ニンジャスレイヤー第一部RTA ネオサイタマの夜明けルート≪参考記録≫   作:暴力・砂場・エネルギー無視

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初投降です。


#6 ニンジャ・アット・ザ・パノプティコン ②

 【前回までのあらすじ】

 スナリマヤ女学院でのソサエティ・ナカヨシ失踪事件を調査するノーティアーとエヴァポレイター。実行犯とおぼしき男から見つかったピンクの粉は、真犯人解明の手がかりとなるか!?

 一方で旧東京のスガモ・プリズンには囚われた女子高生達が!彼女らの命運は!?彼女らを見つめるニンジャ、ダストナーヴの企みとは!?

 

 

 東京は廃都である。

 かつての電子戦争の折、東京に投下された『新型の爆弾』はそのほとんどを破壊し尽くした。首都機能を喪失した東京は、その都市機能をサイタマ新都心に接収され、最終的にはサイタマ・東京・横浜を複合した超巨大メガロポリス、ネオサイタマが誕生することとなった。

 だからと言って、東京が消えてなくなるわけではない。都市の残骸は、今もなお未開発の辺境地区としてネオサイタマに残されている。

 スガモ・プリズンもその一つだ。

 

 スガモ・プリズンは、元々は大正エラに建設された拘置所であり、時代を経るごとにその姿を変えていった。電子戦争前夜のスガモ・プリズンは、ミシェル・フーコー(彼の背後にはニンジャがいた。これは歴史的事実だ)が提案したパノプティコン式監獄を忠実に再現していた。中央の見張り塔から、円形に並べられた独房を一挙に監視するというものである。『新型の爆弾』によって半壊したスガモ・プリズンは、当然の如くに廃棄された。

 ……しかし、その廃墟を改造し、女子高生収容所とせんと目論むニンジャがいたのだ。

 

 カツーン。カツーン。

 そのスガモ・プリズンの入り口を歩むニンジャが二人。ノーティアーとエヴァポレイターである。

 リー先生と怪しげなニンジャ考古学者・ロキの手によって、謎めいたピンクの粉の出所が明らかになったからだ……ジツ使用時に残留するその粉は、対象の脳神経系を支配し、自在に操るものであり、その残滓を辿っていった先にあったのが、スガモ・プリズンであった。

 

 遥か昔に廃棄されたプリズンは埃っぽく、所々にはコンクリートを突き破って生えてきたバイオツタなどの植物が繁茂している。廃墟というよりかは、遺跡のようなダンジョンだ。今の所は、道なりが複雑で無いことが救いである。

 「このような場所があったとは……」ノーティアーは一人呟く。ネオサイタマにも、まだまだ知らない顔がある。

 

 しかし、そのルイナーな雰囲気は、突如として出現した電子施錠扉によって打ち砕かれる。「2031年製、オムラ・インダストリ……」その扉の隅の刻印を読み上げながら、エヴァポレイターはそれのハッキングにかかる。ピッ、ピッ、ピッ……キャバァーン!

 「ワー、スゴーイ」

 「フン。世辞ならあらかじめハッキングを仕掛けてくれたウォーロック=サンにでも言うのだな、ノーティアー=サン」

 実際このスガモ・プリズンの早急な特定には、電算室(電脳部門と呼ぶには、ダイダロスの技量が高すぎたために部門のテイを成していなかったのだ)の……フドウノリウツリ・ジツを得意とするニンジャ、ウォーロックの協力もあった。

 

 「おー見たところみんな揃っとるな、ワイはウォーロックだよ」

 「ほんで何だったか?ああそうそう、このピンクの粉を追跡な」

 「ちょ~~~っと待っとれや。このワイが一年かけてインドで編み出したフドウノリウツリ・ジツの恐ろしさ、とくと見てちょうだいよ!」

 「そ~~~ら、お前さんらが追っとったスモトリはんが出てきたで*1。ワイのフドウノリウツリ・ジツは相手の過去の行動の再現も可能なんや。ヨクバリ計画でラオやんもタナカ・ニンジャクランのソウルとパワを得とるけどな、このワイにはて~~~んでかなわん。その点ではワイがソウカイヤのトップなんや」

