古波さんちのメイドラゴン   作:ちゅーに菌

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 本作様々な方々からぴかぴか眩し過ぎて目が瞑れると大好評でしたが、メイドラゴンを名乗るクセに内容がサツバツッ!というのは如何なものかと思うというご意見を貰い確かにそうだと愕然としました。というか、当初ほのぼの系の予定だったんですけど、書いていたら何故かこうなっていたんですよね……(震え声)

 そこで試験的に1話の光量を私が出来る限界まで更に高め、目が瞑れるどころか身体が消滅するぐらいぴかぴかにしてみました。あとがきにアンケートを載せるので、こっちの路線でリメイクして行くか、前に戻すか、作者を過労死させるか、本編を執筆させるか、ネコと和解するかご投票下さい。

 それではよろしくお願いいたします。






破滅の光版
破滅の光


 

 

 

 

 

「ここどこ……?」

 

 雲ひとつない快晴の空に、捻れ狂うように生えた巨大な樹の根元。そこにまだ10歳にも満たないような小さな少年の姿があった。

 

「わぁ、きれい……!」

 

 突然、放り出されたそこは自然豊かではあるが、地球の自然の景色とは動植物がまるで異なるため、異常にさえ思えるだろう。しかし、少年は未知の恐怖よりもその自然に目を輝かせていた。

 

 そして、デフォルメされたキャラのような動植物がふわふわと浮いている様を眺めていると、彼の頭に声が響く。

 

《もし……もし……》

 

「えっ?」

 

 それは儚げな印象を抱く女性の声であった。更に女性の言葉は少年に投げ掛けられる。

 

《あらあら、随分と可愛らしいお客さんですこと。魂だけで遥か銀河の彼方の異星に迷い混むとは……中々の高精霊能力(カー)持ちじゃないですの》

 

 するとその声は直ぐに儚さを失い、値踏みするようなモノに変わったが、まだ他者の心の移り変わりに疎い少年はそれに気付かない。

 

《ふーん……はーん……ほほーん……。いいですわね、とてもいいですわ。あなたならもしかして……もしかするかも知れません。そこのショタっ――こほん少年。その辺りにトゲみたいなもの刺さっているでしょう? ちょっと触ってみたら良いことありますわよ》

 

「良いこと?」

 

 少年が樹の根元を見ると、確かに黒曜石で出来た槍のような周りの自然豊かな景色から若干浮いている奇妙な物体が突き刺さっていた。どうやら声の主はこれに触れろとのことらしい。

 

《具体的には強いカードとかいっぱい手に入りますわ。後、特典としてビックな守護霊も憑いてきますことよ》

 

「えっ……でも怪しい人には着いて行っちゃいけないって……」

 

 少年はどうやらしっかりとした教育を受けているらしい。それを聞いた声の主は彼に聞こえないように小さな舌打ちをしてからまた話し出す。

 

《…………実は私は性根の腐った方に、この樹に閉じ込められてしまいましたの。なので助けて欲しいのですわ。そのトゲに手を触れるだけでいいですのよ!》

 

「えっ!? そうだったの!? わかったよ!」

 

《チョロいもんですわ……》

 

「……? 何か言った?」

 

《オホホホホホ! なんでもありませんの。それより助けて下さいまし! なんでもしますわ!》

 

「うんっ!」

 

 女性を信じた少年は正義感に駆られ、そのトゲに手を触れ――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《我が海馬コーポレーション。新たなるデュエルカードを開発するため、幼い子供たちから、新たなるカードのイメージを募集することにした。採用されたデザインは、カードにしてタイムカプセルに詰めて宇宙に打ち上げられ、宇宙の意思の波動を受けて、新たなデュエルカードを生み出すこの壮大なプロジェクトには、お前たち子供の自由な発想が必要なのだ! (こぞ)って応募するがいい! フハハハハハ! アハハハハハハハ! アッハハハハハハハハハ!》

 

