。だから省略」
「そうそう。ここは全部作りものなんだしさ」
「奴らと違って殺す気で襲いかかったりしないって」
「う、うん」
(……まあ、中には偶に本物の霊が混じってるけどね。今は大丈夫でしょ……大丈夫であってくれ!)
僕達がここでおしゃべりをしているとぬ~べ~の声が聞こえる。
「ねえねえ、リツコ先生、未体験ゾーンに入りましょうよ」
「……鵺野先生、私がああいうものを好きじゃないことをご存じでしょ」
「僕が付いているから大丈夫です!」
「だから、心配なんです!」
「ズコーっ!」
「ですよね!」
そりゃ、今までが今までだし、その反応も当然である。
そろそろ僕のフォローも無駄だと思いつつある。
「……う~ん」
「ん? どうしたの?」
「いや、ぬ~べ~をリツコ先生と一緒に残して僕達で楽しむべきか、ぬ~べ~を連れて行くべきか……リツコ先生と一緒に残したらどんな大ボケをするのかと思うと……」
例えば、近くでなんかの幽霊がいるとかの話とかしでかしたりとか……
普通にあり得そうで怖い。
「どっちでもいいんじゃない? 放っておきなさいな」
「……そうだな、付いて来る時は付いて来るか……そっとしておこう」
そして、僕達は未体験ゾーンで楽しんで行った。
「広、幽体離脱ってどういうこと?」
「そのボタンを押せばいいんだよ」
「これね」
細川さんがボタンを押すと幽体離脱の説明が入った。
人間の体は『霊体』『幽体』『肉体』の三つで出来ている。
幽体離脱はその霊体と幽体の二つが肉体から飛び出た現象のことである。
この時、霊幽体と肉体はシルバーコードで繋がれている。
霊幽体は肉眼では見えず自分の体を見下ろせる不思議な体験が出来るとのこと。
「わはあ、面白い!」
「本当ね」
「郷子、ろくろ首だってよ!」
そして、作り物のろくろ首に向けてアッパーをした。
ただ、本気では無くぽかりと軽く殴った程度である。
(見た感じでは霊はいないみたいだな。良かったと言えば良かったな)
そう考えると広くん達は未体験ゾーンのグッズを見ていた。
そのまま、僕たちは楽しく遊園地を楽しんだ。
まさか、この時あんな事態が起きるとは夢にも思わず……
………………
…………
……
「ふあぁぁ~」
翌日、細川さんは眠そうに大きな欠伸をした。
「なんだ美樹? 1時間目から欠伸をして……寝不足か?」
「そうなのよ……ちょっと考え事をしてたら徹夜しちゃってさ」
「何を考えてたんだよ?」
「どうせエッチなことじゃねえの?」
「「「あはははは」」」
「そんなんじゃないわよ!」
「……しょうがない。保健室で寝てこい」
「えぇ~! いいの~!」
確かに今までのぬ~べ~とは思えない対応だ。
顔を洗ってこい程度かと思ったのに
「フフフ、実はな。2時間目はお前の大嫌いな算数のテストなのだ」
「ガーンっ!」
ああ、そういう意図があったのね。
細川さんがショックを受けていた。
それと同時に広くんや克也、栗田くんが現実から目を逸らすように明後日の方向を向いた。
そう言えば、テスト苦手だっけ……
まあ、今回のテストもいけるでしょう。
「それまでに頭をすっきりさせておくんだぞ」
「……アンビリバボー」
「えっと、ご愁傷様」
細川さんはしょんぼりとして保健室に寝に行った。
「……そういえば、真斗くんって算数のテスト大丈夫なの?」
栗田くんが後ろを向いて聞いてきた。
「まあ、予習復習はしてきたし大丈夫じゃない」
「へ~予習復習をするのね」
「色々あってね……勉強は結構頑張った方なんだよ」
栗田くんがしょんぼりして中島さんは感心したように呟いた。