 「……おおっ!?ほら見てみ、ビークルに乗ったスモトリがグングン南に行って……スビャァ~~~っと建物ン中入ってったよ。東京のスガモ・プリズンやなここは。廃墟やで、浪漫やで。でもなんでこんなところに?……ほおう女子高生収容所!そないなとこがあったなんてな。流石のワイと言えども知らんかったわ。ラオやんに献上しとき!」

 

 (((まさかウォーロックがマジュツーシー*2だったとは……このリハクの眼をもってしても見抜けなんだ……)))

 呟くザンキョウをよそに、ノーティアーとエヴァポレイターはプリズンに侵入した。

 その内部は白磁に輝くように、丸ごと床と壁のリフォームがなされ、清潔なアトモスフィアを漂わせている。清潔に保たれた牢獄は、まるで飼育箱のようだ。

 カツーン、カツーン、カツーン……ニンジャの足音だけが、あたりに響く。

 

 

 ここか、とエヴァポレイターは呟いた。スガモ・プリズンの最奥は、円形のパノプティコン構造となっている。その中央部、監視塔のある場所へと、彼は向かおうとしているのだ。極めて単純な理屈である……警備を殺せば、それで事は足る。女子高生など恐れるに足りず。

 一方で、妙な点もある。クローンヤクザの類がいないのだ。これは監視ニンジャの慢心であるのかもしれないが、しかし、通常はクローンヤクザ程度の警備を置くものである、とファフニールは語った。

 (しかし熟考したところでその益もない)と考えながら、エヴァポレイターはニンジャサインを結び、目から光線を放った。ヒカリ・ジツにより放たれる原子分解光線は、電子錠を容易く破壊した。

 

 「ドーモ、乱入者めが!ダストナーヴです!」その奥で控えていたニンジャがアイサツをした!「貴様のジツは見切ったぞ!」

 「ドーモ、ダストナーヴ=サン、エヴァポレイターです……見切ったとは、どういうことだ?」二者は同時に駆け出す!

 「貴様の光線は一定のニンジャサインを結ばなければ撃つことが出来ぬ!ならば単純な事よ!撃たせる間もなく攻め続ければいい!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」ダストナーヴの無慈悲な三連チョップ!これをエヴァポレイターは三連続側転で回避!

 

 「ヌゥーッ!やるな貴様!だがこのオレのフドウノリウツリ・ジツを交わすことは出来ない!イヤーッ!」言葉とは裏腹に、ダストナーヴはカラテパンチを繰り出す!しかしそれを交わし切れずにエヴァポレイターは両腕交差により防御!「グワーッ!?」吹っ飛ばされる!

 (……何だこの力は!?フドウノリウツリ・ジツなどでないことは確かだが……それにしても重すぎる一撃だ!)カラテによる衝撃波が発生し、壁に亀裂を広げる!パラパラと砂ぼこりの舞う中、エヴァポレイターは立ち上がった!

 

 「なるほど。この監獄を築いたのはお前のカラテによるものか」納得したように、黒ずくめのニンジャは呟く。「そのパワフルなカラテで旧時代の獄を砕き、己の望むように作り替えたのだろう?」

 「何をバカな事を!このオレのフドウノリウツリ・ジツは人心の操作!カラテを増強する力など」「イヤーッ!」「グワーッ!?」インターラプトである!仕掛けたのはノーティアー!

 「ドーモ、ダストナーヴ=サン、ノーティアーです……貴方のその力、アスラ・ニンジャの系譜に繋がる怪力では?」ノーティアーは、ザンキョウの言葉そのままに疑問を口にする。

 「ドーモ、ノーティアー=サン、ダストナーヴです。世迷言を!貴様もオレのフドウノリウツリ・ジツで操ってくれる!イヤーッ!」決断的カラテパンチ!それはパワフルだが、しかし直線的な攻撃だ!