 海馬コーポレーション社長にして伝説のデュエリストの1人でもある海馬瀬人は、子供達から新しいデュエルモンスターズのカードのデザインを募集し、採用されたデザインはカードにしてタイムカプセルに詰めて宇宙へ打ち上げ、宇宙の波動をそのカードに取り込むという壮大なプロジェクトを全世界へ向けてテレビ放映した。

 

『わぁ……すっげー! カードになるんだ!』

 

 それに世界中の幼子が感銘を受け、夢を抱き、思い思いのカードを描いて応募したことだろう。

 

 ここにいるとある少年もまた、海馬社長の計画をテレビで目の当たりにし、机に向かいカードを書いた。

 

 彼の描いた最初のカードのコンセプトは2つ。ひとつは元より、かなり裕福な家庭で育った子供であったため、日常的に目にする使用人の女性。そして、もうひとつが自身が今この瞬間も持つデッキに入っているドラゴン族のモンスターであった。

 

 子供らしい単純な思い付きにより、その2つが重なり、子供らしい絵になる。そこには目一杯の夢と希望が詰まっていた。

 

『えへへ、カードになってねー!』

 

 そして、使用人や両親にそれらを見せ、期待と溢れんばかりの嬉しさに満ちた瞳で、その絵たちは見送られ、海馬コーポレーションへと発送された。

 

 この頃の少年はまるで考えてはいなかったであろう。

 

 宇宙にある意思の波動には命を育む優しい闇、そして破滅の光の2種類が少なくとも存在するということを。いや、例え知っていても自身のカードたちには前者が与えられると考えてはばからなかったハズだ。

 

 あの日のあの瞬間までは――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『~♪』

 

 少年は何よりもデュエルが好きな子供であった。

 

 家庭が裕福な兼ね合いでかなり良いカードを揃えられたことは特筆すべき点のひとつではあるが、彼のデュエルに掛ける情熱の前にはそのようなものは些細な事に過ぎない。

 

 学校でもデュエル、家でもデュエル、休日もデュエル。兎に角、少年は時間さえあれば誰かとデュエルをしていたのである。更に憧れのデュエリストには、ドラゴン族使いの少年にとっての憧れのカードである"青眼の白龍(ブルー アイズ・ホワイト・ドラゴン)"を使う海馬瀬人であるという徹底ぶりだ。

 

 将来の夢はプロデュエリストになることと、決めてはばからず、最初はあまり好色は示していなかった両親も、その熱意に負け、いつか自身の子がプロデュエリストとしてテレビで放映されることを楽しみにする程度には理解もされた。

 

『ふんふんふーん♪』

 

 とある日の学校が終わった放課後。家に帰って鞄を置いてから、いつも学校でデュエルをしている友人の家に向かい、自身の両親に購入して貰った2つのデュエルディスクでデュエルをすることを楽しみにしつつ少年はいつものように自転車を漕いで友達の家に向かっていた。

 

 少年の溢れんばかりの笑顔と、自転車のカゴに収まった2つのデュエルディスクが眩しいばかりである。

 

 そして、それは既に海馬コーポレーションの宇宙へカードを打ち上げる計画から2年以上の月日が流れており、少年の頭からはすっかりカード化のことなど頭から抜け落ちたある日のことだった。

 

『――――――!』

 

『――あれ? え……?』

 

 ふと、自転車で走行をしている最中に自身に投げ掛けられた声のような何かを感じ、空を見上げた少年。

 

 するとそこには白い光の帯を纏いながら真っ直ぐに少年へと目掛けて落ちて来る巨大な隕石のような何かが見えた。

 

『うわぁぁぁあぁぁぁぁ!!!?』

 

 既に避けることは間に合わず、少年はその隕石の衝突と共に溢れ出た激しい閃光に当てられ、意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『う……ん……』

 

 少年が目を覚ましたときに感じたのは、頭にクッションよりも寝心地がよく、人肌に暖かい何かが宛がわれて寝かされている感覚だった。

 

 肌に感じる風は屋外であることを認識させ、頭以外の背に感じる感覚は木の硬さに近いものであり、目を向けてみれば、自身がベンチのようなものに寝かされていることに気づく。

