折角ですから2名ほど融合次元から逆輸入しましたので初投稿です。
デュエルアカデミアに入学してから定期試験も終えて一段落ついた頃。ある気掛かりなことが出来てしまったため、それについて……いや、その人について調べることにした。
ひとまず、三沢や同じ学年のラーイエローの生徒に聞いてみるが、誰も知らないようで、特にこれといった情報は得られない。
…………あんなに色んな意味で存在感のある人を誰も見たことがないということがありえるのだろうか? かく言う俺も入学して以来1度も見掛けたことがないので気になったわけだ。
どうしても何かが引っ掛かった俺はデュエルアカデミア本館にある図書室に行き、そこにあるパソコンから名簿を見ることにした。
明日香が中等部からデュエルアカデミアに入学していたのなら、吹雪さんは今3年生にいなければおかしいからな。明日香は否定するだろうが、アイツはああ見えてかなり吹雪さんのことを慕っているから間違いない。
そして、見つけた名簿には簡単な内容が添えられ、一言だけこうあった――。
"天上院吹雪 海外留学"
それを目にした瞬間、思わず鼻で笑ってしまう。
あの明日香好きで、明日香を愛でることが趣味の吹雪さんが明日香を置いて、簡単には会いに行けない場所へ海外留学?
馬鹿も休み休み言って欲しいものだ。そんなこと天地がひっくり返ったってありえない。まあ、島にいる生徒に対して不安を与えないようにあえてこうされているのかも知れないが、笑えない冗談だ。
その上、名簿から他の吹雪さんの同期のオベリスクブルーの学生を見てみれば、かなりの数が同時期に留学したということがわかる。まあ、これを見れば逆にそういう催しがあったのではないかと納得できてしまうかもしれないな。
その後、吹雪さんについて知っているかも知れない3年のオベリスクブルーの生徒に少し聞き込みをしてみたが、やはり吹雪さんは留学したと認識しているようで、特に疑問に思っている様子は見られなかった。
しかし、元々は特待生の寮であり、今は旧館であるその場所で集団失踪事件があったという噂も耳にした。しかし、どうもオベリスクブルーの先輩方にとっては、話の様子から特に深刻そうではなく、眉唾物の怪談話のひとつのように思えた。
だが、何故か留学生と特待寮での失踪が彼らに結び付かないのか疑問に思っていると、"まあ、元々特待寮があった頃はエリートの上のエリートって認識だったからどういう人達だったのかはそもそも知らない"というほぼ答えを俺に聞かれるまでもなく呟いてくれた。どうやら一般のオベリスクブルーの学生にとっては、そもそも元特待生と馴染みがないようだ。
ひょっとすると元々特待寮があり、このデュエルアカデミアで最もエリートだった場所が消え、すると自然にオベリスクブルーがデュエルアカデミアで最もエリートだということになり、その嬉しさと、慣れず唐突に与えられた自尊心が、入学してから流石に俺でも感じたオシリスレッドやラーイエローの生徒への不遜な態度やいじめの一因になっているのではないかと思ったが、俺にとってはどうでもいいことだ。
「だとすると……」
やはり旧館の特待寮に行かない限りはわかるものもわからないだろう。そもそも同時に複数名の人間がひとつの施設内で、集団失踪するということ自体、デュエルモンスターズの何かしらが関わっている可能性が多分にあるだろう。
仮に破滅の光の仕業なら……失踪者はもう戻っては来まい……。
そう決まった場合、その事実を明日香に伝えるか、否か……いや、吹雪さんには悪いが、絶縁にはある意味ちょうどいいかも知れないな。
そのため、深夜に旧館に行くことをどうやってハスキーに伝えようかと思い、当たり障りのない言い訳を考えてから部屋の扉を開けて中に入ると――。
「私は別に問題ありませんよ? 旧友の明日香さんのお兄様が失踪だなんて……可哀想ではありませんか……!」
部屋の扉を閉めた瞬間、何も伝えていない筈のハスキーから、そのように声を掛けられ、心臓を鷲掴みにされたような気分になった。