 「イヤーッ!」見切り!そのパンチを掴み……切れぬ!「ン熱ッ!?」その拳は、加速熱によって真夏のアイアンめいて危険である!ノーティアーが反射的に身を引っ込めるその隙を狙い、スリケン投擲!「イヤーッ!」これをノーティアーは連続バク転で回避!コッポ・ドーのワザの一つ、スリアシをもって距離を詰め、ワンインチでの殴り合いを開始する!精密に急所を狙わんとするノーティアーの攻撃をいなしながらも、しかしダストナーヴは攻勢に出られぬ!あまりにも距離が近すぎる!

 

 「イヤーッ!」そのイクサの最中で、エヴァポレイターの眼が白く光る!ニンジャサインを終えた彼の眼から放たれるは、殺人的原子分解光線である、が!「グワーッ!?」ダストナーヴの肩の肉をえぐり取るだけだ!大ダメージだが致命傷ではない!

 「フドウ!」その背後から迫るノーティアーに対し、ダストナーヴはカウンターカラテを仕掛ける!「ノリウツリ!」カウンターカラテをかわしたノーティアに、さらに追撃の一撃!「ジツ!」そして逆方向のエヴァポレイターに対して、スリケンを投げつける!タツジン!

 

 「ちょっとやめないかダストナーヴ=サン!貴方がしているのはカラテだ!フドウノリウツリ・ジツなどではない!」攻撃をコンマ1秒で回避しながらも、ノーティアが叫ぶ!相手に動揺を与えようとしているのだ!

 「バカめ!こうしてお前たちの身体を奪って……」ダストナーヴの機敏な動きが止まる。

 「アレ?オカシイゾ?フドウノリウツリ・ジツ……?オレが宿していたのは……アスラの……」頭を抱え、混乱し始めたダストナーヴ!その隙を見過ごすニンジャなどいるものか!

 「イヤーッ!」エヴァポレイターの原子分解光線!腹部から下を失ったダストナーヴは、わずかに痙攣した後、「サヨナラ!」と叫び爆発四散!

 

 「……倒した……が、妙だ」エヴァポレイターがぽつりとつぶやく。それに呼応するかのように、ダストナーヴの爆発四散痕からピンクの煙が立ち上がる……。

 「ウフフ、かわいそうなダストナーヴ=サン。誰かのせいでまがいものの記憶を掴まされて、この監獄の監視者になってしまった。本当は、フドウノリウツリ・ジツも使えぬ、感情を持て余すアスラのニンジャだったのにね……かわいいね!」

 そのピンクの煙の向こうから、何かが現れた。そのニンジャ威圧感は、一歩、一歩と進むごとに強くなっていく。

 

 「ドーモ、エヴァポレイター=サン、ノーティアー=サン」影は、オジギした。

 「カワイイ・ニンジャです」

 

 

 所変わって、女子高生らの″飼育箱″。

 突如として鳴り響いた『侵入者ドスエ』のビープ音によって、室内は混乱に包まれていた。

 「アイエエエ!?」逃げようとするもの、恐れて隅で縮こまるもの、自我崩壊状態であったために半ばマヒした状態で日常的動作を続けようとするもの。ヤヨイ・シンケイドは部屋の隅でうずくまり、小さくなっていた。かわいいね!

 

 その混乱の最中にあって、一人だけが穏やかに歩く。

 「アバッ、アババババ〜ッ!?!?」ナムアミダブツ!彼女の横にいた女子高生が突如として倒れた!口からはピンクのオーラが抜け出している!

 そしてそのピンクのオーラは彼女に取り込まれ……おお、見よ!空気中の重金属パーティクルと結合し、装束を形成していく!女子高生的ブレザーにパンクやゴシックの意匠を取り入れ、サムライのような鋭さ、ビビッドさを醸し出すものだ!かわいいね!そして……少女、ジェラートはメンポを付ける!

 「アイエエエ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」一瞬にして狂乱状態に陥った女子高生の正中線上に4枚のスリケンが突き刺さる!即死した彼女の口から漏れ出てジェラートに吸収されるのは、またもピンクのオーラである!

 

 「ドーモ、カワイイモータルの皆さん!」ジェラートはオジギ!そのピンク色のツインテールが揺れる!かわいいね!「カワイイ・ニンジャです!ウフフフフ、ビックリした?私、ニンジャだったの!」カワイイ・ニンジャは笑いながら右手をかざす。「アバーッ!?」ナムアミダブツ!正面にへたり込む女子高生がピンクのパーティクルを吸い取られミイラめいた死体に!