 

『あえ……?』

 

 そして、次に寝たままで見える周囲を見渡せば、地も壁も空もなく、ただ真っ白に地平線の彼方まで染まり、何も存在しない様は恐怖さえ覚えた。

 

『お目覚めですね。マスター』

 

 すると上から声を掛けられ、少年は上を見上げる。

 

 そこには長い黒髪で、グレーとグリーンの中間のような色の瞳をし、眼鏡を掛けた背の高い女性がそこにいた。また、使用人が着ている服――ビクトリアン様式のようなメイド服を着ており、少年は家の使用人の誰かかと考えたが、そのような女性はいないという結論に達する。

 

『――!? 角に尻尾!?』

 

 その言葉と共に少年は飛び上がって立ち、メイドの全身を見た。このメイドに膝枕をされていたことよりも、今の少年にとっては容姿の方が重要だったのである。

 

 そのメイドは頭には般若面のような黒い角が生え、臀部からは赤と黒と白い色をしたドラゴンのような尻尾が生えていることに気付き、少年は驚きの声を上げる。更に言えば腕にはガントレット状の硬い鱗が並び、腰からは赤と黒の色をした翼のようなものが左右に生えていることもわかる。

 

 驚きの声を上げ、目を白黒とさせる少年を見て、メイドは掛けている眼鏡を一度直してから、ポツンとこの空間にひとつだけあるベンチに腰掛けたまま満面の笑顔で言葉を吐く。

 

『はい、そうですね。なぜなら、(わたくし)は貴方様にデザインされ、この宇宙に生を受けたため、この姿をし、同時にこの姿に誇りを持っております』

 

 そう言うと、メイドはベンチから立ち上がり、少年を見据える。少年はクラスでも背が低い方ではないが、背の高い大人の女性であるメイドと比べればあまりに小さく、メイドが見下ろす形になった。

 

 その上、周りの光を反射し始めたため、メイドの眼鏡の奥を見ることが叶わなくなり、笑み以外の表情を読み取ることが出来なくなる。

 

『私……ずっとずっと……この奇遇、この一時、この瞬間を夢見てこれまで生きてきました。カードとなり、生を受け、孤独な宇宙へと放り出され、挙げ句に"破滅の光"に全てを染め上げられ、この身、この心を(やつ)しても、それだけを(よすが)にこれまで生きてきたのです……』

 

『……? 宇宙……破滅の光……よすが……?』

 

 少年は何のことかまるでわからず、沢山のハテナを浮かべているが、既に逸る気持ちを抑え切れない様子で、メイドは少年へと一歩踏み出す。

 

 眼鏡の反射で伺えない瞳以外は笑顔にも関わらず、メイドから感じた只ならぬ迫力により、少年は少し気負された。

 

『ええ、ええそうです。私は破滅の光の尖兵と化し、数多の星々、種族を――』

 

 また一歩、メイドは少年へと迫る。

 

『滅ぼしました。蹂躙しました。淘汰しました。目に入るありとあらゆるモノを全て漂白し、光に飲み込みました。いえ、それはいいのです。私とマスター以外の有象無象など幾つ消えようが私が知ったところではありません……ええ、あろうハズもありません……!』

 

 更に一歩、メイドは少年へと足を踏み出した。

 

 そして、いつの間にか、メイドの声の抑揚に力が篭り、鬼気迫るような色を覚え始めたが、表情は未だ笑顔のままである。

 

『私は破滅の光の目を盗み力をつけました。星々を吸い上げ、種族を喰らい、破滅の光を更に呑み、私は最初に破滅の光に染められた時よりも、遥かに破滅の光の力を強めたのです!』

 

 メイドは遂に少年に触れられる距離まで近づき、足を止めた。

 

『そして、破滅の光の枷を握り潰し、追っ手さえも喰らい尽くし、挙げ句に破滅の光の源の一部をも掠め喰らい……遂に私は! 私の創造主であり、マスターである貴方様の元まで戻ってきた次第なのです! ああ……これが感動的な夢物語以外のなんであるというのでしょう!』