運動が苦手だった分、勉強に集中していた。
だから、前の学校でも感心はされていた。
だが、しばらくして
「いやああああああーーーーーー!」
リツコ先生の大きな悲鳴が聞こえた。
「っ!?」
「リツコ先生だわ!」
ぬ~べ~がすぐに教室を出て悲鳴の方へ向かって行った。
僕も急いで跳び出していった。
「どうしました!? リツコ先生!」
「よ、よ、よ、妖怪が!」
(妖怪? そんな気配を感じなかったけどな)
「おのれ妖怪め! リツコ先生を怖がらせるとは許せん! 退治してくれる!」
「ちょっ!」
ぬ~べ~が頭に血を上ったのかよりにもよってリツコ先生の前で鬼の手を出した。
ただでさえ、初見の僕が驚いたのに怖がりのリツコ先生が見たら……
「いやああああああーーー! 何、その手!?」
「ですよねー」
そう余計に怖がらせる。
ぬ~べ~クラスでは慣れた光景でも他は違うのだ。
ぬ~べ~も慌てて鬼の手を隠した。
「リツコ先生、鬼の手を見るのは初めてなんだ」
「そうなのね」
「初見はビビるよね」
「ぬ、鵺野先生?」
「あ、あはは……き、気のせいですよ」
「そうです。とりあえず、落ち着いて深呼吸をしてください」
「そ、そうですか……」
今はリツコ先生の勘違いや幻覚と思わせておこう。
「リツコ先生、さっき妖怪とか」
「ええ、ろくろ首がここに」
「ろくろ首?」
「気味が悪かったわ」
「もう、どうしたの? うるさくて寝てられないじゃない」
すると、細川さんが眠たそうにこっちに来た。
「ひっ! お、思い出したわ! そのろくろ首、美樹ちゃんだった……ふにゃ~もうダメ~」
「リツコ先生!?」
リツコ先生が混乱で倒れそうになったのでぬ~べ~が抱き留めた。
「美樹……お前、最近どうも妖怪染みてると思ったらやっぱり……!」
「何よそれ! あたしは人間です!」
「そうだよな」
「……うーん」
でも、こんな明るいのにリツコ先生がろくろ首と細川さんを見間違えるのかな。
それにリツコ先生は仮にも教師だ。
寝ぼけてるとはどうしても思えないけど……
「……ニヤリ」
そして、ぬ~べ~はリツコ先生を見てまた顔をだらしなくした。
「ぬ~べ~、ぬ~べ~、下心見えてる……見えてるよ~」
だが、ぬ~べ~は聞いてくれずそのままリツコ先生を見続けていた。
「……そっとしておこう」
リツコ先生が目を覚めたら多分、ビンタするだろうなと思った。
けど、ぬ~べ~が聞かないのでしょうがない。
痛い目に遭うだろうなと思っても放っておくのが良いだろう。
「ったく、失礼ぶっこいちゃうわねっ! こんな美少女に向かって!」
「ろくろ首なんて本当かしら?」
「リツコ先生、怖がりだからね」
「……でも、怖がりの人が本当に怖がるなら夜のような暗い時じゃない? 朝にぬ~べ~が怖い話でもしない限り普通にしてるでしょ?」
そうじゃなかったら周囲が心配する筈だ。
明るい時でも怖がってるのは何も起きていないのにあれが起きるかもと神経質に心配をする人のようだから。
いや、まあ、明るい時でもヤバい展開は起きてるが……(例:はたもんば)
あんな、特殊な事例はそうそう起きないでしょ。
起きてたまるか。
起こらないでくれ……
「何よ、それじゃ真斗はあたしを妖怪だと思う訳!?」
「そういう訳じゃないけど……」
でも、気になるんだよな。
そして、二時限目、ぬ~べ~の顔面の真ん中がもみじになっていた。
案の定、リツコ先生に叩かれたらしい。
「それじゃ約束通り算数のテストをするぞ」
(……ろくろ首は後回しだ。今はテストに集中しよう)
以前、千鬼姫の件は伝えるためにわざとやらず褒美として再テストを受けた。