 「アハハ!カワイイ!カワイイ!」凶行は続く!へたり込んだ女子高生らは次々とミイラの如き死体に変化していく!逃げようとした女子高生にはスリケンが突き刺さる!おお、おお、なんたるツキジめいた惨状か!すでに生きたモータルはヤヨイ・シンケイド一人だけである!

 

 「気分はどう?ヤヨイ=サン?」極度のNRSにより胎児めいて丸まったヤヨイの顔を、カワイイ・ニンジャは髪を掴んで無理やり持ち上げる。カチグミの気風はすでになく、恐怖におびえる動物的表情で、ヤヨイは泣いている。

 「アイエエエ……ニンジャ……ニンジャナンデ……」

 「ウフフ、カワイイ」カワイイ・ニンジャは笑い、それからヤヨイの頬を掌で動かし、無理やり笑わせた。「なんでこんなことしてるか、教えてあげようか?」

 「アイ、アイエエエ……」

 

 「私はモータルのことが大好きなの。ニンジャよりも愚かで、カラテも弱くって、ブザマだからね。だからカワイイ。わかる?」ヤヨイは泣きながら首を横に振る。

 「フフ、意外と素直。そういうところもカワイイ。それでね、あのピンクのパーティクルはカワイイなの。わかる?私ね、カワイイを吸い取ったり、与えたり、カワイイで他人を動かしたりできるの。リアル・ニンジャだから」

 極限状態にまで至ったヤヨイのニューロンはパンク寸前だ。「あらあら、今にも意識を手放しそう……かわいいね!だーめよ」「オゴゴゴゴーッ!?」カワイイ・ニンジャの掌からピンクの輝きが放出されると、ヤヨイの神経がZBR摂取時のように急速活性化する!「ゴボボーッ!?」不可に耐えきれずに嘔吐!かわいいね!

 その背中をさすりながら、カワイイ・ニンジャはほほ笑む。「貴女一番カワイイよ。何にもわかってないのに、世界の王様気取りで、ドージョーを継ぐつもりでいて……ウフフフフ。あなたに会えただけでも、この女子高生収容所には意味と価値があったわ」そしてカワイイ・ニンジャは手刀を構え……。

 

 「ッ!ダストナーヴ=サンが爆発四散した……?」

 人間離れした脚力によるバク転で、ヤヨイから遠ざかる。「追手ね。面倒なことだわ」カワイイ・ニンジャはほくそ笑み、部屋を後にする。ヤヨイだけが、汚された飼育箱に残された。

 「どうすればいいの……どうすればいいのよお……」ヤヨイは困惑し、涙を流した。しばらくするうちに緊張の糸が切れ、彼女の意識は深い眠りに落ちていった。

 

 

 「ど、ドーモ、カワイイ・ニンジャ=サン。ノーティアーです」

 「ドーモ、カワイイ・ニンジャ=サン。エヴァポレイターです」

 ノーティアーのニューロン内では、ひっきりなしにザンキョウが何事かをわめいている。

 (((ナンデ!?リアルニンジャナンデ!?リアルニンジャが女子高生収容所にいる、おかしいだろうがよ!!!こんなんじゃゲームになんないんだよ(全切れ)なあどうしてくれんのこれ……どうしてくれんのこれ!?)))

 一方のエヴァポレイターは、強気の姿勢を崩さない。「カワイイとは奇妙な名前だな。ネコネコカワイイのファンか何かか?」

 

 そのコンマ一秒後である!カワイイ・ニンジャのケリ・キックが、エヴァポレイターの足を破壊する!「ザッケンナコラー!ザッケンナコラー!ザッケンナコラー!」「グ、グワーッ!?」ナムサン!エヴァポレイターの足は、ケリ・キックに続く高速チョップ連打により、ネコネコカワイイめいたVの字に折れ曲がる!ムゴイ!