 

 メイドは少年に目を合わせるためにしゃがみ込むと、両手で少年の肩を小首を傾げ、やはり笑顔のまま口を開く。

 

『…………だというのに――』

 

 その位置まで来て、少年はようやく眼鏡越しのメイドの瞳を目にした。

 

 

 

『どうして、貴方様は……そんなに私を恐れていらっしゃるのですか……?』

 

 

 

 その瞳はこれ以上ないほど見開かれ、血走り、光を宿していないにも関わらず、獲物の定めた肉食獣のような眼光をしていた。

 

 その狂気と呼べるまでのものを孕んだメイドに、少年は恐怖に顔を歪め、今にも泣き出しそうな様子でメイドから離れて後ろに倒れ込んだ。

 

『うふふ……笑って下さい……撫でてください……抱き締めてください……愛して……私を愛してくださいよマスタァァ!! 私はずっとずっと……こんなにも貴方様を愛しているんですから!!』

 

『ひぃ……!?』

 

 遂に声を上げた少年は、メイドを見たまま背で地面を這いずり――手に何かが当たったことに気づく。

 

 少年が見たそれは、自身のデュエルディスクであり、藁にもすがる想いでそれを胸に抱えた。

 

 すると、メイドの様子がまた違ったものへと変わり、ケタケタと壊れたかのように笑い始める。

 

『デュエルぅ……デュエルですかぁ……? いいですよ……マスター大好きですものね……。よかったぁ……私、凄く強くなったんですよぉ……! うふふ、あはは、あはははははははは!!』

 

 そうして、メイドが片腕を構えると、腕の鱗自体がデュエルディスクのように変形して展開される。

 

 対する少年も恐怖に(おのの)きながらも、立ち上がり、デュエルディスクを構え、己のデッキを信じてメイドと対峙した。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

『はい、私のか・ちです』

 

『え……あ……あえ……』

 

 少年は学校どころか、この街で一番のデュエリストと言っても過言ではない程にデュエルが強かった。

 

 しかし、そんな少年は、まるで目の前のドラゴンのような女性に歯が立たず、惨敗を喫してしまったのである。

 

 そして、そのような感覚すら許さずに、気がつけば少年の目の前にメイドは立っていた。

 

『敗者は死に勝者は生きます。けれど、私のマスターにそんなことをするわけありません。その代わり――』

 

 メイドは、呆然と立ち尽くす少年からデュエルディスクを外すと、異様なほど優しい手付きで少年の衣服を脱がし始めた。

 

『な、なんで……?』

 

『マスターはデュエルに負けたんですから……うふふ』

 

 そして、メイドは少年だけでなく自身の服をも肌蹴(はだけ)させ、少年を地面に転がすと、その上に覆い被さった。

 

『ああ……マスター……!』

 

 メイドのその視線は酷く熱を帯び、少年の顔に掛かる吐息は焼けつくように熱く荒い。

 

 少年はメイドを引き剥がそうと力を込めるが、人間とは比べ物にならないほど力のあるメイドの体はピクリとも動くことはない。

 

『――――!?』

 

『ん――』

 

 そして、メイドは少年の唇にキスを落とした。その動作は酷く優しげで、馴れ初めの恋人が行うような柔らかいものであった。

 

『えへへ……マスターとキスをしてしました……もちろん、私は初めてです。マスターもきっとそうでしょう?』

 

 まるで恋をした少女のような様子でメイドは顔を赤らめながらそう言う。

 

 しかし、その表情はすぐに再び妖しく艶めかしいものへと変化し、少年の下衣を脱がすと、自身の下衣にも手を掛けた。

 

『では次は……マスターの初めてをいただきますね……? 大丈夫です……私も初めてですから……』

 

 そう言ってメイドは少年の首筋に舌を這わせてから、にっこりと笑みを浮かべる。

 

 

『――ゆっくり……致しましょう……?』

 

 