ハスキーのいるリビングを見ると、そこに置かれたベッドに座った彼女がおり、部屋にあるシャワーを浴びたのか、バスローブ姿をしている。そのせいか、眼鏡をしていないため、いつもとはまた違って見えた。
そして、ハスキーは長い髪をタオルで丁寧に拭きながら、笑顔で口を開く。
「うふふ……紫呉様と明日香さんとは
ああ……そうだった……。最近は特にハスキーへ隠し事をするような事がなかったので忘れていた……。
ハスキーはベッドから立ち上がり、俺の前に立つと相変わらずの笑顔のまま、熱を帯びた視線を送りつつ、俺の片手をあまりにも優しい手つきで取る。
「ただ……旧館に行って帰ってからは流石に出来そうにありませんので……今愛してくださいね……?」
そう言ってハスキーは、俺の手を自身のバスローブの中に入れて、豊かな胸に触れさせると舌を出して自身の下唇を舐めていた。
俺に受け入れる以外の選択肢はなかった。
◇◆◇◆◇◆
紫呉
LP2100
手札2
モンスター0
魔法・罠4
明日香
LP2500
手札3
モンスター0
魔法・罠0
姉
LP4000
手札0
モンスター2
魔法・罠3
アマゾネス
星6/地属性/戦士族/攻2400/守1800
(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分の「アマゾネス」モンスターは戦闘では破壊されない。
アマゾネス
ATK2400
アマゾネスの
星4/地属性/戦士族/攻1700/守 300
自分フィールド上の「アマゾネス」という名のついたモンスターカード1枚につき、このカードの攻撃力は100ポイントアップする。
アマゾネスの
ATK1700→2100
アマゾネスの
永続罠
(1):自分フィールドに「アマゾネス」モンスターが存在しない場合、このカードは破壊される。
(2):1ターンに1度、エンドフェイズにこの効果を発動できる。このターンに自分が受けた戦闘ダメージ1回分の数値分だけ、自分はLPを回復する。
妹
LP4000
手札2
モンスター2
魔法・罠1
アマゾネスペット
星4/地属性/獣族/攻1100/守1500
このカードは自分フィールド上に1枚しか表側表示で存在できない。自分フィールド上の「アマゾネス」という名のついたモンスターカード1枚につき、このカードの攻撃力は400ポイントアップする。 相手はこのカードを破壊しない限り、他の「アマゾネス」という名のついたモンスターを攻撃できない。
アマゾネスペット
ATK1100→2700
アマゾネスの剣士
星4/地属性/戦士族/攻1500/守1600
(1):このカードの戦闘で発生する自分への戦闘ダメージは代わりに相手が受ける。
アマゾネスの剣士
ATK1500
それは今は私にとっては、最も親しい友人の二人になっている姉妹と初めて出会った日の記憶。
隣町の学校でデュエルの強さから番長をしていた姉妹は、強さにものを言わせて、近隣の色々な学校に乗り込んでデュエルをし、総なめにしていた。
そして、最後に残った彼と私が通っていた学校にも乗り込んできて、タッグデュエルを強要され、デュエルをしたけれど、私は慣れないタッグデュエルということもあり、終始姉妹に翻弄されっぱなしで、まるで戦力にならないどころか、彼に助けられてようやく生きているような状態だった。
「くっ……!? 攻撃力2700の"アマゾネスペット
状況は絶体絶命。今は妹の方のメインフェイズで私も彼の場もがら空き。
「フフッ……! 所詮この程度か。我ら姉妹の敵ではないな」
「この辺りでは一番強いって皆口を揃えて言ってたから、折角最後まで取っておいたのに……とんだ買い被りだったわね。姉さん」
二人はそんなことを言って私たちを酷く嘲笑い、何もできない自分がとても悔しかった。
「私は"アマゾネスの
アマゾネスの
星4/地属性/戦士族/攻1400/守 700
このカードが攻撃した場合、そのダメージステップ終了時に 相手フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚を選択して破壊する。
これまでのアマゾネスに比べれば大人しそうな印象を受ける杖を持ったアマゾネスが召喚される。