 「私と鉄屑を一緒にするなァーッ!!」移動能力を失ったエヴァポレイターに、キックの連打を浴びせかけようとするカワイイ・ニンジャ!しかしその背後に迫るは、ノーティアーの右腕!

 「イヤーッ!」ドウグ社製の義手によるツキ攻撃!しかしそれを容易くかわし、カワイイ・ニンジャはバック中!「イヤーッ!」おお、見よ!メイアルーア・ジ・コンパッソが、ノーティアーを襲う!

 たまらず右手を使ってガード!「ヌ、ヌゥーッ!」頭部へのダメージこそ防げたものの、ドウグ社製の義手が軋む!なんたる威力か!

 

 おもむろに起き上がったカワイイ・ニンジャは、呼吸と共に右手をかざす。「まあ、一応……あやつからも殺しとけって言われたからね」その瞳は、非人間的なまでに透き通っていた。かわいいね!(((あれはタナカ・ニンジャクランから分派したカラテ吸収の構え!パンク・ニンジャが持つものと似て非なる邪悪なジツです!リアルニンジャらしくそのパワはニンジャからのカワイイ、もといカラテの吸収も可能なヤバイジツですね!……えっと、どうやって防ぎましょうか……いや無理無理!勝ち目ないわ)))(ザンキョウ=サン!?)(((早くもこのRTAは終了ですね。でもリアルニンジャとの突発的遭遇とかオレのシマじゃノーカンだから……)))

 ナムアミダブツ!絶体絶命!しかし、その時である!

 

 「イヤーッ!!!」「ンアーッ!?」鋭いカラテシャウトと共に、カワイイ・ニンジャが吹き飛ばされる!

 「な、あなたは」驚愕の表情で、ノーティアーは乱入者を見た。「ドーモ、ノーティアー=サン。ファフニールです」乱入者、ファフニールはわずかに笑った。「何、カスミガセキ・ジグラットにいささかの(ロビーカツドウ)がありましてね。そのついでに、我がミーミーを搾取せんとしたものを討ちに来たまでのこと。あとは私に任せなさい」「アッハイ」

 「おまえ!」吹き飛ばされたカワイイ・ニンジャは、怒りに体を震わせる!かわいいね!「ドーモ、ファフニール=サン。カワイイ・ニンジャです!」「ドーモ、カワイイ・ニンジャ=サン、ファフニールです」

 高速で二人のリアルニンジャがぶつかり合う、神代めいたイクサが始まっていた!その陰で、ノーティアーは負傷したエヴァポレイターを担ぎ上げると、飼育箱の方に向かう!(((あいつらは仲良く喧嘩してもらいましょう!その隙に我々がすべきことはただ一つ……逃げるんだよォオオオ~~~!!!!もちろん拾えるものは拾ってな!!)))

 

 数分後。瀕死のエヴァポレイターと急性NRSにより呆然としたままのヤヨイ・シンケイドをタワラめいて抱えたノーティアーは、全速ダッシュで旧東京の廃墟群を抜け、特定のポイントにたどり着いた。そこにはヤクザリムジンや警護のクローンヤクザらが。クローンヤクザに異常がないことを見て取ったノーティアーは、ひとまず安堵のため息をついた。上着を脱ぎ、一糸まとわぬ姿のヤヨイにかける。背後を確認し、追手が来ないことを確認し、IRCでソニックブームにエヴァポレイターを抹殺するか否かの連絡を打とうとして……異変に気付いた。

 

 「何、これ?」ダイダロスからのIRCは簡潔であった。

 曰く、ソウカイ・シックスゲイツであるガーゴイルが、ニンジャスレイヤーなる存在によって殺されたこと。

 曰く、ガーゴイルの最期の通信から、とうとうソウカイヤに仇なす『ドラゴン・ドージョー』の場所が判明したこと。

 曰く、その『ドラゴン・ドージョー』の先遣隊の一人に、ノーティアーが選ばれたこと。これは最優先事項であり、後続足るシックスゲイツ、『アースクエイク』『ヒュージシュリケン』が活動するためであること。

 (((ンー、随分と早いガーゴイル死だし……先遣隊なんてオイシイ立ち位置に自分からの口添えなしになるなんて……まいっか!意外な短縮が生じたのは事実です!うめ、うめ……)))

 

 しかし、彼らは知らない!そこが更なるジゴクの入り口であったことを!