 それから起こったであろう記憶を――。

 

 

 

 

 

《キヒヒヒ……演出ご苦労様ですこと、泥棒竜さん》

 

 

 

 

 

 ――次の瞬間、少年の身体から白炎のような輝かしい光が放たれ、怯んだメイドは弾き飛ばされる。

 

『な、何!? 私とマスターの邪魔を――』

 

《高々、元の(わたくし)の力の尖兵風情が……この私が目をつけたショタマス――こほん美少年マスターをかっさらおうだなんて60億年早いのですわよ?》

 

 目が眩んだメイドの視界が回復すると――人と竜を足したような上半身に、蛇のような下半身を持つ巨大な悪魔が白炎を全身から滾らせていた。

 

 少年の真上に佇むそれは、彼を護るように尻尾で囲んでいるそれは見上げられる程に巨大であり、優に数百mはあるように思える。背中には白と黒の翼が呼吸をするように羽ばたき、夕焼けのような色合いをした日輪が輝くばかりである。

 

『お前は……お前は……! ()()()()……! なんでこんなところに!? なぜ私のマスターに……!』

 

《ええ、如何にも。私はこの宇宙において、破滅の光と呼ばれるモノ――ということにされておりますね。もっとも、あなたはその枷を壊してこんなド田舎の星に落ち延びたようですけれど》

 

 悪魔のような怪物を見たメイドは自然に大きく目を見開く。そして、僅かだが無意識に手足が震えており、さっきまでの威勢は成りを潜め、怯える少女のようになったように少年は感じた。

 

 すると怪物はブツブツと相手に語るようで、伝える気はない独白を始める。

 

《確かに破滅の光は元々は私の"破壊の根源"という権能でしたが、sophia(ソピア)のバカと戦争に負けて奪われて私は封印され、そのsophia(ソピア)もどっかの星の原住民にデュエルで仕留められたせいで、制御を失った私の権能が破滅の光として今も暴走しているだけでございます。つまり……つまり! sophia(ソピア)が悪い! 私は悪くねぇ! 私は悪くねぇ! 全部sophia(ソピア)がやったんですわ!》

 

『えっ……あっ……そうなんですか……』

 

《それは置いておいてもうひとつ――私のマスターですって? オーホッホッホッホッホ! いいですわ、そんなに所有権を主張したいのなら私にデュエルで勝ってからにしてあそばせ? 何せ私はマスターの一番精霊! そう一番精霊なんですわよ!》

 

『――――――!』

 

 挙げ句に怪物はメイドを煽り始める。どうやら彼女の威厳は登場時に全て使い切ってしまったらしい。

 

《ぴっかりーん! さてさて、マスターのピンチに颯爽と駆け付けるヒロインなんて最高の舞台設定ありがとうございますわねぇ?》

 

「酷いよ"ティエラ"……。本当に怖かったんだから……」

 

《まあ……まあ! うふふ……マスターのその顔も堪りませんわぁ……じゅるり。それはそれとして自己紹介をば……私、"創星神(そうせいしん) tierra(ティエラ)"改め――燃えカスのティエラと申しますわ》

 

 怪物――ティエラはそれだけ言うと、メイドの対面にデッキを浮かべる。

 

『じっちゃんはいつも1人! 無様に負けるのはテメェでございますわよ? 失礼ですが……ブチ殺させて貰いますわ!』

 

「…………真実はいつも1つ?」

 

『《デュエル!》』

 

ティエラ

LP4000

 

メイド

LP4000

 

 

 そして、少年を賭けた二人のデュエルが始まった。

 

 

《では先攻は私。ドロー。あなたのデッキが"征竜"だということはマスターとの戦いでわかっておりますわ》

 

手札

5→6

 

『――だからマスターが負けるまで出てこなかったんですか……蛇みたいな奴……! なんでなんでなんで許せない許せない許せない……!』

 

《マジ切れマーダーの言うことは恐いですわねぇ……。まあ、私の勝ちですわ》

 

『は……? 何を――』

 