だが、そんな幸運はそうそう訪れないので普通にテストを受けている。
(ふむふむ、あれはこうしてこれはこうしてっと)
「よっしゃー! あたしは千里眼という超能力を手に入れたんだわ! わははは!」
「……細川さん?」
急に細川さんが訳の分からないことを言って笑い出した。
そのままテストを楽しそうに受けた。
「……千里眼? おっと」
変なことを言うのでペースを乱された。
だが、すぐに軌道を修正しテストに取り掛かった。
結果、僕は何とか100点満点を取れた。
だが、細川さんも100点を取った。
あれだけ落ち込んでいたのに何が起きたのやら……
………………
…………
……
―美樹視線―
「おほほほー! ん~千里眼とは便利な能力を手に入れたものだわ。これからはテストなんてものはちょろいものよ。本当は幽体離脱の練習をしてた筈なんだけどな。まっいっか! 千里眼でも! あっ、よし! 今夜はみんなの家を見て回ろう」
時間は10時頃、美樹は早速千里眼の練習を始めた。
最初のターゲットは……
「うーん、今日は気になることが起きたな。でも、今は考えてもしょうがねえや」
真斗の家だった。
部屋は綺麗に片付けられている。
今、真斗はパジャマに着替えている。
「時間割の確認も終わったし宿題も終わった。で、3回見直してカバンに入れたと。これで大丈夫だな」
真斗は真面目に寝る前に忘れ物が無いかをチェックした。
「目覚まし時計を6時にセットしてっと」
「へ~もう寝るのね。そして、結構早起きなのね」
美樹は感心したように頷く。
時間は夜中の10時で美樹ならばドラマなどを観ている時間帯なのだ。
「まあ、早起きして予習をした方が頭に入りやすいし、夜遅く起きてまでやりたいこともないからな……」
「ふーん、テレビとか見ないの?」
「今のところはないな……ゲームもあんまりやらないタイプだし」
「へー」
素直に真斗は答える。
「……んっ?」
だが、違和感を感じたのかきょろきょろと辺りを見渡すと美樹と目が合った。
「……ん?」
そして、時間が止まったかのように真斗は固まった。
「……待て待て待て待て!!!!」
慌てたかのように真斗が叫ぶ。
美樹からしては新鮮な反応である。
今までの真斗は滅多なことでは驚かず怖がらず堂々としていた。
それはいいけど何処か真面目過ぎて面白みがないと思っていたからである。
「え!? 何で!? 嘘ぉ!?」
「アハハハ! 新鮮な反応で面白い! それじゃあね!」
とはいえ、まだ今日は試しの1回。
他にも周らないといけない家があるので美樹は去ろうとする。
「ちょっ!? 待て!」
真斗はすぐに窓を開けて呼び止める。
だが、美樹は止まらず首だけ残して何処か行ってしまった。
「……追いかけようにも流石に夜道を行く勇気はないな。明日、問いただすか……そして、気になったことは意外と早く分かったな。多分、無自覚だろうな……絶対に……」
真斗はそう言って幽霊が入ってこないように窓を閉める。
「真斗~どうしたの~?」
「大丈夫だよ、母さん。ちょっと驚いただけ」
「また幽霊?」
「うーん、幽霊かと聞いたら微妙かな……と言ってもぬ~べ~に聞けばいいだけの話だから心配ないよ」
「そう。何かあったらお母さんにも言いなさいよ」
「はーい」
その後、美樹は広達同級生の家を宣言通り周って行った。
窓からしょんべんしたり、お風呂に入って鼻歌、夜こっそりとおやつを食べるという事は序の口だ。
フィギュアのスカートをめくったりエロ本を読んでたりした人もいた。
そして、真斗のように驚きもあったが怖がりも含まれていた悲鳴を上げた。