アマゾネスの
ATK1400
「これによって、"アマゾネスペット
アマゾネスペット
ATK2700→3100
「"アマゾネス"たちで総攻撃。これでアンタたちのライフは全部削り切れるわ。期待外れね!」
そして、妹の場の3体のアマゾネスに号令が掛かったことで、私はもうダメだと目を瞑った。
今となってはそれも仕方なかったと思う。なぜなら彼女らの実力は周囲の町どころか、後に世界レベルまで通用したのだから。
「な、なぜ……? どうして"アマゾネス"たちは動かないの!?」
しかし、困惑した様子の妹の声を聞き、ハッとして私は彼の方を見る。
「俺はバトルフェイズに入った瞬間に罠カード、"
そこにはまだ諦めた様子はなく、楽しそうに無邪気に笑っている彼の姿があった。それを見て、私は諦めた自分を恥じた。
「無用な延命を……」
「まあ、1ターン耐えたところで何が出来ることもないわ。この布陣を突破するなんて不可能だもの。ターンエンドよ」
妹
LP4000
手札1
モンスター3
魔法・罠1
「よし、ドロー!」
手札
2→3
そして、紫呉のターンに入り、自分の手札を見た彼は私に笑顔を向けた。
「大丈夫、後は任せろ!」
「う……うん!」
そのときの彼は本当に頼もしくて、眩しく見えたことを今でもよく覚えている。
「我ら姉妹のアマゾネスの布陣を突破する気か? つまらん蛮勇だな」
「うふふ、威勢だけは一人前ね」
「うーん……それは無理かな。勝てそうにはないや。だから――君たち二人だけを倒す事にするよ」
「なに……?」
「聞き捨てならないわね姉さん」
姉妹に対して啖呵を切った彼は、すぐにカードを発動した。
「俺はフィールド魔法、"
「…………馬鹿なのか?」
「アンタ100しかライフ残らないわよ……?」
紫呉
LP2100→100
姉妹はそう言うが、彼は一切臆する事なく、自身のフェイバリットカードを場に出した。
「俺は"
星8/闇属性/ドラゴン族/攻 0/守 0
(1):このカードが手札からの召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる。このカード以外のフィールドのモンスターを全て破壊し、破壊したモンスターの内、攻撃力が一番高いモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。このカードの攻撃力は、この効果で相手に与えたダメージと同じ数値になる。
(2):自分エンドフェイズに発動する。 自分のLPを半分にする。
彼のフィールドに全身に赤い珠がハマり、黒い体をした巨大な竜が現れる。
ATK0
「"
「ガンドラエックスの効果発動! カードが手札からの召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる! まず、このカード以外のフィールドのモンスターを全て破壊し、破壊したモンスターの内、攻撃力が一番高いモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える!」
「なに……!?」
「なんですって……!? きゃぁ!?」
妹
LP4000→900
「そして、このカードの攻撃力は、この効果で相手に与えたダメージと同じ数値になる」
ATK0→3100
「少しはやるな!」
「多少はやるわね!」
しかし、そう言った二人は、少しも引いた様子はなく、同時にセットしてある罠カードを発動した。
「私は永続罠、"アマゾネスの
「同じく私は、永続罠カード、"リビングデッドの呼び声"を発動よ! 墓地から"アマゾネスの
アマゾネス
ATK2400
アマゾネスの
ATK1500
剣を持ったアマゾネスの女王と、同じく剣を持ったアマゾネスの剣士が場に現れる。
「これで"アマゾネス"は戦闘によって破壊されず――」
「――ライフを削った私は戦闘ダメージを跳ね返す。残念だったわね」
「そんな!?」
折角破壊したのに再び二人のフィールドでアマゾネスの布陣が完成したことに私は思わず声を上げてしまった。
「そうか、なら手札から速攻魔法、"