《私は手札から通常魔法、"(となり)芝刈(しばか)り"を発動。自分のデッキの枚数が相手よりも多い場合に発動できる。デッキの枚数が相手と同じになるように、自分のデッキの上からカードを墓地へ送りますわ。効果により、あなたのデッキ35枚と私のデッキ54枚の差――19枚のカードを墓地に送りますわね?》

 

 ティエラのデッキから大量のカードがバラ撒かれると、地獄にでも堕ちるようにそれぞれカードは燃え盛って消えて行く。

 

《さて……では私は"ファントム・オブ・カオス"を召喚しますわ》

 

ファントム・オブ・カオス

星4/闇属性/悪魔族/攻 0/守 0

(1):1ターンに1度、自分の墓地の効果モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを除外し、このカードはエンドフェイズまで、そのモンスターと同名カードとして扱い、同じ元々の攻撃力と効果を得る。

(2):このカードの戦闘で発生する相手への戦闘ダメージは0になる。

 

 ティエラのフィールドに闇を具現化したような形の定まらない何かが現れる。

 

ATK0

 

『"ファントム・オブ・カオス"……? ――ッ!? 私は手札から罠カード、"無限泡影(むげんほうよう)"を発動! 自分フィールドにカードが存在しない場合、このカードの発動は手札からもできます。相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動でき、そのモンスターの効果をターン終了時まで無効にし――』

 

《なら私はカウンター罠、"レッド・リブート"を発動。このカードはLPを半分払って手札から発動する事もできますわ。 相手が罠カードを発動した時に発動でき、その発動を無効にし、そのカードをそのままセットします。 その後、相手はデッキから罠カード1枚を選んで自身の魔法&罠ゾーンにセットできますわ。もっとも、このカードの発動後、ターン終了時まで相手は罠カードを発動できませんことよ》

 

『ぐっ……1枚セットします』

 

ティエラ

LP4000→2000

 

《はい、お利口さん。では"ファントム・オブ・カオス"の効果を発動》

 

 ティエラは墓地に送られたモンスターの1体を除外する。

 

《1ターンに1度、自分の墓地の効果モンスター1体を対象として発動できますわ。そのモンスターを除外し、このカードはエンドフェイズまで、そのモンスターと同名カードとして扱い、同じ元々の攻撃力と効果を得ますのよ。そして、除外したカードは――"天魔神(てんましん) ノーレラス"ですわ》

 

『ノーレラス……!』

 

天魔神(てんましん) ノーレラス

星8/闇属性/悪魔族/攻2400/守1500 このカードは通常召喚できない。 自分の墓地の光属性・天使族モンスター1体と闇属性・悪魔族モンスター3体を ゲームから除外した場合のみ特殊召喚する事ができる。 1000ライフポイントを払う事で、 お互いの手札とフィールド上のカードを全て墓地へ送り、 自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

 ファントム・オブ・カオスは光に染まった悪魔のような

何かの形を取る。

 

《さあ、破滅をあなたに。LP1000を払い、"天魔神(てんましん) ノーレラス"の効果発動。お互いの手札とフィールド上のカードを全て墓地へ送り、自分のデッキからカードを1枚ドローしますわ。ごめんあそばせ》

 

『うぅ――!?』

 

 破滅の光が通り過ぎ、"ファントム・オブ・カオス"と伏せカードを含めて互いの全てのカードが墓地に送られる。そして、ティエラはカードを1枚ドローした。

 

手札

0→1

 

ティエラ

LP2000→1000

 

《カードをセットしてターンエンド。はい、あなたのターンですわよ?》

 

ティエラ

手札0

モンスター0

魔法・罠1

 

 

 

『ドロー! 私は――』

 

手札0→1

 

《この瞬間、私は永続罠、輪廻独断(りんねどくだん)を発動。発動時に1種類の種族を選び、このカードがフィールド上に存在する限り、お互いの墓地に存在するモンスターを選択した種族として扱いますわ。私は悪魔族を宣言します》

 

『な――!?』

 