美樹は何かおかしいような気がしたが気のせいという事で片付いた。
そして、次の日
「(うふふ、昨夜は面白かったな~あれが夢かどうか聞いてみよう)おはっようー」
だが、奇妙なことにクラスのみんなが美樹を睨んでいた。
「……やっぱりか……ですよねー……」
唯一、真斗だけは溜め息を吐いて呆れたように美樹を見ている。
「来たわ」
「ろくろ首女め」
「ろくろ首女?」
「こいつ……よくも人のふりをして騙してたな!」
広たちはまるで今までの妖怪を見るように美樹を見ていた。
「な、なんのことよ!」
「お前の事だろ!」
「妖怪って何馬鹿なことを言ってるのよ! あたしはれっきとした美少女細川美樹ちゃんじゃない」
「よく化けたもんだ!」
「化けた? どうしちゃったのみんな」
「さっさと白状しろよ!」
「往生際が悪いわよ」
「ぬ、ぬ~べ~黙っていないで何とか言ってよ」
「美樹……2人きりで話したいことがある。一緒に来てもらおうか?」
「何よ……ぬ~べ~まで……ま、真斗……」
美樹は縋るように真斗を見るが……
「いや、だから待てって言ったじゃん。だから呼び止めたじゃん。僕だって目撃者だからな。細川さん、普通に首伸びてたよ。ろくろ首だったよ……絶対にこうなると思ってた」
呆れたように美樹にはっきりと言った。
声の感じは怖いというよりも怒涛のツッコミをしていた。
「ま、真斗まで……」
「……美樹」
「……ぬ~べ~」
美樹はぬ~べ~の顔を見て目を見た。
そして、怖くなった。
ぬ~べ~の目が本気なのが伝わったから……
「いやああああああーーーー!」
「美樹!」
「逃がすな!」
「追いかけろ!」
「待て! 大人しく捕まっておいて怒られてろ! また話がややこしくなるじゃねえか!」
みんなが追いかける中、美樹は必死で逃げる。
(なんであたしが妖怪な訳!? ぬ~べ~のあの目、本気だった!)
「あそこだ!」
前方には広と郷子と真斗。
後ろには克也と金田と昌とぬ~べ~が挟み撃ちをしていた。
「酷いわ、みんな……あたしは人間よ」
そして、美樹は放送室に逃げ込み鍵を閉めた。
「こら、開けろ!」
「出て来い!」
「僕、裏から周ってみるよ!」
時間が無い。
美樹は急いで窓を開けそこから脱出した。
「美樹!」
「こんなところ逃げ込んだって無駄だぞ!」
「こら! 出て来いったら!」
美樹は急いで体育倉庫に逃げ込んだ。
「どこ行った!?」
「あっちだ!」
「逃がすなよ!」
「ああ、もう授業時間がどんどん減っちゃうじゃないか!」
「真斗、気にするところ全然違うよ、さっきから!」
そして、時間が経った。
「美樹、隠れていないですぐに出て来い」
「……いけない寝ちゃったのか」
だが、すぐに美樹は違和感に気付く。
自分の体がずっと下にあったからだ。
「えっ!? い、い、いやああああああーーーーーー!」
気付いたのだ。
自分の首が伸びていることに……
その悲鳴でみんなが美樹の居場所が分かりすぐに向かった。
「ぬ~べ~、あれが証拠よ!」
「美樹、そこを動くな!」
「ぬ~べ~、あたし知らなかったのよ! 自分が妖怪だったなんて! お願い助けて!」
「……だろうね。どうも自覚が無いなと思ったけど、やっぱり無自覚に首を伸ばしていたんだな……だから、待てって言ったじゃんかよ」
真斗はのんきにそしてさらに呆れたように首を縦に振る。
その間にぬ~べ~はすかさず鬼の手を出す。
「ぬ~べ~……!」
「待ってよ! あたしだってぬ~べ~の生徒よ! ちょっと人より首は長いけど……根はとっても良い奴なのよ!」
「自分で良い奴って言うの?」