アマゾネス
ATK2400→2800
アマゾネス女王の手に聖杯が握らされ、効果が掻き消される。
「小癪な真似を……」
「やっぱり馬鹿ね。私の"アマゾネスの
「いやいや、これでいいんだ。じゃあ、バトルフェイズに入るよ! ガンドラエックスで、"アマゾネス
そして、彼の
「いっくぞー! 俺は罠カード、"
「攻撃力3900ポイントアップだと!?」
「こ、こんなことのためにバカみたいにライフポイントを……!?」
ATK3100→7000
そして、彼の魂を受けた
「フンッ! 罠カード、"
「あははは! ご苦労様! どうしたって私たち姉妹には勝てないわ!」
しかし、アマゾネス
「じゃあ、カウンター罠、"神の宣告"を発動! ライフを半分にして、ミラーフォースを無効にして破壊だ!」
「なに!?」
「――姉さん!?」
「これが、俺の全身全霊だ! 受け取ってくれ!」
紫呉
LP100→50
「す、スゴい……うわぁぁぁぁ!?」
姉
LP4000→0
「――姉さん!? ゆ、許さないわ! 次のターンは私になるから、真っ先に"
「ううん、これで終わりだよ」
「え……?」
「罠カード発動。"
「"
すると
そのときにアマゾネスの
「な――!?」
「"
「れ、レベル4よ……」
「じゃあ、効果は有効だね!」
「有効だねじゃないわよ!? それをやったらあなたも巻き添えでライフポイントはゼロよ!? 何を考えているの!?」
妹にそう言われた紫呉は首を傾げてから特に気にした様子もなく笑顔で答えた。
「だから最初から言ったよ? 俺は二人には勝てないって。けれどこれはタッグデュエルだから、明日香のライフが残っていれば勝ちさ」
「あっ……」
その時に自分のライフポイントが2500あるから、アマゾネスの
「くっ……!? のほほんとしてるのにそんなところまで考えて!? わ、私たち姉妹が負けるなんてそんな――」
「君だけじゃないよ」
「え……?」
「俺もゲーム上は負け! でも楽しかった! また、デュエルしような!」
「………………………………………………はい」
そのとき、何故かとても間を開けて答えた妹の表情は、真顔から徐々に茹で蛸のように真っ赤になっていき、最後には視線を外して小さく呟いていたが、私には未だにその反応がよく分からない。
そして、ずっと待ってくれていた
妹
LP900→0
紫呉
LP50→0
明日香
LP2500→1000
「これでお前の勝ちだな明日香!」
「う、うん……ありがとう!」
これが姉妹との出会いの話。私の掛け替えのない思い出のひとつ。私にとって彼は本当に、本当に強いデュエリストで……確かに太陽みたいな人だった。
そして、彼はずっと自身のガンドラ
◆◇◆◇◆◇
《なに……? 紫呉を見つけたのに声を掛けられないだと……?》
紫呉のことをどうしたらいいのか悩み続けていると、2週間に1度ぐらいのペースでテレビ電話を掛けてくる古い友人から電話が来たから、彼についての現状を伝えると、ドスの聞いた声でそう返ってきた。
電話越しの彼女とその妹、そして私と紫呉。その四人で遊ぶのが、幼き日の私たちにとっての日常だった。
《馬鹿かお前は?》
「馬鹿じゃないわよ……本当に別人みたいで怖いぐらいなの…………"ドラゴンメイド"デッキだし……」
《ど、ドラ……なんだって?》
私は半ば愚痴のように変わってしまった紫呉について話した。話す人が誰もいなかった事と、なぜこんな複雑な気分にならなければならないのかという想いを胸に秘めていたせいで、言葉尻や内容の伝え方が多少乱暴になったかも知れないけれど、彼女は黙って聞いてくれていた。
そして、全てを聞き終えた後、彼女は鋭い目を見開いて口を開く。
《ふ、ふふふふ…………そうかそうか……アイツ、我々というものがありながら、そのようなものに現を抜かしている上に、彼女持ちだと? ふははは!》
「ね、ねぇ……大丈夫?」
様子がおかしくなった彼女を心配したけれど、直ぐに頭を抱えた様子に戻る。
《…………大事ない。それなら何か適当な理由を付けて、そちらに行くすぐに行く。絶対に行くから待っていろ》