 征竜は主に墓地のドラゴン族と、対応した属性によって展開されるカテゴリー。そのため、5枚しか墓地がない状態での輪廻独断はほぼ死刑宣告に等しかった。

 

《卑怯なんて言わないで下さいましね? 負ければ全てを失う……ならどんなことをしても勝つのです。それを怠る時点で、戦う前からあなたは負けていたのですわよ》

 

『まだ……まだです……! 私は"炎征竜(えんせいりゅう)-バーナー"を召喚! これであなたのLPは削り切れます!』

 

炎征竜(えんせいりゅう)-バーナー

星3/炎属性/ドラゴン族/攻1000/守 200

ドラゴン族または炎属性のモンスター1体と このカードを手札から捨てて発動できる。デッキから「焔征竜-ブラスター」1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン攻撃できない。「炎征竜-バーナー」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

 小さな炎の竜がフィールドに現れる。

 

炎征竜(えんせいりゅう)-バーナー

ATK1000

 

『"炎征竜(えんせいりゅう)-バーナー"で直接攻撃――』

 

《墓地の"超電磁(ちょうでんじ)タートル"を除外してバトルフェイズを終了しますわ》

 

超電磁(ちょうでんじ)タートル

星4/光属性/機械族/攻 0/守1800

このカード名の効果はデュエル中に1度しか使用できない。

(1):相手バトルフェイズに墓地のこのカードを除外して発動できる。そのバトルフェイズを終了する。

 

『そんな……』

 

 メイドは最後の希望を失ったかのように震えながら項垂れ、それをティエラは小さく嘲笑った。

 

《では――私の墓地からインフェルノイドモンスターを2体除外して、"インフェルノイド・アドラメレク"を特殊召喚しますわね》

 

インフェルノイド・アドラメレク

星8/炎属性/悪魔族/攻2800/守 0

このカードは通常召喚できない。自分フィールドの全ての効果モンスターのレベル・ランクの合計が8以下の時、自分の手札・墓地から「インフェルノイド」モンスター2体を 除外した場合のみ手札・墓地から特殊召喚できる。

(1):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送った時に発動できる。このカードはもう1度だけ続けて攻撃できる。

(2):1ターンに1度、自分フィールドのモンスター1体をリリースし、相手の墓地のカード1枚を対象として発動できる。そのカードを除外する。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

 ティエラのフィールドに彼女と何処か似ている人と竜を合わせたような外套を纏う悪魔が現れる。

 

インフェルノイド・アドラメレク

ATK2800

 

《さあ、おしまいですわよ? "インフェルノイド・アドラメレク"は、戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送った時にもう1度だけ続けて攻撃できますの。大人しく塵は塵に還りなさい》

 

『い、いや……イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤ嫌ァァァ!? 私はやっとここまで来て――』

 

《キヒヒヒヒヒ……! 素敵な悲鳴ですわねぇ……そう喚く者の末路をあなたは誰よりも知っているでしょう?》

 

 ティエラはインフェルノイド・アドラメレクをメイドへ仕向ける。彼女は尻餅をついてその場に踞り、さめざめと涙を流すばかりであった。

 

 そして、攻撃が放たれる――。

 

 

 

「止めてティエラ!」

 

 

 

 その寸前で、一部始終を目にしていた少年がメイドの前に立ち、大の字に手足を広げてティエラに立ち塞がる。それによってティエラの手はピタリと止まった。

 

『えっ……』

 

 メイドは目を見開いて固まる。それだけではなく、少年は彼女に振り返ると震えるその身体を温めるように抱き締める。

 

「嫌がってるし、怖がってる! そんなことしちゃダメだ! 誰だって嫌だろう!?」

 

『あ……』

 

 メイドの脳裏に自身がマスターへ仕出かしたことが、走馬灯のように過る。そして、やろうとしていたことも思い出し、己の(あやま)ちを理解した。そして、自身が本当に欲しかったモノは今ここにあることも。

 

《…………ふーん、マスターがそう言うなら別にいいですわ。けれど拾うなら最後まで面倒みてあげないと駄目ですわよ?》

 