 おお、見よ!リアルニンジャたちも次々と動き出し、思い思いに行動を起こし始めているのだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネオサイタマ、ツチノコ・ストリート。

 狭っ苦しく立ち並ぶ雑居ビルの一角のアパート、その204号室。そこには、一人フートンに伏せって苦しむ老人がいた。

 「ウ、ウゥーッ、ゴホッ、ゲホッ……」

 彼の身体の健康な箇所は両手で数えるほどしかない。それほどまでに、病魔は彼の身体を蝕んでいた。

 

 「ゴボボッ……ゴボボーッ!?アバッ、アババババーーーッッ!?!?」

 さすれば、そのような状態で、ニンジャソウルがディセンションすれば?……答えは単純、オーバーフローしたUNIXめいて爆発四散する。確かにディセンションは瀕死の時に起きるものだ。しかしながら、元々の器が壊れているところに水を注げば、破裂する。『盆がひっくり返ればオシマイ』とは、マサシ・ミヤモトの言葉である。

 

 しかし……老人は爆発四散しなかった。ピンク色の輝きが彼を包み込み、呼吸を和らげていく。桃色のカラテが彼に注入され、老人の呼吸が穏やかなものに変わる。

 「ゴキゲンヨ、モモジ・ニンジャ=サン!」カラフルなニンジャ装束を纏った乱入者……カワイイ・ニンジャが呼びかけると、そのコトダマに反応するかのように、老人は上体を起こす。その顔には、メンポがあった。

 

 「ヒャッポ……」老人は呻く。「おお、おお……ヒャッポ?ワシは……?」

 「あなたはニンジャになったの!それも、かの伝説的なモモジ・ニンジャのソウル憑依者に!まったく、モモジ・ニンジャ=サンに恩義を感じて私が来なけりゃどうなっていたことか……昔からのエンに感謝しなさいよね、ディセンションニンジャ=サン!」カワイイ・ニンジャは腕を組みながら、ぷいと顔を背ける。かわいいね!そして吐血!かわいいね!「……まだファフニール=サンとのイクサのときの傷が治ってないみたい。ま、気にしないでね!」

 老人は起き上がり、徐々にふくよかに膨らんでいく己の肢体に困惑しながらも、カラテの型を取る。ワンツージャブ。キック。一通りの演舞を終えた彼は、己がヒトならざるものとなったことを理解した。

 

 「本当に、ワシが、ニンジャに……」老人は、戸惑った目でカワイイ・ニンジャを見た。「その……ワシは、モモジ・ニンジャ=サンのソウルを受け継いだだけで、モモジ・ニンジャ=サンそのものではないのだな?」

 「そうね!理解が早くてえらい!」カワイイ・ニンジャは破顔する。ならば、と老人は言う。「新しい名前が必要だ。ワシはモータルでもないし、モモジ・ニンジャ=サンでもないのだから。何か、名付けてくれんかね?」

 

 もちろん、と、カワイイ・ニンジャはかぶりを振って肯定した。「まさか、モモジ・ニンジャ=サンの後継を指導するのみならず、ニンジャネームを授ける栄誉までいただくなんて……長生きもしてみるものね!

じゃあ、ソルベ!あなたは今日からソルベ=サンよ!私はジェラート、ヨロシクネ!」

 「ソルベ……なるほど。ドーモ、ジェラート=サン。ソルベです」老人は……ソルベは、少女ニンジャに対してアイサツした。

 

 

 「あのバカ!一体全体何を遊んでいるんだ……」ニンジャレリックである『遠見の筒』を下ろし、忌々しげにそのニンジャは呟いた。その怒りに反応してか、バチバチと緋色の雷が漏れ出る。

 「落ち着けよ、ケイトー・ニンジャ=サン。そういう態度だからニンジャ大戦に敗れるのだ。落ち着くがいい」ケイトー・ニンジャの横に立つ男は、そう言いながらスリケンを生成する……見よ!そのスリケンは、腕から切り離した二本のヤイバによるものである!