「大丈夫なの? あなたたち姉妹はプロデュエリストなのに……」
《フフッ……愚問だな。アマゾネスの女は
《姉さーん! ご飯できたわよー!》
すると妹の声も聞こえてきた。その言葉で私もまだ夕飯を食べていないことに気づく。
《ああ、わかった。丁度いいから今日はこの辺りにする。近々、デュエルアカデミア本校に向かう……機会があればアイツに逃げるなとだけ伝えておけ》
《あっ! 珍しく姉さんが静かにしてると思ったら、姉さんひとりで明日香と話してたのね!? 私も――》
そして、いつも騒がしい今日の通話は終わった。
◇◆◇◆◇◆
「ぐ、ぐぁぁぁ!?」
タイタン
LP4000→0
旧館の調査に来たのはいいが、特にこれといった収穫はなかったため、デュエルディスクを下げて溜め息を吐く。
旧館は何らかの闇の力があった形跡はあったが、元々ほとんど残ってなかったのか、こちらの破滅の光の力を目にしたためか、俺の前には現れず、結局失踪の根本的な理由は不明。
その代わり……代わりなのか? 自称闇のデュエリストのタイタンという男が何故か俺を捕まえようと現れたのだが、ティルルが蹴り飛ばして距離を空け、直ぐにデュエルで解決したので特に何もない。その上、案の定闇のデュエリストということは真っ赤な嘘であった。
しかも、タイタンは負けるや否や脱兎の如く退散した。明らかな変質者を学校に突き出そうにも、旧館への侵入は校則違反なので俺が出来ることはこれ以上はないな。まあ、一応、学校のSNSに場所を伏せて流しておくぐらいはするか。
そんな中、収穫といえば"FUBUKI"という文字が刻まれた写真立てと、似たようなイニシャルの入ったアロハシャツとウクレレを見つけた事ぐらいだ。前者は映っている人物からも吹雪さんの物だったということはわかる。
一体、こんなものを俺が持ち帰って何になるんだと思いつつも旧館から出ると――。
「……!?」
「――あ」
旧館の入り口に何故か明日香がひとりで佇んでいた。
「…………」
「…………」
互いにこんなところでバッタリ出会うとは思っていなかったのだろう。俺も明日香も沈黙する。
そして、埒が明かないと感じ、先に動いた俺は今持っている物を全部明日香に渡すことに決めた。
「……ほら」
「え……? ――あっ、これは兄さんの……」
「旧館の中にあった。全部吹雪さんのものだろう?」
「そうだけど……あなたがどうして――」
「それからタイタンとか言う名の変質者に襲われたので、デュエルで解決したが逃げた。まだこの辺りにいるかも知れないから早く寮に帰った方がいい」
「え? 襲われたって何があったの!?」
「………………」
それには答えずにそのまま俺は自分の寮への帰路に着いた。すると明日香は吹雪さんの写真立てとアロハシャツとウクレレを持ったまま、俺を追って横に並んでくる。
「大したことはない……
「ただのってどういう意味よ……?」
「…………知らない方がいい」
少し口を滑らせたと後悔しつつ、それだけ言うのが精一杯だった。
デュエルの闇の部分なんて、あることすら知らずに生涯を終えれることが一番幸せなんだ。明日香を巻き込む必要はどこにもない。
だから……この平穏な学園に闇のデュエルを持ち込むような
………………ただ、今日は湖を見たくなったので、なんとなくオベリスクブルー女子寮を経由してからラーイエローの寮に帰る事にした。
◇◆◇◆◇◆
「…………」
「…………」
彼と無言でただ歩くだけの時間が続いていた。互いに何も話さず、何とも言えない時間が続く。
そんな中、何故か彼がラーイエロー寮ではなく、オベリスクブルー女子寮の方に向かっていること、旧館に入って兄さんの持ち物を持って来たことを考えていた。
そう言えばさっき変質者とデュエルをしたと言っていた。そのせいか、彼は時折周囲を見回しており、歩く速度も私に合わせてくれている気がする。
それからわざわざ旧館から持ち出された兄さんの持ち物。多分、彼は私がいるのに兄さんがこの学園にいないことを疑問に思ったのかもしれない。少し疑問を持って調べれば学園の失踪事件に辿り着くから、彼も私と同じように調べてくれていたのかしら?