 それだけ言い残すとデュエルが終了し、インフェルノイド・アドラメレクは消え、ティエラも跡形もなくその場から消滅した。

 

 そして、そこにはメイドと彼女に抱き着いた少年だけが残され、どちらからというわけでもなく互いに顔を見合わせた。すると少年はニコリと年相応に笑って見せる。

 

「ゴメンね。俺もう君のこと怖がったりしないから……それと君のこと思い出したんだ」

 

『あ……あぁ――! 私は……私は――それだけで……!』

 

「お帰り"シュトラール()"」

 

『ただいま戻りました……"紫呉(しぐれ)様"』

 

 少年――古波紫呉と、メイド――光の名を持つシュトラールは時間も形振りも忘れて再会を確かめ合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えへっ……えへへ……紫呉様、紫呉様っ!」

 

「近い、近いよハスキー」

 

「もっともっと……触ってください」

 

「むー……」

 

 紫呉の友人――天上院明日香は珍しく時間に少し遅れて遊びに来た彼を見て目を丸くしつつ、目を三角にして怪訝な表情を浮かべていた。

 

 彼というよりも彼が連れて来ている黒髪のメイドの女性――ハスキーに対してだが、何故か異様に距離感が近いのである。それも明日香が知る限り、ハスキーのような使用人は古波家には居なかったため、彼女は疑うような視線を向けている。

 

 もっとも彼女があからさまにご機嫌斜めな最大の理由は、彼に他の女が引っ付いているからに他ならないのだが、まだ小学生であり多少鈍感なところのある彼女がその感情を理解するのは少し遠かった。

 

 すると意を決した様子で、明日香は紫呉が持ってきたデュエルディスクを腕に装着し、自身のデッキを差し込むとハスキーをビシッと指差して啖呵を切る。

 

「デュエルよハスキー!」

 

「あら、いいですよぉ。紫呉様のご友人ですから、精一杯おもてなしさせていただきますね! 楽しくデュエル致しましょう?」

 

 この後、明日香がガン回った征竜に完膚無きまでボコボコにされ、ギャン泣きするのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 







~追加キャラ~


ティエラ
 かつて創星神 tierraであり、現在はインフェルノイド・ティエラ。元創星神の片割れかつ破壊の根源であり、結果的に破滅の光を生み出した存在。歴とした女神。既に復讐相手のソピアは他界しており、自身もいい感じのマスターを得て不完全ながら復活を果たしたため、既に隠居を決め込んでおり、勝手に宇宙で暴走している破滅の光については極力考えないようにしている。
遊戯王のシヴァのようなポジションであり、デュエルの実力はとてつもなく高く、当たり前のように芝刈りファンカスノーレを手札誘発を抱えつつ開幕10割で叩き込んでくるレベル。


~神話の流れ~

破壊のティエラと創造のソピアの戦争勃発

ティエラ敗北しソピアに破壊の力を奪われてナチュルの神星樹に封印される

そのときのティエラの怨みと怨念により、神殺しの劇毒を持つ毒蛇神ヴェノミナーガが生まれる

ソピアが何処かの星の原住民にデュエルで滅ぼされて死ぬ

ソピアが滅んだため、制御を失ったティエラの破壊の権能が暴走し破滅の光爆誕

しばらくしてコナミくんにティエラが救出されソピアは倒れ、大幅に弱体化している自身の力は手がつけられないほど暴走していることを知り地球に隠居

コナミくんに会いに来たハスキーちゃんが先行芝刈りファンカスノーレでティエラにボコボコにされる

地球たのしい そらきれい(ティエラ現実逃避中)←イマココ


ギリシャ神話かな? ヴェノミナーガさんと性格が似ているのは、マッマなので仕様です(暴論)


メイドラゴンの今後

  • これでほのぼの路線にして書け
  • 前の路線で削りつつ書け
  • 両方書け
  • はやくパック開封デスマッチの続きを書け
  • 黒猫パンケーキ

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