 「こうしてな、柔らかなモータルの血肉を喰らうと落ち着くだろうよォー!ギヒッ、ギヒィ、ギヒィ!」

 

 BLAM!スリケンが投げられる直前に、背後からの銃撃により、それが砕かれた!

 「スゴイ・バカ!ネオサイタマのモータルはなるべく殺すなというのが約定だったろうが!痴呆にでもなったか、ヤイバ・ニンジャ=サン!」黒スーツを着たニンジャは、銃撃姿勢のまま一喝!

 「えー、だがなぁ。ここはネオサイタマ本体から離れた衛星都市、別に多少モータルを全て殺戮するくらい、ヨイデハ・ナイカ?」ヤイバ・ニンジャは、ケイトー・ニンジャに問いかける。

 

 「お前……」頭は大丈夫かと言いかけたニンジャを、ケイトーが制する。「それにな」とヤイバは続けた。「俺はこのモータルどもを使って最強の大会を開こうと思っている」

 「最強の大会だぁ?」

 「ギヒヒィ……今から俺らでモータルをブッ殺していき!ニンジャスレイヤー=サンに最も大きな怒声を上げさせた奴の勝ち!!」

 ニンジャスレイヤーの単語を聞くと、うっすらと黒スーツのニンジャは笑った。「ふうん。そうかい……それで?勝ったら何くれるんだ?」

 「それはもちろん決まっているだろうが、ジュウ・ニンジャ=サン!!第二目標たるノーティアー=サンの(タマ)よ!!!ヤツの(タマ)を殺る権利をめぐって、モータル・ハンティングだ!!!」

 ゲヒヒとヤイバ・ニンジャは笑う!その凶悪な笑みは、この街においてこれから起こるだろう惨劇を予期するに足るものであった!

 

 

 

 

 

 

 

 

【#6 ニンジャ・アット・ザ・パノプティコン】is over...

Next issues...

【#7 ドージョー・アズ・ラッツ・ネスト】

*1
この時点で彼のニューロンはフドウノリウツリ・ジツによって焼き切られ、廃人化している。

*2
2016年四月馬鹿1970年代に放映されたニンジャスレイヤー・カートゥーンの日本放映版『忍偵ヌンチャック』においての、ウォーロックの名前。日本放送にあたり、宇宙忍者とかみたいに設定改変が為されており、ウォーロックは悪魔博士とスタスクを足したような感じのキャラクターになった。弊二次創作時空では色々とめちゃくちゃになっているため、このような同時空のキャラクタが混線することがある。フィメール時空とかニャンニャ時空からの襲来もあるかもしれない。




【禁】
No.32 カワイイ・ニンジャ
密やかに神話時代より生き延びていた邪悪なニンジャ。
弱さや愚かさをカワイイと断じ、それらの要素を持つ者からカワイイを搾取するようなジツを持つ。
反骨たるパンク・ニンジャとそのジツの一部が似通っていたのは、皮肉なことである。
今回の復活と女子高生収容所への嘲笑には、第三者の手が関係していたようだが……?
【涙】

偽B&Mメモ:
今回はエヴァポレイターのオリジンをやるつもりだったんだけど、いろいろと予定が狂ってしまって、半端な形になってしまった。カワイイ・ニンジャの不気味さとか、ヤヨイ・シンケイドの可愛らしさとかを含めて、まだまだ掘り下げる余地のある話だ。けど、このリアルニンジャによる陰謀において、とても面白くなるようなお話を思いついてしまったので、尺的な犠牲になってもらったんだ。

カワイイ・ニンジャのモチーフはグラニテと『にんじゃりばんばん』のMVだ。『るんるんるん 花びらの舞う』はもちろん吹き飛ぶモータルの生首の事を示しているし、後半ではアラシ・ニンジャとライデン・ニンジャがバックで踊っているのが見えるだろう?このお話ではそういうポップなカワイイとニンジャのサツバツとの融合も、このお話のテーマの一つだからね。Miliの音楽をバックにアビ・インフェルノが起きたら楽しいだろうなとか、そんなことばかり考えているよ!
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