「変わってないわね……あなた」
そんなことを考え、"優しいところ"が、という言葉は飲み込みつつ、思わず呟いてしまった。しかし、当然それに彼は答えない。
変わってしまったと思っていた彼は根っこの優しい部分は変わっていなかった。それだけ知れただけでもよかったと思える。
そんなことを考えているうちにオベリスクブルー女子寮の近くまで来た。既に建物が見えており、ここならもう襲われる事もないはず。
すると彼はその場で踵を返して、ラーイエロー寮の方へと歩いて行った。
それにもっと居たかった感覚を覚えると共に、引き止める言葉はないかと探したとき、姉妹とのテレビ電話の内容を思い出す――。
「待って紫呉!」
私の呼び掛けに初めて紫呉は足を止める。そして、少しだけ顔をこちらへと向けた。
「"グロリア"と"グレース"から伝言よ」
「――――!?」
その言葉に紫呉は肩が少し跳ね、明らかに目を見開いた様子だった。それが何故か可笑しく、少しだけしてやったりという気分になった私は笑みを作って、彼に伝言を伝える。
「"逃げるな"……ですって。彼女たちらしいわね」
「………………そうか」
それだけ呟いて彼は、今度こそ2度と私へは振り返らずに闇夜に溶けるように消えていった。
「…………絶対に突き止めるわ」
彼が元の優しさを未だに持っていることを知った私は、彼が表面上は別人のように変わってしまった理由を突き止めよう決意し――。
「明日香様。こんな夜更けにお散歩とはあまり関心致しませんよ?」
後ろから声を掛けられ、そちらを見ると――ハスキー・ドラゴサック・ビッグアイが立っていた。
「あ、あなたはドラゴサック……」
「うふふ、夜分にすみません。偶々、見掛けたものですから思わず声を掛けてしまいました」
「そうなの……」
そう言ってずっと笑みを浮かべているドラゴサック。
今の彼の側にいつもいる彼女だけれど、私は彼女のことがどこか苦手だった。
常に笑顔で人当たりがよくて、誰からも好かれるような彼女だけれど、どうにも何かを常に隠しているようで、笑顔だけれど彼以外は誰一人としてちゃんと見ていない。彼女からはそんな異様な感覚がする。
「まあまあ、私の事はお気になさらずに。それよりも夜の外はまだ冷えますから寮に入っては如何ですか? うふふ、大丈夫です。秘密の外出を先生に言うような小さいことは致しませんよ」
「ええ、そうするわ……」
そういう彼女の側を通り抜けようとして、真横を通った瞬間――。
『思い出……虫酸が走りますよ……私にはそんなものどこにもないというのに……』
確かに私の耳は底冷えするような彼女の呟きを耳にし、ハッとして振り返る。
「……? どうかしましたか明日香様?」
しかし、そこにはいつものように笑みを浮かべつつも、驚いた私の事を疑問に思う様子で、小首を傾げているドラゴサックの姿があるばかりだった。
「…………いえ、なんでもないわ」
「そうですか、ではまた明日。よい夢を」
そう言って彼女はお辞儀をすると、寮にある庭園の方へと向かって行き、こちらに振り返ることはない。
気のせい……にしては酷く現実的に思え、事実だったと思うにはまるで現実感がなかった。しかし、全身に立った鳥肌と冷や汗によって、少なくとも私にとっては現実だったように思う。
(変わってしまった彼……そしてそんな彼といる彼女……)
「紫呉……あなたに一体何があったの……?」
誰に言うわけでもなく呟いたその言葉は、何になることもなく夜空の中に消えていった。
あれおかしいな? この小説……書こうと思い立った当初はじゃしんの方の息抜きのためにただほのぼのラブラブするだけの内容の予定だったのに……じゃしんより遥かに書くのに作者の心を抉るぞ……?(白目)
紫呉くん(幼少時代)
お気に入りカード:
・
・
※固有デッキ以外の凡庸CPUは
紫呉くん(ラーイエロー時代)
お気に入りカード:
・ドラゴンメイド・ハスキー×3
※実質、お気に入りカードが存在しないので、パートナーにする場合にはどの時期の紫呉よりも一番使いやすい。元々のドラゴンメイドデッキは強力だが、CPUは墓地肥やしを使いこなせていないため、デッキを全て取り替えて、プレイヤーと同じデッキにするといい(TF並感)
~QAコーナー~
Q:おい、ガンドラワンショットキルデッキでなんで征竜に負けた? 逆に勝算あるだろ?
A:夢幻泡影
Q:タイラー姉妹、昔なにしてんだよ。
A:遊戯王ならよくあること。
Q:なぜタイラー姉妹?
A:明日香さんのデッキを使って1 VS 1でハスキーのほぼ全盛期征竜(未OCGフル投入)に勝てるわけないだろ! いい加減にしろ!(3 VS 1想定)
Q:つまりこのタイラー姉妹ってどういう状態?
A:ただのアマゾネス族の女性(本物)。ただし、アマゾネスなのでタニヤっちと同じぐらい思考がデュエル脳かつそこそこ桃色。
Q:AVのキャラ逆輸入するってことは作者AV好きなん?
A:ヴァラノワールよりはちゃんとアニメしてるから見るには見れたよ!(血走り目)
※ヴァラノワールを作者が観た感想:つまらなくて笑えないボーボボかつチャー研のような紙芝居のようなアニメではない何か