「真斗は黙ってよ! クラスに一人ぐらいあたしみたいのがいてもいーじゃないでしょーか!?」
段々と美樹は泣き鼻水も出て来た。
「ぬ~べ~お願いなんでも言う事を聞くから!」
ぬ~べ~が構える。
「た、助けて……」
ぬ~べ~は鬼の手を伸ばし美樹……の頭に手を置いた。
「……っ!」
「宇宙天地 與我力量 降伏群魔 迎来曙光」
経文を唱えると美樹の首は元に戻った。
「今、伸びていたのは美樹の幽体の方だ。普通幽体は見えないのだが体質によって見える場合もある」
「じゃあ、あたし妖怪じゃないのね」
美樹は自分の体や顔を触りその事実に安心する。
「当たり前だ。お前は俺が守らないといけない可愛い生徒だよ」
ぬ~べ~は優しく笑い美樹は安堵し涙を見せる。
「ありがとう! ぬ~べ~……」
そして、ぬ~べ~はろくろ首について解説する。
「昔からろくろ首というのは首が伸びる妖怪だと思われているのだが実は幽体離脱が不完全で首から上の幽体だけが離れて寝ている間に移動をする現象なんだ」
「なるほどね。リツコ先生が見たのも美樹ちゃんが保健室で寝ている間だからで、幽体しただけの生きた人間だから霊の気配もなかったわけか」
「ああ、そういうことだ」
「霊感が無いリツコ先生が見えていたから妙だと思ってたよ……昼に見たって言ったのも妙な感じがしたけどね」
「……そういえば、この前の未体験ゾーンで幽体離脱が載った本を買って実験したっけ」
「ああ、それが真相なのね……」
「……やっぱり、お前の自業自得か」
「それって、つまり、前回のテストも殆どカンニングだったんだね」
「……はい」
だが、当然テストをカンニングして100点を取ったという不正である。
なので算数のテストはやり直しになった。
(もう1回テストやり直しだなんて……アンビリバボー)
そして、美樹は隣の人である真斗を見る。
正確にはテスト用紙だが……
「ん?」
(伸びろ~首~)
(懲りてないんかい!)
もちろん、美樹はぬ~べ~に叩かれテストは散々な結果になった。
「うぅ~」
「まったく、今回は細川さんの自業自得だよ。また、テストをやり直す羽目になるなんて……」
「ご、ごめんなさい」
「ぬ~べ~が生徒を殺すわけないし、もう少しぬ~べ~を信じていいと思うの」
真斗は美樹に小言を言う。
そして、美樹はふと思ったことを口にする。
「そういえば、みんなの悲鳴が怖がったようなものだというのは分かったけど、アンタはどっちかというと怖がりというよりもビックリの方が大きいじゃない?」
「いや、それは驚くでしょ。クラスメートの首が伸びたんだよ? 驚かない方がおかしいんじゃない?」
「みんながあたしを問い詰める時だって、アンタだけは怖くなかったわよ。呆れられているのは分かったけど、殺されるとかそういう危機感はなかったもの」
そう言われると真斗は困ったような表情をした。
「いや、被害は受けていないし、クラスメートだからね……そう言う目で見たら可哀想じゃないか」
「……なんかあたしたちに隠してることあるんじゃないの?」
「(ギクリ)な、なんだよ。僕だって怖いものくらいあるよ」
「例えば?」
「夜道……この町の夜道は真剣に怖いと思う。何が出てもおかしくないような気がして……」
真斗ははっきりと即座に答えた。
「へー、意外。アナタのことだから何でも平気だと思ってたわ」
「何でもは言い過ぎだよ。僕だって普通に怖いものはあるからね……真剣に」
「なるほどね。それじゃ、このことをみんなに言いふらすわね」
「あっ、こら!」
何を隠しているのか分からずにいる。
だが、美樹は真斗のことを面白い奴だと思った。